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三章 王都オリーブ編2 周辺地域道中

156 情報収集 と 別れた二人

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「私達の運搬目的の村が、そこだとしたら少し面倒ですね。強力なモンスターが出るとは聞いてますが、出来れば戦闘を避けたいですからね」

「この調査は、場合によって討伐に変更する事になってるからな。だがそれは今回のパーティー全員で、倒す事の出来る相手だった場合だが」

「イソチオとシアネトね」

「ああ。あの二人が、怪しい連中とつるんでる様であれば、戦力は減るどころか、敵が増える事になるからな」

「今回モンスターの方は調査で終らして、イソチオとシアネトが繋がってる連中を、優先して討伐する必要があるかもね」

「そうだな」

「あのう、ラスラさん」

「なぁに?」

「モンスター調査の依頼って、俺達もやる事になってるんですか?」

「ええ。私は聞いてたけど、カズさんはアイテムボックスが使えるから、運搬をするだけで良いとモルトは言ってたわ。でも場合によってはモンスター調査の方も、手伝ってもらうつもりだったけどね」

「そう…ですか」

「まぁそんなとこだ。状況に寄っては、カズにも戦闘に加わってもらうが大丈夫か?」

「俺は…」

「カズさんなら大丈夫でしょう。今回の依頼が終われば、Bランクに昇格するって言われてますから。聞いた話によると、Bランクの冒険者と模擬戦をして勝ったとか、ストーンシャークを一人で大量に討伐したとか」

「!! (な、なぜそれを!)」

「実力的に、Bランク以上はあるようだし、それなら大丈夫だな!」

「ラスラさん、どうして? まさかモル…」

「同じギルドで拠点登録をしてますし、パーティーを組む事になった相手を少しは調べますわ。あと、モルトに聞いた訳ではないのよ」

「じゃあ誰に?」

「それは……秘密よ!」

「ひ、秘密ですか……(スキルか何かで調べたのか? ステータスを見ないように言われてたけど、一度確認を…)」

「カズさん、依頼の間はステータスを覗かないでね。信用してるから」

「そんな事はしませんよ……」

「気になるかもしれんが、そうあせるなカズ。依頼が終わってギルドに戻ったら、オレは教えてやるからさ!」

「あ、はい(顔に出てたのかな? 現役のAランク冒険者ってのは、伊達じゃないか。それとも俺は顔に出やすいのかな?)」

 カズは、ラスラとアイガーのステータスを見るのを一旦諦めた。
 イソチオとシアネトが宿屋に戻ってくる前に話し合いを終わらせ、カズとアイガーは部屋に戻った。
 三人はそれぞれが警戒をしつつ、今日は休む事にした。

 カズは寝る前にそっと無詠唱で、アラームの魔法を使用した。
 効果範囲はカズとアイガーが泊まる部屋と、隣のラスラが泊まっている部屋を設定した。


 ◇◆◇◆◇


 昨夜使用したアラームの魔法が発動する事はなく、翌朝カズは目覚めた。
 アイガーもカズと同じく、たった今起きたようだ。

「カズも今起きたか?」

「おはようございます」

「ああ。イソチオとシアネトは、どうも戻って来てない様だな」

 カズは【マップ】を確認するが、アイガーの言ったように、イソチオとシアネトが泊まっているはずの部屋に、人の反応は無かった。
 【マップ】を見ていると、隣の部屋から人が出て来て、こちらに来るのが分かった。
 すると部屋の扉がノックされ、アイガーが扉を開けると、予想通りそこにはラスラが居た。

