人生初めての旅先が異世界でした!? ~ 元の世界へ帰る方法探して異世界めぐり、家に帰るまでが旅行です。~(仮)

葵セナ

文字の大きさ
上 下
203 / 801
三章 王都オリーブ編2 周辺地域道中

194 感動の再会 と 喜び と 感謝

しおりを挟む
 一人で山道が通れるか確めに行ってから二十分が過ぎた頃、カズが馬車の止めた所へと戻ってきた。

「もう食べ終った?」

「にゃっ! 驚いたにゃ。やけに早かったけど、やっぱり道がふさがって通れなかったかにゃ?」

「確かに立て札に書いてある通り、倒木はあったよ」

「じゃあやっぱり迂回して、遠回りするしかないにゃ」

「大丈夫。倒木は片付けてきたから、もう通れるよ。だから三人が食べ終わったら出発しよう」

「本当かにゃ? カズにゃんが一人で先を見に行ってから、あんまり時間が経ってないにゃ」

「ぁー……たまたま倒木のあった場所が近くだったから、退かしてすぐに戻って来たんだよ」

「そんなこと言って、カズにゃんのことだから、一人で村まで行って戻って来てたりしてにゃ」

「! そ、そんなわけ…」

「にゃ~んて、そんなわけにゃいか。それだと速すぎるにゃ」

「そ、そうだよ。一人で村になんて行かないよ(その手前までは行ったけど)」

「ぼくもうごはん食べた終ったから、早く行こう」

「早く行くなの。お馬さんにがんばって、山道行くなの」

「分かったよ(今はお腹いっぱいごはんを食べるより、早く家に帰りたいか。俺はまだまだ帰れるかどうかも、分からないんだけど)」

「今から行って、日暮れ前には着くと嬉しいんだけどにゃ。少し難しいかにゃ?」

「じゃあコイツ(馬)には、力を出してもらわないと(身体強化を昨日より強めにかけるか。馬が負担にならない程度にして。村に着いたら回復してやらないとな)」

 カズは出発前に立て札を抜き、伏せてから馬車を走らせた。(倒木を取り除いため)
 身体強化した馬は、山道(やまみち)を物ともせずに上って行く。
 暫くすると上っていた山道が、下りになり始めた。
 ナツメとグレープは、馬車から身を乗り出し、今にも落ちんばかりでいる。
 森の入り口から二日かかると思っていたが、身体強化した馬のお陰で、予定よりも早く村に着くことができる。
 山道を下り山を越えると、そこには目的の村があった。
 村に入り、通行の邪魔にならない場所に馬車を止めると、ナツメとグレープが急に馬車から飛び降り、一軒の家に向かって走って行った。
 ナツメとグレープが家の扉を強く叩くと、獣人(リス)の女性が出てきて、目の前に居る二人を見て驚いていた。
 するとその獣人の女性は、大粒の涙を流しながら喜び、ナツメとグレープを強く抱き締めた。
 ナツメとグレープも泣きながら、獣人の女性を強く抱き締めた。

「何十日ぶりの再開か。これで俺のやることは終わりだな。おっと、ここまで運んでくれたコイツ(馬)を、回復してやらないと」

 カズは【アイテムボックス】から原液の回復薬を出し、野菜に少しかけて馬に食べさせた。

「馬の世話もいいけど、カズにゃんも行くにゃ」

「俺も?」

「色々と説明をしないとならないにゃ」

「ああそうか。分かった(説明することなんか考えてなかった。どこから何を話せばいいんだ?)」

 カズとキウイが、ナツメとグレープが向かった一軒の家に足を進めると、家から出てきた獣人の女性が気付き、カズを見て深々とお辞儀をした。
 カズはそれに答えるようにして会釈をすると、獣人の女性はカズに近づいてくる。

「初めまして。あなたがカズさんですか? ワタシは二人の母で『クランベリ』です」

「そうですが、どうして俺の名前を!?」

「昨日の朝に、この村出身の冒険者が戻って来たときに、モルトさんからの手紙をだと渡されたんです。そこには行方不明だった、ナツメとグレープが保護されたと」

「そうですか! (いつの間にモルトさんは手紙を?)」

「詳しい事までは書いてなかったんですけど、なんでも冒険者のカズさんという方が、キウイの案内で、ナツメとグレープを連れ帰って来てる途中だと。半信半疑でしたが、もしかしてと待っていたのですが……本当に良かった。……ありがとうございます。ありがとうございます」

