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三章 王都オリーブ編2 周辺地域道中

161 モンスター予想的中!?

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 深夜に目を覚まし、外で一人風に当たりながら、今回使用出来そうなトレカを選んでいたカズは、数枚のトレカを分析し終え借り家に戻り、朝が早い為寝る事にした。
 アイガーを起こさないように、そっと扉を開けて中に入り、毛布にくるまり横になる。

「眠れないのか?」

「! アイガーさん、起こしてしまいましたか?」

「何、依頼に出てる時は、いつどこで襲われるか分からんから、眠りはいつも浅くしてるんだ」

「さすがですね」

「まぁな。村の中だし怪しい気配も感じないから、それなりに休めそうだが。カズはしっかり寝る様にしろ、寝不足の時にモンスターが現れたら危険だからな」

「はいそうします」


 ◇◆◇◆◇


 翌朝カズが目覚めるとアイガーの姿はなく、ラスラも出ているようだった。

「……あれ? 二人共出掛けちゃったのか? 二人が出て行く事に気付かないほど深く寝てたのか。起こしてくれれば良かったのに」

 カズが独り言を言っていると、外から話声が聞こえてきた。
 家の扉が開き、アイガーとラスラが戻って来た。

「お! 起きたかカズ」

「おはようカズさん」

「おはようございます。二人共居ないので、俺を置いてクリムさんの所に行ってしまったのかと思いました」

「カズさんを置いては行きませんわ」

「朝からどこに行ってたんですか?」

「カズにいつも飯を出してもらってたから、さっきラスラと話して村に居る時くらいは、俺達も飯を用意しようと思ってな、村人から食材を買ってきたんだ」

「俺は別に構わなかったんですけど」

「そうはいきませんわ。これくらいはしないと、パーティーを組んでる仲間なんですから」

「分かりました。お願いします」

「任せなさい!」

「それより早く朝飯食わないと、約束の時間になっちまうぞ」

「なら朝食はいつものように俺が出しますから、買ってきた食材は夕食の時にでも使ってください」

「そうね、今から作ると時間が掛かるからそうしましょう」

 カズは【アイテムボックス】から、パンと木苺のジャムを出し、三人は簡単な朝食を済ませ、カズは王都の店で作った装備をして、前日約束した村人クリムの所に出掛けた。
 今回は小川の横にある細い道ではなく、村の中を通る広い方の道を行き、クリムの家を正面から訪ねた。
 クリムは既に牛や山羊を放牧しており、良い草が生えている場所に連れて行く、数頭の子牛と子山羊を出して待っていた。

「スマン遅かったか?」

「いんや。丁度今から行くとこだぁ」

「そうか」

「さっさと行くだぁ」

「その前にちょっといいか」

「なんだぁ?」

「危険なモンスターが出る場所に、わざわざなんで放牧に行くんだ?」

「あんたらが見たいと言う大きな影のモンスターが出てからは、ヘビーベアなんかが、殆ど来なくなったから行くだぁよ。大きな影のモンスターは、なぜかオラ達の放牧してる牛や山羊を、襲わねぇ見てぇでな」

「不思議な事だが、いつまでそれが続くか分からないから、気を付けた方が良いぞ。またいつヘビーベアが出るとは限らないんだからな」

「分かってるだ。だから連れて行く牛や山羊の数を減らしてるだよ。そんなことより、早く行くだぁ」

 クリムに案内され、三人は大きな影のモンスターが現れた場所に向かう。
 クリムの家を出てから一時間程歩くと、分かれ道に差し掛かった。

「そっちの道を少し行くと、草原に出るから、そこがそうだ。周りに爪痕なんかがあるから、分かると思うだ。オラはこっちに行くから、そっちはあんたらだけで行ってくれや」

「この先だな分かった」

「何か出るかも知れねぇから、気い付けろや」

「そっちもな。何かあったか大声を上げるか、これを使ってこっちに逃げて来い。こちらもすぐに駆け付けるから」

 アイガーがクリムに10㎝程の玉を渡した。

「これは……なんだぁ?」

「『煙幕玉』だ。それを相手に投げつけて、煙で怯んでる間に逃げるんだ」

「分かっただぁ」

 アイガー、ラスラ、カズの三人は分かれ道をクリムに言われた方へ行き、クリムは子牛と子山羊を連れて、もう一方へと行った。
 クリムに言われた山道を十分程進むと、周りに生えていた木々は徐々に減り、ひらけた草原に出た。
 クリムの言っていた通り、辺りの地面や木には、獣やモンスターが付けた傷痕があった。
 アイガーとラスラは、その傷痕を調べ始めた。

「昨日行った森の中にあった場所に付いていた傷より、こっちの方が見るからに新しいな。村長や村人が最近大きな影を見たのが十日程前だから、その時に来て付けた傷だろうな」

