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三章 王都オリーブ編1 王都オリーブ

143 空間収納魔法の付与!?

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 カズがアイテムボックスから出した『隔離された秘密部屋』という名のトレカは、書いてあるコストを払うと、自分がコントロールしているカードをゲーム外に取り除く事ができ、またコストを払うと場に戻せると効果がある。

 カズはこのトレカを使い、ただの手提げ袋をアイテムボックスのように、空間収納出来るようにならないか、試すことにした。
 カズは『隔離された秘密部屋』のトレカに魔力を流し使用した。
 トレカは消えると、手には代わりに鍵が握られており、目の前に扉が現れた。 
 カズは扉を開け中を見ると、そこには何も無い空間が広がっていた。(ドーム球場くらいの広さ)

 おおかたこの扉も、五分程すれば消えてしまうだろうから、中を調べるのは危険だな。
 下手をすれば閉じ込められて、出てこられなくなってしまうから、中に入らずに、先ずは《鑑定》と《分析》だ。



 【隔離された秘密部屋】『レジェンド級』
 ・この部屋の中にあるものは、外部からの影響を受けない。
 ・鍵を持つ者のみが扉を開けられ、中い居る時に制限時間が経過しても、閉じ込めれる事はない。(外の扉は消えるが、鍵を持っている為に、中の扉は消える事はなく、開けて外に出る事は可能)
 ・内部時間の流れは、外部と同じ。
 ・鍵が破壊されると、扉内の空間が消滅する。(中にある物も消えて無くなる)
 ・五分が経過すると、鍵と扉は消えカードに戻る。



 これはまた随分と効果が変わったな。
 実際ゲームのルール上だと、このトレカは強くはないし、R(レア)だけど価値的に高くはないんだよな。
 他のトレカと組み合わせないと使えないし、使用するコストも重かったから。
 それが『レジェンド級』って、まぁこの効果なら当然なのかな。

「うまくいったのか?」

「トレカの効果を、そのまま手提げ袋に付与するのは無理そうだ。ただこの古書に空間魔法とか、収納魔法として出てくるかどうかだな。おそらくトレカと同じ効果としては、出てこないと思うから」

 カズは古書を開き、新たな魔法が載ったか確かめる。

「う~ん……やっぱり無いか?」

「アーティファクト(遺物)だからといって、そう都合良くはいかぬだろ」

「そうだよな、いくら曖昧な世界だからって……ん!?」

「まさか本当に記載されたのか?」

「読むからちょっと待って」

 カズは魔法の古書に新たに記載された、空間や収納と書かれたページを見て、魔力が少ない者でも、使用出来るか考えながら読む。



ーーーーーーーーーー


 ・空間にスペースを作る。
 ・始めに使用した魔力で、空間の大きさが決まり……
 ・空間を作るには、出入口となる物や場所が必要で……
 ・使用者の魔力を記録す……
 ・空間に出し入れ(出入り)する際に魔力を……


ーーーーーーーーーー



 これなら手提げ袋に、空間収納を付与出来そうだ。

 カズは手提げ袋の一つに、少量の魔力を少しずつ流し込めて、新たな魔法の『アイテムポケット』を、手提げ袋に付与をする。(ちなみにカズは、スキルのアイテムボックスが、最低でも荷馬車二台分程になると聞いた事があるから、何となくそれより少ない容量だと、ポケットかと考え魔法名をこれにした)


 《付与》〈アイテムポケット〉

 三分くらい手提げ袋に魔力を流し込め続けると、付与が完了した。
 カズは手提げ袋の中を見るが、特に変わった様子はなく、見た目に変化は無い。
 カズは付与した手提げ袋に《鑑定》と《分析》を使用して調べた。



 【布製の手提げ袋】『一級』
 ・空間収納魔法が付与されており、荷馬車約半台分(約70㎏)入る容量がある。
 ・時間の流れは、外部と同じ。
 ・物を出し入れする際に、持ち主の魔力を使用する。
 ・袋の形状がもたれなくなった場合は、使用不可能となる。
 ・手提げ袋に付与されている魔力量を減らし、特定人物の魔力を記録することで、その者しか使用出来ないようにする事も可能。(ただしそれが出来るのは、空間収納魔法を付与した者だけ。その場合、使用出来る内部空間の容量も減る)


 出来た! ただ出し入れする際に、どれくらい魔力を使うかだよな。
 これをスピラーレに渡しても、使う時に魔力が足りなくなって倒れても大変だからな。
 内部空間の容量で、出し入れする際に使う魔力が変わるか分からないけど、これよりも内部容量が少ない物が出来るか、やってみるよう。
 スピラーレの魔力量でも、使える物が出来たら良いんだけど。

