260 / 789
三章 王都オリーブ編3 王国に潜むの影
249 第3ギルドマスターとの会談に
しおりを挟む
部屋の片隅には、いつの間にかメイド長ベロニカの姿があった。
「あら、いつからそこに?」
「十分程前から居ました。話が終わりそうになかったもので、声を掛けさせいただきました」
「ごめんなさい。それでどうしたの?」
「明日フリート様と会談する準備を致しませんと。昨夜、奥様がおっしゃったではないですか」
「あぁ……そうだったわね。でも話の続きが」
「ビワはオリーブ・モチヅキ家のメイドです。お話はいつでもで出来ます。なので今日のところは、明日話す内容をまとめられては」
「そうよね。でも今良いところでなのよ」
「奥様!」
「わ、分かりました。ベロニカは厳しいわね。ほら私、風邪が治ったばかりで、病み上がりなのよ。だからもっとね」
「でしたら、ビワとのお話はなしにして、数日程ベッドで休まれますか? せっかく落ちたお腹の脂肪が…」
「分かったわよ。やります」
「では御用意をしておきますので、すぐに旦那様の執務室までおいでください」
ベロニカがマーガレットの部屋を出ていく。
「残念。話しはまた今度聞かせてもらうわ」
「メイド長は厳しいですから」
「もう少し気を抜いてくれて良いのに」
「使用人に、だらけろとか言う主はどうなの?」
「そこまで言ってないわよ。ただベロニカには、小さい頃から面倒見てもらってるから、私には母親みたいなものなのよ。だから無理してほしくないのよ」
「ふ~ん。母親…か。あちしの……」
「どうしたのレラ? 急に静かになって」
「ん? なんでもない。ビワがカズのベッドに潜り込んだ話しは、また今度ね」
「え!? なになに? ビワがついに」
「ち、違います。ほら早く行かないと、メイド長に叱られますよ。奥様を連れてくから、レラはここに居て」
「えぇー気になる。レラちょっとだけでも。ね」
「早く行きますよ。奥様」
ビワに連れられて、マーガレットはベロニカの待つルータの執務室へと向かった。
一人残されたレラは、リアーデの生活を思い出し、笑い転げていた。
ーーーーーーーーーーーーーーー
「……奴がリアーデに居たそうだな」
「はい。衛兵が住みかを見つけたそうですが、もぬけの殻だったようです」
「今、奴はどこに?」
「分かりません。リアーデは封鎖していたようですが、どこにも見つからず。既に他へ移ったかと」
「役立たずの下っ端が。早く見つけて捕らえろ。すぐに処刑にしてやる。お前も役に立たなければ……分かってるな」
とある場所の薄暗い部屋で、一人の男がある女性を顎で使っていた。
女性は男の言われるがまま、逆らうことなく言うことを聞いていた。
「一つ御報告が」
「なんだ?」
「第3ギルドマスターのフリート・グレシードが、何やら調べてるようなのです。重要機密保管所に入ったらしく」
「ああ、分かっている。また保管所に入る許可を求めてるようだ」
「よろしいので?」
「もう入らせんさ」
「しかし彼も貴族です。それを利用したら」
「家名に泥を塗るようなことはしないだろう。お前は奴がどこに行ったか、情報を集めろ。分かりしだい衛兵に情報を流せ」
「はい」
「冒険者にも噂を吹き込め。金に目がくらんだ浅ましい連中が、躍起になって探すだろう。分かったらもう行け」
女は黙って部屋を出ていった。
「どこから来た田舎者か知らないが、邪魔をしたからには……」
ーーーーーーーーーーーーーーー
「ふぅ……」
「疲れてる様ですね」
「! 誰ッ?」
「俺です。フローラさん」
「その姿は……ルア」
「覚えてましたか。一部忘れてると、レラから聞いてたんですが」
「なんでここに来たのッ! 今の状況分かってるんでしょ。私だって監視が付いてるのよ」
「ですから姿を変えて、ここ(ギルドマスターの資料部屋)から来たんです。念の為に《隠蔽》と《隠密》のスキルは使ってます。それに、この姿を知っているのは、一部の者しか居ませんから」
「……分かったわ。とりあえず、調べて分かったことを手短に話します」
フローラはアーティファクトの調査を、第3ギルドのギルドマスター、フリートに頼んだ事を話した。
