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三章 王都オリーブ編2 周辺地域道中

201 ダンジョン内部の探索

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 確かにゲートは発動した、だが転移先に空間が繋がってはなく、ゲートで移動することができなかった。

「……なんで? (ダンジョン内部って、特殊な空間にでもなってるの?)」

 カズはここで初めて、ダンジョンの内から外、外から内への空間移動ができない事を知った。


 これは先に進んで、出る方法を探すしかないか。
 まあ入口を壊せば出れるだろうけど、それでダンジョンが崩壊したら、ここまで来た意味ないから、それは最後の手段だな。


 カズは入ってきた扉から出るのを諦め、ダンジョンを奥へと進むことにした。
 カズは今居る所から、先ほどまで進んでいた場所まで、ゲートで転移できるか確かめる。
 すると今度は問題なく空間が繋がり、ゲートを通り、先の通路まで移動することができた。
 カズは【万物ノ眼】を常時発動させて、石で出来た通路を、調べながら先へと進む。
 暫く進んで行くと、通路が左右に分かれ、更に地下へと下りて行く階段もあった。
 カズは〈ライト〉で出した、光の玉を左右の通路に飛ばした。
 左の通路には不自然な凹みがあり、罠があるのが分かった。
 そのずっと先は、行き止まりになっているようだった。
 右の通路の先には、少し広くなってそうな空間があるのが見えた。
 地下は後にして、カズは先ず右の通路を進み、先に見えた場所まで行ってみることにした。


 フローラさんから聞いた話じゃあ、確かこのダンジョンから戻った人はいるんだよなぁ。
 ってことは、どこか外に出る方法があるはず。
 いくらライトや暗視が使えて見えるからって、こんな場所に一人はやっぱり嫌なもんだ。


 カズは恐る恐る右の通路を先に進み、広くなった場所に出る。
 カズは〈ライト〉を使い、大きい光の玉を出した。
 ライトに照され見たものは、モンスターの死骸と人の骨だった。
 モンスターの死骸は、外で見た猛毒サソリのようで、人の骨は身に付けているものを見る限り、盗賊だと思われる。
 盗賊だと思われる骨の一つが、ふたが開いた箱を抱えていた。
 もちろん中は空だが、何かが収まっていたであろう窪みがある。
 それは形からして、短剣のようだった。
 カズはこの場所をくまなく調べたが、死骸と空箱以外は何も無く、他の通路も見あたらなかった。
 ただ地面や壁に、50㎝程ある不思議な穴が無数にあった。


 あと行けそうなのは、地下へと続く階段だけか。
 ダンジョンが入り組んでないだけましだけど、出る方法が分からないのが難点だよなぁ。
 まだ全部回った訳じゃないから、悲観してもしょうがない、とりあえず戻って、地下に下りてみよう。
 しかし穴ばっかの、不思議な場所だったなぁ。


 カズはもと来た通路を戻り、地下へと続く階段を下りた。
 入口の階段とは違い、今度の階段は長かった。
 地下へと続く階段はくねくねと曲がっており、80m程下りた辺りで階段が終わっていた。
 そこは今までと同じような石作りの通路ではなく、自然に出来た洞窟のような広い空間になっていた。
 カズは先ほどと同様に、魔法で大きな光の玉を出して、広い空間内を隅々まで照らした。
 そこでカズが見たものは、5m以上ある巨大な人型の石像二体だった。
 巨大な石像の後ろには小さな石室があり、石像はそれを守っているように思えた。


 今のところモンスター反応もないし、魔力感知も気配感知にも引っ掛からないんだけど……明らかに近づけばあれ(巨大な石像)動くでしょ。
 荒らされた跡はないから、盗賊達はここに来なかったか、あれ(巨大な石像)を見て諦めたかだな。
 他に通路もないし、ここが最奥部だろうけど、やっぱり来たからにはあれ(石室)の中を確かめないと。
 ここを出る方法も分からないしなぁ。
 以前にここへ来た連中は、どうやって外に出たんだ?


