上 下
176 / 770
三章 王都オリーブ編2 周辺地域道中

167 危険なモンスターはお喋り!?

しおりを挟む
 二体のロックバードを倒し、残りはラスラが相手をしている一番大きな一体だけとなった。
 カズと人狼姿のアイガーは、ラスラの元に駆け寄る。
 ラスラはカズから渡された『ユグドラシルの枝杖』を使い、上空のロックバードに遠距離攻撃をして、近付けないように奮闘していた。

「待たせたなラスラ。向こうのロックバードは倒したぞ」

「そっちのロックバードを倒すまで、なんとか持ち堪えたわ」

「お疲れラスラ。それで上空のロックバードは、どんな状態だ?」

「近付けないように攻撃を続けたけど、直撃しても距離があるから、効き目は薄いわね」

「魔法を使い続けて疲れたでしょう。ラスラさんは少し休んでください」

「ええそうするわ。でも私だけじゃなくて、二人も疲れてるでしょうから、少し座って休みましょう。ロックバードは、私が監視してるから」

「そうですね。それじゃあ、降下して来るまで少し待ちますか」

「そうだな。それで残りのアイツは、前の二体よりも強いんだよな」

「はい。レベルは57で、今倒した奴よりも強いです」

「なら確実に、鳴き声で攻撃してくるか!」

「ロックバードの攻撃スキルで『振動波』って言うらしいです(まんまのスキル名だよな)」

「それで実際のところ少し休んだら、二人はまだ戦えるかしら?」

「俺は大丈夫です。さっきの一体はアイガーさんが倒してくれましたから」

「オレもこの姿になったからな、まだ余力はある。が、さすがにキツいな。しかもこんな時に限って、愛用の武器を修理に出してるなんて。それでラスラはどうなんだ? 魔力をかなり消費したろ? 少し休んだらいけそうなのか?」

「ええ大丈夫よ。この杖を使ったお陰で、魔力にはまだ余裕があるから」

「細く短い杖だな。よくそんなので、アイツを近付けないようにする、攻撃魔法が使えたな」

「見た目と違って凄いわよ。カズさんはどこからこんな物を入手したのかしら?」

「それもカズが出した物か!? だったら納得だな。オレもさっき剣を借りてな、かなりの物だったぞ」

「……変ね?」

「どうしたラスラ」

「ロックバードが私達の方に向かって来るどころか、下降すらしてこないわ」

 ロックバードを監視していたラスラの言葉で、カズとアイガーも上空に目を向ける。

「本当だな。どういう事だ?」

「こっちを見てない様ですね(マップを見ても、ロックバードが見てる方には、獣の反応が数ヶ所出てるけど、これは関係ないだろうし)」

 アイガーとラスラは、ロックバードが向いている方向に意識を向けた。
 そしてカズは【マップ】の範囲を広げ、遠くの方にモンスター反応があり、それが近付いて来るのを知った。
 それもかなりのスピードで。

「南の方から、何かが来るわね」

「ああ。それもかなりヤバそうな気配を感じる」

 三人が新たなモンスターの接近に気付くと、上空を飛んでいたロックバードが大きく鳴き声を上げながら、南の方から来るモンスターに向かって行った。
 ロックバードの姿が上空から見えなくなった直後に、今まで聞こえていた鳴き声が消え、そして次の瞬間、大きな塊が草原へと落ちてきた。
 草原の一角が陥没して、土煙が舞い上がる。

「キャ!」

「な、なんだ?」

「冷たっ!」

 舞い上がった土煙のが薄くなり、そこで三人が見た物は、先程まで上空を飛んでいたロックバードだった。
 不可思議な事に、ロックバードは完全に凍っていた。

「えっ? これってまさか!?」

「新たに気配が現れた方へ、飛んでいったロックバードだよな!?」

 三人は凍って落ちてきたロックバードに近付いて行く。

「どうなってるんだ? 見えなくなったと思ったら、凍って落ちてきやがった」

「とても強力な氷結魔法を受けたとしか思えないわ。でもロックバードの巨体を一瞬で凍らせる魔法なんて……」

「どっかで……」(ボソッ)

