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三章 王都オリーブ編2 周辺地域道中
194 感動の再会 と 喜び と 感謝
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一人で山道が通れるか確めに行ってから二十分が過ぎた頃、カズが馬車の止めた所へと戻ってきた。
「もう食べ終った?」
「にゃっ! 驚いたにゃ。やけに早かったけど、やっぱり道がふさがって通れなかったかにゃ?」
「確かに立て札に書いてある通り、倒木はあったよ」
「じゃあやっぱり迂回して、遠回りするしかないにゃ」
「大丈夫。倒木は片付けてきたから、もう通れるよ。だから三人が食べ終わったら出発しよう」
「本当かにゃ? カズにゃんが一人で先を見に行ってから、あんまり時間が経ってないにゃ」
「ぁー……たまたま倒木のあった場所が近くだったから、退かしてすぐに戻って来たんだよ」
「そんなこと言って、カズにゃんのことだから、一人で村まで行って戻って来てたりしてにゃ」
「! そ、そんなわけ…」
「にゃ~んて、そんなわけにゃいか。それだと速すぎるにゃ」
「そ、そうだよ。一人で村になんて行かないよ(その手前までは行ったけど)」
「ぼくもうごはん食べた終ったから、早く行こう」
「早く行くなの。お馬さんにがんばって、山道行くなの」
「分かったよ(今はお腹いっぱいごはんを食べるより、早く家に帰りたいか。俺はまだまだ帰れるかどうかも、分からないんだけど)」
「今から行って、日暮れ前には着くと嬉しいんだけどにゃ。少し難しいかにゃ?」
「じゃあコイツ(馬)には、力を出してもらわないと(身体強化を昨日より強めにかけるか。馬が負担にならない程度にして。村に着いたら回復してやらないとな)」
カズは出発前に立て札を抜き、伏せてから馬車を走らせた。(倒木を取り除いため)
身体強化した馬は、山道(やまみち)を物ともせずに上って行く。
暫くすると上っていた山道が、下りになり始めた。
ナツメとグレープは、馬車から身を乗り出し、今にも落ちんばかりでいる。
森の入り口から二日かかると思っていたが、身体強化した馬のお陰で、予定よりも早く村に着くことができる。
山道を下り山を越えると、そこには目的の村があった。
村に入り、通行の邪魔にならない場所に馬車を止めると、ナツメとグレープが急に馬車から飛び降り、一軒の家に向かって走って行った。
ナツメとグレープが家の扉を強く叩くと、獣人(リス)の女性が出てきて、目の前に居る二人を見て驚いていた。
するとその獣人の女性は、大粒の涙を流しながら喜び、ナツメとグレープを強く抱き締めた。
ナツメとグレープも泣きながら、獣人の女性を強く抱き締めた。
「何十日ぶりの再開か。これで俺のやることは終わりだな。おっと、ここまで運んでくれたコイツ(馬)を、回復してやらないと」
カズは【アイテムボックス】から原液の回復薬を出し、野菜に少しかけて馬に食べさせた。
「馬の世話もいいけど、カズにゃんも行くにゃ」
「俺も?」
「色々と説明をしないとならないにゃ」
「ああそうか。分かった(説明することなんか考えてなかった。どこから何を話せばいいんだ?)」
カズとキウイが、ナツメとグレープが向かった一軒の家に足を進めると、家から出てきた獣人の女性が気付き、カズを見て深々とお辞儀をした。
カズはそれに答えるようにして会釈をすると、獣人の女性はカズに近づいてくる。
「初めまして。あなたがカズさんですか? ワタシは二人の母で『クランベリ』です」
「そうですが、どうして俺の名前を!?」
「昨日の朝に、この村出身の冒険者が戻って来たときに、モルトさんからの手紙をだと渡されたんです。そこには行方不明だった、ナツメとグレープが保護されたと」
「そうですか! (いつの間にモルトさんは手紙を?)」
「詳しい事までは書いてなかったんですけど、なんでも冒険者のカズさんという方が、キウイの案内で、ナツメとグレープを連れ帰って来てる途中だと。半信半疑でしたが、もしかしてと待っていたのですが……本当に良かった。……ありがとうございます。ありがとうございます」
クランベリは、カズの前で深々と頭を下げて、何度も感謝の言葉を言う。