 カズは警戒しつつ巨大な石像の横を通り抜け、石室までたどり着くと、蓋をずらしてそっと中を覗きこむ。
 石室の中に入っていたのは『短い杖』『腕輪』『何かが包まれたぼろぼろの布』の三つ。
 カズは見つけた三つのアイテムを調べようと、石室から取り出すと、急に《魔力感知》に反応があった。
 カズが振り返ると、二体の巨大な石像が動き始めた。
 見つけた三つのアイテムを【アイテムボックス】に入れたカズは、急いで巨大な石像から距離をとる。
 動き始めた石像の表面から、剥がれ落ちた無数の石がカズの近くに落ちる。

「うぉッ!」

 おいおいッ! ただでさえ出口が見つかってないのに、あんなのがこんな所で暴れたら、確実に洞窟が崩れるよ。
 先ずは動きを止めてから、巨像を分析してステータスを確かめないと。

「〈アースバインド〉もう一体も〈アースバインド〉だ!」

 カズは二体の巨大な石像の足を、アースバインドで絡めとり動きを止める。

「よし! 今のうちにあれを調べて、なんとかしないと《分析》ステータス」



 名前 : サンドゴーレム
 種族 : マジカルゴーレム
 ランク: B
 レベル: 48
 力  : 1440
 魔力 : 726
 敏捷 : 384
 全長 : 5m50㎝
 スキル: サンドコピー
 魔法 : サンドショット、サンドプレス
 補足 : スキルのサンドコピーによる複製は、周囲にある砂の量に比例して大きさが変わる。
 ・体内にあるコアを破壊しない限り、何度でも元に戻る。(ただし周囲にある砂の量により、形成状態は変わる)


 名前 : ストーンゴーレム
 種族 : マジカルゴーレム
 ランク: A
 レベル: 51
 力  : 1618
 魔力 : 916
 敏捷 : 308
 全長 : 6m20㎝
 スキル: フォームチェンジ
 魔法 : ストーンバレット、ストーンプレス、ストーンサークル
 補足 : スキルを使用すると、形を組み換えて変形する。
 ・体内にあるコアを破壊しない限り、何度でも元に戻る。(ただし周囲にある岩石の量や質により、形成状態は変わる)



 カズが動きを止めることが出来たのは、ほんの数十秒程度だった。
 巨像のステータスを確認し終わる頃、拘束していた足を無理矢理壊して、二体のゴーレムはカズ目掛けて動き出す。
 壊れた砂と石の足は、みるみる内に復元されていく。

「えぇ!」

 元に戻るの早過ぎだろ! この洞窟内で、あんなの二体も相手にするのかよ。
 っていうか、拘束時間短ッ。
 まあ、あのステータスなら当然か。

「おっと、あぶな!」

 カズがゴーレムに対してツッコンでいると『サンドゴーレム』は自らの複製を作りだし『ストーンゴーレム』は〈ストーンバレット〉で作り出した無数の石を、カズ目掛けて飛ばしてきた。
 カズはとっさに〈アースウォール〉で壁を作り出し、飛んで来た無数の石を防いだ。
 カズは《魔力感知》に意識を集中して、迫る二体のゴーレム内にある、コアの位置を探る。
 どちらも中心部辺りに、より強い魔力を発しているのを感じ取った。
 カズはサンドゴーレムの中心目掛けて〈ライトニングボルト〉を放った。
 カズの手から放たれた青白い電撃は、サンドゴーレムの中心部を貫いた。
 しかしサンドゴーレムのコアを破壊することはできなかった。

「急所が動くのかよ!」

 電撃がサンドゴーレムに当たる寸前、強い魔力を発していた場所が移動したのをカズは感じた。

「やばッ! どうしよう」

 カズは二体のゴーレムとの距離をとりながら、コアを破壊する手段を考え、先にストーンゴーレムから倒そうと、再度強い魔力を感じとり、コアの位置を確める。
 すると先程まで中心部にあった強い魔力反応は、頭の方へと移動していた。

「こっちもか!?」

 カズがゴーレムから距離をとりながら、倒す方法を考えている内に、サンドゴーレムの複製体が完成していた。
 サンドゴーレムの一体は〈サンドショット〉を放ち、カズがそれを避けると、もう一体のサンドゴーレムは〈サンドプレス〉を使い、砂の壁を二枚出して、カズを潰しにかかる。
 二体のサンドゴーレムからの攻撃を回避するカズに対して、ストーンゴーレムは〈ストーンサークル〉を使い、カズを囲むようにして、石の壁を出現させた。
 石の壁に囲まれたカズの上から、巨大な石が迫ってきていた。
 よくよく見ると、それはストーンゴーレムの足だった。
 大きな音と共に、ストーンゴーレムに踏み潰された石の壁は、粉々になっていた。
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