重要機密保管所のアーティファクトが、一つ紛失していたこと。
ただしそれが何かまでは、分からないらしく、もう一度フリートに確かめてもらうため、重要機密保管所に入る手続きをしてもらっていると。
なので、マナの揺らぎの発生源は、まだ分かってないとのことだ。
ただそれが貴族区からなのは確かだと、フローラ言った。
「その根拠はなんですか? (俺が以前に。貴族区で感じたからか?)」
「重要機密保管所からアーティファクトの紛失。持ち出した者が不明なのに、進行しない調査。これだけでも、貴族が関係しているのは確かだと私は思う」
「分かっていても、簡単には調べることができませんよね」
「決定的な証拠がないと、貴族相手では難しいわね。だからそれもあって、フリートに頼んだの」
「そういえば、フリートさんも貴族でしたね」
「ええ。彼には兄が居るのだけれど、確かロイヤルガードの一人だと聞いているわ」
「ロイヤルガード? なんですかそれ?」
「王族を護衛する者達よ。騎士団とも言われてるわ。まあ知らないのも無理はないわね。滅多に姿を見せないから」
「騎士団……(前にマーガレットさんの所に、子供を迎えに来た時いたっけか? 馬車を操ってた人がそうだったのかな?)」
「ところで、レラとビワさんだったかしら。二人は今どうしてる?」
「フローラさんの所にも、まだ連絡が来てないんですね」
「なんのこと?」
「俺達がリアーデに隠れ住んでたのが見つかってしまって」
「え!」
「大丈夫です。今二人は、マーガレットさんの所に居ますから」
「マーガ……オリーブ・モチヅキ家ね」
「はい。それでマーガレットさんに頼まれて、明後日にフリートさんと会うことに」
「ちょ、ちょっと待って……会うの? 捕まるかも知れないのよ」
「それはそれで」
「は? 捕まっていいの?」
「俺に罪を擦り付けたり、アーティファクトで皆の記憶を忘れさせたりしてる真犯人を探すには、俺が捕まった方が手掛かりが見つかるんじゃないかと」
「それは一理あるけど、危険な賭けよ」
「捕まった場合ですけど。フリートさんと話をしてどうなるかですね」
「オリーブ・モチヅキ家の人々が、ロイヤルガードや衛兵を呼んでたらどうするの?」
「まぁそうなれば、おとなしく捕まって様子をみます。俺が捕まったと分かれば、フローラさんの監視もなくなり、動きやすくなるでしょ」
「私に頼るのね」
「俺を覚えていて、頼れる味方は少ないので」
「助けられる保証はないわよ」
「ええ。承知してます」
「この借りは大きいわよ。貴方にある借りを返しても足りないくらい(カズさん一人で動けば、捕まりはしないだろうけど)」
「分かってます(そんなあるのか?)」
「……出来るだけのことはやるわ。だけど過度な期待はしないで」
「フローラさん自身が危険だと思ったら、構わず俺を切り捨ててください」
「その為にレラ達と離れるの?」
「……頼まれたのに、投げ出すようですいませんが」
「はぁ……貴方ねぇ」
「長居もできませんし、そろそろ行きます」
「ちょッ……」
ルアはフローラが使っている資料室に入ると〈ゲート〉を使ってギルドを出た。
「行っちゃった……(自分のことを軽視し過ぎてるんじゃないかしら。他のギルマスや上層部の人達が、カズさんが隠してるステータスを知ったらどうなるか。特にバルフートなんかは、手合わせとか言って戦いたがるわよ。……はぁ、カズさんが来た事、気付かれてなければいいのだけど)」
それから二日後、約束した時間になると、カズはマーガレットの部屋に姿を現した。
部屋にはマーガレットの他に、ビワとレラも居たが、フリートの姿はなかった。
「約束した通り来てくれましたね」
「もっと早く来なさいよ。カズ」
レラは文句を言うが、カズが来たことで内心ホッとしていた。
「フリートさんが来てないようですが? (他の部屋か?)」
「もうすぐ来ると思うわ。だからそれまで、こちらで待っていてください」
「手配されてる俺と一緒の部屋で、いいんですか?」
「ビワとレラさんから話は聞きました。私は貴方が悪い人だとは思えません」
「そう言ってもらえると、気持ちが楽になります。でもそれは、ここだけの話にしてください」
