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三章 王都オリーブ編1 王都オリーブ

149 メイド達へのお土産(手提げ袋)

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 アキレアに空間収納魔法(アイテムポケット)を付与した手提げ袋を差し上げるとカズが言う、するとアキレアは意味が分からず、カズに説明を求めてくる。
 そのアキレアが驚き高くなった声を上げたとき、部屋に執事のジルバが入って来た。

「カズ殿お久し振りです」

「ジルバさん、お久し振りです」

「アキレアのおかしな声が聞こえて来ましたが、どうかしたんですか?」

「カズさんがこれ(アイテムポケットが付与された手提げ袋)を、差し上げると言ってきたんですよ」

「ただの手提げ袋じゃないですか。何を驚いているんですか?」

「話すより使ってみてください。まだ中にキウイが買ってきた物が入ってますから」

「何も入って無いですよ?」

「手を入れてみれば分かりますよ」

 ジルバは、見た目空っぽの手提げ袋に手を入れ、中の物を取り出した。

「! これは空間の収納魔法!? アキレアがおかしな声を出すのが分かりました」

「そうでしょ」

「カズ殿これは?」

 カズはジルバとアキレアに、手提げ袋を渡す経緯と使い方を話した。
 空間収納魔法(アイテムポケット)を、手提げ袋に付与出来るか試した事と、それが三つ出来たこと。
 一つは泊まっている宿屋の娘に、試しに使ってと渡し、もう一つはモルトに渡したこと。
 そしてこの手提げ袋のことを、モルトに忠告されたので、持っていてもおかしくない、貴族関係の人に渡した方が良いかと思い、アキレア達メイドに渡そうとモルトに話したこと。

「このようなどこにでもある手提げ袋に、空間収納を出来るようにするなんて、カズ殿はいったい何者なんですか? 空間収納出来る魔道具なんて、貴族の方でも滅多に持って無いというのに」

