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三章 王都オリーブ編1 王都オリーブ

148 メイドとの再会

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 ◇◆◇◆◇


 今日はオリーブ・モチヅキ家から、迎えが来ると聞いていたので、カズは急ぎ一階の食堂に下りて、朝食を済ませギルドへと向かった。
 ギルドに着いたカズは、受付のある一階を見渡すが、迎えが来て居ないことを確かめ、外に出て待つことにした。
 だんだんと冒険者が増え、混み始めてきた頃、カズに声を掛けてきたのはモルトだった。

「おはよう、カズ君」

「おはようございます。モルトさん」

「早いですね」

「迎えが来るのは、朝としか聞いてないので、遅く来て待たせたら申し訳ないですから」

「そんなに急がなくても良かったんですよ。お昼頃までに、お屋敷に着けば良い訳ですから」

「そうなんですか?」

「儂としたことが、良い忘れてましたか」

「モルトさんでも、忘れる事あるんですね」

「儂もいい歳ですからな」

「迎えは、誰が来るか聞いてますか?」

「それは聞いてませんが、誰が来てもカズ君の知ってる人ですよ」

「まぁそうですね。サブマスに見つかる前には、来てほしいです」

 迎えが来るのを待つこと三十分、歩く人混みの中に、見覚えのある人物が居た。

「お久し振りですカズさん」

「キウイ…さん?」

「はい。お忘れですか?」

「もちろん覚えてますが……(本当にキウイ? なんか雰囲気が……)」

「それは良かったです。本日モルトさんは、来られないんですよね?」

「ええ。儂は用事があるので、カズ君だけになります」

「分かりました。それではカズさん、参りましょう」

「あ、はい分かりました。モルトさん行ってきます」

「親しい仲だと思いますが、相手は貴族様ですから、くれぐれも粗相のないよ…」

「ここに居た! カズ」

 モルトの言葉を遮るように、ギルドの中からサブマスのイキシアが、カズを呼ぶ。

「やばっ! キウイさん早く行きましょう」(小声)

「え!? は、はい」

「モルトさんいってきます」

 カズはイキシアの呼び掛けが、聞こえないふりをして、キウイの手を取り走ってギルドを出て行く。

「あーあ、行っちゃった」

「サブマスどうしたんですか? カズ君に用事が?」

「ええ。昨日良い忘れたことがあってね。ちょうどモルトも居るし、話そうかと思ったんだけど」

「今日カズ君は、貴族様のお屋敷に行くと、言っておいたはずですが」

「その事とも関係があったんだけど」

「どういう事ですか?」

「実は……」

 サブマスのイキシアに捕まらないよう、キウイの手を引いて、なんとかギルドから離れたカズは、大通りから少し路地に入った所で止まる。

「ハァハァ……危ないとこだった」

「いったいどうしたにゃ?」

「ちょっとね、見つかりたくない人が居たもんで」

「急にカズにゃんが手を握ってきたもんで、驚いたにゃ」

「あっ! ごめん」

 カズは慌ててキウイの手を放す。

「別に嫌じゃにゃいから、放さなくてもいいのににゃ」

「ん? キウイさん」

「前にキウイで良いって、言ったじゃにゃいか」

「久し振り会ったら、言葉遣いが」

「にゃちきも貴族様に使えるメイドだし、人前だったからにゃ」

「そうなんだ。俺はその話し方が、いつものキウイって感じで好きだけど」

「にゃはは! そう言われると、にゃちきも嬉しいにゃ。カズにゃんも変わってなくて良かったにゃ」

「お屋敷の皆と別れて街に来てから、まだ数日しか経ってないしね」

「それもそうだにゃ」

「それじゃあ、お屋敷に向かおうか」

「その前に、調味料や食材等が少なくなったから、買ってくるように、アキレアに頼まれたにゃ」

「俺の迎えは、買い出しのついで?」

「本来ならお客様を迎えに来るときに、買い出しなんてしないにゃ。カズにゃんだから良いかって、アキレアが言ってたにゃ。にゃちきも、カズにゃんなら良いかと思ったにゃ。荷物持ちになるしにゃ」