 このあとカズは、残りの手提げ袋に込める魔力量を変えながら、アイテムポケットを付与していった。
 一度アイテムポケットと、スキルの魔力自動回復(微少)を付与してみようとしたが失敗して、手提げ袋が消滅してしまった。
 どこまで容量を上げられるか、込める魔力を増やして試したりもしたが、やはり付与に耐えられず、手提げ袋が消滅した。
 結局アイテムポケットを付与出来た手提げ袋は、全部で三つになった。
 最初の一つ目が『容量約70㎏』二つ目が『容量約50㎏』三つ目が『容量約90』で、容量100㎏を超える物は出来なかった。

 ずっと座り続けて、作業をしていたカズは、立ち上り背伸びをして一息つき、付与した手提げ袋を【アイテムボックス】に入れた。

「終わったのか?」

「ああ。時間が掛かったが、なんとか出来たよ」

「そんな物に空間魔法の付与など、良く出来たものだ」

「空間収納魔法! 白真も欲しいか?」

「別にいらん。入れて運ぶような物は、我には無いからな」

「そうか。かなり日も傾いてきたし、もう少ししたら、王都に戻るか」

「カズが王都に戻ると言うなら、我も塒(ねぐら)に戻るとしよう」

 カズは白真と話ながらゆっくりと、白真の塒(ねぐら)戻る。

「いつでも来るが良い、我が主よ」

「またな〈ゲート〉」

 ゲートの魔法により、山脈と王都が空間で繋がり、カズはそこを通り抜け、白真と別れた。
 王都の人が居ない路地裏に出たカズは、防寒着を【アイテムボックス】にしまい、狭い道を人目を避けながら、ラヴィオリ亭のある通りに出る。
 ラヴィオリ亭に歩き向かっていると、両手に荷物を持ったフリッジを見つけた。

「買い出しかい? フリッジ君」

「あ、カズさん。今戻られたんですか?」

「ああ。荷物を少し持とう」

 フリッジから荷物を半分受け取るカズ。

「ありがとうございます。昼間に大勢冒険者の方が来て、食材が少なくなってしまったので、買いに出てたんです」

「スピラーレ…妹さんじゃあ、この量は持てないからね」

「はい。だから今日は、ボクが買い出しに行ってたんです。話は変わりますが、お昼頃にモルトさんが来まして、カズさんに伝言を頼んでました」

「モルトさんが伝言を?」

「はい。ボクは聞いて無いので分かりませんが、母さんに話してました」

「戻ったら女将さんに聞いてみるよ。ありがとう」

「いいえ。それとモルトさんが、ボクと話をしてくれまして、以前カズさんに相談した事を聞いてれました。少ししか話す時間が無かったのですが、やりたいことが見えた気がしました」

「それは良かったね。両親には話したの?」

「はい『若い内に試すのも良いだろう』と言ってくれましたから、これからは家の手伝いを減らして、自分のやりたい事を試してみようと」

 フリッジの表情は、以前話した時より明るくなっていた。

「無理しない程度にね」

「モルトさんに、ボクの事を話してくれたのって、カズさんなんですよね。ありがとうございます」

「大した事はしてないよ。ちょっとした切っ掛けをつくったに過ぎないから、あとはフリッジ君自身がどうするかだ」

 カズとフリッジの話が終わる頃に、ラヴィオリ亭に着いた。
 二人は中に入り、カズは持っていた荷物を、調理場入口近くの台に載せて、空いている席に座り夕食を頼んだ。
 夕食を運んで来たラヴィオリは、モルトからの伝言をカズに伝えた。
 用件は明日話をしたいので、昼には第2ギルドに居てくれとの事だった。
 ラヴィオリに伝言のお礼を言って、出された夕食を済ませる。
 ガルガリッネが、まだ機嫌が悪いかと思ったが、調理場から出て来はせず、会うことはなかった。
 スピラーレとも顔を会わせたが、配膳や片付けの仕事中だったので、手提げ袋の話をすることは出来なかった。
 夕食を済ませたカズは、三階の泊まっている部屋へと行き【アイテムボックス】から、アーティファクトだと白真に言われた魔法の古書を出した。
 新たに記載された魔法が書かれたページを読んだ後で、今日一日の出来事を思い返しながら、ベッドで横になり寝た。





≪トレーディングカード説明≫

 ・今回使用したトレカ。
 ・実際に書かれているレア度と名前と効果。
 ・コストは《》内に表示。


 R 《9》【隔離された秘密部屋】 : 同名のカードは、場に1枚しか出せない。
 ・《6》: 自分がコントロールする、場に出ているカードを1枚選び取り除く。
 ・《6》: このカードの効果で取り除いたカードを1枚を選び場に戻す。(この効果は、カードをプレイしたことにはならなので、プレイして場に出た場合と書かれた効果は、使用できない)
 ・このカードが場から放れた場合、取り除かれたカードは、このゲーム内では使用出来ない。
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