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三章 王都オリーブ編1 王都オリーブ

153 王都の冒険者 と パーティーを組む依頼

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 貴族区から街に戻り、日が陰り始めた頃に、カズは第2ギルド着いた。
 カズは受付に居るトレニアに、モルトが居るか聞きに行く。

「トレニアさん、今よろしいですか?」

「なんでしょうか?」

「モルトさんが居るか分かりますか?」

「モルトさんですか? そう言えばカズさんが来たら呼んでほしいと、今朝受付に連絡が来てましたね。今お呼びしますので、少々お待ちください」

「お手数お掛けします」

 トレニアが受付から離れ、モルトを呼びに行った。
 数分後トレニアが受付に戻って来た。

「モルトさんは、もう少ししたら来ますので、今少しお待ちください」

「はい。ありがとうございます」

「それでは、私は帰りますので」

「今日は早いんですね」

「借りている部屋を改装する事になったので、部屋を片付けないといけないんです。それに改装している間の、泊まる部屋も探さないと。それじゃあ急ぐので」

「お疲れ様でした」

 トレニアは足早にギルトから出て行った。

「カズ君お待たせしました」

「モルトさん、お仕事中すいません。ちょっと聞きたい事がありまして」

「大丈夫です。儂もカズ君に話すことがありますから」

「個室で話させてもらって良いですか?」

「そうですね。ここではなんですから、上の個室に行きましょう」

 カズとモルトは、二階にある個室に移動した。
 そこでカズは、オリーブ・モチヅキ家での話をして、当主ルータに渡された物について尋ねた。

「このプレートを知ってますか? 物が物ですので、他の人には聞けなくて」

 カズはルータから渡されたプレートを、モルトに見せた。

「ほう。これを頂いたのですか。そこまでカズ君のことを、信用していると言うことですな」

「何かあった場合や、他の貴族と揉め事が起きた場合は、それを見せれば良いと言われましたが、そう軽々しく人に見せれるような物じゃないですよね」

「ええ。これを見せるという事は、オリーブ・モチヅキ家が、カズ君の後楯になるという意味です。相手によっては貴族どうしの抗争になりますから、見せるのであれば、よく考えた方が良いです」

「やっぱりそうですよね。これは使わずに、アイテムボックスにしまっておきます」

「そうした方が良いかも知れませんね。しかし困ったら、それに頼るのも良いと思いますよ。そうすればあの方々も、カズ君の力になれたと喜びますよ」

「そうでしょうか?」

「恩を返せたと思いますでしょう」

「分かりました。でも出来れば、その様な状況が起きない方が良いんですがね」

 カズはプレートを【アイテムボックス】にしまった。

「ちなみにそのプレートは『ミスリル』で出来てるんですよ」

「ミスリル! どおりで見たことない変わった金属だと思いました(あれがミスリル)」

「Sランク以上で、一部の者だけのギルトカードにも使われてます」

「一部の者ですか?」

「例えば、第1から第3までのギルドマスターが所有するギルドカードがそうです」

「教えて良いんですが?」

「王都で長く冒険者をやっていれば、この事は分かりますから、言っても大丈夫です。カズ君は王都に来て、日が浅いので知らなかったのでしょう」

「日が浅いか(確かにそうかな。王都に来て長く居たつもりだけど、まだ30日も経ってないんだよな)」

「カズ君の話は、もうよろしいですか?」

「はい大丈夫です。そう言えばモルトさんも、俺に話があるんですよね? 受付に俺が来たら知らせるように、連絡をしてあったようですが」

「儂からの話と言う訳では」

「もしかして、今朝サブマスが声を掛けてきた事に、関係ありますか?」

「ええ。儂が留守の間に、オリーブ・モチヅキ家の当主様からの依頼があったそうなのです。サブマスが対応してくれたそうで、儂も今朝その詳細を聞いたんです」

「俺も当主のルータさんから聞きました。でも俺が依頼を受ける事は、ないと思いますけど。ルータさんは俺の事を、Aランクと勘違いしていたので、推薦したようですから」

「それがですね、この依頼はカズ君に、受けてもらう事になったんですよ」

「えーと……依頼的にはAランクか、Bランクが相応しいんですよね?」 

「ギルドが確認して出した結果では、確かにカズ君の言ったようになりますが、問題はアイテムボックスが使える冒険者が、現在居ないと言うことなのです」

「王都ならBランク以上の冒険者で、アイテムボックスを使える方が居るのでは?」

「儂の言い方が悪かったですな。今は出払ってしまっていて、すぐに動ける者が誰も居ないのです。Cランク以下なら居ますが、アイテムボックスの容量や実力を考えると、カズ君が最も適切かと」

