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三章 王都オリーブ編2 周辺地域道中

160 小ビン1個分の金額 と 新たなトレカ

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「それでどのくらいあるんですか?」

「今は小ビン1個だけだ」

「先程、この後に作業があると言ってましたが、これから作るんですか?」

「んだぁ」

「数はどれくらい出来ますか?」

「一度に作れるのは、多くてもその小ビン3個分だ」

「小ビン1個分で幾らになります?」

 クリムは指を三本立てて見せた。
 それを見てアイガーが言う。

「珍しい物らしいが、小ビン1個で銀貨三枚(3,000GL)か。町から離れてるのもあるが、少し高いな」

「何を言ってるだ。金貨三枚(30,000GL)」

「金貨三枚(30,000GL)!! 牛乳何日分だよ!」

 金額を聞いたアイガーが、驚き声が大きくなった。
 それを聞いたクリムが、高い理由を説明した。

「オラの飼ってる牛が出す牛乳一日分で、小ビン3個出来るかどうかってくらい使うんだ。だからそれだけの金額がするだぁ」

「でも日持ちしないんだろ? 作る意味あるのか?」

 アイガーが最もな質問をした。

「そこが問題なんだ。作ったのは良いが、町まで運ぶ手段がねぇんだ。ソーサリーカードを使って冷して持って行っても、町に着いたその日に使わんといかんからなぁ」

「アイテムボックスが使える商人に来てもらって売るか、アイテムボックスが使える人を雇って、運んでもらうしかないんじゃないか?」

「そうなんだが、そうすると更に売り値が上がって、貴族にしか買えない金額になっちまうだ。だがオラには貴族に繋がる知り合いなんていねぇから、今売り方を考えてるだぁよ」

「オレは今でも十分高いと思うがな。そんな価値がある物か?」

「アイガーさん、そんなこと言わないの! 売り方は分かりませんが、それなら尚更私達が買って、持ち帰えった方が良いですね」

「どういう事だぁ?」

「私達がそれを王都に持って帰れば、貴族様が口にするかも知れないって事ですよ」

「だども言ったべ、日持ちがしねぇから、そんな長げぇ距離を持って行く事は出来ねぇって」

「さっきも言いましたが、そこは大丈夫です。俺がアイテムボックスを使えるので」

「ほうか! なら喜んで売るだよ。出来上がったらすぐにあんたの所へ持って行くだぁ。だから流行らせてくれや」

「それはこれを買ってくれた、人しだいですよ」

「ほうだな。ほんじゃあ、明日の朝に来てくれや。大きな影のモンスターが現れた場所まで案内するから。だどもあまり遅いとオラ行っちまうからな」

「ああ、分かった。明日道案内を頼む」

 カズ達三人はクリムの家を出て、借りた家へと戻る。
 三人が借りた家に着くと、アイガーが明日行く場所の事と調査の話をする。

「今行って来た二人の話を聞いて、何か気になる事はあったか?」

「あえて言うなら、大きな影の正体でしょうか。私とアイガーさんは、ロックバードと思ってましたけど、最初に行った訛りの強い村人の話では『白く大きい』と言ってましたから」

「ロックバードは白くないんですか? ラスラさん」

「私の知っている限りでは、白いロックバードなんて見た事ないわ」

「じゃあロックバードの雛とかでは?」

「ロックバードの雛は、黒っぽい色をしてるから違うのよ。カズさん」

「オレも白いロックバードなんて、一度も見た事ないな。だがあの人は、チラッとしか見てないと言っていたから、おそらく見間違えたんだろ」

「そうですね。話しぶりからすると、慌てていた様ですし」

「とりあえず明日現場に行って、何か手掛かりがないか探してみよう」

「そうね。しかしあのクリムって人は、そんなモンスターが出た近くを通って、放牧へ行くと言っていたけど、大丈夫なのかしらね?」

「そうですよね」

「ところでカズは、何か装備は持ってないのか? 今回の依頼は運搬だけすれば良いと聞いてきた様だが、既に王都を出た時と状況が異なってるからな」

「そうよね。装備もしてないし、武器も持ってない様だけど」

「アイテムボックスに入れてあります。武器もカタ……剣を持ってます」

「いくら俺達が一緒に居るからって、明日は装備をして行く事だ」

「分かりました(何かある時は、大抵魔法で対処出来る事ばかりだったし、一人の時は装備なんてしてなかったな)」

「まったく、王都…街から外へ出るのに、常に装備をしてないなんて、カズは本当にBランク間近の冒険者か?」

「……すいません(自分では少し冒険者っぽくなったと思ってたんだけど、まだまだだなぁ)」

「さぁさぁお二人共、出掛けるのは明日の朝ですから、日が暮れる前に部屋の掃除をしましょう。せっかく空き家を借りて雨風しのげるのに、少しは掃除をしないと、明日起きたらホコリで、全身白くなってしまいますわ」

