人生初めての旅先が異世界でした!? ~ 元の世界へ帰る方法探して異世界めぐり、家に帰るまでが旅行です。~(仮)

葵セナ

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三章 王都オリーブ編2 周辺地域道中

181 潜入調査 5 作戦の連絡

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 ≪ ルア(カズ)が採掘場に連れて来られてから十八日目の夜 ≫


 ルア(カズ)が採掘場内を調べ始めてから 八日が経ち、フローラからの手紙に『この採掘場と隠れた集落を同時に攻める』と書いてあった。
 日時は二日後の夜明けに、同時に攻め込むとのことだ。
 前日の夜中に、ルア(カズ)は盗賊達の状況を説明するために、採掘場の近くで待機している冒険者達に、連絡するようにと指示があった。
 手紙の内容を見たルア(カズ)は、連絡をやり取りする手紙に、作戦当日に行動を起こす前に『ナツメとグレープをフローラさんの所に連れて行く』と書いて、手紙をギルマス専用資料室にゲートを使い置いてきた。


 ◇◆◇◆◇

 盗賊討伐作戦の前日


「ルアおはよう」

「ルア朝なの」

「おはよう。ナツメとグレープは今日も元気だな」

「ぼく元気!」

「あたしも元気なの!」

「こんな所でも、子供らの元気な姿を見てると、こっちまで元気になるのぉ。せめてこの子らだけでも、親元に帰してやりたいもんじゃな」

「同感だね(明日成功すればナツメとグレープだけじゃなくて、皆が自由になれる。もちろんホーベルだって)」

「おら飯だぞ出て来い!」

 穴の外から四人を呼ぶ盗賊の声がした。
 盗賊が朝食を持ってきたが、今回はいつもと違い、一人にパンが3個と量が多かった。
 ルア(カズ)とホーベルは、なぜかと思っていたが、その答えはすぐに分かった。

「ありがたく思え。今日来てる貴族様からのお恵みだ。それを持って、今日は穴の奥で食え。貴族様に汚れたお前らを見せるわけにも、見させるわけにもいかねぇんだ。とっとと持って奥に行け」

 四人は渡された食べ物を持って、穴の奥に入って行った。

「盗賊が貴族と言っていたけど、ホーベルは誰が来てるか知ってるか?」

「おそらく隣の国から来た貴族じゃないかのぉ」

「隣の国から? 何でだ?」

「隣の国と言っても、そんなに遠くはない北にある国なんじゃが、十数年前まで国内が安定してなかったらしくて、貴族の立場も追い込まれたようなんじゃ。今ではかなり貴族が減ったらしいんじゃよ」

「ホーベルは、北にある国に詳しいのか?」

「詳しいって程ではない。ただワシはもともと採掘の仕事をしていたもんじゃから、国など関係なしに、いらいろと各地を巡っていたもんで、知っていただけなんじゃよ」

「どうりでホーベルの居たこの穴は、崩れないように掘り進めてあると思ったよ」

「それができんと危険じゃし、崩れて生埋めになるようじゃ仕事にならんからのぉ」

「それもそうだな。ホーベルはここを出られたら、また採掘の仕事をするのか?」

「ワシにはそれしかできんからのぉ。じゃがそれは、出ることができたらの話じゃな」

「きっと出れるさ。この子達も自由になれなきゃ」

「希望をもつのは良いことじゃ。諦めずにいれば、きっとここを出られるじゃろ」

「ああ(俺が調べたなかにも、貴族と繋がっていたのは分かっていたが、このタイミングでこの場所にやって来るとは……。この盗賊連中の黒幕って可能性もあるから、絶対な捕らえないと。明日の朝まで居るかどうかだ」

 朝食を終えた四人は、いつもと同じ作業に取りかかり、何事もなく時間は過ぎ夕方になった。
 夕食はいつもと同じで、パン1個と干し肉が少しだけ、いつもと変わらないように、食べ物を盗賊から受け取る。
 すると食べ物を持ってきた盗賊は、またも穴の奥に行けと言ってきた。
 まだこの鉱山に貴族が居ると、ルア(カズ)は確信した。