「どうして? 貴族の私達が味方につけば、しっかりと調査してくれると思うわよ」
「そうかも知れませんが……」
「だったら」
「実際に俺が無罪だとしても、現実には凶悪犯ですから。それにこうしてここに居るのが、フローラさんやフリートさん以外のギルドマスターに知られたら、皆さんを迷惑を掛けることになります」
「味方になるという私(貴族)の言葉に耳をかた向けず、取り入ろうともしないで、迷惑掛けると心配をする凶悪犯がいるかしら?」
「そう思わせて、騙すつもりかも知れないですよ」
「そんなことを考える凶悪犯が、貴族でギルドマスターのフリートさんと会う約束を守るかしら?」
「それは……」
「こういう話の駆け引きのようなことは、どうも苦手のようね」
「……」
「黙ったら負けと認めてるようなものよ」
「あちしは全部覚えてるんだから、何が起きてもカズの味方なんだもん!」
「わ…私も覚えてます。奥様達になんと言われようと、カズさんの味方です!」
「レラ…ビワ……。気持ちは嬉しいけど、今回は二人の側に居る訳じゃないから、俺を庇うような言動はしないでほしい」
「でも」
「カズ…さん」
「頼むよ……」
「全部解決したら、あちし達のお願い聞いてもらうからね! ビワも言ってやりなよ」
「い…いえ、私は……」
「俺の出来ることなら(レラはどうせ食べ物だろうな)」
「そろそろフリートさんも来るでしょうから、私達は部屋を移ります。カズさんはここで待っていてください。後程呼びに越させます」
「分かりました」
マーガレットはレラとビワを連れて、部屋を出ていった。
カズは【マップ】を見て、屋敷に三人の人が向かって来るのを確認した。
屋敷に入ったのは一人だけで、残りの二人は外で待っているようであった。
屋敷に入った一人は、マーガレット達が居る部屋へと案内された。
少しすると、一人がカズの居る部屋に向かって来るのが分かった。
扉がノックして入ってきたのは、アキレアだった。
カズはアキレアに案内され、マーガレット達とフリートが居る部屋に案内される。
「貴方は悪い方ではないと思いますが、実際に手配されているのですから、信用はできません。もし奥様やビワ達に少しでも危害を加えるようなことをしたら、すぐロイヤルガードに通報します」
「分かってます。危害を加えたりしません」
「ビワが言うような……いえ、約束ですよ」
「あら、いつからそこに?」
「十分程前から居ました。話が終わりそうになかったもので、声を掛けさせいただきました」
「ごめんなさい。それでどうしたの?」
「明日フリート様と会談する準備を致しませんと。昨夜、奥様がおっしゃったではないですか」
「あぁ……そうだったわね。でも話の続きが」
「ビワはオリーブ・モチヅキ家のメイドです。お話はいつでもで出来ます。なので今日のところは、明日話す内容をまとめられては」
「そうよね。でも今良いところでなのよ」
「奥様!」
「わ、分かりました。ベロニカは厳しいわね。ほら私、風邪が治ったばかりで、病み上がりなのよ。だからもっとね」
「でしたら、ビワとのお話はなしにして、数日程ベッドで休まれますか? せっかく落ちたお腹の脂肪が…」
「分かったわよ。やります」
「では御用意をしておきますので、すぐに旦那様の執務室までおいでください」
ベロニカがマーガレットの部屋を出ていく。
「残念。話しはまた今度聞かせてもらうわ」
「メイド長は厳しいですから」
「もう少し気を抜いてくれて良いのに」
「使用人に、だらけろとか言う主はどうなの?」
「そこまで言ってないわよ。ただベロニカには、小さい頃から面倒見てもらってるから、私には母親みたいなものなのよ。だから無理してほしくないのよ」
「ふ~ん。母親…か。あちしの……」
「どうしたのレラ? 急に静かになって」
「ん? なんでもない。ビワがカズのベッドに潜り込んだ話しは、また今度ね」
「え!? なになに? ビワがついに」
「ち、違います。ほら早く行かないと、メイド長に叱られますよ。奥様を連れてくから、レラはここに居て」
「えぇー気になる。レラちょっとだけでも。ね」
