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三章 王都オリーブ編3 王国に潜むの影

229 双子の姉妹 と ふてくさメイド

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 屋敷に到着して扉を開けると、そこにはアキレアが一人で佇んでいた。

「お帰りなさい。どうしてカズさんが一緒なのか、説明してもらいましょうか。キウイ」

「にゃ、にゃちきかにゃ!?」

「昨夜あれだけ言ったのに、これ(アイテムポケット付与の手提げ袋)を忘れたのキウイでしょ」

「そ、それはだにゃ…」

 前髪で見えはしないが、アキレアの額には血管が浮き出てると思える。

「まぁまぁアキレアさん。キウイも反省してますから、今回は…」

「カズさん、キウイを甘やかさないでください! ビワにも頼んだわよね。キウイはすぐ忘れるから、気を付けるようにと」

「こ…ごめんなさん」

 ビワとキウイの二人は、黙ってうつ向いてしまった。

「あのぅ、アキレアさん」

「なんですか!」

「あのですね、二人も十分反省してますから、もうそのくらいで勘弁してあけてください。あと、その……できればお仕置きは」

「ダメです! 次やったら罰として、広間の掃除をするようにと、メイド長にも言われてるんですから。さぁ今すぐに取り掛かる!」

「そんにゃ~」

「キウイ一人じゃなくてビワもよ。分かった」

「は…はい。分かりました」

「アキレアさん。広間の掃除は二人でも大変ですよ」

「だったらカズさんが手伝いますか?」

「え……!?」

「私は構いませんよ。ちゃんとメイド長には伝えておきますから」

「カズにゃん」

「カズさん……」

 キウイとビワが、すがる様な思いでカズを見る。
 嫌とは言えない雰囲気の中で、カズは広間の掃除をすることになった。
 広間に向かうカズに、魔法は使用しなようにとアキレアが言う。
 罰として広間の掃除をする訳だから、魔法で手早く終わらせるのは、ダメとのことだ。
 付いてきたレラはというと、カズ達の掃除が終わるまでマーガレットの所に居ると言い、アキレアに案内されて行ってしまった。

「薄情な同居人だ。俺がやるんだから、手伝ってくれてもいいのに」

「まったくだにゃ」

 カズは広間に着いて思った、三人で掃除をしても一、二時間では終わらないだろうと。
 文句を言っても始まらないので、三人は掃除に取り掛かる。

「カズにゃんがアキレアに強く言ってくれれば、こんな事にならなかったかも知れないにゃ」

「そんなこと言うなら、キウイが一人で掃除するか?」

「にゃ! さ、さぁ早くやるにゃ……」

「あの…カズさんを巻き込んで……ごめん…なさい」

「別にビワは悪くないよ。全部キウイのせいだから」

「にゃにゃ! そうはっきり言わなくても、言いじゃにゃいか」

 三人が掃除を始めてから、二時間近く経とうとしていたが、まだ広間の半分程しか終わってない。
 するとそこに、アキレアが様子を見にきた。

「まだまだですね。これでは夕食までに終わりませんよ」

「いつも広間は、アキレアが魔法で掃除してくれる場所にゃ。もう勘弁してほしいにゃ」

「言葉遣いが直ってないですよ」

「お客様が居るわけじゃないから、別にいいじゃにゃいか」

「まだ反省が足りないようね。ビワとカズさんはもういいから、あとはキウイ一人で掃除をしてもらいましょう」

「にゃあァ! それはあんまりだにゃ」

「さぁ行きますよビワ。カズさんも」

「え、でも……(ごめんキウイ)」

「いいから」

「ご、ごめんさい…キウイ」

「ふにゃぁ~」

 今にも泣き出しそうな顔をするキウイを一人置いて、ビワとカズはアキレアに言われて広間を出る。

「ビワは着替えて厨房に、すぐに私も行きますから。カズさんは奥様にお会いになってください」

「あ、はい(俺も衣服に付いた汚れを落とさないと〈クリーン〉)」

「本来なら先に挨拶をしてもらうのですが、キウイが言うこと聞かないものだからつい。でもカズさんなら別にいいかなって」

「……」

「まぁ済んだ事ですからそれは良しとして、持ってきてもらった生クリームは夕食で使いますので、1個分お引き取りします」

「はぁ、分かりました(勝手に良しとされちゃってるよ)」

 カズは自分自身に付いた汚れを魔法で取り除き【アイテムボックス】から生クリームが入った小ビンを1個取り出して、アキレアに渡した。

「それでは奥様が居ります部屋にご案内します」

「あのうアキレアさん、キウイはいつまで?」

「そうですねぇ……あと一時間は一人で掃除をして、反省してもらわないと」

「そうですか(あと一時間で許してもらえるなら、まぁ良いのかな。広間の掃除が終わるまでなんて言ったら、明日になってしまうから)」

「先程も言いましたが、そんなにキウイを甘やかさないでください。毎回街から戻ってくる度に、カズさんの所であれを食べたとか、レラさんと話をしたとか言ってるんですから。キウイには仕事で外に出てことを、忘れてもらっては困るんです」