「ところでホーベルは、王都に行ったことはある?」

「なんじゃ急に?」

「王都に知り合いでも居るかと思ってさ」

「どうじゃろか。王都には数回行ったことがあるが、これといった知り合いが居るわけじゃないのぉ。じゃが王都は広いから、知り合いに出会すかも知れんが」

「知り合いが居る街とかはないのか?」

「知り合いか……そうじゃ! アヴァランチェなら知り合いがおる。ワシと同じドワーフが、仕事場を作っておるからのぉ」

「アヴァランチェのドワーフ…確か……鍛治屋組合だったか?」

「なんじゃ知っておるのか」

「俺もアヴァランチェに、少し居たことがあってさ」

「そうか。もしここを出ることができたら、アヴァランチェに腰を据えて、採掘の仕事でもするかのぉ」

「それは良いかも知れないな(鉄鉱石採取の依頼を受ける冒険者は、少ないようだったからな)」

「ねぇルア」

「どうした?」

「ぼくもう寝い」

「今日も疲れたね。寝て良いよ」

「ナツメが寝るなら、あたしも寝る」

「おやすみルア。グレープ寝よう」

「うん。ルアおやすみ。ホーベルもおやすみ」

「ああ、おやすみ。ゆっくり寝るんじゃぞ」

「二人ともおやすみ(次に起きたときは、安全な所に居るからな)」

「ワシらも今夜は早く寝るとするか」

「その前に、ホーベルに話しておくことがある」

 ルア(カズ)はここに連れて来られてから世話になったホーベルに、明日起きる事を話し、ナツメとグレープを夜のうちに安全な所に連れて行くと言った。

「本当に奴らに見つからずに、安全な場所に連れて行けるのか? 二人は寝てしまっとるじゃないか。もし見つかったら大変じゃぞ」

「二人は、このまま連れて行くから大丈夫。見つからずに、ここを出る手段はあるから」

「いつの間に、そんな所を見つけたんじゃ」

「まあそこは…いろいろと」

「ルアは変わっとるのぉ。いったい何者なんじゃ?」

「ただの旅をしている冒険者(ってことになってる。今は)」

「それで本当に信じて良いのか? 冒険者達が明日の朝に攻め込んで、ワシらを解放してくれるのを? もしそうだとしたら、ワシも戦った方が?」

「いや、ここで働かされてる人達は、攻め込んで来た冒険者が保護をすることになってる」

「……分かった。ワシはルア(カズ)を信じるぞ」

「ありがとうホーベル。とりあえず朝までは時間があるから、いつも通り寝る方が良い」

「そうじゃな」

「それと夜明け前に俺と子供達が居ないことを、盗賊連中に気付かれそうになったら、なんとか誤魔化してくれ」

「よしきた」

 ホーベルに翌日のことを話し終え、ルア(カズ)は仮眠をとることにした。


 ◇◆◇◆◇

 盗賊討伐作戦の当日


 夜が明ける二時間ほど前に、仮眠から目を覚めした俺は【アイテムボックス】からアーティファクトの古書と『広がる錆』と書かれたトレカを出して使い、腕にはめられている枷を破壊した。
 そしてすぐにアーティファクトの古書で、使用したトレカの効果と同じような魔法が、新たに表示されたか確認をした。(似たような効果の魔法が表示されていたのを確認した)
 そして新たな魔法で、ナツメとグレープの首にはめられてる枷を破壊した俺は、王都の第2ギルドにある、ギルマス専用資料室に〈ゲート〉を繋げた。
 寝ているナツメを先に連れて行き、次にグレープを抱き抱えてゲートを通り移動した。
 すると資料室の扉は開いており、そこにはフローラが待っていた。
 手紙で知らせてあったので、待ってくれていたようだった。
 俺は〈クリーン〉を使い、三人の汚れた身体と衣服をキレイにて清潔にした。

「その子達が手紙に書いてあった、獣人の子供ですね」

「はい。今はぐっすり寝ていますが、起きたら驚くと思いますから、説明してあげてください。あと食事をお願いします」

「分かったわ。そこのソファーに寝かせて。この子達が起きたら、お腹いっぱい食べさせてあげるから」

「それじゃあ、俺戻ります。盗賊達の状況を、待機してる冒険者に伝えますから」

「変装したまま戻るの?」

「おっと、ずっとこの姿だったので忘れてました。向こうに戻ったら、元の姿に戻りますよ」

「いいカズさん。日が昇ると同時に、隠れた集落の方にも攻める手はずになってるから、時間には気を付けて」

「了解です。それと新たに情報がありまして、盗賊が話していたのを聞いたんですが、どこかの貴族が昨日から来ているようなんです」

「それは良い報告だわ。絶対に逃がさないで、できるなら無傷で捕らえて」

「分かりました。捕まえた後のことは、ギルドの方でお願いします」

「ええ。それと採掘場の方に行った冒険者は、アイガーがまとめてるから、盗賊の状況は彼に言って」

「はい(アイガーさんか。そらならわざわざ自己紹介しなくても、話を聞いてくれそうだな)」





 ≪トレーディングカード説明≫

 ・今回使用したトレカ。
 ・実際に書かれているレア度と名前と効果。
 ・コストは《》内に表示。
 ・主人公の持つトレカの種類は複数あるため、コストや効果の表示が違う物もある。(モンスターとクリーチャーの表記の違い等)


 R《青・緑・2》【広がる錆】: クリーチャーに付いているカード1枚を破壊する。
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