「本当ですよね」

「ただの冒険者で、旅人ですよ(一応ステータスにも旅人とあるし)」

「カズさん、これだけの事が出来て『ただの』とは言えませんよ」

「まぁその辺は適当に、聞き流してください」

「そう簡単に聞き流せる内容なら、私達もそうしてます」

「アキレアの言う通りです」

「……すいません」

「まぁ良いです。今、そんなことを言ったところで、カズ殿が変わる訳ではないですから」

「久々に会ったのに、お二人とも結構な言いますね」

「会った早々に、このような物を軽々しく渡されたら、言いたくもなります。しかもご自分で作られたなんて、たった数日会わなかっただけで……」

 アキレアがうつ向き、額を押さえる。

「あのう、アキレアさん」

「いえ、もういいです。カズさんを見てると、自分の常識が壊れそうで」

「カズ殿の事を深く考えるの、やめた方が良いですよアキレア」

「そうですね」

「そうですねって……(ジルバさんはっきり言うし、アキレアさんも同意かよ)」

「ではお部屋に案内しますから、カズ殿はそこで少しお待ちいただきます」

「俺はここで良いですよ。広い部屋に一人で居る方が、落ち着かないですから」

「カズ殿は、そうなんですか?」

「そう言えばカズさんが居たとき、食事を広いお部屋で一人で食べるのが落ち着かないと言って、ここで私達と一緒に食事をしてましたね」

「え、ええ(俺は別に、皆で食べたいとは言ってないんだけど。アキレアさんが皆で食べようと言ったの忘れたのかな?)」

「ほう、カズ殿は若い女性と、一緒に食事をするのがお好きですか」

「そんなことは……なくもないですが。あの時は、アキレアさんが気を使ってくれたんですよ」

「あっ! キウイお姉ちゃんが言ってたように、カズお兄ちゃんここに居た!」

 今度はメイドのミカンが、部屋に入って来た。

「久し振りミカン。相変わらず元気だね」

「カズお兄ちゃんの言い方、なんかおじさんくさいよ」

「おじさんだなんて、酷いなミカン(と言っても、本来の歳だと十分におじさんだからな)」

 カズはミカンの後ろから、まだ人が来ないかと見る。

「カズお兄ちゃん、どこ見てるの?」

「ビワは居ないのかなっと思って」

「ビワお姉ちゃんは、メイド長のベロニカさんと一緒に、奥様の所に居るよ」

「そうなんだ」

「カズお兄ちゃんは、ビワお姉ちゃんに会いたかったの? ミカンじゃ不服なの?」

「そんなんじゃないよ。久し振りにミカンに会え嬉しいよ」

 ミカンはじっとカズを見る。

「……駄目だよカズお兄ちゃん。こんなチョロいと、変な人(女)に黙られちゃうよ」

「……どこでそんな言葉覚えたのさ!?」

「えー、ミカン分かんなーい」

「カズさんをからかうの、やめなさいよミカン」

「はーい分かりました。アキレアお姉ちゃん」

「どういうこと?」

「ごめんなさいカズさん。最近奥様が本を読んでるんですけど、それに男性をからかって面白がるって女の子が出てくるんですよ。それがミカンに似てるらしいんです」

「マーガレットさんが読んでる本と、それに出て来るミカン似の女の子に、なんの関係が?」

「奥様が面白がってミカンに話して、そこにちょうどカズさんが」

「そういうことですか。それを聞くとマーガレットさんは、とても元気なようですね(面白がって余計な事を、メイドに吹き込むところなんか)」

「それはもう。私達が疲れるくらい、奥様は元気になられました。それもカズさんのおかげですよ」

「それは同感です。カズ殿には、感謝してもしきれません」

 ジルバとアキレアは改めて、カズに頭を下げお礼を言う。
 それを見て、ミカンもお礼を言って頭を下げる。
 だがアキレアの言った言葉は、若干皮肉っぽく聞こえた。

「そんな、もういいですから、頭をあげてください(感謝されるのは、なかなか慣れないなぁ)」

 カズに言われ、三人は頭を上げる。

「私しはそろそろ旦那様の元に戻ります。準備が出来ましたら、ビワかキウイを呼びに来させますから、カズ殿はそれまでゆっくりとしていてください。アキレアとミカンは、引き続きカズ殿の相手をお願いします」

「はい」

「ミカンに任せてください」

 ジルバはカズに軽く会釈をして、部屋を出て行った。

「さぁミカン、キウイが買ってきた物を、しまうから手伝って」

「買ってきた物どこにあるの?」

「この中よ」

 アキレアがミカンに手提げ袋を渡し、中に手を入れてみるように言う。
 ミカンは不思議そうにしながらも、手提げ袋に手を入れた。
 最初は驚いていたが、すぐ楽しそうにして、キウイが買ってきた物を出していた。

「何これ! 何も無いのに、中から色々な物が出て来る!」

「……楽しそうにしちゃって、子供って良いわね」

「アキレアお姉ちゃん、おばさんみたい」

「なっ! 誰がおばさんよ!」

「カズお兄ちゃん、アキレアお姉ちゃんが怒った」

 ミカンがカズの後ろに隠れ、カズがアキレアをなだめる。

「ミカンがアキレアさんのことを『おばさん』なんて言うからだよ。ミカンよりは年上だろうけど『おばさん』なんて呼ばれる歳じゃないんたたからさ。これからアキレアさんのことを『おばさん』なんて言っちゃ駄目だよ。アキレアさんは『おばさん』じゃないんだから」

「ちょっとカズさん! 『おばさん、おばさん』言わないでください!」

「そうだよカズお兄ちゃん」

「えー! 俺が悪いの?」

「ミカンもよ!」

「ごめんなさーい」

 反省したミカンは、再度手提げ袋から、キウイの買ってきた物を出す。

「さあ買ってきた物の、お片付けお片付け。この手提げ袋良いなぁ。ミカン欲しい」

「それはメイドさんの皆で使って」

「じゃあミカンも使って良いんだ!」

「ミカン待ちなさい。一応これは、旦那様と奥様に見てもらってから決めます。カズさんもそれで良いですね」

「俺は構いませんよ(貴族が持ってれば、変に思われないだろうし。でも手提げ袋が安物だから駄目かな?)」

 キウイが買ってきた物を全部出し、それを片付けたあと、手提げ袋はアキレアが一時預かった。
 その後カズは、アキレアとミカンの三人で、話ながら待つことにした。
 三十分程した頃、キウイが呼びにやって来た。

「カズにゃんお待たせにゃ。旦那様と奥様達の支度ができたから、来て欲しいにゃ。アキレアとミカンも行くにゃ」

「それではカズさん、ミカン行きましょうか」

「カズお兄ちゃん行くよ」

「分かりました(そう言えばここの当主とは、会ったことないんだよなぁ。アヴァランチェでも会わなかったし)」

 カズ、アキレア、ミカンは、キウイの後に付いて、マーガレット達の居る部屋に向かう。
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