「早く行きますよ。奥様」
ビワに連れられて、マーガレットはベロニカの待つルータの執務室へと向かった。
一人残されたレラは、リアーデの生活を思い出し、笑い転げていた。
ーーーーーーーーーーーーーーー
「……奴がリアーデに居たそうだな」
「はい。衛兵が住みかを見つけたそうですが、もぬけの殻だったようです」
「今、奴はどこに?」
「分かりません。リアーデは封鎖していたようですが、どこにも見つからず。既に他へ移ったかと」
「役立たずの下っ端が。早く見つけて捕らえろ。すぐに処刑にしてやる。お前も役に立たなければ……分かってるな」
とある場所の薄暗い部屋で、一人の男がある女性を顎で使っていた。
女性は男の言われるがまま、逆らうことなく言うことを聞いていた。
「一つ御報告が」
「なんだ?」
「第3ギルドマスターのフリート・グレシードが、何やら調べてるようなのです。重要機密保管所に入ったらしく」
「ああ、分かっている。また保管所に入る許可を求めてるようだ」
「よろしいので?」
「もう入らせんさ」
「しかし彼も貴族です。それを利用したら」
「家名に泥を塗るようなことはしないだろう。お前は奴がどこに行ったか、情報を集めろ。分かりしだい衛兵に情報を流せ」
「はい」
「冒険者にも噂を吹き込め。金に目がくらんだ浅ましい連中が、躍起になって探すだろう。分かったらもう行け」
女は黙って部屋を出ていった。
「どこから来た田舎者か知らないが、邪魔をしたからには……」
ーーーーーーーーーーーーーーー
「ふぅ……」
「疲れてる様ですね」
「! 誰ッ?」
「俺です。フローラさん」
「その姿は……ルア」
「覚えてましたか。一部忘れてると、レラから聞いてたんですが」
「なんでここに来たのッ! 今の状況分かってるんでしょ。私だって監視が付いてるのよ」
「ですから姿を変えて、ここ(ギルドマスターの資料部屋)から来たんです。念の為に《隠蔽》と《隠密》のスキルは使ってます。それに、この姿を知っているのは、一部の者しか居ませんから」
「……分かったわ。とりあえず、調べて分かったことを手短に話します」
フローラはアーティファクトの調査を、第3ギルドのギルドマスター、フリートに頼んだ事を話した。
重要機密保管所のアーティファクトが、一つ紛失していたこと。
ただしそれが何かまでは、分からないらしく、もう一度フリートに確かめてもらうため、重要機密保管所に入る手続きをしてもらっていると。
なので、マナの揺らぎの発生源は、まだ分かってないとのことだ。
ただそれが貴族区からなのは確かだと、フローラ言った。
「その根拠はなんですか? (俺が以前に。貴族区で感じたからか?)」
「重要機密保管所からアーティファクトの紛失。持ち出した者が不明なのに、進行しない調査。これだけでも、貴族が関係しているのは確かだと私は思う」
「分かっていても、簡単には調べることができませんよね」
「決定的な証拠がないと、貴族相手では難しいわね。だからそれもあって、フリートに頼んだの」
「そういえば、フリートさんも貴族でしたね」
「ええ。彼には兄が居るのだけれど、確かロイヤルガードの一人だと聞いているわ」
「ロイヤルガード? なんですかそれ?」
「王族を護衛する者達よ。騎士団とも言われてるわ。まあ知らないのも無理はないわね。滅多に姿を見せないから」
「騎士団……(前にマーガレットさんの所に、子供を迎えに来た時いたっけか? 馬車を操ってた人がそうだったのかな?)」
「ところで、レラとビワさんだったかしら。二人は今どうしてる?」
「フローラさんの所にも、まだ連絡が来てないんですね」
「なんのこと?」
「俺達がリアーデに隠れ住んでたのが見つかってしまって」
「え!」
「大丈夫です。今二人は、マーガレットさんの所に居ますから」
「マーガ……オリーブ・モチヅキ家ね」
「はい。それでマーガレットさんに頼まれて、明後日にフリートさんと会うことに」
「ちょ、ちょっと待って……会うの? 捕まるかも知れないのよ」
「それはそれで」
「は? 捕まっていいの?」
「俺に罪を擦り付けたり、アーティファクトで皆の記憶を忘れさせたりしてる真犯人を探すには、俺が捕まった方が手掛かりが見つかるんじゃないかと」
