人生初めての旅先が異世界でした!? ~ 元の世界へ帰る方法探して異世界めぐり、家に帰るまでが旅行です。~(仮)

葵セナ

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三章 王都オリーブ編2 周辺地域道中

185 ナツメとグレープの姉

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 カズはナツメとグレープに、王都に居ると思われる姉のことを更に聞く。

「ねぇ二人とも、王都にお姉さんが居るって聞いたけど、王都のどこに居るとか、お姉さんの名前は分からないの?」

「……お姉ちゃんて呼んでたから、覚えてない。最後に会ったのずっと前だし」

「お姉ちゃんがいつも遊んでくれて、笑ってたの覚えてるなの」

「二人はお姉さんが王都に居るって、どうして知ってたの?」

「いつも手紙が来ると、お母さんが読んでくれた」

「王都のなんとかで働いてるって、お母さん言ってたなの」

「王都のなんとか……お姉さんの見た目は、どんなかな?」

「ぼくと違う」

「あたしとも違うなの」

「違うか……何かお姉さんの特長はある? 耳が大きいとか、尻尾が長いとか(二人と違うっていうと『犬とリス』の獣人ではないってことか)」

「すご~く元気で、にゃはははって笑ってた」

「にゃははってことは、猫の獣人かな? とは言っても猫の獣人って……」

「ええ、王都に多いわね。それだけだと探すのは難しいわ」

「ですよね(獣人のこと詳しいわけじゃないからなぁ)」

「ねぇねぇカズ」

「ん? どうしたグレープ」

「お姉ちゃん自分のこと、変な風に言ってたなの」

「変?」

「きき…じゃなくて、てき…でもなくて、えーと……! 『ちき』って言ってた」

「ちき……? フローラさん分かります?」

「ちき…チキ……さっぱりだわ」

 カズとフローラが考えあぐねいていると、グレープの話を聞いたナツメが、何かを思い出した。

「ぼく思い出した。お姉ちゃん自分のこと『にゃちき』って言ってた」

「にゃちき! まさかナツメとグレープのお姉さんて、キウイなの?」

「キウイ! そうそれ」

「そう。キウイお姉ちゃんなの!」

「フローラさん、モルトさんは?」

「今日は用事で外出してるわ。夕方には戻るはずよ」

「じゃあ戻ってきたら、あちら(オリーブ・モチヅキ家)に、連絡をとってもらいましょう」

「そうね。モルトに言っておくわ。連絡は早くても明日になるわね」

「手がかりが見つかって良かったです」

「ええ。話はここまでにしましょうか。長い依頼で疲れてるでしょう。今日はゆっくり休むと良いわ」

「そうしま……あ! そういえば俺、宿無しでした。どこか探さないと(ラヴィオリ亭は空いてないかな?)」

「お金はあるんでしょ。だったら少しくらい高い宿にでも泊まったら? 三人なんだから」

「三人? ナツメとグレープはギルドじゃ?」

「二人はどうしたい?」

「カズと行く。ここあの人(イキシア)来るから嫌だ」

「カズと一緒が良いなの。あたしもあの人(イキシア)嫌なの」

「イキシアさんは二人に、何をしたんですかフローラさん?」

「優しく可愛がってあげてたわよ。ただちょっと…ね……」

「あぁ……三人で泊まれる宿探します。見つかればいいんですが(あの変態サブマス)」

「それが良いと思うわ」

「今日泊まる宿屋を探しに行くけど、二人はここで待ってるかい?」

「ぼく行く」

「あたしも行くなの」

「じゃあ行こうか(とりあえず始めに、ラヴィオリ亭に行ってみるか。三人で泊まれる部屋が、あるかも知れないしな)」

 カズはナツメとグレープの二人を連れて、ギルドを出てラヴィオリ亭に向かった。
 大通りを歩いていると、二人はキョロキョロと、あちこちを見ながら楽しそうにしている。

「どこ行ってもスゴい人が多い! それに良い匂いがする」

「あ! あそこのお店に、トレニアが連れてってくれたなの。クッキーが美味しかったなの」

「ほら、よそ見してるとぶつかるぞ」

 ナツメとグレープは食べ物の匂いにつられ、ふらふらと通りを歩いていた。
 はたから見たら訳あり親子か、獣人の子誘拐……いやいや、どちらにしてもダメだ。

「カズどっち?」

「どこ行くなの?」

「そこを曲がって、もう少し行った所の宿屋だけど、泊まれるかはどうかは、行って聞いてみないと分からないよ」

「なら早く行こう」

「お腹空いてきたなの」

「今から行く宿は食堂もやってるから、夕食はそこにしようか。ちょっと味が濃いと思うけど」

「する!」

「何があるか楽しみなの」