 アイガーとラスラが凍った状態のロックバードを見て呆然とし、カズが何かを思い出しそうとしていると、三人の上空に大きな影か現れた。

「おとなしく飛び去れば良いものを、己が力量で向かって来るからそうなるのだ。若造が調子に乗るりおって、我に勝てるとでも思うたか」

 アイガーとラスラは、上空に現れた声のする方を見て更に驚愕した。

「あの『白い巨体』で『人の言葉』を話すモンスター……間違いない!! なんでここに奴が居るんだ?」

「ウソっ!! 王都より南にある雪山に居るはずでしょ。なんで『白き災害』が!」

「白き…災害……!! (白真がなんで居るんだ! ヤバイ念話を使って、俺に話し掛けないように言わないと!)」

 上空に現れた新たなモンスターは『白き災害』と呼ばれている、フロストドラゴンの白真だった。
 白真は地上に居る三人に気付き、その内一人が獣魔契約をし、従属しているカズだと気付くと、主(カズ)の元へ近付いて行く。
 カズが念話を使い、アイガーとラスラに気付かれないよう、白真に話し掛けようとするが一歩遅かった。

「カズではないか! こんな所で何をしておる?」

「!! カズ? こんな所? はぁ??」

「!! えっ? 何? どういう事??」

「あのバカ! (俺一人じゃないんだぞ!)」(ボソッ)

「どうしたカズ。我を忘れた訳ではあるまい」

「アイガーさんラスラさん、なんかこの白い奴、何か勘違いしている見たいですね。早くここから離れましょう」

「でもカズって言ったぞ!」

「聞き違いですよ」

「私もカズさんを呼ぶの聞いたわよ」

「お二人共動揺して、聞き違えたんですよ。さぁ早くここから離れま…」

「何を言ってるのだカズ。主を忘れるような我ではないぞ!」

「カズが主?」

「えっ? 本当なのカズさん!?」

「いや違いま…」

「そこの二人、我の言葉を疑うのか? カズは我を負かし主となったのだ!」

「はっ? フロストドラゴンを!」

「白き災害に勝って主となったですって!!」

 カズは頭を抱えこみ、ついに怒りが込み上げた。

「白真お前なぁ、俺一人じゃないんだから、念話使って話せよ! なんとか誤魔化そうとしてたのに、ペラペラと話しやがって!」

「ちょ、ちょっとカズさん」

「しかもギルマスの前で言いやがって!」

「カズさ……えっ!? 今なんて? ちょっとカズさん……カズってば!」

「!!  な、なんですかラスラさん」

「今、私の事を指してギルマスって言ったわよね」

「ぁ……(イラついていたとはいえ、これじゃあ白真と同じじゃないか)」

「どういう事か説明してくれるんでしょ。私のステータスは、この依頼が終わるまで見ないって言ったわよね!」

 ラスラがカズに詰め寄る。

「あ、いや、その……たまたま偶然」

「まあ二人共落ち着け。取りあえずオレ達は、襲われる事はないんだろカズ?」

「は、はい。大丈夫です」

「そうか良かった。三体目のロックバードだけでもキツかったのに、フロストドラゴンを相手になんてしたら、オレもああなっていた(凍り付いたロックバード)だろうからな」

「それでカズさん、説明してくれるかしら?」

「そうだな。この状況とラスラの質問だが、オレ達にも分かるように説明してくれるかカズ」

「分かりました。二人を見てきて信用出来ると思いましたので、依頼の帰りにでも、俺の事(一部)話そうかと思ってましたから」


 そしてカズは話し始めた。
 先ずラスラのステータスを見た事に関してだが、バンブースネークを倒しに離れた時に、上空を旋回してた二体のロックバードも分析して調べた際に、二人がロックバードを相手に出来るかどうか調べたと。
 二人のステータスを見て、アイガーがワーウルフで、ラスラが第2ギルドのギルマスだと知った。
 ワーウルフに関しては見た事がないので、アイガーの姿が変わった事により意味が分かったと言った。
 そしてラスラが偽名である事もしり、姿を変えている事も知りえたと。
 フロストドラゴンの白真に関しては、王都に向かう時に出会ってからの話をした。
 白真の意向(?)で『獣魔契約』をして、カズに従属していると。
 ただカズが別の世界から来た事や、管理神にあっている事は黙っていた。
 二人は黙って聞いていたが、カズが話し終わるとラスラが問い掛けてきた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

俺の召喚獣だけレベルアップする

摂政
ファンタジー
【第10章、始動!!】ダンジョンが現れた、現代社会のお話 主人公の冴島渉は、友人の誘いに乗って、冒険者登録を行った しかし、彼が神から与えられたのは、一生レベルアップしない召喚獣を用いて戦う【召喚士】という力だった それでも、渉は召喚獣を使って、見事、ダンジョンのボスを撃破する そして、彼が得たのは----召喚獣をレベルアップさせる能力だった この世界で唯一、召喚獣をレベルアップさせられる渉 神から与えられた制約で、人間とパーティーを組めない彼は、誰にも知られることがないまま、どんどん強くなっていく…… ※召喚獣や魔物などについて、『おーぷん2ちゃんねる:にゅー速VIP』にて『おーぷん民でまじめにファンタジー世界を作ろう』で作られた世界観……というか、モンスターを一部使用して書きました!! 内容を纏めたwikiもありますので、お暇な時に一読していただければ更に楽しめるかもしれません? https://www65.atwiki.jp/opfan/pages/1.html