「それもそうだな。寝る所くらいはキレイにするか。野宿じゃないんだしな」

 ラスラの提案で、借りた家の掃除する。
 なんとか日が暮れる前に終わり、寝起きする場所くらいはキレイになった。
 掃除の後に、夕食の用意をする為にカズが【アイテムボックス】から食材を出すと、ラスラそれを使い野菜たっぷりのサンドウィッチを作ってくれた。
 アイガーは肉が無いのが不満の様で、自分が持っていた干し肉をかじりながら、サンドウィッチを食べていた。
 夕食を済ませ寝る場所を決めるのに、一つだけあるベットは女性のラスラに使ってもらうことにした。
 カズとアイガーは、他の部屋で雑魚寝だ。
 家の中でもさすがに冷えるので、カズは昨夜使った毛布を【アイテムボックス】から出し、ラスラとアイガーに渡した。
 翌朝早くから出掛けるので、三人は横になり寝た。

 ……ふと深夜目が覚めたカズは、近くに居るアイガーを起こさない様にして一人家を出て、借りた家横に流れる小川のほとりに座る。


 変な時間に目が覚めたな。
 横になっても寝付けそうにないから、静かに出てきたけど、やっぱり外は冷えるな。
 さて、せっかく一人になったんだし、ちょっと明日の支度をしておくかな。
 もしかしたら大きな影の、強力なモンスターが現れるかも知れないし、他の獣やモンスターが出て来る可能性もあるからな。
 一応【マップ】を見て、誰か来ないか注意して、使えそうなトレカを探して、用意しておこう。
 実戦で使わないと、分からない効果もあるだろうしな。
 今回は攻撃系のトレカは使わないようにして、使う前にトレカの効果を分析と鑑定をしておこう。(ファイアーストームのトレカは、さすがに不味かったからなぁ)

 カズはアイテムボックスに入ってる、トレカのリストを表示させて、その中から数枚選び取り出し、その内2枚を《鑑定》《分析》した。



 【幻惑の霧】『ノーマル』
 ・対象を濃い霧で包み、幻を見せる。
 ・見せる幻は、レベル差によって効果はかわる。
 ・霧の効果は五分で消える。


 【捕縛の鎖】『レア』
 ・使用する際に、対象者に触れる必要がある。
 ・効果が発動すると、対象者に絡み付き動きを止める。
 ・五分が経過するとカードに戻る。
 ・使用時の魔力量で鎖の強度が決まり、一定以上の魔力を込めると、五分が経過してもカードには戻らない。(魔力が切れるとカードに戻る)
 ・鎖が破壊されると、完全に消滅する。



  まあこの2枚なら、使っても大丈夫だろう。
 他のトレカも調べてから、寝床に戻ろう。

 カズは選び出したトレカ【バリア・フィールド】『レア』、【大地の祝福】『レジェンド』、【ユグドラシルの枝杖】『レジェンド』を調べ終わると、トレカを【アイテムボックス】に戻し入れて、借り家へと戻った。


 しかし使用しても目立たずに、使えそうなトレカを選んだんだつもりなのに、レジェンド級が2枚もあるのか。
 【ユグドラシルの枝杖】は使用者制限があるし、効果もそんなに強くなかったのに、何でレジェンド級なんだ?
 【大地の祝福】に関しては、一つ効果を使用するのが躊躇われるな。
 表示された効果も、やっぱり元とは違がったか。
 まぁ二人共Aランクだし、このトレカ以上の魔法を見た事あるだろうから、そんなに驚きはしないだろう。
 でもレジェンド級の2枚は、出来るだけ使わないようにした方がいいか。 
 さて、そろそろ戻って寝ないと、朝早いしな。





 ≪トレーディングカード説明≫


 ・実際に書かれているレア度と名前と効果。
 ・コストは《》内に表示。
 ・主人公の持つトレカの種類は複数ある為、コストや効果の表示が違うものもある。(モンスターとクリーチャーの表記の違い等)



 N+《青・2》【幻惑の霧】: 攻撃に参加しているクリーチャー1体の攻撃対象を、あなたが任意に選択変更できる。
・この効果で選ぶ対象は、適切でなければならない。(飛行を持たないクリーチャーが、持つクリーチャーを攻撃対象に選ぶ事が出来ない等)


 R《4》【捕縛の鎖】: このカードが場に出る場合、場に居るクリーチャー1体を選ぶ。
 ・このカードが装備されたクリーチャーは、攻撃も防御も出来ず、テキストに書かれた効果も使用出来ない。
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