「た、ただいまだにゃ」
「お帰りキウイ。いつも仕送りしてくれてありがとう。お陰で生活も楽になったわ」
「大した事してないにゃ。家族なら当たり前にゃ」
キウイは久しぶりに会ったためか、少しはにかんでいた。
「さぁ入ってゆっくり休んで。カズさんもどうぞ、今日は泊まっていってください」
「いえ俺はここで。やっと再会できたんですから、家族水入らずで」
「そう言わずどうぞ。まだお礼も何もしてないので」
「カズ入って」
「入って入って。今日は皆でごはん食べて、一緒に寝るなの」
「そうだにゃ。今から来た道を戻ると、山の向こうで日が暮れるにゃ。だから今日は泊まってくにゃ」
「キウイまで……(三人を送り届けたら、王都に戻るつもりだったんだけどなぁ)」
「子供達もこう言ってますから、遠慮しないで入ってください」
「あ、はい。それじゃあ、おじゃまします」
カズはナツメとグレープに手を引かれ、キウイには背中を押されて家の中に入った。
皆が椅子に座ると、クランベリが森で採取した薬草を使ったお茶を出した。
そこでカズはクランベリに、ナツメとグレープに会った時からの出来事を話した。
カズの話が終わると、クランベリはカズの前に来て手を取り強く握る。
「ありがとう。ありがとう。ありがとう。カズさんが居なかったら……ありがとう。ありがとう」
「クランベリさん、もう終った事ですし、もう十分ですから」
クランベリの行動を見ていたナツメとグレープは、座っているカズの左右から抱き付く。
「カズありがとう。お家に連れ帰ってくれて」
「ありがとうなのカズ」
それを見ていたキウイは、カズの後ろから手回して抱き付き、カズの耳元でお礼を言う。
「ちょ、ちょっとキウイ」
「恥ずかしがらなくてもいいにゃ。カズにゃんには皆が感謝してるにゃ。にゃちきだってそうだにゃ。ありがとカズにゃん」
「ど、どういたしまして(感謝されるのって、こそばゆいな)」
そのまま数分、カズが動けない状態でいると、家の扉が開いて獣人(犬)の男性が入ってきた。
「今戻った…ぞ……ナツメ? グレープか?」
「お父さん! ぼく帰って来たよ」
「お父さん、お父さん! グレープなの。お家に帰って来たなの」
ナツメとグレープはカズから離れて、家に入ってきた獣人の男性に、勢いよく飛び付いた。
獣人の男性はナツメとグレープを受け止め、強く抱き締めた。
クランベリとキウイもカズから離れ、入ってきた獣人の男性の方へと行く。
「お帰りなさい。あなた」
「クランベリ。モルトの旦那からの連絡は正しかったんだな」
「ええ。それに、ほら」
「ただいまだにゃ」
「キウイ! 少し見ないうちに大きくなったな。もう立派な女性だ」
「そんなにまじまじと見られると恥ずかしいにゃ」
「そ、そうだなすまん。それでそっちの人族」
「こちらの方が、モルトさんの手紙に書いてあったカズさんよ」
「あんたが!」
「初めましてカズです。おじゃましてます」
挨拶をしたカズの手を取り、獣人の男性は頭を下げて感謝をする
「ありがとう。子供達を連れ帰ってくれて」
「あなたそれだけじゃないのよ」
「ん? どうい事だ?」
クランベリがカズから聞いた話を夫に話すと、それを聞いた獣人の男性が、カズに勢いよく抱き締め感謝をする。
「ありがとうカズさん。あんたは恩人だ!」
「そ、それほどでも(結局全員に抱き付かれたよ)」
「あなたくっつき過ぎよ。そろそろ放してあげて」
「おお、すまんカズさん」
「今日はカズさんに泊まってもらうわ」
「勿論だ! ゆっくり旅の疲れを癒してくれ。今日の夕食は豪勢にしよう。子供達が無事帰って来た事と、恩人のカズさんにに腹一杯食べてもらうぞ」
「大丈夫かにゃ? 新年のために買った食料じゃないのかにゃ?」
「なぁに気にするな。また買い出しに行けば良いだけのことさ」
「でもあなた、明後日はもう新年の三日前よ。一日だけじゃ、買い出しに行く時間はないわよ」
「あっ! そうだった。仕方ない、畑から何か取ってこよう」
「ちょっとあんた!」
獣人の男性は走って家を出て行ってしまった。
「ったくもう! カズさんに自己紹介もしないで」
「元気な方ですね」
「旦那の『リブロコ』は騒がしいだけですよ」
「子供達の元気は、お父さん譲りなわけですね」