 クランベリは、カズの前で深々と頭を下げて、何度も感謝の言葉を言う。

「た、ただいまだにゃ」

「お帰りキウイ。いつも仕送りしてくれてありがとう。お陰で生活も楽になったわ」

「大した事してないにゃ。家族なら当たり前にゃ」

 キウイは久しぶりに会ったためか、少しはにかんでいた。

「さぁ入ってゆっくり休んで。カズさんもどうぞ、今日は泊まっていってください」

「いえ俺はここで。やっと再会できたんですから、家族水入らずで」

「そう言わずどうぞ。まだお礼も何もしてないので」

「カズ入って」

「入って入って。今日は皆でごはん食べて、一緒に寝るなの」

「そうだにゃ。今から来た道を戻ると、山の向こうで日が暮れるにゃ。だから今日は泊まってくにゃ」

「キウイまで……(三人を送り届けたら、王都に戻るつもりだったんだけどなぁ)」

「子供達もこう言ってますから、遠慮しないで入ってください」

「あ、はい。それじゃあ、おじゃまします」

 カズはナツメとグレープに手を引かれ、キウイには背中を押されて家の中に入った。
 皆が椅子に座ると、クランベリが森で採取した薬草を使ったお茶を出した。
 そこでカズはクランベリに、ナツメとグレープに会った時からの出来事を話した。
 カズの話が終わると、クランベリはカズの前に来て手を取り強く握る。

「ありがとう。ありがとう。ありがとう。カズさんが居なかったら……ありがとう。ありがとう」

「クランベリさん、もう終った事ですし、もう十分ですから」

 クランベリの行動を見ていたナツメとグレープは、座っているカズの左右から抱き付く。

「カズありがとう。お家に連れ帰ってくれて」

「ありがとうなのカズ」

 それを見ていたキウイは、カズの後ろから手回して抱き付き、カズの耳元でお礼を言う。

「ちょ、ちょっとキウイ」

「恥ずかしがらなくてもいいにゃ。カズにゃんには皆が感謝してるにゃ。にゃちきだってそうだにゃ。ありがとカズにゃん」

「ど、どういたしまして(感謝されるのって、こそばゆいな)」

 そのまま数分、カズが動けない状態でいると、家の扉が開いて獣人(犬)の男性が入ってきた。

「今戻った…ぞ……ナツメ? グレープか?」

「お父さん! ぼく帰って来たよ」

「お父さん、お父さん! グレープなの。お家に帰って来たなの」

 ナツメとグレープはカズから離れて、家に入ってきた獣人の男性に、勢いよく飛び付いた。
 獣人の男性はナツメとグレープを受け止め、強く抱き締めた。
 クランベリとキウイもカズから離れ、入ってきた獣人の男性の方へと行く。

「お帰りなさい。あなた」

「クランベリ。モルトの旦那からの連絡は正しかったんだな」

「ええ。それに、ほら」

「ただいまだにゃ」

「キウイ! 少し見ないうちに大きくなったな。もう立派な女性だ」

「そんなにまじまじと見られると恥ずかしいにゃ」

「そ、そうだなすまん。それでそっちの人族」

「こちらの方が、モルトさんの手紙に書いてあったカズさんよ」

「あんたが!」

「初めましてカズです。おじゃましてます」

 挨拶をしたカズの手を取り、獣人の男性は頭を下げて感謝をする

「ありがとう。子供達を連れ帰ってくれて」

「あなたそれだけじゃないのよ」

「ん? どうい事だ?」

 クランベリがカズから聞いた話を夫に話すと、それを聞いた獣人の男性が、カズに勢いよく抱き締め感謝をする。

「ありがとうカズさん。あんたは恩人だ!」

「そ、それほどでも(結局全員に抱き付かれたよ)」

「あなたくっつき過ぎよ。そろそろ放してあげて」

「おお、すまんカズさん」

「今日はカズさんに泊まってもらうわ」

「勿論だ! ゆっくり旅の疲れを癒してくれ。今日の夕食は豪勢にしよう。子供達が無事帰って来た事と、恩人のカズさんにに腹一杯食べてもらうぞ」

「大丈夫かにゃ? 新年のために買った食料じゃないのかにゃ?」

「なぁに気にするな。また買い出しに行けば良いだけのことさ」

「でもあなた、明後日はもう新年の三日前よ。一日だけじゃ、買い出しに行く時間はないわよ」

「あっ! そうだった。仕方ない、畑から何か取ってこよう」

「ちょっとあんた!」

 獣人の男性は走って家を出て行ってしまった。

「ったくもう! カズさんに自己紹介もしないで」

「元気な方ですね」

「旦那の『リブロコ』は騒がしいだけですよ」

「子供達の元気は、お父さん譲りなわけですね」

「元気なのは良いんだけど、人の話を聞かないとこまで似なければ……」

「そ、そうですね。……それでキウイは誰似なの? お祖父さんかお祖母さん?」

「にゃちきは……」
しおりを挟む
感想 84

あなたにおすすめの小説

スキル盗んで何が悪い!

大都督
ファンタジー
"スキル"それは誰もが欲しがる物 "スキル"それは人が持つには限られた能力 "スキル"それは一人の青年の運命を変えた力  いつのも日常生活をおくる彼、大空三成(オオゾラミツナリ)彼は毎日仕事をし、終われば帰ってゲームをして遊ぶ。そんな毎日を繰り返していた。  本人はこれからも続く生活だと思っていた。  そう、あのゲームを起動させるまでは……  大人気商品ワールドランド、略してWL。  ゲームを始めると指先一つリアルに再現、ゲーマーである主人公は感激と喜び物語を勧めていく。  しかし、突然目の前に現れた女の子に思わぬ言葉を聞かさせる……  女の子の正体は!? このゲームの目的は!?  これからどうするの主人公!  【スキル盗んで何が悪い!】始まります!