「それは一理あるけど、危険な賭けよ」
「捕まった場合ですけど。フリートさんと話をしてどうなるかですね」
「オリーブ・モチヅキ家の人々が、ロイヤルガードや衛兵を呼んでたらどうするの?」
「まぁそうなれば、おとなしく捕まって様子をみます。俺が捕まったと分かれば、フローラさんの監視もなくなり、動きやすくなるでしょ」
「私に頼るのね」
「俺を覚えていて、頼れる味方は少ないので」
「助けられる保証はないわよ」
「ええ。承知してます」
「この借りは大きいわよ。貴方にある借りを返しても足りないくらい(カズさん一人で動けば、捕まりはしないだろうけど)」
「分かってます(そんなあるのか?)」
「……出来るだけのことはやるわ。だけど過度な期待はしないで」
「フローラさん自身が危険だと思ったら、構わず俺を切り捨ててください」
「その為にレラ達と離れるの?」
「……頼まれたのに、投げ出すようですいませんが」
「はぁ……貴方ねぇ」
「長居もできませんし、そろそろ行きます」
「ちょッ……」
ルアはフローラが使っている資料室に入ると〈ゲート〉を使ってギルドを出た。
「行っちゃった……(自分のことを軽視し過ぎてるんじゃないかしら。他のギルマスや上層部の人達が、カズさんが隠してるステータスを知ったらどうなるか。特にバルフートなんかは、手合わせとか言って戦いたがるわよ。……はぁ、カズさんが来た事、気付かれてなければいいのだけど)」
それから二日後、約束した時間になると、カズはマーガレットの部屋に姿を現した。
部屋にはマーガレットの他に、ビワとレラも居たが、フリートの姿はなかった。
「約束した通り来てくれましたね」
「もっと早く来なさいよ。カズ」
レラは文句を言うが、カズが来たことで内心ホッとしていた。
「フリートさんが来てないようですが? (他の部屋か?)」
「もうすぐ来ると思うわ。だからそれまで、こちらで待っていてください」
「手配されてる俺と一緒の部屋で、いいんですか?」
「ビワとレラさんから話は聞きました。私は貴方が悪い人だとは思えません」
「そう言ってもらえると、気持ちが楽になります。でもそれは、ここだけの話にしてください」
「どうして? 貴族の私達が味方につけば、しっかりと調査してくれると思うわよ」
「そうかも知れませんが……」
「だったら」
「実際に俺が無罪だとしても、現実には凶悪犯ですから。それにこうしてここに居るのが、フローラさんやフリートさん以外のギルドマスターに知られたら、皆さんを迷惑を掛けることになります」
「味方になるという私(貴族)の言葉に耳をかた向けず、取り入ろうともしないで、迷惑掛けると心配をする凶悪犯がいるかしら?」
「そう思わせて、騙すつもりかも知れないですよ」
「そんなことを考える凶悪犯が、貴族でギルドマスターのフリートさんと会う約束を守るかしら?」
「それは……」
「こういう話の駆け引きのようなことは、どうも苦手のようね」
「……」
「黙ったら負けと認めてるようなものよ」
「あちしは全部覚えてるんだから、何が起きてもカズの味方なんだもん!」
「わ…私も覚えてます。奥様達になんと言われようと、カズさんの味方です!」
「レラ…ビワ……。気持ちは嬉しいけど、今回は二人の側に居る訳じゃないから、俺を庇うような言動はしないでほしい」
「でも」
「カズ…さん」
「頼むよ……」
「全部解決したら、あちし達のお願い聞いてもらうからね! ビワも言ってやりなよ」
「い…いえ、私は……」
「俺の出来ることなら(レラはどうせ食べ物だろうな)」
「そろそろフリートさんも来るでしょうから、私達は部屋を移ります。カズさんはここで待っていてください。後程呼びに越させます」
「分かりました」
マーガレットはレラとビワを連れて、部屋を出ていった。
カズは【マップ】を見て、屋敷に三人の人が向かって来るのを確認した。
屋敷に入ったのは一人だけで、残りの二人は外で待っているようであった。
屋敷に入った一人は、マーガレット達が居る部屋へと案内された。
少しすると、一人がカズの居る部屋に向かって来るのが分かった。
