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三章 王都オリーブ編2 周辺地域道中

175 閑散とした村々

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 五つの属性が使えて、更に三つ以上の属性を同時に使う必要があるから『特殊魔法』に分類されているということか。
 俺が特殊魔法を見たのは、白真が使った獣魔契約以来だ。
 使用する為の条件が厳しいから、使える者は少ないのだろう。
 使用属性の適正があっても、同時に三つ以上の属性が使えないから、アレナリアはメタモルフォーゼを使わずに、イリュージョンを使って姿を変えてたんだろう。(メタモルフォーゼの魔法を知っていたかは、分からないけど)
 目的の盗賊が現れた国境近くの村に入る前に、変装…じゃなくて変身後の姿を決めておかないと。


 カズは国境近くの村に続く道を進みながら、なるべく目立たないような背格好で、何処にでも居そうな冒険者の姿を考える。
 変える姿を決めることが出来ずに、歩き続けること三時間弱、カズが道の先に目的の村が見えてきた。


 俺は辺りに人が居ないのを確め〈メタモルフォーゼ〉を使い姿を変えた。
 手鏡でもあればと思ったが、そんな物は持ってないので【アイテムボックス】からスマホを取り出し、黒い画面に自分の顔を映して変身出来たかを確認し、スマホをしまった。
 一応設定としては、各地で依頼を受けながら旅をしている、茶髪で小太りの、Cランク冒険者ということにした。
 あまり細かく決めると、ボロが出ると思ったから、何処にでも居そうな冒険者という設定にした。
 気を付けるのは、アイテムボックスを使えると知られないことだ。


 ≪ゲートを使いギルドを出てから一ヶ所目の村≫(国境近くの盗賊に襲われた村)


 カズは村へと入って、散策しながら宿を探した。
 村の中を歩いていると、盗賊に襲われたと思われる建物は、扉や壁が破壊されており、そこに住む人の姿はなかった。
 そして一軒だけあった宿屋を見付けたカズは、情報を得る事が出来ればと思い、そこで一泊することにして中に入った。
 入ったすぐの所に宿屋の主人が居たが、カズの姿を見ると少し嫌そうな顔をした。

「行商人じゃないようだが」

「ええ。旅をしてる冒険者です」

「冒険者……泊まりたいのか?」

「はい。一泊で良いんですけど(宿屋に客が来たんだから、そりゃあ泊まるからだろ)」

 宿屋の主人もそうだったが、ここに来るまですれ違った村人達も、明らかにカズを警戒していた。
 それでも認識阻害の効果があるマントを羽織っていた為に、接近しなければ気付かれることはあまりなかった。
 宿屋の主人は少し渋った様子だったが、自分の生活もあるので、カズを泊めることを了承した。
 ただし冒険者と聞いたので、ギルドカードの提示と、料金の前払いを要求してきた。
 宿代は一泊で銀貨八枚(8,000GL)と割高だった。
 カズはギルドカードを宿屋の主人に見せて、宿代を払った。
 すると宿屋の主人は、少しは安心した様子だった。
 カズは依頼とはいえ、フェイクで誤魔化したギルドカードを見せたので、若干の罪悪感があった。
 宿屋の主人に、この村が盗賊に襲われた事を聞くと、表顔を強張らせた。
 カズはこの先にある村や町で、危険な所はないかと尋ねて、そっと銀貨五枚(5,000GL)を渡した。
 すると宿屋の主人は、小声でヒソヒソと話し出した。

「二つ先の村に、それらしい連中が居るかも知れないぞ」

「二つ先の村ですか?」

「この前来た旅の者から聞いた。誰にも言うなよ」

「ええ」

 カズは追加で銀貨二枚(2,000GL)を渡し、泊まる部屋へと移動した。
 カズは部屋で食事を済ませたあと〈アラーム〉の魔法を使用して寝た。


 ◇◆◇◆◇


 翌朝起きてすぐに、カズは自分の姿を確認した。
 メタモルフォーゼの効果は続いてるようで、元の姿には戻ってなかった。
 カズが宿屋の主人に挨拶をして、宿から出て行こうとすると『ギルドカードを持たない冒険者に会ったら気を付けろ』と言われた。
 カズは宿屋の主人が言っていた、二つ先の村を目指しこの村を出た。
 二つ先の村は、国境がある場所から少し離れた所にあるらしいが、歩いて一日も掛からない距離に国境があるので、国をまたいで逃げるのなら、冒険者崩れや盗賊が潜伏していても、おかしくはない場所だと思われる。
 盗賊に襲われた村を出てから半日程歩くと、カズは次の村目前までやって来ていた。


 ≪二ヶ所目の村≫(一ヶ所目の村で盗賊らきし者が居ると言われた、一つ前の村)