「元気なのは良いんだけど、人の話を聞かないとこまで似なければ……」
「そ、そうですね。……それでキウイは誰似なの? お祖父さんかお祖母さん?」
「にゃちきは……」
「もう食べ終った?」
「にゃっ! 驚いたにゃ。やけに早かったけど、やっぱり道がふさがって通れなかったかにゃ?」
「確かに立て札に書いてある通り、倒木はあったよ」
「じゃあやっぱり迂回して、遠回りするしかないにゃ」
「大丈夫。倒木は片付けてきたから、もう通れるよ。だから三人が食べ終わったら出発しよう」
「本当かにゃ? カズにゃんが一人で先を見に行ってから、あんまり時間が経ってないにゃ」
「ぁー……たまたま倒木のあった場所が近くだったから、退かしてすぐに戻って来たんだよ」
「そんなこと言って、カズにゃんのことだから、一人で村まで行って戻って来てたりしてにゃ」
「! そ、そんなわけ…」
「にゃ~んて、そんなわけにゃいか。それだと速すぎるにゃ」
「そ、そうだよ。一人で村になんて行かないよ(その手前までは行ったけど)」
「ぼくもうごはん食べた終ったから、早く行こう」
「早く行くなの。お馬さんにがんばって、山道行くなの」
「分かったよ(今はお腹いっぱいごはんを食べるより、早く家に帰りたいか。俺はまだまだ帰れるかどうかも、分からないんだけど)」
「今から行って、日暮れ前には着くと嬉しいんだけどにゃ。少し難しいかにゃ?」
「じゃあコイツ(馬)には、力を出してもらわないと(身体強化を昨日より強めにかけるか。馬が負担にならない程度にして。村に着いたら回復してやらないとな)」
カズは出発前に立て札を抜き、伏せてから馬車を走らせた。(倒木を取り除いため)
身体強化した馬は、山道(やまみち)を物ともせずに上って行く。
暫くすると上っていた山道が、下りになり始めた。
ナツメとグレープは、馬車から身を乗り出し、今にも落ちんばかりでいる。
森の入り口から二日かかると思っていたが、身体強化した馬のお陰で、予定よりも早く村に着くことができる。
山道を下り山を越えると、そこには目的の村があった。
村に入り、通行の邪魔にならない場所に馬車を止めると、ナツメとグレープが急に馬車から飛び降り、一軒の家に向かって走って行った。
ナツメとグレープが家の扉を強く叩くと、獣人(リス)の女性が出てきて、目の前に居る二人を見て驚いていた。
するとその獣人の女性は、大粒の涙を流しながら喜び、ナツメとグレープを強く抱き締めた。
ナツメとグレープも泣きながら、獣人の女性を強く抱き締めた。
「何十日ぶりの再開か。これで俺のやることは終わりだな。おっと、ここまで運んでくれたコイツ(馬)を、回復してやらないと」
カズは【アイテムボックス】から原液の回復薬を出し、野菜に少しかけて馬に食べさせた。
「馬の世話もいいけど、カズにゃんも行くにゃ」
「俺も?」
「色々と説明をしないとならないにゃ」
「ああそうか。分かった(説明することなんか考えてなかった。どこから何を話せばいいんだ?)」
カズとキウイが、ナツメとグレープが向かった一軒の家に足を進めると、家から出てきた獣人の女性が気付き、カズを見て深々とお辞儀をした。
カズはそれに答えるようにして会釈をすると、獣人の女性はカズに近づいてくる。
「初めまして。あなたがカズさんですか? ワタシは二人の母で『クランベリ』です」
「そうですが、どうして俺の名前を!?」
「昨日の朝に、この村出身の冒険者が戻って来たときに、モルトさんからの手紙をだと渡されたんです。そこには行方不明だった、ナツメとグレープが保護されたと」
「そうですか! (いつの間にモルトさんは手紙を?)」
「詳しい事までは書いてなかったんですけど、なんでも冒険者のカズさんという方が、キウイの案内で、ナツメとグレープを連れ帰って来てる途中だと。半信半疑でしたが、もしかしてと待っていたのですが……本当に良かった。……ありがとうございます。ありがとうございます」
クランベリは、カズの前で深々と頭を下げて、何度も感謝の言葉を言う。
「た、ただいまだにゃ」
「お帰りキウイ。いつも仕送りしてくれてありがとう。お陰で生活も楽になったわ」
「大した事してないにゃ。家族なら当たり前にゃ」
キウイは久しぶりに会ったためか、少しはにかんでいた。