異世界召喚されました……断る!

K1-M
ファンタジー
【第3巻 令和3年12月31日】 【第2巻 令和3年 8月25日】 【書籍化 令和3年 3月25日】 会社を辞めて絶賛無職中のおっさん。気が付いたら知らない空間に。空間の主、女神の説明によると、とある異世界の国の召喚魔法によりおっさんが喚ばれてしまったとの事。お約束通りチートをもらって若返ったおっさんの冒険が今始ま『断るっ!』 ※ステータスの毎回表記は序盤のみです。

誰一人帰らない『奈落』に落とされたおっさん、うっかり暗号を解読したら、未知の遺物の使い手になりました!

ミポリオン
ファンタジー
旧題:巻き込まれ召喚されたおっさん、無能で誰一人帰らない場所に追放されるも、超古代文明の暗号を解いて力を手にいれ、楽しく生きていく  高校生達が勇者として召喚される中、1人のただのサラリーマンのおっさんである福菅健吾が巻き込まれて異世界に召喚された。  高校生達は強力なステータスとスキルを獲得したが、おっさんは一般人未満のステータスしかない上に、異世界人の誰もが持っている言語理解しかなかったため、転移装置で誰一人帰ってこない『奈落』に追放されてしまう。  しかし、そこに刻まれた見たこともない文字を、健吾には全て理解する事ができ、強大な超古代文明のアイテムを手に入れる。  召喚者達は気づかなかった。健吾以外の高校生達の通常スキル欄に言語スキルがあり、健吾だけは固有スキルの欄に言語スキルがあった事を。そしてそのスキルが恐るべき力を秘めていることを。 ※カクヨムでも連載しています

神に異世界へ転生させられたので……自由に生きていく

霜月 祈叶 (霜月藍)
ファンタジー
小説漫画アニメではお馴染みの神の失敗で死んだ。 だから異世界で自由に生きていこうと決めた鈴村茉莉。 どう足掻いても異世界のせいかテンプレ発生。ゴブリン、オーク……盗賊。 でも目立ちたくない。目指せフリーダムライフ!

ようこそ異世界へ!うっかりから始まる異世界転生物語

Eunoi
ファンタジー
本来12人が異世界転生だったはずが、神様のうっかりで異世界転生に巻き込まれた主人公。 チート能力をもらえるかと思いきや、予定外だったため、チート能力なし。 その代わりに公爵家子息として異世界転生するも、まさかの没落→島流し。 さぁ、どん底から這い上がろうか そして、少年は流刑地より、王政が当たり前の国家の中で、民主主義国家を樹立することとなる。 少年は英雄への道を歩き始めるのだった。 ※第4章に入る前に、各話の改定作業に入りますので、ご了承ください。

タブレット片手に異世界転移!〜元社畜、ダウンロード→インストールでチート強化しつつ温泉巡り始めます〜

夢・風魔
ファンタジー
一か月の平均残業時間130時間。残業代ゼロ。そんなブラック企業で働いていた葉月悠斗は、巨漢上司が眩暈を起こし倒れた所に居たため圧死した。 不真面目な天使のせいでデスルーラを繰り返すハメになった彼は、輪廻の女神によって1001回目にようやくまともな異世界転移を果たす。 その際、便利アイテムとしてタブレットを貰った。検索機能、収納機能を持ったタブレットで『ダウンロード』『インストール』で徐々に強化されていく悠斗。 彼を「勇者殿」と呼び慕うどうみても美少女な男装エルフと共に、彼は社畜時代に夢見た「温泉巡り」を異世界ですることにした。 異世界の温泉事情もあり、温泉地でいろいろな事件に巻き込まれつつも、彼は社畜時代には無かったポジティブ思考で事件を解決していく!? *小説家になろうでも公開しております。

異世界転生したのだけれど。〜チート隠して、目指せ! のんびり冒険者 (仮)

ひなた
ファンタジー
…どうやら私、神様のミスで死んだようです。 流行りの異世界転生?と内心(神様にモロバレしてたけど)わくわくしてたら案の定! 剣と魔法のファンタジー世界に転生することに。 せっかくだからと魔力多めにもらったら、多すぎた!? オマケに最後の最後にまたもや神様がミス! 世界で自分しかいない特殊個体の猫獣人に なっちゃって!? 規格外すぎて親に捨てられ早2年経ちました。 ……路上生活、そろそろやめたいと思います。 異世界転生わくわくしてたけど ちょっとだけ神様恨みそう。 脱路上生活!がしたかっただけなのに なんで無双してるんだ私???

異世界で家族と新たな生活?!〜ドラゴンの無敵執事も加わり、ニューライフを楽しみます〜

藤*鳳
ファンタジー
 楽しく親子4人で生活していたある日、交通事故にあい命を落とした...はずなんだけど...?? 神様の御好意により新たな世界で新たな人生を歩むことに!!! 冒険あり、魔法あり、魔物や獣人、エルフ、ドワーフなどの多種多様な人達がいる世界で親子4人とその親子を護り生活する世界最強のドラゴン達とのお話です。

処理中です...