扉がノックして入ってきたのは、アキレアだった。
カズはアキレアに案内され、マーガレット達とフリートが居る部屋に案内される。
「貴方は悪い方ではないと思いますが、実際に手配されているのですから、信用はできません。もし奥様やビワ達に少しでも危害を加えるようなことをしたら、すぐロイヤルガードに通報します」
「分かってます。危害を加えたりしません」
「ビワが言うような……いえ、約束ですよ」
24
お気に入りに追加
634
あなたにおすすめの小説
碧天のノアズアーク
世良シンア
ファンタジー
両親の顔を知らない双子の兄弟。
あらゆる害悪から双子を守る二人の従者。
かけがえのない仲間を失った若き女冒険者。
病に苦しむ母を救うために懸命に生きる少女。
幼い頃から血にまみれた世界で生きる幼い暗殺者。
両親に売られ生きる意味を失くした女盗賊。
一族を殺され激しい復讐心に囚われた隻眼の女剣士。
Sランク冒険者の一人として活躍する亜人国家の第二王子。
自分という存在を心底嫌悪する龍人の男。
俗世とは隔絶して生きる最強の一族族長の息子。
強い自責の念に蝕まれ自分を見失った青年。
性別も年齢も性格も違う十三人。決して交わることのなかった者たちが、ノア=オーガストの不思議な引力により一つの方舟へと乗り込んでいく。そして方舟はいくつもの荒波を越えて、飽くなき探究心を原動力に世界中を冒険する。この方舟の終着点は果たして……
※『side〇〇』という風に、それぞれのキャラ視点を通して物語が進んでいきます。そのため主人公だけでなく様々なキャラの視点が入り混じります。視点がコロコロと変わりますがご容赦いただけると幸いです。
※一話ごとの字数がまちまちとなっています。ご了承ください。
※物語が進んでいく中で、投稿済みの話を修正する場合があります。ご了承ください。
※初執筆の作品です。誤字脱字など至らぬ点が多々あると思いますが、温かい目で見守ってくださると大変ありがたいです。
普通の勇者とハーレム勇者
リョウタ
ファンタジー
【ファンタジー小説大賞】に投稿しました。
超イケメン勇者は幼馴染や妹達と一緒に異世界に召喚された、驚くべき程に頭の痛い男である。
だが、この物語の主人公は彼では無く、それに巻き込まれた普通の高校生。
国王や第一王女がイケメン勇者に期待する中、優秀である第二王女、第一王子はだんだん普通の勇者に興味を持っていく。
そんな普通の勇者の周りには、とんでもない奴らが集まって来て彼は過保護過ぎる扱いを受けてしまう…
最終的にイケメン勇者は酷い目にあいますが、基本ほのぼのした物語にしていくつもりです。
Sランク冒険者の受付嬢
おすし
ファンタジー
王都の中心街にある冒険者ギルド《ラウト・ハーヴ》は、王国最大のギルドで登録冒険者数も依頼数もNo.1と実績のあるギルドだ。
だがそんなギルドには1つの噂があった。それは、『あのギルドにはとてつもなく強い受付嬢』がいる、と。
そんな噂を耳にしてギルドに行けば、受付には1人の綺麗な銀髪をもつ受付嬢がいてー。
「こんにちは、ご用件は何でしょうか?」
その受付嬢は、今日もギルドで静かに仕事をこなしているようです。
これは、最強冒険者でもあるギルドの受付嬢の物語。
※ほのぼので、日常:バトル=2:1くらいにするつもりです。
※前のやつの改訂版です
※一章あたり約10話です。文字数は1話につき1500〜2500くらい。
虐殺者の称号を持つ戦士が元公爵令嬢に雇われました
オオノギ
ファンタジー
【虐殺者《スレイヤー》】の汚名を着せられた王国戦士エリクと、
【才姫《プリンセス》】と帝国内で謳われる公爵令嬢アリア。
互いに理由は違いながらも国から追われた先で出会い、
戦士エリクはアリアの護衛として雇われる事となった。
そして安寧の地を求めて二人で旅を繰り広げる。
暴走気味の前向き美少女アリアに振り回される戦士エリクと、
不器用で愚直なエリクに呆れながらも付き合う元公爵令嬢アリア。
凸凹コンビが織り成し紡ぐ異世界を巡るファンタジー作品です。
『希望の実』拾い食いから始まる逆転ダンジョン生活!
