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三章 王都オリーブ編3 王国に潜むの影

250 増える味方 と これからの行動

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 アキレアに案内された部屋に入るカズ。
 部屋の左側にマーガレットが椅子に座り、テーブルを挟んで右側の椅子はフリートが座っていた。

「こんにちは。貴方と会うのはこれで二度ですね。改めて、ボクはフリート・グレシード。第3ギルドのギルドマスターです」

「こちらこそ改めまして。カズです」

 敵意は感じないが、一応警戒をするカズ。

「そんなに警戒しないでください。貴方を捕らえようと来たのではないですから。とりあえず話を聞きたいので、そちらに座ってください」

「分かりました」

 カズはフリートに言われ椅子に座る。

「まさか手配されている本人が、拉致したと言われるお二人を連れて、こちらに来るなんて思いませんでした。先程マーガレット様から話を話を聞いたときは、本当に驚きました」

「先程ですか?」

「ええ。今日は連れ去られた使用人の方の件で話がしたいから来てほしいと。洗脳されてるか調べる方法も聞きたいとも」

「カズさんが来ることは言ってないの。さすがに手配されてる本人が居るから、来てなんて連絡できないわよ」

「まぁそうですね(捕らえるつもりなら言うだろうけど)」

「あとフリートさんに調べてもらって、二人が洗脳されてないと証明されたから、これでカズさんを疑うことはないわ」

「それは良かった。どうやって調べたんですか?」

「あるアイテムを使ったとだけ言っておきます」

「秘密ですか」

「ええ。本来なら貴方を国に引き渡さなければならないのですが、フローラさんにも頼まれていますし、ボク自身も今回の件は腑に落ちないところがあったので、マーガレット様の話に乗り、協力することにしたんです」

「フローラさんから聞いてます。フリートさんが自分の代わりに調べてくれていると」

「フローラさんと会ったんですか!?」

「はい。監視には気付かれてないはずです」

「そういった報告は受けてないので、大丈夫だと思いますが。とりあえず、今まであった事を聞かせてもらえますか? どうやって短時間で、リアーデから王都に来たのかも気になりますし」

 カズは倉庫街の家の前で、ビワと会った日からの事を、掻い摘んでフリートに話した。

「使用人の方と、フェアリーさんが話してくれた事と同じですね。二人が洗脳されているとも思えませんし。だとすると、Cランクの彼らが言った報告はやはり」

「だから言ったんだもん! カズはビワを助ける為に、あのバカな冒険者を」

「分かりましたから、落ち着いてフェアリーさん」

「あちしはレラだもん。フェアリーって呼ばないでよ! ビワだって使用人なんて呼ばれたくないでしょ」

「わ…私は……別に……」

「これは失礼。レラさんとビワさんですね」

「フリートさん。話を戻しても?」

「ええ」

「とりあえず俺は、フリートさんが調べたことを聞かせてもらいたいです」

「まだ確証がないので、全部とはいきませんが」

「構いません」

「では」

「その前に、フリートさんが俺に聞きたいことありますか? あれば先に」

「先にですか? ではお互い、交互に聞いていきましょうか」

「分かりました。フリートさんからどうぞ」

「そうですねぇ……カズさん、ビワさん、レラさんの三人が、リアーデの街に潜んでいた事は、連絡が入ったので分かりました。ただその情報は昨日入ったものなんですよ」

「あちしが衛兵に見つかったから……」

「レラのせいじゃないさ。俺だって姿を見せたんだから」

「そう。衛兵がしっかりと確認してるんです。しかしそれは三日前の事。そしてこちらに来られたのも三日前。カズさん……貴方は転移の魔法が使えますね。もしくはそういったアイテムを所持してるか」

