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三章 王都オリーブ編2 周辺地域道中

197 おばちゃんの脅威 と 反省

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「ねぇキウイ、カズさんとは、どこで出会ったの?」

「どういう関係なのかしら?」

「王都では、一緒に暮らしてるの?」

「にゃ、なんにゃ! おばちゃん達、急になんだにゃ?」

「カズさんはどうなの?」

「はい?」

「キウイのどこに引かれたのかしら?」

「引かれたも何も、俺は…」

「さっきまで二人で出掛けてたけど、何をしてたの? キス…」

「あらいやだわ奥さんたら!」

「若いって良いわねぇ。それでキウイはどうなの?」

「どこまでいったの?」

「にゃ、にゃにを言ってるにゃ!」

「ぁぁ……(女性が集まると、やっぱりこういう話になるのか。キウイに注意が向いている間に、この場から逃げ出そう)」

 盛り上がってる女性達を横目に、ゆっくりと椅子から立ち上り、避難しようとするカズ。
 カズはこっそり家を出ようとしたが、酔っぱらったリブロコに気付かれてしまった。

「なんだカズさん。飯を食い終わったなら、こっち来て一緒に飲もうや!」

「リブロコさん声が大きいですって」

「あ! いつの間にか、カズさんがあんな所に!」

「まだ何も聞いてないわよ!」

「洗いざらいキウイとの関係を、包み隠さず話してもらいましょうか!」

「話すも何も、俺とキウイはそんな関係じゃないです!」

「わたし達に隠し事はいけないわ」

「これもキウイのためなんだから」

「子供は何人ほしいのかしら?」

「な、なんなんだ(この人達も、酔ってるんじゃないのか?)」

「カズにゃん、一旦ここから避難するにゃ!」

 隙を見て、キウイがカズの手を引き、家から脱出した。

「おいおいクランベリ、カズさんが行っちまったぞ」

「ちょいと強引過ぎたかねぇ? これなら旦那達と飲ませて、酔っぱらってから、話を聞けば良かったかしら」

 このあと女性達は、お酒の匂いで少し興奮してしまったと反省していた。
 翌日カズさんとキウイに謝ろうと、この日は解散して、各々の家に帰った。
 ぐいぐいと迫る女性達の質問から逃げ、家を飛び出したカズとキウイは、村の入り口付近に止めてある馬車に居た。

「急に家を飛び出して良かったの?」

「あのまま家に居たら、話があらぬ方向にいって、面倒なことになるにゃ」

「既に話が、あらぬ方向にいってたけど」

「さっきおばちゃん達が、にゃちきの所に集まってたとき、カズにゃん一人で逃げるつもりでいたにゃ?」

「あ、いやぁ…その……」

「やっぱりかにゃ! ヒドいにゃ! にゃちき一人に、おばちゃん達の相手をさせるつもりだったのかにゃ」

 カズのあやふや返事を聞いたキウイは、カズに詰め寄る。

「俺はあの人達と面識ないしさぁ、キウイは見知った顔でしょ。だからキウイに任せようかと……ごめん」

「仕方ない許してあげるにゃ。どうせ義母さんが勘違いして、おばちゃん達に話したんだにゃ」

「本当に勘弁してほしいよ」

「罰としてカズにゃんには、にゃちきの頼みを聞いてもらうにゃ」

「頼み?」

「にゃちきが王都に戻るときに、迎えに来てほしいにゃ」

「それくらいなら、別に構わないよ」

「最初は村に来る、行商人の馬車に乗せてもらおうと思ったんだけどにゃ、倒木で山道が通れなくなってるとは、思わなかったにゃ」

「そうなんだ。でも、もう通れるから大丈夫でしょ」

「それが昼間畑に行ったとき、義父さん聞いたんだけどにゃ、山道をふさいでいた倒木のせいで、行商の人が来る回数が減ったと言っていたにゃ。だから町に行って、村に来る行商人の人達に、山道が通れるようになったと教えないと、前のようには来てくれないにゃ」

