人生初めての旅先が異世界でした!? ~ 元の世界へ帰る方法探して異世界めぐり、家に帰るまでが旅行です。~(仮)

葵セナ

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三章 王都オリーブ編2 周辺地域道中

214 休養 2 二日酔いにはドッキリ良い!?

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 ◇◆◇◆◇


「! アレナリアは……居ないか(さすがにあの状態で、夜這いはかけてはこないか。でも忍び込んだ前例があるからなぁ)」

 カズは起きると、部屋を出てキッチンに行きお湯を沸かしハーブティーを入れる。
 するとそこへ、アレナリアが頭を抱えて起きてきた。

「二日酔い? ハーブティー飲む?」

「ええ。頂くわ」

「呑み過ぎ」

「昨夜は楽しくてついね」

「その状態でギルドに行けるの?」

「昨日ある程度仕事を終わらせて、今日は休みにしたの。もし急ぎの仕事が入ったら、ロウカスクがやるわよ。せっかくカズが来たんだから、仕事なんてやってられないわ」

「サブマスの言うことかよ」

「たまには良いでしょ」

「じゃあ昼までもう一眠りすれば。頭痛いんでしょ」

「カズが一緒に寝てくれるなら」

「……さてと、俺は買い出しにでも行ってくるかな」

「待って冗談よ。出掛けるなら私も行く」

「二日酔いでしょ。ゆっくり休んでれば」

「嫌よ。一緒に行くの!」

 立ち上がったカズの服を、アレナリアが掴む。

「分かったから、そんなに服を引っ張るなよ(やることが小さい子供だよ。まあ、見た目は実際に小さいけど)」

 アレナリアの二日酔いが治まるのを待ってから出掛けようとするが、アレナリアは大丈夫と強がる。
 出掛けて少しすると、アレナリアがカズの腕を掴み、顔色を悪くして歩く。

「ほら、無理して。まだ頭痛いんでしょ」

「そ、外の空気吸ったら、少しはましになったわ」

「ハァ。やっぱり買い物やめて、家に戻ろう」

「だ、大丈夫よ。これくらい」

「大丈夫じゃない。一人で歩けないでしょ」

 カズは方向転換して、来た道を戻る。

「家に戻ったら、準備して出掛けるから」

「弱ってる私を置いてくの?」

「弱ってるのは自業自得でしょ」

「う……」

「そんな顔しないの。アレナリアにも紹介しておこうと思ったから、置いてかないよ」

「紹介……だ、誰? まさか女性なんて、言わないわよねぇ? (カズにかぎって……)」

「まぁひとりは性別でいえば女性だね。あと子供も」

「だ、だ、誰の子供なの」  

「会えば分かるよ」

 カズの腕を掴むアレナリアの手に力が入る。
 カズはアレナリアの家に戻るまでの間に、マイヒメと白真に《念話》で連絡をして、これから行くと伝えた。

「アレナリア、防寒着着て」

「今日は、そこまで寒くはないわ」

「いいから。一応、寒冷耐性も付与しておくよ(プロテクションを使って)」

「ええ……え? そんなことも出来るの?」

「ん、まぁ。じゃあ行こう。ちょっと驚くかと思うけど、酔い醒ましになるよ〈ゲート〉」

「え? 何これ?」

「えーっと、空間転移の魔法」

「空間……転移! ちょっと…」

 喋るアレナリアの手を引き、ゲートで繋げた空間の向こう側へと移動する。

「え? ここ……どこ?」

「アヴァランチェの北にある山脈の頂上付近」

「は? え? 本当に転移したの?」

「『マイヒメ。さっき紹介するって言った、アレナリアを連れて来たよ』」

「『確認したわ。すぐに降りるわね』」

「すぐ来るから」

「ここで? こんな所に誰が?」

 アレナリアが考えを整理しようとしていると、上空から大きな影が飛来し、二人の前に降り立つ。
 それを見たアレナリアが、カズの寄り添い腕を強く掴む。

「こっちの大きいのがマイヒメで、小さいのが子供のフジ」

「な、なに……このモンスター」

「一応、俺がテイムしたモンスターだよ」

「テ、テイム!? そ、そう。カズがテイムモンスターなのね。さ、さすがだわ(女性と子供って、テイムモンスターのことだったのね。それにしても……)」

 アレナリアはカズの腕から手を離し、一歩前に出る。

「は、初めまして、私はアレナリア。この山の麓にある、アヴァランチェという都市の冒険者ギルドで、サブ・ギルドマスターをしてます」

「『白いエルフなのね。よろしく』」

 アレナリアとマイヒメは、お互い相手の目を見る。

「マイヒメは言ってることは理解してるんだけど、人の言葉は話せないんだ。俺には分かるんだけど」

「それはしょうがないわ。カズはテイマーだから言葉が分かるのよ。でもまあ、友好的なのは感じたわ」

 マイヒメの後ろから現れたフジが、アレナリアの側に歩いて来る。

「『僕フジだよ』」

「近くで見ると、かわいいわね。こっちがフジね」

「そう。よろしくってさ」

 アレナリアがフジの頭を、優しくなでる。
 フジも嬉しそうにして、アレナリアにすり寄る。

「アレナリアの二日酔いも、だいぶ良くなった様だし、あとひとり紹介するよ。そいつは話が出来るから」

「まだテイムしたモンスターが? それより早くしないと、ここには恐ろしいモンスターが……」

 アレナリアは、この場所が危険だと教えようとしたとき、マイヒメの後方から迫る白い巨体を見て、話し途中で固まってしまった。
 マイヒメの後ろから現れた、フロストドラゴンの白真を見て、アレナリアは腰を抜かし、震えながらカズの足にしがみつく。

