人生初めての旅先が異世界でした!? ~ 元の世界へ帰る方法探して異世界めぐり、家に帰るまでが旅行です。~(仮)

葵セナ

文字の大きさ
上 下
262 / 802
三章 王都オリーブ編3 王国に潜むの影

251 囮(おとり)作戦の開始

しおりを挟む
 フリートがオリーブ・モチヅキ家を出ると、カズもアヴァランチェに向かうことにした。

「俺もそろそろ。レラ、ビワ、何かあったら」

「これね」

「はい」

 レラは腰に巻かれてるベルトを、ビワは腕に付けてる数珠を見て返事をした。

「マーガレットさん。ビワを面倒な事に巻き込んでしまい申し訳ありません。勝手で申し訳ありませんが、二人のことをよろしくお願いします」

 深々と頭を下げて、マーガレットに頼むカズ。

「任せて。ビワは大事な家族ですもの。レラだって大事なお友達。ねぇ~」

「そうだよ。だからカズは、こんな事した奴をとっとと突き止めて、ボッコボコにしてやってよ」

「ああ。じゃあ暫くのお別れだ〈ゲート〉」

 ゲートの転移先をアヴァランチェへと繋げ、カズは三人の前から転移して姿を消した。

「凄いわね。本当に転移出来るなんて。二人もさっきのを通って来たのよね」

「はい」

「そうだよ~。しかしカズがさっき言った言葉聞いた『二人のことをよろしく』だって。ビワは元々ここの使用人なのに」

「それはきっと…カズさんの優しさ」

「それはどうかなぁ~」

 にやにやしながら、ビワを横目で見るレラ。

「え?」

「カズはリアーデの街に居た仮の夫婦だったときの事を忘れて『俺の嫁を任せます』って意味で言ったかもよ(にっちっち。ビワの反応は?)」

「そ…そんなこと」

「……ありそうねぇ」

「奥様まで」

「でしょ! でしょ! カズはそういうとこが、たまに抜けてるから」

「うふふふッ。まだ駆け落ち生活の話が途中だったわねビワ。部屋を変えて、昨日の続きを話しましょうか」

「マーガレットに賛成~!」

「わ、私はメイドとしてのお仕事が」

「主人の話に付き合うのも、使用人でありメイドであるビワお仕事よ。それに大事な家族の話しは聞きたいじゃない。さぁ行きましょう」

「お…おくさまぁ~」

「行くよビワ」

「あの話だけはやめて。いいレラ」

「どの話かなぁ~。にっちっち」

「うぅ……私…皆と一緒に、お掃除します。話しは奥様とレラでしてください」

「ちょっとビワ」

 前日のように真っ赤になり、恥ずかしくなる事が目に見えて分かっていたので、レラの声に耳を傾けず、ビワは走り去ってしまった。

「ビワが逃げるなんて。どんな事があったか気になるわね。行きましょうレラ。早く聞きたいわ」

「ビワの赤くなる顔が見たかったんだけど、まぁいいか」



ーーーーーーーーーーーーーーー



「フリート様。今回はどのような用件で、呼ばれたのですか?」

「やめないか。我々は二人は、ギルドマスターの補佐をする為に来ているんだぞ」

「大したことではない。今まで来ていた第2ギルドの担当者が来れなくなったから、ボクが代わりに用件を聞きに来てるだけだよ(すまないが、本当のことは話せないんだ)」

「フリート様が直々に来なくても、他の者を来させれば」

「オリーブ・モチヅキ家は遠いと言っても、王族の親戚にあたるから、ボクが来てるんだよ。先日のギルドマスターの話し合いで、バルフートさんにも言われてるしね。それにフローラさんにも頼まれてるから。待たせるのも悪いから、ボク一人で来てもいいんだけど」