IXA
ファンタジー
30年ほど前、地球に突如として現れたダンジョン。
無限に湧く資源、そしてレベルアップの圧倒的な恩恵に目をつけた人類は、日々ダンジョンの研究へ傾倒していた。
一方特にそれは関係なく、生きる金に困った私、結城フォリアはバイトをするため、最低限の体力を手に入れようとダンジョンへ乗り込んだ。
甘い考えで潜ったダンジョン、しかし笑顔で寄ってきた者達による裏切り、体のいい使い捨てが私を待っていた。
しかし深い絶望の果てに、私は最強のユニークスキルである《スキル累乗》を獲得する--
これは金も境遇も、何もかもが最底辺だった少女が泥臭く苦しみながらダンジョンを探索し、知恵とスキルを駆使し、地べたを這いずり回って頂点へと登り、世界の真実を紐解く話
複数箇所での保存のため、カクヨム様とハーメルン様でも投稿しています
こちらの異世界で頑張ります
kotaro
ファンタジー
原 雪は、初出勤で事故にあい死亡する。神様に第二の人生を授かり幼女の姿で
魔の森に降り立つ 其処で獣魔となるフェンリルと出合い後の保護者となる冒険者と出合う。
様々の事が起こり解決していく
悪役令嬢になるのも面倒なので、冒険にでかけます
綾月百花
ファンタジー
リリーには幼い頃に決められた王子の婚約者がいたが、その婚約者の誕生日パーティーで婚約者はミーネと入場し挨拶して歩きファーストダンスまで踊る始末。国王と王妃に謝られ、贈り物も準備されていると宥められるが、その贈り物のドレスまでミーネが着ていた。リリーは怒ってワインボトルを持ち、美しいドレスをワイン色に染め上げるが、ミーネもリリーのドレスの裾を踏みつけ、ワインボトルからボトボトと頭から濡らされた。相手は子爵令嬢、リリーは伯爵令嬢、位の違いに国王も黙ってはいられない。婚約者はそれでも、リリーの肩を持たず、リリーは国王に婚約破棄をして欲しいと直訴する。それ受け入れられ、リリーは清々した。婚約破棄が完全に決まった後、リリーは深夜に家を飛び出し笛を吹く。会いたかったビエントに会えた。過ごすうちもっと好きになる。必死で練習した飛行魔法とささやかな攻撃魔法を身につけ、リリーは今度は自分からビエントに会いに行こうと家出をして旅を始めた。旅の途中の魔物の森で魔物に襲われ、リリーは自分の未熟さに気付き、国営の騎士団に入り、魔物狩りを始めた。最終目的はダンジョンの攻略。悪役令嬢と魔物退治、ダンジョン攻略等を混ぜてみました。メインはリリーが王妃になるまでのシンデレラストーリーです。
巻き込まれて気づけば異世界 ~その配達員器用貧乏にて~
細波
ファンタジー
(3月27日変更)
仕事中に異世界転移へ巻き込まれたオッサン。神様からチートもらってやりたいように生きる…
と思ってたけど、人から頼まれる。神から頼まれる。自分から首をつっこむ!
「前の世界より黒くないし、社畜感無いから余裕っすね」
周りの人も神も黒い!
「人なんてそんなもんでしょ? 俺だって黒い方だと思うし」
そんな元オッサンは今日も行く!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる