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三章 王都オリーブ編1 王都オリーブ
144 悪徳業者の話 と 塞がった煙突
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◇◆◇◆◇
王都の朝もかなり冷え込むようになり、空気が冷たく感じるなかで、ラヴィオリ亭の部屋でカズは目を覚めす。
今日は昼に第2ギルドで、モルトに話があると言われ、どんな用事かとカズは少し考える。
う~ん……ネメシアの事は、模擬戦の時に話はついて終わったはずだし、やっぱり貴族のオリーブ・モチヅキ家に行く話かな?
考えても仕方ないか、問題になるような事はやってない……と思うから。
ベッドから出たカズは、部屋にある小さな暖炉を、覗きこみ中を確かめる。
小さな暖炉は、使用出来そうに見えたが、残念ながら煙突が塞がっている為に、火を焚くことは出来そうに無かった。
気になったカズは、朝食の際にでもラヴィオリに聞こうと思い、部屋を出て、一階の食堂に下りて行った。
「おはようカズさん」
「おはようスピラーレさん。女将さん達も、おはようございます」
朝食準備をしていたラヴィオリとフリッジも、カズに朝の挨拶をしてきた。
「女将さんちょっと聞きたいんですが、部屋にある暖炉は使えないのですか?」
「ああ、あれね。言うのを忘れてたんだけど、カズさんが泊まってる部屋の暖炉使えないのよ」
「使わない時は屋根にある煙突に、フタをしてあるとかじゃなくてですか?」
「ええ。前に煙突の修理を頼んだ人が、悪質な人でね、直すどころか、わざと煙突を塞いで、自分じゃ直せないから他を紹介するとか言って、紹介料をとったり、来た人は、直すにはかなりの料金が掛かると言って、結構な金額を請求してきたのよ」
「その話を聞くと、明らかに悪徳業者で、二人は仲間ですよね」
「そうなのよ。怪しいと思ったからモルトさんに相談したら、直ぐに調べてくれたの」
「それでその連中は、どうなったんですか?」
「モルトさんが衛兵を連れて来て、捕まえてくれたわ。他にも被害にあった人がいたみたいで、捕まえる事が出来たって、逆に感謝されちゃったわ」
「払ったお金は戻って来たんですか?」
「ええ。そこは戻って来たから良かったんだけど、塞がった煙突はそのままで、直すにしても、また黙られたらと思うとねぇ」
「そこはモルトさんに、相談しなかったんですか?」
「なんかこれ以上は、迷惑かと思っちゃってね。時期的にも、煙突を使わなかったから」
「なるほど。それが煙突の使えない訳ですか」
「言うの忘れちゃって、ごめんなさいね」
「煙突の塞がってる所を切り開ければ、暖炉は使えるんですよね?」
「そうだけど、屋根に登るのも危険で大変だし、どうやって塞いであるのか分からないから、結局は手付かずのままにしちゃったのよ」
「俺が見て来て良いですか?」
「良いけど、危ないわよ」
「昼まで時間もありますし、塞がってる所を開けられるようであれば、やってみますが良いですか?」
「大きく壊れないようであれば構わないけど、危ないわよ大丈夫?」
「一応冒険者ですし、これから寒くなって暖炉が使えないのは、厳しいですし」
「分かったわ。雨が入らないように、煙突用の取り外し出来る屋根があると思うから、塞がった煙突を開けることが出来たら、その屋根を付け直しておいて」
「分かりました」
「屋根裏から屋根に出られるから、フリ…スピラーレに案内させるよ。だからやってみな」
「はい。やるだけやってみます」
朝食を食べ終えたカズは、スピラーレの案内で屋根裏に行き、そこから屋根に出た。
「カズさん気を付けて。家の屋根かなり急なの」
「分かったよ。スピラーレさんは、手伝いに戻って良いよ。案内してくれて、ありがとう」
「本当に気を付けてねカズさん」
「ああ」
スピラーレは一階の食堂に戻り、カズさん急な屋根に出て、塞がっている煙突に向かう。
カズが泊まってる部屋にある、暖炉に繋がる煙突を見ると、鉄板を乗っけて、外れないようにガッチリと固めてあり、どう見ても鉄板だけを取り外すのは無理そうだった。
カズは煙突の状態と鉄板の厚さを見て、無理矢理壊して外すより、鉄板を煙突の穴と同じ大きさに切り抜けば良いと考えた。
そうすれば残った鉄板で、煙突その物が補強された状態になると思ったからだ。
カズは煙突の先に付いている、雨避けの屋根を壊さないようにして、塞いでいる鉄板に、中指と人差し指の二本で触れて、指先から極細にした〈ウォーターカッター〉を放出して、1㎝程の厚さがある鉄板を切り抜いていく。
煙突を傷付けないように、ゆっくりと鉄板が切れる程度の威力に抑え、切断していくこと十数分、煙突の穴とほぼ同じ大きさに切り抜いた鉄板は、カズの泊まってる部屋の暖炉に落ち、もうもうと煤(すす)とホコリを撒き散らした。
突然大きな音を聞いたラヴィオリとスピラーレが、階段をかけ上がって来る。
二人が三階に着くと、カズも屋根裏から下りて来たとこだった。
「今のは何の音だい!?」
「カズさんが落ちたんじゃ?」
「落ちてないですよ。煙突を塞いでいた鉄板を、煙突の穴と同じ大きさに切り抜いたんですが、それが部屋の暖炉に落ちてしまったんです」
三人は、カズが泊まっている部屋の扉を開けると、まだ煤(すす)とホコリが巻き上がった状態だった。
スピラーレは早足で中に入り、窓を開け持っていたお盆で扇ぎ、舞った煤(すす)とホコリを外に出していた。
部屋で舞っていた煤(すす)ホコリを外に出したスピラーレは、ようやく口を開き息を吐いた。
「ぷファー…凄い煤(すす)ホコリ」
「暖炉と煙突の中に溜まっていたのが、一気に舞い上がったんだね」
ラヴィオリは暖炉に落ちている、切り抜かれた鉄板を拾い上げた。
「これが塞いでいた鉄板かい?」
「ええそうです。切り抜いた時に、落ちないようにして無かったんです。すいません」
「別にカズさんを責めたりはしないよ。むしろ煙突を使えるようにしてくれたんだから、ありがたいさ」
「汚れた部屋は、俺が掃除しますから」
「大丈夫! わたしがやります」
「でも汚した原因は俺だから」
「掃除は、わたしの仕事ですから」
「だったら二人でやれば良いさ。私ゃあ食堂に戻ってるから」
カズとスピラーレを残し、ラヴィオリは一階の食堂へと戻っていった。
「さてと、やりますか!」
スピラーレは腕まくりをする。
「スピラーレさん良いよ。煤(すす)で、黒くなっちゃうから」
「だったら早く掃除を終わらせないと、その後で、汚れた服を洗わないといけないしね」
カズの静止を聞かず、スピラーレが暖炉の中に入っていく。
「あの、だから、汚れを取り除ける魔法があるの」
「え?」
カズの言葉を聞いたスピラーレは、暖炉から出てきた。
既にスピラーレの服は、あちこち黒く汚れていた。
「掃除の魔法ですか?」
「まぁそんなとこ(メイドのアキレアさんが居たら、掃除で魔法は使わない! とか言われそうだな)」
「なら先に言ってくださいよ」
「やる気満々だったし、話の途中で、暖炉に入って行っちゃうんだもの」
「だって、わたしのお仕事だもん」
「じゃあ先ずは、暖炉と煙突の煤(すす)汚れをキレイにするよ(たぶん大丈夫だと思うけど)」
カズは暖炉と繋がっている煙突に手をかざし〈クリア〉の魔法を数回使った。
すると煙突内と暖炉に付いていた黒い煤(すす)は、瞬く間に無くなり、いつでも使用可能な状態になった。
今度はそのままに部屋の中を対象に、数回〈クリア〉の魔法を使い部屋をキレイにした。
それをスピラーレは、呆然と立ちつくし見ていた。
「スゴ~イ! やっぱ魔法って良いなぁ」
「スピラーレさんにはこっちを使うよ〈クリーン〉」
「うわっ!」
スピラーレにクリーンの魔法を使うと、煤(すす)で黒く汚れていた服や顔は、瞬く間に汚れが消え、キレイで清潔な状態になった。
カズは自分自身に〈クリア〉を使い、汚れた衣服をキレイにした。
「うわぁ~! 新しい服みたいに、キレイになってる! でもこれじゃあ、わたしのお仕事無くなっちゃうよ」
「魔法を使うのは、今回だけだから。元はと言えば、俺が切り抜いた鉄板を、落ちないようにしてなかったのが悪かったから」
「ふ~ん……今日カズさんの部屋を、掃除するお仕事取られちゃったな」
「取られちゃったって、それは……」
「お詫びにカズさんには、買い物に付き合ってもらおうかな」
「それが目的で、そんな言い方したの」
「えへへ」
「買い物の手伝いは構わないけど、俺昼までに、冒険者ギルドに行かないとならないから」
「そう言えば、そんな話を、お母さんがしてたっけ」
「じゃあスピラーレさん、これ使ってみてよ」
カズは【アイテムボックス】から、ある物を取り出した。
王都の朝もかなり冷え込むようになり、空気が冷たく感じるなかで、ラヴィオリ亭の部屋でカズは目を覚めす。
今日は昼に第2ギルドで、モルトに話があると言われ、どんな用事かとカズは少し考える。
う~ん……ネメシアの事は、模擬戦の時に話はついて終わったはずだし、やっぱり貴族のオリーブ・モチヅキ家に行く話かな?
考えても仕方ないか、問題になるような事はやってない……と思うから。
ベッドから出たカズは、部屋にある小さな暖炉を、覗きこみ中を確かめる。
小さな暖炉は、使用出来そうに見えたが、残念ながら煙突が塞がっている為に、火を焚くことは出来そうに無かった。
気になったカズは、朝食の際にでもラヴィオリに聞こうと思い、部屋を出て、一階の食堂に下りて行った。
「おはようカズさん」
「おはようスピラーレさん。女将さん達も、おはようございます」
朝食準備をしていたラヴィオリとフリッジも、カズに朝の挨拶をしてきた。
「女将さんちょっと聞きたいんですが、部屋にある暖炉は使えないのですか?」
「ああ、あれね。言うのを忘れてたんだけど、カズさんが泊まってる部屋の暖炉使えないのよ」
「使わない時は屋根にある煙突に、フタをしてあるとかじゃなくてですか?」
「ええ。前に煙突の修理を頼んだ人が、悪質な人でね、直すどころか、わざと煙突を塞いで、自分じゃ直せないから他を紹介するとか言って、紹介料をとったり、来た人は、直すにはかなりの料金が掛かると言って、結構な金額を請求してきたのよ」
「その話を聞くと、明らかに悪徳業者で、二人は仲間ですよね」
「そうなのよ。怪しいと思ったからモルトさんに相談したら、直ぐに調べてくれたの」
「それでその連中は、どうなったんですか?」
「モルトさんが衛兵を連れて来て、捕まえてくれたわ。他にも被害にあった人がいたみたいで、捕まえる事が出来たって、逆に感謝されちゃったわ」
「払ったお金は戻って来たんですか?」
「ええ。そこは戻って来たから良かったんだけど、塞がった煙突はそのままで、直すにしても、また黙られたらと思うとねぇ」
「そこはモルトさんに、相談しなかったんですか?」
「なんかこれ以上は、迷惑かと思っちゃってね。時期的にも、煙突を使わなかったから」
「なるほど。それが煙突の使えない訳ですか」
「言うの忘れちゃって、ごめんなさいね」
「煙突の塞がってる所を切り開ければ、暖炉は使えるんですよね?」
「そうだけど、屋根に登るのも危険で大変だし、どうやって塞いであるのか分からないから、結局は手付かずのままにしちゃったのよ」
「俺が見て来て良いですか?」
「良いけど、危ないわよ」
「昼まで時間もありますし、塞がってる所を開けられるようであれば、やってみますが良いですか?」
「大きく壊れないようであれば構わないけど、危ないわよ大丈夫?」
「一応冒険者ですし、これから寒くなって暖炉が使えないのは、厳しいですし」
「分かったわ。雨が入らないように、煙突用の取り外し出来る屋根があると思うから、塞がった煙突を開けることが出来たら、その屋根を付け直しておいて」
「分かりました」
「屋根裏から屋根に出られるから、フリ…スピラーレに案内させるよ。だからやってみな」
「はい。やるだけやってみます」
朝食を食べ終えたカズは、スピラーレの案内で屋根裏に行き、そこから屋根に出た。
「カズさん気を付けて。家の屋根かなり急なの」
「分かったよ。スピラーレさんは、手伝いに戻って良いよ。案内してくれて、ありがとう」
「本当に気を付けてねカズさん」
「ああ」
スピラーレは一階の食堂に戻り、カズさん急な屋根に出て、塞がっている煙突に向かう。
カズが泊まってる部屋にある、暖炉に繋がる煙突を見ると、鉄板を乗っけて、外れないようにガッチリと固めてあり、どう見ても鉄板だけを取り外すのは無理そうだった。
カズは煙突の状態と鉄板の厚さを見て、無理矢理壊して外すより、鉄板を煙突の穴と同じ大きさに切り抜けば良いと考えた。
そうすれば残った鉄板で、煙突その物が補強された状態になると思ったからだ。
カズは煙突の先に付いている、雨避けの屋根を壊さないようにして、塞いでいる鉄板に、中指と人差し指の二本で触れて、指先から極細にした〈ウォーターカッター〉を放出して、1㎝程の厚さがある鉄板を切り抜いていく。
煙突を傷付けないように、ゆっくりと鉄板が切れる程度の威力に抑え、切断していくこと十数分、煙突の穴とほぼ同じ大きさに切り抜いた鉄板は、カズの泊まってる部屋の暖炉に落ち、もうもうと煤(すす)とホコリを撒き散らした。
突然大きな音を聞いたラヴィオリとスピラーレが、階段をかけ上がって来る。
二人が三階に着くと、カズも屋根裏から下りて来たとこだった。
「今のは何の音だい!?」
「カズさんが落ちたんじゃ?」
「落ちてないですよ。煙突を塞いでいた鉄板を、煙突の穴と同じ大きさに切り抜いたんですが、それが部屋の暖炉に落ちてしまったんです」
三人は、カズが泊まっている部屋の扉を開けると、まだ煤(すす)とホコリが巻き上がった状態だった。
スピラーレは早足で中に入り、窓を開け持っていたお盆で扇ぎ、舞った煤(すす)とホコリを外に出していた。
部屋で舞っていた煤(すす)ホコリを外に出したスピラーレは、ようやく口を開き息を吐いた。
「ぷファー…凄い煤(すす)ホコリ」
「暖炉と煙突の中に溜まっていたのが、一気に舞い上がったんだね」
ラヴィオリは暖炉に落ちている、切り抜かれた鉄板を拾い上げた。
「これが塞いでいた鉄板かい?」
「ええそうです。切り抜いた時に、落ちないようにして無かったんです。すいません」
「別にカズさんを責めたりはしないよ。むしろ煙突を使えるようにしてくれたんだから、ありがたいさ」
「汚れた部屋は、俺が掃除しますから」
「大丈夫! わたしがやります」
「でも汚した原因は俺だから」
「掃除は、わたしの仕事ですから」
「だったら二人でやれば良いさ。私ゃあ食堂に戻ってるから」
カズとスピラーレを残し、ラヴィオリは一階の食堂へと戻っていった。
「さてと、やりますか!」
スピラーレは腕まくりをする。
「スピラーレさん良いよ。煤(すす)で、黒くなっちゃうから」
「だったら早く掃除を終わらせないと、その後で、汚れた服を洗わないといけないしね」
カズの静止を聞かず、スピラーレが暖炉の中に入っていく。
「あの、だから、汚れを取り除ける魔法があるの」
「え?」
カズの言葉を聞いたスピラーレは、暖炉から出てきた。
既にスピラーレの服は、あちこち黒く汚れていた。
「掃除の魔法ですか?」
「まぁそんなとこ(メイドのアキレアさんが居たら、掃除で魔法は使わない! とか言われそうだな)」
「なら先に言ってくださいよ」
「やる気満々だったし、話の途中で、暖炉に入って行っちゃうんだもの」
「だって、わたしのお仕事だもん」
「じゃあ先ずは、暖炉と煙突の煤(すす)汚れをキレイにするよ(たぶん大丈夫だと思うけど)」
カズは暖炉と繋がっている煙突に手をかざし〈クリア〉の魔法を数回使った。
すると煙突内と暖炉に付いていた黒い煤(すす)は、瞬く間に無くなり、いつでも使用可能な状態になった。
今度はそのままに部屋の中を対象に、数回〈クリア〉の魔法を使い部屋をキレイにした。
それをスピラーレは、呆然と立ちつくし見ていた。
「スゴ~イ! やっぱ魔法って良いなぁ」
「スピラーレさんにはこっちを使うよ〈クリーン〉」
「うわっ!」
スピラーレにクリーンの魔法を使うと、煤(すす)で黒く汚れていた服や顔は、瞬く間に汚れが消え、キレイで清潔な状態になった。
カズは自分自身に〈クリア〉を使い、汚れた衣服をキレイにした。
「うわぁ~! 新しい服みたいに、キレイになってる! でもこれじゃあ、わたしのお仕事無くなっちゃうよ」
「魔法を使うのは、今回だけだから。元はと言えば、俺が切り抜いた鉄板を、落ちないようにしてなかったのが悪かったから」
「ふ~ん……今日カズさんの部屋を、掃除するお仕事取られちゃったな」
「取られちゃったって、それは……」
「お詫びにカズさんには、買い物に付き合ってもらおうかな」
「それが目的で、そんな言い方したの」
「えへへ」
「買い物の手伝いは構わないけど、俺昼までに、冒険者ギルドに行かないとならないから」
「そう言えば、そんな話を、お母さんがしてたっけ」
「じゃあスピラーレさん、これ使ってみてよ」
カズは【アイテムボックス】から、ある物を取り出した。
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