「親しみがあって嬉しいけど、扱いがお客じゃなくて、使用人扱いされてるような」

「細かい事気にしないにゃ。さぁ買い物に行くにゃ」

 キウイの後を付いて行くと、いつも決まった店で買っているようで、店員とは顔見知りらしい。
 二人は足早に数件の店を回り、買い物をする。
 もちろん荷物持ちは、アイテムボックスが使えるカズだ。
 しかしカズはキウイから渡された荷物を、アイテムボックスではなく、空間収納魔法を付与した手提げ袋に入れていった。
 買い物を終えたキウイとカズは、貴族区に入る門へと向かう。

「モルトさんにギルドカードで、貴族区に入れるようにしてもらったと聞いてるにゃ。忘れたりしてないかにゃ?」

「しっかり持ってるよ。って、いつ聞いたの?」

「二日前だったか、街に来た時にゃ。それより早く行くにゃ」

 カズとキウイは門を通り、貴族区に入って行く。

「俺がまた呼ばれたってことは、マーガレットの旦那さん、デイジーとダリアのお父さんが戻って来たってこと?」

「旦那様は、二日前に帰って来たにゃ。元気になった奥様と再開して、昨日は家族水入らずで過ごしたにゃ。それで今日カズにゃんを、お屋敷に呼ぶ事にしたにゃ」

「そうか、マーガレットさんが元気そうで良かった」

「ただちょっと困った事があるにゃ」

「何か問題でもあったの?」

「あれから皆がプリンにハマって、奥様に至っては、毎食プリンを要求するのにゃ」

「それはあんまり良くないね。デザートのプリン食べたいが為に、食事が疎かになっちゃうし」

「それもそうだけど、そうじゃないにゃ」

「?」

「奥様に毎食プリンを出すと、デイジー様とダリア様にも、出さないといけなくなるにゃ」

「なるほど、二人も食事を残すようになると」

「違うにゃ」

「? どういうこと?」

「一日決まった数しか作らないから、三人に毎食出すと、にゃちき達の分が無くなってしまうなにゃ」

 キウイは一日1個食べれてたプリンが、無くなってしまうと、悲しそうな顔をしている。

「結局は、キウイが食べたいだけかい!」

 マーガレットの体調を考えて、主人思いのメイドだとカズが考えていたら、ただ自分が食べる分が無くなってしまうことを、悲しんでいたキウイに、思わずツッコミんでしまった。
 そんなやり取りをしながら、カズとキウイは、お屋敷に着いた。
 キウイの後に付いて行き、以前メイド達と一緒に食事をした部屋に行く。

「アキレア帰ってきたにゃ。カズにゃんを連れて来たにゃ」

「お帰りキウイ。お久し振りカズさん」

「お久し振りですアキレアさん」

「にゃちきは奥様達に、カズにゃんが来たことを伝えて来るにゃ」

「キウイ、言葉遣い直しなさいよ」

「分かってるにゃ…分かりました。カズさんは買ってきた物を、アキレアに渡しておいてください」

「分かったよ」

「頼んだにゃ」

「キウイったら」

「アハハっ、キウイらしいですね」

「まったく、一応カズさんは、お客様なのに」

「俺は畏まれるより、あの話し方の方が気楽で良いです」

「あまり甘やかさないでくださいよ」

「まぁまぁ。これキウイに言われた物です」

 カズは【アイテムボックス】から、キウイが買った物が入っている、手提げ袋を渡した。

「なんですかこれは?」

「その中に、キウイが買った物が入ってます」

「私をからかってるんですか? こんな小さな手提げ袋に入りませんよ。それに何も入って無いじゃないですか!」

「手を入れてみれば分かりますよ」

「何も無いのに手なんて入れ……」

 アキレアは、手提げ袋の中に手を入れて、動きを止めた。

「うわぁ! なんですかこれは?」

「空間収納(アイテムポケット)が使える手提げ袋です」

「は?」

「ですから、アイテムボックスみたいに、使える手提げ袋です。買った物はその中にあるので、出してください」

 アキレアは再度手提げ袋に手を入れて、中にある物を出した。

「その手提げ袋差し上げますので、買い出しの時にでも使ってください。あとで使う人の魔力を、記録しますから」

「差し上げる? 記録? 何を言ってるんですか!?」
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