「おはようございます」

「おはよう」

「入っても宜しいですか?」

「ああ」

 アイガーの横を通り、ラスラが部屋に入ってきた。

「おはよう。カズさん」

「おはようございますラスラさん。もう出発しますか?」

「宿屋は出ますが町を出る前に、例のモンスター情報等を集めましょう 」

「宿を出るのはいいが、あとの二人が昨日から戻って無いようだぞ」

「昨夜アイガーさんが言った様に、イソチオとシアネトが怪しい人達の仲間であれば、宿屋を出ればすぐに合流して来るでしょう」

「そうだな。だがまだ確信もないし、もう少し様子見だな」

「そうですね」

「ではこの後三人で、情報収集に当たりますか」

「オレは裏に置いてある荷馬車を取りに行ってから、そのまま情報収集に行くから、カズとラスラは町中を散策しながら情報収集してくれ」

「ええ、良いわよ。カズさんもそれで良いかしら?」

「はい大丈夫です」

「じゃあ昼頃に、町の出入口で落ち合おう。飯はそっちで適当に済ませてくれ。オレも適当にすませるから」

「分かったわ」

「分かりました」

 三人は宿屋を出て、アイガーは移動用の荷馬車を取りに行き、カズとラスラは露店が並ぶ通りに向かい歩いて行った。
 カズとラスラは、周りを行き来する人達の様子を見ながら、露店で買い物をしつつ、世間話をして情報を集める。
 マントを羽織りフードを被ってるにも関わらず、怪しまれずに露店の人達から話を聞き出しているラスラを見て、情報収集はラスラ一人で大丈夫じゃないかと思ってしまうカズだった。

 露店をあらかた周り話を聞いたので、少し早いがアイガーと待ち合わせの場所へ向かおうと、カズが言おうとしたら、ラスラが一人で路地裏にある古びた一軒の店に入って行ってしまった。
 カズも急ぎ後を付いて行くと、店の中は薄暗く、色んな物が乱雑に積み上げられてホコリがかぶり、客が来るとは思えない状態だった。
 店の奥には、店主と思わしき年配の男性が椅子に座って居た。
 ラスラが店主に小声で質問をしたあと、積み重なっている本の上に、銀貨数枚を置いた。
 すると店主がボソボソと小声で話始めた。
 ラスラは今度金貨を見せて幾つか質問をすると、店主またボソボソと話し、最後に紙切れをラスラに渡した。
 それを受け取ったラスラは、金貨を先程置いた銀貨に重ねると、カズと一緒に店を出た。
 そのままアイガーとの待ち合わせ場所に向かいながら、カズはラスラに今の店での事を尋ねた。

「ラスラさん、あの店に行ったことあるんですか?」

「いいえ。初めてよ」

「どうして急に入ろうと思ったんですか?」

「ああいった店の人は、厄介事や揉め事を嫌うけど、何も知らないって訳じゃ無いのよ。うまくすれば他の人達が話さない有力な情報を、教えてくれるかも知れないしね。長年冒険者をやってる勘よ」

「それがさっき受け取った紙切れですか?」

「まぁそんなとこよ。この話は、アイガーと合流してからにしましょ」

「分かりました(冒険者としての経験の差だな)」

 カズとラスラは、アイガーと待ち合わせの場所である、町の出入口に向かい歩いて行く。
 町の出入口が見えてくると既にアイガーが来ていて、そこには昨夜から出掛けて居なかったイソチオとシアネトも居た。

「アイガーさん、お二人に会えたのですね」

「ああ。ついさっき、ここに向かってる途中でな」

「お前達は、おれ達を置いてくつもりだったのか?」

「お前ら二人が、今朝宿屋に居なかったかだろ。一晩出掛けてくるなら、戻る時間くらい言ったらどうだ」

「なんだと! おれより数値が低いくせに、リーダーのおれに口答えかよ!」

「いつお前(イソチオ)がリーダーになったんだ?」

「この中で一番強い、おれがなるのが当然だろ!」

「オレとラスラの数値を聞いた後に、お前が言ったんだから、幾らでも言い様があるだろう」

「なんだとぉ! だったらここでハッキリさせて…」

「ちょ、ちょっと二人共ケンカはよしましょうよ。今回だけだとしても、一応俺達パーティーを組んでるんですから」

「うるせぇ! 怪我したくなけりゃあ引っ込んでろ! アイテムボックスが使えるからって、調子にのんなよ!」

「別に俺は調子になんか(コイツ、今すぐ凍らせて黙らせたい)」

「Cランクの雑魚は、Aランクのおれ様が言った事を、聞いてれば良いんだ!」

「てめぇ、いい加減にしろ! カズはパーティーメンバーで、奴隷じゃねぇんだぞ!」

 アイガーとイソチオの口論が、更に激しくなりそうになった時に、今まで黙っていたシアネトが初めて口を聞いた。

「イソチオ……」

「なん……」

 シアネトがイソチオを呼ぶと、イソチオが口論をやめて、シアネトに近付きヒソヒソと二人で何かを話していた。
 話が終わると、イソチオがここで二手に別れて、それぞれの依頼をしようと言ってきた。
 それを聞いたアイガーは、苛立ちながらも二つ返事で了解した。
 イソチオは荷馬車を要求したら、アイガーがまた食って掛かろうとしたので、ラスラが了承して二人に移動用の荷馬車を渡した。
 イソチオとシアネトが荷馬車に乗り町を出て行った。
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