「そうか、じゃあ俺が伝えて来よう。どこの町の誰に言えば良いの?」

「来るときに通ってきた町の、商業ギルドに伝えれば良いにゃ。ただ時期が時期だけに、すぐには来ないと思うにゃ」

「まぁそうだよね」

「だからカズにゃんに迎えを頼んだにゃ」

「任せて。ちゃんと迎えに来るから」

「大変なら、にゃちきが王都に戻る日まで、一緒に村に居てくれて良いにゃよ」

「せっかくの家族水入らずを邪魔したくないから、俺は一度王都に戻るよ。この馬車も返さないとならないしね(村に居たら、また質問攻めにされかれないからなぁ)」

「そうかにゃ……(王都まで送ってもらうことを頼めば、カズにゃんは村に居ると思ったんだけどにゃ。ナツメとグレープは悲しむかにゃ?)」

「それでキウイは、いつ村を出発するの?」

「あまり長く休むわけにはいかないにゃ。だから、年明け四日目の朝に出発するにゃ」

「だとすると、明日から八日後の朝か。分かった迎えに来るよ」

 ちょうどキウイと話を終えた頃に、家でお酒を飲んでいるはずのリブロコが、カズ達が居る馬車に向かって歩いてきた。

「ねぇキウイ、あれリブロコさんだよね?」

「本当だにゃ! 義父さん一人でどうしたにゃ?」

「二人を探すついでに、酔い冷ましてこいってクランベリに言われてな。おおかた来るときに乗ってきた、馬車いるだろうって。もう皆帰ったから、家に戻ってきな」

「もう解散したのかにゃ?」

「ああ。つい嬉しい事が重なって、オレ達はしゃぎ過ぎたみたいだ。すまん」

「別に怒ってないにゃ。ねっ、カズにゃん」

「え、あ、うん」

「すまなないカズさん。恩人に対して申し訳なかった」

「大丈夫です。気にしてませんから」

「ほらほら、謝ってばかりじゃ暗くなるにゃ。さぁ家に戻るにゃ。義父さんは酔ってるから、足元に気を付けるにゃ」

 キウイは馬車から降りるとリブロコの腕を取り、体を支えるようにして歩いて行く。
 リブロコの歩き方を見ると、片足を少し引きずるようにしていた。
 家に戻ると、クランベリが申し訳なさそうにして、カズとキウイに謝ってきた。
 カズとキウイは笑って許した。
 騒ぎ回っていたナツメとグレープは、既に夢の中だった。
 四人はお茶を飲みながら、勘違いしているリブロコとクランベリに、カズとキウイの関係を話して誤解を解いた。

「なんだそうだったの。ワタシついキウイが一緒になる人を、紹介しに連れて来たのかと」

「相変わらず義母さんは、早とちりするにゃ」

「ごめんなさいね。カズさんもごめんなさい」

「誤解が解けて良かったです」

「まったくクランベリは、いつもそうだ」

「何言ってるのよ。あんただって勘違いしてたじゃないの。それではしゃぎ過ぎて、古傷を痛めちゃってさ。そのうえ買いだめしてたお酒にまで手を付けて、新年までお預けだからね。町までの買い出しは大変なんだから」

「う、うるせい。分かってるさ。オレの足が万全なら、村の連中と山道の倒木をどかしに行ってるのによぉ。そうすれば行商人だって、以前みたいに来てくれるのに」

「あ! その事だけど、今は山道を通れるようになってるにゃ」

「えっ! 倒木で通れないはずじゃないのキウイ!?」

「誰がどかしたんだ? 一本太い木が倒れてたはずだぞ。あれを動かすのは大変なはずだ」

「カズにゃんが通れるようにしてくれたにゃ。なんせにゃちき達は、その山道を通って来たんだにゃ」

 リブロコとクランベリは、二人そろってカズを見た。

「カズさん、あんた何者だい?」

「ただの冒険者ですよ。ちょっと魔法が使えるだけの」

「カズにゃんが王都に戻るときに、町の商業ギルド寄って、道が通れるようになったと言ってくれるにゃ」

「そんなことまで! 重ね重ねなんとお礼を言ったらいいか」

「町は通りますし、ついでですから気にしないでください。倒木の事に関しても、俺ができたからやった事ですし」

「カズさんすまねぇ。村人全員に代わってお礼を言うよ。ありがとう」

「どういたしまして」

「オレが怪我さえしなければ、キウイに出稼ぎに行かせて、苦労かける事もなかったのに。いつもありがとうよキウイ」

「にゃちきは苦労なんて思ってないにゃ。王都に行ったから、お屋敷の皆と会えたんだし、カズにゃんにだって会えたんだからにゃ」

「さぁ積もる話は明日にして、今日はもう休みましょうか。長い間馬車に乗っていて疲れたでしょ」

「そうするにゃ。そろそろ眠くなってきたしにゃ」
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