「さぁ入ってゆっくり休んで。カズさんもどうぞ、今日は泊まっていってください」
「いえ俺はここで。やっと再会できたんですから、家族水入らずで」
「そう言わずどうぞ。まだお礼も何もしてないので」
「カズ入って」
「入って入って。今日は皆でごはん食べて、一緒に寝るなの」
「そうだにゃ。今から来た道を戻ると、山の向こうで日が暮れるにゃ。だから今日は泊まってくにゃ」
「キウイまで……(三人を送り届けたら、王都に戻るつもりだったんだけどなぁ)」
「子供達もこう言ってますから、遠慮しないで入ってください」
「あ、はい。それじゃあ、おじゃまします」
カズはナツメとグレープに手を引かれ、キウイには背中を押されて家の中に入った。
皆が椅子に座ると、クランベリが森で採取した薬草を使ったお茶を出した。
そこでカズはクランベリに、ナツメとグレープに会った時からの出来事を話した。
カズの話が終わると、クランベリはカズの前に来て手を取り強く握る。
「ありがとう。ありがとう。ありがとう。カズさんが居なかったら……ありがとう。ありがとう」
「クランベリさん、もう終った事ですし、もう十分ですから」
クランベリの行動を見ていたナツメとグレープは、座っているカズの左右から抱き付く。
「カズありがとう。お家に連れ帰ってくれて」
「ありがとうなのカズ」
それを見ていたキウイは、カズの後ろから手回して抱き付き、カズの耳元でお礼を言う。
「ちょ、ちょっとキウイ」
「恥ずかしがらなくてもいいにゃ。カズにゃんには皆が感謝してるにゃ。にゃちきだってそうだにゃ。ありがとカズにゃん」
「ど、どういたしまして(感謝されるのって、こそばゆいな)」
そのまま数分、カズが動けない状態でいると、家の扉が開いて獣人(犬)の男性が入ってきた。
「今戻った…ぞ……ナツメ? グレープか?」
「お父さん! ぼく帰って来たよ」
「お父さん、お父さん! グレープなの。お家に帰って来たなの」
ナツメとグレープはカズから離れて、家に入ってきた獣人の男性に、勢いよく飛び付いた。
獣人の男性はナツメとグレープを受け止め、強く抱き締めた。
クランベリとキウイもカズから離れ、入ってきた獣人の男性の方へと行く。
「お帰りなさい。あなた」
「クランベリ。モルトの旦那からの連絡は正しかったんだな」
「ええ。それに、ほら」
「ただいまだにゃ」
「キウイ! 少し見ないうちに大きくなったな。もう立派な女性だ」
「そんなにまじまじと見られると恥ずかしいにゃ」
「そ、そうだなすまん。それでそっちの人族」
「こちらの方が、モルトさんの手紙に書いてあったカズさんよ」
「あんたが!」
「初めましてカズです。おじゃましてます」
挨拶をしたカズの手を取り、獣人の男性は頭を下げて感謝をする
「ありがとう。子供達を連れ帰ってくれて」
「あなたそれだけじゃないのよ」
「ん? どうい事だ?」
クランベリがカズから聞いた話を夫に話すと、それを聞いた獣人の男性が、カズに勢いよく抱き締め感謝をする。
「ありがとうカズさん。あんたは恩人だ!」
「そ、それほどでも(結局全員に抱き付かれたよ)」
「あなたくっつき過ぎよ。そろそろ放してあげて」
「おお、すまんカズさん」
「今日はカズさんに泊まってもらうわ」
「勿論だ! ゆっくり旅の疲れを癒してくれ。今日の夕食は豪勢にしよう。子供達が無事帰って来た事と、恩人のカズさんにに腹一杯食べてもらうぞ」
「大丈夫かにゃ? 新年のために買った食料じゃないのかにゃ?」
「なぁに気にするな。また買い出しに行けば良いだけのことさ」
「でもあなた、明後日はもう新年の三日前よ。一日だけじゃ、買い出しに行く時間はないわよ」
「あっ! そうだった。仕方ない、畑から何か取ってこよう」
「ちょっとあんた!」
獣人の男性は走って家を出て行ってしまった。
「ったくもう! カズさんに自己紹介もしないで」
「元気な方ですね」
「旦那の『リブロコ』は騒がしいだけですよ」
「子供達の元気は、お父さん譲りなわけですね」
「元気なのは良いんだけど、人の話を聞かないとこまで似なければ……」
「そ、そうですね。……それでキウイは誰似なの? お祖父さんかお祖母さん?」
「にゃちきは……」
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