「そうね。村長さんの話からすると、十日前後の周期で現れるらしいから、今日来てもおかしくないわね」

「ああ」

 アイガーとラスラは、情報と傷痕から見て、今日か明日にでも、例の『大きな影の強力なモンスター』が現れる可能性が大きいと言う。

「それでどうします? ここで待機してますか?」

「いや、一応周辺の地形を調べて、何か手掛かりがあるか調査をしよう。オレはここから更に山を少し登って調べる。ラスラは草原の周りにある森を調べてくれ。深くまで入って行く必要はないからな」

「分かったわ」

「カズは草原内を調べてくれ。周囲の警戒を忘れるな。自分で対処出来ないモンスターが現れたら、すぐに俺達を呼べよ」

「気を付けてねカズさん」

「はい」

「じゃあ、日が頭上に来る頃になったら、またここに集合してくれ」

「分かったわ」

「分かりました」

 アイガーはこの草原から奥に見える山を登って行き、ラスラは草原と森の境目辺りにある木々を調べ、カズは草原内に何かの痕跡がないか調べに、それぞれ移動した。


 とは言われても、草原内を調べるにしても、草が膝くらいまで伸びてるし、端から端まで200mくらいあるからなぁ、どうやって調べようか……取りあえず【マップ】を、クリムさんが居る範囲まで広げて、次は……サーチを使って色々と調べてみるか。
 えーっと、取りあえず対象をモンスター毛にして〈サーチ〉と。

 カズがモンスターの毛を対象にし、無詠唱でサーチの魔法を使うと、辺り一面に反応が出た。

「うわっ! 反応出過ぎ」

 カズは近くで反応した場所を見る。

 数本程度の毛にも反応するのか! これじゃあ駄目だ。
 サーチの対象をもっと絞らないとな。
 う~ん……よし! 〈サーチ〉ロックバードの羽。

 カズが新たにサーチをすると、狭い範囲の数ヵ所に反応が出た。
 カズは反応のあった所に移動した。

 確かこの辺り……これか? やけに小さい羽毛だ、こっちも同じか。
 ん…あれは羽か? 大きい1mはあるな!
 これがロックバードの羽か!? アイガーさんとラスラさんの予想通りか。
 やっぱりヘビーベアとバンブースネーク等を狙って来てるって事か。
 一応ヘビーベアとバンブースネークの事も調べてみよう。
 争ってるなら何か落ちていてもおかしくないからな。
 羽は一旦【アイテムボックス】に入れてもう一度〈サーチ〉だ。

 この後カズはサーチで、ヘビーベア体毛
とバンブースネークの皮で調べると、どちらも数ヵ所に反応があった。
 カズは反応のあった場所に行き、その場にあった物を回収し、残りの時間は草原内を見て周り、何かの痕跡がないかを調べた。
 一方ラスラは、草原周りの森との境界を出たり入ったして、何か手掛かりになりそうな事がないか調べていた。
 アイガーはと言うと、草原から更に山を登って行き、獣やモンスターの住む洞窟等がないかを調べまわっていた。
 そして日が頭上に差し掛かって来た頃に、三人は最初に草原へ入って来た場所に集合した。

「それで何か見つかったか? オレの方はイノボア等の消えかかってた足跡くらいで、他は何も無かった」

「私の方は、幾つか傷痕を見付けたわ。それも爪等ではなく、エアースラッシュて付けたような傷痕をね」

「だとするとやはりか」

「俺は色々と見付けました」

 カズは【アイテムボックス】から見付けた物を全部出した。

「これはヘビーベアの毛で、こっちはバンブースネークの脱皮した皮だな。おっこれは!」

「この色と形は、ロックバードの羽で間違いないですわね」

「これで対処方法が決められそうだな!」

「先日アイガーさんは、ロックバードを厄介なモンスターと言ってましたが、どうやって戦いますか?」

「問題は飛んでるって事だな。オレは遠距離魔法どころか、魔法全般が得意でなくてな、ラスラの魔法でなんとか地上近くまで降下させてくれれば、接近してオレが戦えるんだが、どうだラスラやれそうか?」

「ロックバードの大きさにもよるけど、やってみるわ。カズさんも魔法は使えるのよね?」

「ええ使えます」

「なら一緒にお願いね」

「分かりました」

「頼むぞカズ」

「はい」

「なら今日はここで日暮れまで待機して様子を見よう」

「そうね。ロックバードが来なくても、ヘビーベアやバンブースネークが来るかも知れませんからね」

「よし取りあえず飯にしよう。山を歩き回って腹が減った」

 三人は草原付近でモンスターが現れるか調査する為に、木陰に隠れて待機する事にした。
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