「さすがにそれは」

「我々より強いのは分かりますが、ギルドマスター一人という訳には」

「まぁ単なる御用聞きだから、そんなに警戒しなくてもいい。それよりこれから、調べることが多くなるから、悪いが手伝ってくれ」

「はい」

「了解です」



ーーーーーーーーーーーーーーー



 ここアヴァランチェで、五日は見つらないようにしないと。
 フリートさんを信用して大丈夫なんだろうか? 本人にも言われたけど、今更か。
 なんにしても、貴族区内の情報を集めることが出来る人は必要だし、フローラさんとマーガレットさんの顔を立てる必要もあったからな。
 フリートさんが味方になるか、あるいは敵になるかは完全に賭けだな。
 最悪ビワとレラが、無事で何事もなければそれで良い。
 レラには悪いが、俺一人が逃亡者になって、国を出れば……まあそれは最後の手段だな。
 この国の外か、西は海で東は砂漠、北は他の国があって南は……森ばかりだったような。
 まぁ結果どうなるか分からないが、今回の事が終わったら、この国から出てみるか。
 とりあえずアヴァランチェに居る間は、この廃屋に隠れ住むことにしよう。
 情報を集める際は変装して、休む時は『隔離された秘密部屋』のトレカを使えば見つかりはしないだろ。
 あと忘れない内に、フローラさんつてで手紙をと。
 そこからモルトさんつてで、フリートさんに連絡出来るように話しといてもらわないと。

 カズは以前盗賊の所に潜入調査したときにやったように、フローラが使う資料室に手紙を置いておいた。
 そしてアヴァランチェに隠れ住み、見つかることなく五日がたった。
 その間に入った情報はといえば、手配されているカズがリアーデから姿を消し、近辺の村か街に潜んでいるの可能性がある。
 そしてその情報の影響で、アヴァランチェに多くの衛兵が集まりだしてる事くらいだった。
 フリートの読み通り、衛兵がリアーデを離れて、次はアヴァランチェ内を捜索するべく少しずつ集合しているようであった。
 カズは頃合いかと、衛兵に姿を見せようとするのだった。

「そろそろか(巡回してる衛兵が、もうすぐこの路地に来るはずだ)」

 カズは【マップ】の表示を見て、少し違和感を覚えた。

 あれ、いつも二人なのに、今日は三人? なんか表示の色が違うけど……何だっけかな? まぁいいか。
 二人が三人になっただけだ。
 さてと、トレカを使って新たに得た魔法のドッペルゲンガーで、偽のビワを衛兵に確認させないと。
 と言っても、ビワをそっくりに作り出せるわけじゃないんだよなぁ。
 ドッペルゲンガーを使ったら、真似る相手を見せないと、その姿にならないから、今回はドッペルゲンガーにイリュージョンをかけて、ビワの姿に見えるようにしないと。
 アヴァランチェに来る前に、一度ドッペルゲンガーで、ビワとレラのコピーを作ればよかった。
 おっと、そろそろ準備しないと。

「〈ドッペルゲンガー〉〈イリュージョン〉これでいいか。あとは二人共マントを羽織って、フードを被れば。あとは逃げる際に、顔を見せれば(レラの姿はないけど、別にいいだろ。次の機会に姿を見せれば)」