 はしゃぐナツメとグレープを、周りの人にぶつからないよう注意しつつ、三人はラヴィオリ亭の前までやって来た。

「ほら二人とも、ここが言った宿屋」

「良い匂いする」

「なの」

 ナツメとグレープに引かれ、カズはラヴィオリ亭の中に入る。

「いらっしゃ! おやカズさんじゃないかい」

「お久しぶりです」

「トレニアさんが自宅に戻ったから、またカズさんが来るかと思ってたんだけど」

「依頼で王都を離れてたもので」

「そうかい。それでそっちの二人は誰だい?」

「こっちがナツメで、こっちがグレープです。依頼で出てたときに保護したので、王都に居る間は、俺が面倒見るんですよ」

「こんにちは」

「こんにちは。なの」

「はい、こんにちは。それで今日はどうした? 部屋を探しにきたのかい? それとも食事か?」

「どちらもですが、三人で泊まられる部屋はありますか?」

「うちの部屋は、二人がせいぜいなんだよ。それに今日は満室でね」

「そうですか」

「すまないねぇ」

「それじゃあ食事だけしたら、他を探しに行きます」

「そうかい。ならそこに座りな」

 ラヴィオリに言われた席に三人は座り、カズはお任せで料理を頼んだ。
 出来た料理は、娘のスピラーレ運んできた。

「お待たせしました。カズさん」

「やぁ」

「その二人は、カズの子供?」

「ブッ! ゴホッゴホッ……なんでそうなるの」

 スピラーレの不意な言葉に、カズは飲んでいた水を吹き出した。

「ちょっとカズさん、何してるの」

「急に変なこと言うから」

「お父さんが『カズは子持ちの獣人と、所帯を持ったのか』って、言ってたから」

「違うよ。この二人は…」

「分かってる。お母さんとの話聞こえてたから。ただちょっと言ってみただけ」

「やっぱりガルガリッネさんと親子だね」

「えー、そんなとこで、お父さんと親子だと思われるの嫌だなぁ」

「それをガルガリッネさんに言ってみたら」

「そんなことしたら、またお父さん落ち込んじゃうよ」

「……また? 前に言ったことあるの?」

「ちょっとね、常連のお客さんに言われてつい……って、そんなこといいから食べて食べて」

「あ、うん。いただきます(あの反応は、結構キツい事言ったのかな)」

「ごゆっくり」

 料理を置いたスピラーレは、厨房に戻っていった。
 スピラーレは父親のガルガリッネとも、あれから仲良くやっているようで、息子のフリッジは厨房で、料理を作る手伝いをしていた。
 カズ達三人は出された料理を食べ終わると、泊まる宿を探すために、ラヴィオリ亭を出た。(料理の味は、それほど濃くなかった)

「さてどうしようか。どこか部屋が空いてれば良いんだけど」

「あっちは?」

「こっちの方がありそうなの」

 大通りへと戻り探すが、どこの宿屋も満室で空いてない。
 見つけたとしても、一人用の狭い部屋だったりと、三人で泊まれる部屋がなかった。
 そうこうしているうちに、辺りは暗くなってしまい、二人が眠そうにあくびをした。

「仕方ないから、ギルドに戻ろうか」

「えー」

「あの人(イキシア)居るから嫌なの」

「う~ん……なんとかするから、今日はギルドに泊めてもらおう。二人とも眠くなってきたでしょ(俺が居ても二人の所に来たら、フローラさんに抗議だな)」

「はーい」

「分かったなの」

 ナツメとグレープを説得して、三人はギルドに戻った。
 ギルドに着くと、仕事が終わったトレニアが、ちょうど帰るところだった。

「あらカズさん、忘れ物ですか?」

「それが、泊まる宿屋が見つからなくて、ナツメとグレープには悪いと思ったんですけど、今日もギルドに泊めてもらおうかと」

「ねぇトレニア、あの人居る?」

「べたべたする人」

「サブマスのイキシアさんかな? (べたべたする?)」

「そう」

「嫌な人なの」

「嫌な人って、二人を可愛がってくれているでしょ」

「トレニアさん、あまり気にしないでください。それで、嫌な…じゃなくてイキシアさんは?」

「夕方出掛けるのを見ましたから、ギルドには居ないはずです」

「良かった」

「居ないなら、ここでも良いなの」

「サブマス嫌われてますね」

「ハハ……(二人とも、少し正直過ぎるな)」

 カズとトレニアは苦笑いをしていた。

「私がフローラ様に言ってきましょうか?」

「トレニアさん帰るとこだったんでしょ。二人を連れて、俺が行きますからいいですよ」

「そうですか。ナツメ君、グレープちゃん、また明日ね」

「じゃあねトレニア」

「また明日会うなの。トレニア」

 トレニアと別れて、三人はフローラの所に行く。
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