「……はい」

「カズ良いの?」

「いつかは気付かれると思ってたから。確かに転移は出来ますが、その方法は教えられません」

「当然ですね。個人で転移魔法が使える者など、そうそういませんから。今のところ他の方に話すつもりはありませんから、安心してください」

「それは助かります(今のところか……)」

「では次はカズさんが」

「アーティファクトを調べるのを、フローラさんから頼まれたはずですが、何か分かりましたか?」

「この事は、ここに居る皆さんだけに話します。くれぐれも口外しないでください」

「私達は席を外した方がいいかしら?」

「いえ。マーガレット様にも聞いてもらった方が、何かの手掛かりになるかも知れないので、ここに居てもらって大丈夫です」

「分かったわ。ビワとレラも誰かに話したらダメよ」

「はい」

「分かってるもん」

 フリートは重要機密保管所からアーティファクトが持ち去られていた事と、その持ち去った人物の調査をしていない事を話した。

「フローラさんに聞いた話と同じですね」

「ねぇフリート。どうして調査がされてないの?」

「それを今、ボクが調べてるところなんです」

「あら、そうなのね」

「マーガレットさんは、機密保管所の話を聞いたことありますか? 誰が自由に入れるとか」

「国王なら自由に入れると思うけど」

「今回の件が国王がした事だったら、俺は罪人確定ですよ(一国の王を相手になんかできるか)」

「それはないですよ。もし国王がカズさんを捕らえようとするなら、こんな回りくどいやり方はしないかと」

「そうよね『マナキ王』が、そんなことする訳ないわのよね」

「別にそうだったとしたら、あちし達はこの国を出てけばいいだけだもん」

「なんでレラも出ていくんだ? (マナキ…それが国王の名前か)」

「あちしを置いてくつもり! あちしの故郷を見つけるまで、カズは面倒見るって言ったもん。忘れたの!」

 プンプンと怒鳴りながら、レラはカズの髪を引っ張る。

「忘れてないって。だから髪を引っ張るな。ハゲる」

「忘れてなければ良し」

「あー痛て」

 カズは頭をさすって、ハゲてないか確かめる。

「次にそんなこと言ったら、てっぺんの髪を引っこ抜いてやるから」

 レラがカズの頭を指差すと、カズはさすっていた手で頭のてっぺんを隠す。

「お二人は仲が良いですね」

「俺はレラの保護者なだけです」

「保護者って、あちしは子供か!」

「話が脱線するから、レラはそっちに居て」

「ぶぅーッ」

 小声でぶつくさと言いながら、壁際にある棚に座るレラ。

「機密保管所を管理している人というか、役職みたいなもはありますか?」

「官僚の誰かだとは思いますが、ボクはそういったことは詳しくないので」

「そうですか」

「一応調べてみますが、アーティファクトを持ち出した犯人の線は薄いと思います」

「ですよね。最初に疑われるでしょうし」

「早く調べても十日は掛かると思いますが、カズさんはその間どこに?」

「どこか広い街に隠れ住もうかと。今回は俺一人で」

「あちしは? あちしは!」

「ここで暫く預かってもらって。良いですかマーガレットさん?」

「私は大歓迎よ!」

「だそうだ」

「ぅ……分かったわよ。ここなら広いから、隠れる所いっぱいあるもん」

「レラもこう言ってるので、お願いします」

「任せて」

「そちらの話しは決まったようですね。ではボクからカズ君に」

「なんですか?」

「どこかの街に隠れ住むならというなら、アヴァランチェにしてください」

「アヴァランチェですか。何か理由でも?」

「先日リアーデで発見され、遠く場所現れたら不自然でしょう。ですからアヴァランチェで、五日程見つからずに居てもらい、その後一度でいいので姿を現してください」

「なるほど。そうすればリアーデからアヴァランチェに、逃げてきたと思わせることができるのですね」

「ええ。その後は街道の街に姿を現し、少しずつ王都に近づいて来てください」

「俺に目が向いてる間に、疑わしき貴族を調べてくれると」

「見つかると確証はないですが、少しは動きやすくなるかと」

「分かりました」

「ビワさんとレラさんにも、こちらに居る方々以外には、会わないようお願いします。手配されてるカズさんと一緒にいるはずのお二人が、王都に戻ってると知られたら面倒になりますから」

「分かったわ。いいわね二人共。屋敷から出てはダメよ」

「はい」

「仕方ないもんね」

「ではそういうことで、お願いします」

「今日は無理を言って来てもらいありがとう。フリート」

「いいえ。こちらも色々と情報を得ることができました。こうやってカズさんと話す事も出来ましたので。カズさん、今更ですがボクを信じられますか」

「マーガレットさんの頼みですし、どちらにしても機密保管所のアーティファクトや、貴族のことを調べる手助けが必要でしたから」

「何か情報が入ったら連絡を……と言いたいのですが、どうしたら」

「でしたらモルトさんつてで、フリートさんに連絡をとってもらうというのは?」

「モルト……」

「いつも私達の所に来てくれる、第2ギルドの方よ」

「ではその方が、こちら担当している」

「はい。フリートさんがモルトさんに会っても、担当していたギルド職員ですから、連絡事項などのやり取りということにすれば」

「そうそう怪しまれることはない、ですか。しかしそのモルトさんが、協力してくれるでしょうか?」

「ダメなら他の方法を考えます」

「了解しました。ではボクは、付き添いを外で待たせているので。あまり長く待たせるのも悪いので」

「フリートさん。どうかよろしくお願いします」

 カズはフリートに頭を下げた。

「お任せを。期待に答えられるようにします」

 フリートは四人と別れたあと、一緒に来た二人と共に、第3ギルドへと戻っていった。
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