 偽ビワが出来たところで、巡回している衛兵が、人気のない路地に姿を現した。

「ん? おい、そこの二人」

 衛兵が声を掛けると、カズは偽ビワの手を引っ張り、路地の奥へと走り出す。
 驚いた不利をして、走り出すカズと偽ビワのフードが取れ、衛兵に顔をさらした。

「あれはッ!」

「手配されてる冒険者だ。一緒に居るのは、連れ去られた貴族の使用人に間違いない」

「バレた! 行くぞこい(これで後は衛兵をまいて、アヴァランチェから出れば)」

「サブ・ギルドマスター見つけました。手を貸してください」

「……え? (サブマス)」

 衛兵の後ろからフードを被った小柄な人物が姿を現し、逃げる二人を見る。

「見つけたわよ。レラを返しなさい!」

「げッ なんでアレナリア一緒に……あ(そうだった。マップの表示、アレナリアに渡した……すっかり忘れてた)」

「私が居たらまずいのかしら。おとなしく捕まって、その娘も解放しなさい」

「なんで今日に限って衛兵に協力するとか、サブマスらしいことしてるんだよ。以前のように、ギルドの資料室に引きこもってれば」

「ッ! なんであんたがそんな事……は!」

「サブ・ギルドマスターが?」

「資料室に引きこもり?」

 一緒に居た衛兵が、前を走る小さい人物を凝視すると、その視線を背中で感じたアレナリアは、一瞬チラリと振り返り衛兵を睨み付ける。

「忘れなさい。でないと氷漬けにするわよ」

「す、すみませんッ」

「もう忘れましたッ」

 アレナリアが目線を衛兵に向けると、カズは入り組ん路地へと入って追ってくる三人をまく。

「あッ! もう少しだったのに。貴方達は報告に戻って良いわよ。私はこの辺りを少し探してみるから」

「了解しました」

「よろしくお願いします」

「新たに目撃情報が入ったら、ギルドに連絡してちょうだい」

「はい」

「では、失礼します」

 姿をくらませたカズを探し、アレナリアは一人で路地裏を、暗くなるまで歩き回る事になった。
 あまりにも戻らないアレナリアを心配して、スカレッタとルグルが探しに来る程であった。
しおりを挟む
感想 84

あなたにおすすめの小説

努力しても平均的だった俺が異世界召喚された結果

ひむよ
ファンタジー
全てが平均的な少年、山田 涼太。 その少年は努力してもしなくても、何をしても平均的だった。そして少年は中学2年生の時に努力することをやめた。 そのまま成長していき、高校2年生になったとき、あることが起こり少年は全てが異常へと変わった。 それは───異世界召喚だ。 異世界に召喚されたことによって少年は、自分のステータスを確認できるようになった。すぐに確認してみるとその他の欄に平均的1と平均的2というものがあり、それは0歳の時に入手していた! 少年は名前からして自分が平均的なのはこれのせいだと確信した。 だが全てが平均的と言うのは、異世界ではチートだったのだ。 これは平均的で異常な少年が自由に異世界を楽しみ、無双する話である。 hotランキング1位にのりました! ファンタジーランキングの24hポイントで1位にのりました! 人気ランキングの24hポイントで 3位にのりました!

異世界キャンパー~無敵テントで気ままなキャンプ飯スローライフ?

夢・風魔
ファンタジー
仕事の疲れを癒すためにソロキャンを始めた神楽拓海。 気づけばキャンプグッズ一式と一緒に、見知らぬ森の中へ。 落ち着くためにキャンプ飯を作っていると、そこへ四人の老人が現れた。 彼らはこの世界の神。 キャンプ飯と、見知らぬ老人にも親切にするタクミを気に入った神々は、彼に加護を授ける。 ここに──伝説のドラゴンをもぶん殴れるテントを手に、伝説のドラゴンの牙すら通さない最強の肉体を得たキャンパーが誕生する。 「せっかく異世界に来たんなら、仕事のことも忘れて世界中をキャンプしまくろう!」

異世界で家族と新たな生活?!〜ドラゴンの無敵執事も加わり、ニューライフを楽しみます〜

藤*鳳
ファンタジー
 楽しく親子4人で生活していたある日、交通事故にあい命を落とした...はずなんだけど...?? 神様の御好意により新たな世界で新たな人生を歩むことに!!! 冒険あり、魔法あり、魔物や獣人、エルフ、ドワーフなどの多種多様な人達がいる世界で親子4人とその親子を護り生活する世界最強のドラゴン達とのお話です。

異世界ソロ暮らし 田舎の家ごと山奥に転生したので、自由気ままなスローライフ始めました。

長尾 隆生
ファンタジー
【書籍情報】書籍3巻発売中ですのでよろしくお願いします。  女神様の手違いにより現世の輪廻転生から外され異世界に転生させられた田中拓海。  お詫びに貰った生産型スキル『緑の手』と『野菜の種』で異世界スローライフを目指したが、お腹が空いて、なにげなく食べた『種』の力によって女神様も予想しなかった力を知らずに手に入れてしまう。  のんびりスローライフを目指していた拓海だったが、『その地には居るはずがない魔物』に襲われた少女を助けた事でその計画の歯車は狂っていく。   ドワーフ、エルフ、獣人、人間族……そして竜族。  拓海は立ちはだかるその壁を拳一つでぶち壊し、理想のスローライフを目指すのだった。  中二心溢れる剣と魔法の世界で、徒手空拳のみで戦う男の成り上がりファンタジー開幕。 旧題:チートの種~知らない間に異世界最強になってスローライフ~

