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三章 王都オリーブ編2 周辺地域道中

184 連行 と 引き渡し

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「ハーピーを解放したのか」

「はい。仲間の所に帰れるって、とても喜んでました」

「これを機に、人を襲わなければいいんだがな」

「たぶん大丈夫ですよ。話したら、そんな感じには思えなかったので」

「ハーピーの言葉を理解して話せる奴なんて、そうそういないが」

「そうですか。じゃあ、あまり口外しないでください」

「オレはそんなつもりはないが、見ていた奴もいるからな」

「……そのときは、俺が痛い奴ってことで」

「痛い? 怪我でもしたのか」

「いえそうじゃないんですが……まあいいです。それで捕らえた盗賊達は、このあとどうするんですか?」

「王都までは、オレ達冒険者が連行する。そのあと衛兵に、引き渡す手筈になってる」

「保護した皆は?」

「帰る場所が近くの者は、そのまま帰ってもらうつもりだ。帰り方が分からない者は、一度王都まで来てもらい、そこで話を聞いて、帰る手段を探してもらうさ」

「俺も王都まで、護衛と連行をした方が?」

「疲れてるだろうが頼む。何かあったときは、頼りにしてるからな」

「ハハ……(大勢の冒険者が居る所で、目立ちたくはないな)」

「それでな、ちょっとカズに聞きこうと思ったんだが」

「なんです?」

「カズはその……いや、又にする」

「はぁ……(なんなんだ?)」

 保護した者達に食べ物を渡し、皆は落ち着きを取り戻した。
 昼頃になると手配してあった荷馬車が着き、保護した者達を乗せて先に行かせた。
 次に盗賊達を乗せて、王都に向けて出発した。
 数人の冒険者は採掘場で、報告用の資料を作成するために残った。
 カズは一番後方の荷馬車に乗り、捕らえた盗賊の監視をする。
 王都に続く道に出た頃、隠れた集落からも、捕らえた盗賊を乗せた荷馬車やって来て合流した。
 その盗賊の中に、カズ達を騙し採掘場に送ったアヒチーノも、しっかり捕らえられていた。


 ≪ 捕らえた盗賊を乗せた荷馬車が、採掘場を出て五日目の昼 ≫


 捕らえた盗賊を乗せた荷馬車は、ついに王都の北側に到着した。
 そこには多くの衛兵が、盗賊を連行するために待機していた。
 今回の盗賊討伐に参加した冒険者の代表アイガーが、盗賊達を衛兵に引き渡す話をしに行った。
 主犯の一人であるアヒチーノは、別に連行されて行き、他の盗賊達は牢屋へと連れて行かれた。
 アイガーと数人の冒険者は、衛兵と共に連行するアヒチーノに付いて行った。
 他の冒険者達は依頼終了とのことで解散して、自分が拠点登録しているギルドに戻って行く。
 登録ギルドが離れた場所の冒険者達は、現在地から一番近い、王都の北西にある第9ギルドに行き、そこから王都内の冒険者ギルドを繋ぐ転移水晶で戻って行った。
 カズも同じく転移水晶で、第2ギルドに戻った。
 第2ギルドに戻ったカズは、そのままギルマスの部屋に行く。

「ただいま戻りました」

「戻ったのね。お疲れ様」

「王都内の方はどうなりましたか? 手紙のやり取りでは、あまり書いてませんでしたが。アイガーさんには、聞いてる時間が無かったので」

「カズさんが潜入している間に、各ギルドの内部調査は終わったわ。盗賊の仲間だったり、繋がりのある人達は判明したわ。ただ一部を人達除いて、他は捕まえてあります」

「一部? 全員じゃないんですか?」

「今回の事とは関係ないけど、怪しいと思える人達は、ひそかに監視を付けてあるのよ」

「そういう事ですか」

「盗賊の取り調べが終わったら、カズさんにも報告するわね。話せる事は限られるけど」

「分かりました。それで、ナツメとグレープはどうしましたか? 俺がフローラさんに頼んでから、あの二人が帰る場所とか分かりましたか?」

「それがね……よく分からないのよ。なんでも王都に、お姉さんが居るみたいなんだけど」

「王都と言っても広いですからねぇ。それで二人は?」

「今はトレニアが連れて、外に行ってるわ」

「トレニアさんが?」

「最初はモルトとイキシアに頼んだんだけど、二人がイキシアになつかなくて。そしたら、トレニアが手伝うって言ってくれたの『カズさんが連れてきたなら、お世話になった恩返しを』って」