「アレナリア。あれがもうひとり紹介するって言った相手」

「フ、フ、フロスト、ド、ドラゴンじゃないの。白き災害よ。かつてアヴァランチェを襲ったモンスターよ。な、なんで……」

「襲ってこないから大丈夫」

「カズが連れて来ると言っていたのは、その小さき者か」

 白真が顔を、アレナリアに近づける。 

「ヒィィィ!」

 アレナリアは顔面蒼白になりながら、カズの後ろに隠れる。

「怖がるから、そんなに顔近づけるなよ。目が悪いわけじゃないだろ」

「周りの雪と同じ上、小さかったので少々見ずらかった。許せ小さき者よ」

 白真は近づけた顔を引き、マイヒメの隣に並ぶ。
 座り込んだアレナリアは、カズの足を抱き抱えたまま震えていた。

「アレナリア……アレナリア! 大丈夫?」

「……あ、ええ、うん、だ、 大…丈夫……じゃないわよ!! なんなのよあれは! 驚くし、怖いはで……怖かったのよ! こんな事になるなら、始めから言ってよぉ~」

 アレナリアは座り込んだまま涙目になり、カズを見上げて怒鳴る。

「来る前に、驚くと思うけどって言ったじゃない」

「転移魔法の事だと思ったわよ」

「ああそっちか。ごめん」

「『カズ。そのアレナリアって娘に、誰と会うかを教えなかったの?』」

「二日酔いだったから、シャキッとするにはいいと思って、誰とは伝えなかったんだ」

 マイヒメは震えるアレナリアを見て、自分が白真と会った時の事を思いだし、共感した。

「『その娘、怒ってるわよ』」

「前回マイヒメにも怒られたから、今回は一応驚くとは言っておいたんだけど、伝わらなかったみたい」

「『見れば分かるわ』」

「これからは気を付けるよ。まぁそういうことだから、アレナリアをよろしく。特に白真は、言葉が通じるから」

「了解した。アレナリアとやら、我に用があるなら、いつでも来るとよい。話をするだけでも構わないぞ。暇潰しになるゆえ」

 白真に話し掛けられたアレナリアは、震えながらも、首を縦に振り答えた。(もし首を横に振った場合、何をされるか分からないと本能的に判断した結果だった)

「とりあえず紹介は終わったから、マイヒメに運んでもらいたい所があるんだけど」

「『どこに行くの?』」

「ここから南西の方にある街の近くまで」

「『分かったわ』」

「じゃあ頼むよ。アレナリア行こう」

「こ、今度はどこに行くの?」

「昨日言ったでしょ。リアーデに行くって。アレナリアは行かない? だったら家まで送るけど」

「カズと一緒に行くわ。でも今話してた内容だと、そのマイヒメってテイムモンスターに乗って行くのよねぇ?」

「そう。さぁ行こ……立てる?」

「無理」

 アレナリアは座ったまま動かない、と言うよりは、腰が抜けて動けない。
 カズは動けないアレナリアを、両腕で抱える。(いわゆるお姫様抱っこだ。さすがに片手で脇に抱えると、アレナリアが後で機嫌を損ねると思ったからだ)
 アレナリアを抱えたまま、カズはマイヒメの背中に乗る。
 続けてフジが背中に乗ると、マイヒメは雪山を飛び立つ。
 リアーデからアヴァランチェまで、馬車で数日掛かっていた道のりが、マイヒメだとほんの少しの時間で着いてしまう。
 リアーデの近くまで来ると、街道を行き来する人は殆ど居なかったので、わざわざ人目を避けて、マイヒメが降りれる場所を探す必要もなかった。
 リアーデから少し離れた草原の中にマイヒメが降りる。
 カズはアレナリアとマイヒメから降りて、歩いてリアーデの街へ向かった。
 マイヒメはカズとアレナリアを降ろすと、フジだけを乗せて再び飛び立つ。

「アレナリアは高い所平気なんだ」

「そうでもないわ。結構怖かったわよ」

「そんな風に見えなかったけど」

「それより怖い事があったからよ」

 アレナリアは横目でカズを見る。
 カズはそれに気付かないふりをして、早足で進んで行く。

「……さ、さぁリアーデに入って、キッシュとクリスパの所に行こう」

「ちょっと待ちなさい。歩くの早いわよ。私さっきまで立てなかったんだから、もっとゆっくり歩いてよ! ねぇ聞いてるのカズ」
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