異世界召喚失敗から始まるぶらり旅〜自由気ままにしてたら大変なことになった〜

ei_sainome
ファンタジー
クラスメイト全員が異世界に召喚されてしまった! 謁見の間に通され、王様たちから我が国を救って欲しい云々言われるお約束が…始まらない。 教室内が光ったと思えば、気づけば地下に閉じ込められていて、そこには誰もいなかった。 勝手に召喚されたあげく、誰も事情を知らない。未知の世界で、自分たちの力だけでどうやって生きていけというのか。 元の世界に帰るための方法を探し求めて各地を放浪する旅に出るが、似たように見えて全く異なる生態や人の価値観と文化の差に苦悩する。 力を持っていても順応できるかは話が別だった。 クラスメイトたちにはそれぞれ抱える内面や事情もあり…新たな世界で心身共に表面化していく。 ※ご注意※ 初投稿、試作、マイペース進行となります。 作品名は今後改題する可能性があります。 世界観だけプロットがあり、話の方向性はその場で決まります。 旅に出るまで(序章)がすごく長いです。 他サイトでも同作を投稿しています。 更新頻度は1〜3日程度を目標にしています。

充実した人生の送り方 ~妹よ、俺は今異世界に居ます~

中畑 道
ファンタジー
「充実した人生を送ってください。私が創造した剣と魔法の世界で」 唯一の肉親だった妹の葬儀を終えた帰り道、不慮の事故で命を落とした世良登希雄は異世界の創造神に召喚される。弟子である第一女神の願いを叶えるために。 人類未開の地、魔獣の大森林最奥地で異世界の常識や習慣、魔法やスキル、身の守り方や戦い方を学んだトキオ セラは、女神から遣わされた御供のコタローと街へ向かう。 目的は一つ。充実した人生を送ること。

パーティを追い出されましたがむしろ好都合です!

八神 凪
ファンタジー
勇者パーティに属するルーナ(17)は悩んでいた。 補助魔法が使える前衛としてスカウトされたものの、勇者はドスケベ、取り巻く女の子達は勇者大好きという辟易するパーティだった。 しかも勇者はルーナにモーションをかけるため、パーティ内の女の子からは嫉妬の雨・・・。 そんな中「貴女は役に立たないから出て行け」と一方的に女の子達から追放を言い渡されたルーナはいい笑顔で答えるのだった。 「ホントに!? 今までお世話しました! それじゃあ!」  ルーナの旅は始まったばかり!  第11回ファンタジー大賞エントリーしてました!

称号は神を土下座させた男。

春志乃
ファンタジー
「真尋くん! その人、そんなんだけど一応神様だよ! 偉い人なんだよ!」 「知るか。俺は常識を持ち合わせないクズにかける慈悲を持ち合わせてない。それにどうやら俺は死んだらしいのだから、刑務所も警察も法も無い。今ここでこいつを殺そうが生かそうが俺の自由だ。あいつが居ないなら地獄に落ちても同じだ。なあ、そうだろう? ティーンクトゥス」 「す、す、す、す、す、すみませんでしたあぁあああああああ!」 これは、馬鹿だけど憎み切れない神様ティーンクトゥスの為に剣と魔法、そして魔獣たちの息づくアーテル王国でチートが過ぎる男子高校生・水無月真尋が無自覚チートの親友・鈴木一路と共に神様の為と言いながら好き勝手に生きていく物語。 主人公は一途に幼馴染(女性)を想い続けます。話はゆっくり進んでいきます。 ※教会、神父、などが出てきますが実在するものとは一切関係ありません。 ※対応できない可能性がありますので、誤字脱字報告は不要です。 ※無断転載は厳に禁じます

処理中です...