「それでトレニアさんが」

「ええ。お陰で助かってるわ」

 ナツメとグレープが元気そうで良かったと、カズが安心していたとき、部屋の扉が勢いよく開いた。

「ただいまー!」

「戻ってきたなの!」

「二人ともノックをしてから、静かに入るって言ったでしょ」

 扉を勢いよく開けて、ナツメとグレープが入ってきた。
 その後ろからトレニアが、二人を注意をして部屋に入ってきた。

「申し訳ありません。フローラ様」

「良いのよ。ご苦労様」

「二人の面倒見てくれて、ありがとうございます。トレニアさん」

「誰か居る?」

「誰なの?」

「カズさん! 戻られたんですね」

「ええ。ついさっき」

「トレニアありがとう。カズさんも戻ってきたし、後はこちらで二人を見るから、受付の仕事に戻っていいわよ」

「分かりました。二人ともまたね」

「またねぇー」

「また一緒に遊ぶなの」

 トレニアはギルマスの部屋を出て、受付の仕事に戻った。

「ナツメとグレープは、やっぱり分からないかしらね?」

「フローラさん、それは仕方ないですよ。姿が違いますから」

「ぼくどっかで会った気がする」

「優しい匂いがするなの……ルア?」

「そうルア……あれでも違う?」

「見た目は違うけどルアなの! 絶対そうなの!」

「カズさん見せてあげたら。今ここには、私達四人だけだから」

「その方が説明するのに早いですね〈メタモルフォーゼ〉」

 カズはメタモルフォーゼを使い、潜入調査していたときの、茶髪て小太りの姿になった。
 その姿を見たナツメとグレープは、驚いていたが、すぐカズにくっついた。

「やっぱりルアだ!」

「わーい、ルアなの!」

「カズさん好かれてるのね」

「採掘場に居るときは、ずっと一緒でしたから」

「カズ? ルアじゃないの?」

「ルアなの。違うの?」

「ルアはこの姿のときの名前で…」

 カズはメタモルフォーゼの効果を解いて、元の姿に戻った。

「元の、この姿がカズって言うんだ」

「じゃあカズ!」

「分かったカズなの!」

「そうカズ。よろしく」

「二人とも分かってくれたようで、良かったわねカズさん」

「はい」

「ナツメくぅ~ん、グレープちゃ~んお帰り。お姉さんが遊んであげるわよ~」

 不意に部屋の扉が開き、イキシアが笑顔で入ってきた。
 それを見たカズは、背筋がゾ~っとした。

「うわっ!」

「カズカズ、あの人もう嫌なの!」

 ナツメとグレープが、カズの後ろに隠れる。

「あ……戻ってきたのカズ」

「ついさっき(女性だけじゃなくて、子供にも……大丈夫かこのギルドは?)」

「カズはまだ報告が残ってるでしょ。仕方がないから報告が終わるまで『ワタシ』が、二人の面倒を見ててあげるわ。さぁお姉さんの部屋に行きましょう」

「ぼくここに居る」

「この人すぐにスリスリするから嫌なの」

「スリスリなんて、ちょこっとだけ……そんなことしないから。グレープちゃんだけでも行きましょう」

「嫌っ! カズと一緒に居るなの」

「そんなぁ~(またしてもカズ!)」

 悲しそうな顔をしたイキシアは、一瞬カズを睨みつけた。

「ハァ……イキシア、部屋に戻って仕事して。まだ取り調べをしたときの報告書が来てないわよ」

「は…い……」

 イキシアは背中を丸めて、とぼとぼと部屋を出て、自室に戻っていった。
 それを見たフローラは、頭をかかえていた。

「サブマス変えた方が、良いんじゃないですか?」

「私も最近そう思えてきたわ」

 苦笑いをするカズとフローラ。

「ところで二人は、ギルドで寝泊まりしてるんですか?」

「そうよ。その方が誰かしら、面倒が見れるからね」

「あとは二人の帰る場所か……ナツメとグレープは、どこから連れてこられたの?」

「村の近くの森の中だと思う」

「薬草探してたなの」

「村の近くの森の中か……村の名前は分かるかい?」

 ナツメは首を横に振った。
 それを見ていたグレープも同じく、首を横に振った。

「私が聞いた時と同じ答えね」

「そうですか……」
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