 ここの村人達も、外から来た者を警戒している様な雰囲気を漂わせている。
 カズは情報を得る為に、食事が取れそうな場所を探し、見付けた一軒の店に入った。
 パンやスープ等の簡単な物ばかりだったが、王都や他の町に比べると、少し割高だった。
 それとなく店の人に盗賊の事を聞いたが、やはり口をつぐみ、何も話そうとしない。
 カズが店を出る時に、小声で早く村から出てってくれと言われた。
 どうやらこの村に、盗賊か冒険者崩れが来ているようだとカズが思った。
 この村で情報収集するのを止め、カズはすぐに次の村に向かって出発した。
 日が暮れて来たが次の村にはまだ着かないので、カズは道から少しそれた林の中で、夜を明かすことにした。


 今日はここで野宿だけど、誰も居ないからトレカ(隔離された秘密部屋)を使って、その中で休すもう。
 そうすれば盗賊とかに、鉢合わせする事はないからな。
 取りあえず【マップ】で確認してと……大丈夫そうだから、トレカ(隔離された秘密部屋)を使って早く中に入ろう。


 カズは『隔離された秘密部屋』のトレカを使用して、現れた扉から中の別空間に入った。


 昨日今日と二ヶ所の村に行ったが、大した情報は掴めなかったなぁ。
 小さな村の中を、ウロウロと歩き回るとさすがに目立つから。
 次の村で盗賊が潜伏していれば、何にかしら進展するだろう。
 まあ姿は変えたし、ギルドカードもフェイクで誤魔化してるから、怪しまれたりしても、個人を特定されることはないだろう。
 しかし隠密行動たって、どう動いたらいいのやら。
 映画や時代劇のように屋根裏に忍び込む…なんて事が出来る建物でもないし。
 映画に時代劇かぁ……アニメに特撮も長いこと見てない。
 いつになったら俺は、元の世界に帰れるんだろう。
 今考えても仕方ない、取りあえず依頼を無事終わらせて、フローラさんのダンジョン情報に期待だ。
 明日には盗賊が潜伏してると思われる村に着くから、あとはどうやって情報を得るかだが……駄目だ思いつかん。
 取りあえず腹へったから、なんか食べよう。
 そうだ! ギルドに報告…って言っても、盗賊や冒険者崩れらしき人物も見てないし、次の村で潜伏しているかもまだ確定してないから、報告するのは明日着く村を見てからだ。
 二ヶ所目の村も、確実に盗賊が来ているとは言えないし、明日まとめて報告だ。
 今回の依頼で、役立ちそうなトレカでもあれば良いんだけど、そんな物は無いし、この世界の魔法に関しても、そこまで詳しく知らないから。
 俺が持ってるアーティファクト(遺物)の古書に書いてあったのは、初期に覚える簡単な魔法か、今は使われてない重力魔法や、空間転移の魔法だったしなぁ。
 今の時代にあった魔法が、書いてあれば良かったのに。
 まぁ今はトレカを使った影響で、色々と使える魔法は増えたんだけどさ。
 今度フローラさんに聞いて……いや、やっぱりやめよう。(根掘り葉掘り聞かれたら面倒だ)
 あとは明日の朝起きたら、メタモルフォーゼの効果が切れて、元の姿に戻ってるかどうかだ。(いつまで持続するのか、分からないからな)


 ◇◆◇◆◇


 翌朝カズは目覚めてすぐに、自分の姿を確認した。
 しかし元の姿に戻っておらず、まだメタモルフォーゼの効果は持続していた。
 軽い朝食を済ませたカズは、マントを羽織り『隔離された秘密部屋』のトレカで作られた空間から外に出た。
 【マップ】の範囲を広げ、次に向かう村が表示されているのを確認した。
 いつの間にか、マップの表示出来る範囲が、格段に広がっていた。
 今では、50㎞以上先まで表示が出来る。
 しかし訪れていない場所は、変わらず何も表示されていない。
 目視さえ出来れば、すぐに表示されるので、それほど困る訳ではなかった。
 カズは一晩過ごした場所から、村に続く道に戻って先へ進む。
 この日は誰ともすれ違うことなく、次の村付近までやって来た。


 ≪三ヶ所目の村≫(盗賊が潜伏してる可能性があると情報があった村)


 カズが村に入ると、外に出ていた村人は家の中に入り、誰も出てこようとしなかった。
 村に入ったカズは、宿屋か酒場のような所を探して村の中を歩き回ったが、一軒もそれらしき建物は見付からなかった。
 【マップ】を見て確認をすると、やはり村人は家の中に閉じこもっていた。
 それを見たカズは、一度村を出ることにして、元来た道を戻る。 
 そしてカズが村を出て、やって来た道を戻っていると、離れて後をつけてくる二人の人物がいた。
 村から2㎞程離れた頃、後方からつけてきた二人がカズに近付いて来た。
 一人が前方に回り込み、もう一人が後方にと、カズを挟むようにして姿を見せた。
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