この度異世界に転生して貴族に生まれ変わりました

okiraku
ファンタジー
地球世界の日本の一般国民の息子に生まれた藤堂晴馬は、生まれつきのエスパーで透視能力者だった。彼は親から独立してアパートを借りて住みながら某有名国立大学にかよっていた。4年生の時、酔っ払いの無免許運転の車にはねられこの世を去り、異世界アールディアのバリアス王国貴族の子として転生した。幸せで平和な人生を今世で歩むかに見えたが、国内は王族派と貴族派、中立派に分かれそれに国王が王位継承者を定めぬまま重い病に倒れ王子たちによる王位継承争いが起こり国内は不安定な状態となった。そのため貴族間で領地争いが起こり転生した晴馬の家もまきこまれ領地を失うこととなるが、もともと転生者である晴馬は逞しく生き家族を支えて生き抜くのであった。

最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~

ある中管理職
ファンタジー
 勤続10年目10度目のレベルアップ。  人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。  すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。  なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。  チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。  探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。  万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。

屋台飯! いらない子認定されたので、旅に出たいと思います。

彩世幻夜
ファンタジー
母が死にました。 父が連れてきた継母と異母弟に家を追い出されました。 わー、凄いテンプレ展開ですね! ふふふ、私はこの時を待っていた! いざ行かん、正義の旅へ! え? 魔王? 知りませんよ、私は勇者でも聖女でも賢者でもありませんから。 でも……美味しいは正義、ですよね? 2021/02/19 第一部完結 2021/02/21 第二部連載開始 2021/05/05 第二部完結

異世界転移した町民Aは普通の生活を所望します!!

コスモクイーンハート
ファンタジー
異世界転移してしまった女子高生の合田結菜はある高難度ダンジョンで一人放置されていた。そんな結菜を冒険者育成クラン《炎樹の森》の冒険者達が保護してくれる。ダンジョンの大きな狼さんをもふもふしたり、テイムしちゃったり……。 何気にチートな結菜だが、本人は普通の生活がしたかった。 本人の望み通りしばらくは普通の生活をすることができたが……。勇者に担がれて早朝に誘拐された日を境にそんな生活も終わりを告げる。 何で⁉私を誘拐してもいいことないよ⁉ 何だかんだ、半分無意識にチートっぷりを炸裂しながらも己の普通の生活の(自分が自由に行動できるようにする)ために今日も元気に異世界を爆走します‼ ※現代の知識活かしちゃいます‼料理と物作りで改革します‼←地球と比べてむっちゃ不便だから。 #更新は不定期になりそう #一話だいたい2000字をめどにして書いています(長くも短くもなるかも……) #感想お待ちしてます‼どしどしカモン‼(誹謗中傷はNGだよ?) #頑張るので、暖かく見守ってください笑 #誤字脱字があれば指摘お願いします! #いいなと思ったらお気に入り登録してくれると幸いです(〃∇〃) #チートがずっとあるわけではないです。(何気なく時たまありますが……。)普通にファンタジーです。

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

異世界ソロ暮らし 田舎の家ごと山奥に転生したので、自由気ままなスローライフ始めました。

長尾 隆生
ファンタジー
【書籍情報】書籍2巻発売中ですのでよろしくお願いします。  女神様の手違いにより現世の輪廻転生から外され異世界に転生させられた田中拓海。  お詫びに貰った生産型スキル『緑の手』と『野菜の種』で異世界スローライフを目指したが、お腹が空いて、なにげなく食べた『種』の力によって女神様も予想しなかった力を知らずに手に入れてしまう。  のんびりスローライフを目指していた拓海だったが、『その地には居るはずがない魔物』に襲われた少女を助けた事でその計画の歯車は狂っていく。   ドワーフ、エルフ、獣人、人間族……そして竜族。  拓海は立ちはだかるその壁を拳一つでぶち壊し、理想のスローライフを目指すのだった。  中二心溢れる剣と魔法の世界で、徒手空拳のみで戦う男の成り上がりファンタジー開幕。 旧題:チートの種~知らない間に異世界最強になってスローライフ~

処理中です...