「……分かりました。しかし運搬の依頼なのに、どうして高ランクの冒険者が必要なんですか?」

「運搬する際に通る場所の近くで、とても危険なモンスターが現れるという情報があった事と、そのモンスターの確認もそうですが、他に複数の依頼を同時に行うからです」

「複数の依頼ですか?」

「ええ。なので今回は、パーティーを組んでの依頼になります。カズ君はパーティーを組んだ事は?」

「アヴァランチェで、四人組のパーティーを一度だけ。その時は全員がDランクでしたけど」

「なるほど。取りあえず今回カズ君は、荷物持ちという事になります。ランクが一番低いので、無理して戦う事はないですから」

「分かりました。それで一緒に行く冒険者の方達は?」

「明日の昼頃に顔合わせをして、そのまま出発する予定と聞いてます。パーティーメンバーは、ここ第2ギルドからカズ君ともう一人。他は第1ギルトから一人と、出発地点の第4ギルドから二人の、五人パーティーです」

「俺以外の方達は、皆さんAランクなんですか?」

「Aランクが三人と、Bランクが一人と聞いてます。依頼は十日以上掛かると思われますので、急いで支度をした方が良いでしょう」

「分かりました。そうします」

「依頼内容の事は、明日一緒に行くメンバーから聞いてください。参加するメンバーが拠点としている、各ギルドから出された依頼もあるので」

「分かりました。そうします(初見の人と昼夜共にするのか……怖い人じゃなければいいなぁ。あ! 宿代前払いしたのに、また無駄になっちゃうよ)」

「それでは明日昼前までには、ここ第2ギルドに来てください」

「はい。それじゃあ俺は、買い出し等しますので失礼します」

 モルトと話を終えたカズは、街で食材等を買い出しする為に、ギルドを出る。
 カズは各店を周り、肉や野菜にパン等色々と買ってから、ラヴィオリ亭に戻ることにした。
 買い出しがてら、色々と食べ歩いていたら、今日ギルドの仕事を早く終えたトレニアと出会った。

「カズさんもお買い物ですか?」

「ええ。明日から依頼で遠出をするので。トレニアさんは夕食の買い物ですか?」

「はい。家が改装の間に、一時的に住む場所を探していたら、夕食の買い物が遅くなってしまって」

「そう言えばさっき言ってましたね。それで住む所は見つかったんですか?」

「それが、改装する間の十日くらいだけなので、中々見たからなくて。宿屋もどこも満室になってしまっていて、どうしたものかと…」

「孤児達を育ててる、あの老夫婦の所は?」

「私もそれを考えましたが、引っ越したと言っても、大人の私が入る場所まではちょっと…」

「そう…ですよね……! トレニアさんが住んでいる家の改装は、十日程で終わるんですよね? いつからですか?」

「明日に道具を入れると言っていましたから、改装工事は明後日からですが、それがどうかしましたか?」

「俺は明日から依頼で、十日以上戻って来ないんですよ。今泊まってる宿屋に前金で、既に一ヶ月(30日)分を払ってしまって、あと二十日分くらい残ってるんですけど、良かったらトレニアさんがそこに泊まりませんか?」

「え…あのう、良いんですか?」

「ええ。どっちみち宿代を払ってあるので、誰にも使わせないでしょうから。それに使ってもらった方が、払った宿代も無駄になりませんし。その宿屋を紹介してくれたのは、モルトさんですから安心ですよ」

「それではお言葉に甘えて、明日から泊まらせていただきます」

「では少し時間よろしいですか? 宿屋の女将さんに話しますので」

「はい。お願いします」

 カズはトレニアを連れてラヴィオリ亭に戻り、事情を説明した。
 女将のラヴィオリは、すんなりと承諾してくれ、翌日からトレニアが、カズの使っている部屋に泊まることになった。
 トレニアは女将のラヴィオリと、調理場で料理をしている旦那の、ガルガネッリに挨拶をして、今日は自宅へと帰って行った。
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