「す、すいません」

「まったく、キウイはいつも良いわね。私が行っても、何か御馳走してくれるのかしら? 次にカズさんの所に行くときは、私が……」

 アキレアはボソボソと呟き、本音が漏れる。

「はい……? 今なんて?」

「な、なんでもないです。あと一時間ほど経ったら、カズさんがキウイの所に行ってください」

「俺がですか?」

「ええ。私はやることがありますから。掃除が終ってない所は、魔法を使って良いですから。お願いしますね」

「は、はあ。分かりました(う~む、毎回俺の立場はいったい? お客ではないのか?)」

 アキレアに案内された部屋に入ると、マーガレットとその子供のデイジーとダリア、それと見たことがない二人の女の子がレラと話をしていた。

「いらっしゃいカズさん。お久しぶりね」

「どうもマーガレットさん。レラがご迷惑をお掛けしてます」

「あちし迷惑なんてかけてないもん」

「そうね。迷惑なんてしてないわ。フェアリーと話せる機会なんてないから、とても嬉しいわよ。見て、子供達も喜んでるわ」

「それなら良いんですが」

「それよりカズさんは災難ね。キウイのお仕置きに付き合わされたんですって? アキレアはカズさんにまで掃除させるなんて」

「何度も失敗をしてるキウイと、その見張り役のビワを庇ったのは俺ですから」

「フフっ。相変わらずおかしな方ね。うちのメイドと一緒に罰を受けて掃除するなんて。だから皆カズさんとは、親しくしてしまうのだけど」

「ねぇカズ、今日はここで夕食にするのよ。貴族の食事よ。どんなのか、あちし楽しみなの」

「何言ってるのさ、迷惑だろ」

「良いのよ。レラちゃんとはお友達だから」

「そうなのカズ。もうお友達だから、良いの」

「すいません。ありがとうございます(レラの奴、調子にのってるな)」

「そういうことだから、夕食までゆっくりしてて。それと紹介しておくわね。こっちは親戚の『ヘレナ』と『ルッカ』双子の姉妹なの。歳はダリアと同じで13歳よ」

「初めまして。冒険者のカズって言います」

「……」

「……」

「二人はお年頃なのよ」

「そ、そうですね。じゃあ俺は、ルータさんに挨拶を」

「あら言ってなかったわね。夫は出掛けて居ないのよ」

「そうですか。では少し裏庭の方に出させてもらいます。あそこを見たいので」

「ええ。好きにしてちょうだい」

「では失礼します。レラ、調子にのって迷惑かけるなよ」

「だから迷惑なんてかけないもん!」

 マーガレット達の居る部屋を出たカズは、以前に呪いに使われた人形が埋まっていた、裏庭にある木の所へと向かった。
 念の為に、一応人形が埋まっていた辺りを調べるが、特に異常は見つからなかった。
 あれから誰かが調べにした様子もないので、呪いが再発するような事はなさそうだった。
 取り越し苦労だと思ったカズは、広間を一人で掃除しているキウイの所に向かった。
 広間に入ると、一人で黙々と掃除をしているキウイが居た。

「キウイ」

「……」

「キウイ」

「……」

「怒ってる?」

「……怒ってない。どうせにゃちきが悪いんだから。カズにゃんは何しにきたのにゃ」

「アキレアさんがもう終っていいって」

「中途半端にゃ。だからにゃちきが『ひ・と・り・で』終わらせるからいいにゃ。どうせにゃちきなんてにゃ……」

 意固地になり、一人ブツブツと文句を言いながら掃除を続けるキウイ。

「そう言わずに。残りは魔法を使って良いって、アキレアさんも言ってたから(そんなに一人を強調しなても)」

「どうせにゃちきなんか……」

「クリーンを使うよキウイ」

「勝手にするにゃ」

 カズは〈クリーン〉を使い、広間の掃除を終わらせる。
 すると、つかつかとカズに歩み寄ったキウイが、何度も何度もカズの足を蹴る。

「ちょ、キウイなに?」

「にゃ…にゃ…にゃ……」

 カズの質問に答えることなく、まだ蹴るのこと止めない。

「お仕置き(広間の掃除)をしなくてよくなるって、カズにゃんは言ったにゃ」

「必ずとは言ってないよ。それに俺とビワも一緒に罰を受けたんだからいいでしょ」

「でもにゃちき一人残して、二人は先に行っちゃったにゃ」

「それはそうだけど、こうして戻って来たんだし、掃除も終わらせたんだからさ」

「知らないにゃ」

「子供じゃないんだから、そうふてくさらないでさ。キウイはいつもは明るく元気な方が、見てる皆も元気になるんだから」

「そんなお世辞なんていらないにゃ」

 カズとキウイは掃除道具を片付けて、広間を後にする。
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