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三章 王都オリーブ編1 王都オリーブ

139 白真(フロストドラゴン)の居る山脈へ

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 スピラーレの気持ちを聞いたラヴィオリは、とても嬉しい気持ちになった。

「そうだね。焦らずゆっくりと出来るようになればいいから。ありがとうスピラーレ」

「スピラーレ……父さんはうれしいぞ! そんなことを、考えてくれたなんて。こんな良い娘をもったおれは幸せだ。男なんてケダモノだから、絶対娘に近付けさせん。嫁なんか行かず、ずっと家に居て良いんだから」

 ガルガリッネの話を聞いていたラヴィオリが、その親バカっぷりに、とうとうキレてしまった。

「あんた!! いい加減にしな! 娘が可愛いのは分かるが、度が過ぎるんだよ! 娘を束縛するんじゃないよ! あんたは暫く、スピラーレに近付くんじゃないよ!」

「そんなラヴィオリ…」

「黙んな! そこまでやらなければ、分からないのは、あんただろーが!」

「あ……ぅ……」

「返事は!」

「は、はい……」

 ガルガリッネは見るからに縮こまって、背中を丸めたまま、奥の調理場に入っていった。

「お母さん、ちょっと言い過ぎじゃ?」

「良いの、最近まったく反省しなかったから。スピラーレも当分の間は、お父さんと口を利いてあげなくていいからね」

「う、うん。」

「あ! ごめんなさいカズさん。みっともないとこ見せちゃって」

「い、いいえ全然……(こ、怖い)」

「ねぇお母さん、わたしはそんなお父さんでも嫌いにならないからって、言ってあげて」

「スピラーレ……分かったよ。少し様子を見てからね」

 ラヴィオリはガルガリッネの居る調理場に、様子を見に行った。

「スピラーレさん、俺もう行くよ。朝食美味しかったから、また作ってよ」

「はい! 今度はお世辞じゃなく、本当に美味しいって、言わせてみせますから」

「楽しみにしてる。いってきます」

「いってらっしゃい」

 スピラーレに挨拶をして、ラヴィオリ亭を出たカズは、大通りとは逆方に向かい、人の来ない裏路地を探し歩く。

 しかし朝っぱらから、とんだ事に巻き込まれた。
 朝食を作ったのが、スピラーレだとは思わなかった。
 またガルガリッネの親父さんに妬まれそうで、宿に戻りずらいな。

 今朝の出来事を考えながら【マップ】を見て、人の居ない路地を探しながら、先に《念話》で白真に連絡する。

「『おーい、白真聞こえてるか?』」

「『……』」

「『あれ? 距離がありすぎて無理なのかな? おーい、おーい白真!』」

「『! カズか?』」

「『なんだ通じるじゃないか!』」

「『すまんな。我は寝ていた』」

「『それは悪かった。今からそっちに行くが、北の山脈に居るか?』」

「『北の山脈……? ああここか! 居るぞ。カズは王都に居るのか?』」

「『そうだけど』」

「『なら来るまで寝てるから、来たら起こしてくれ』」

 カズが来るまで寝てると言って、白真が《念話》を切ったので、カズは【アイテムボックス】から、以前に買った防寒着出して、それを着てから〈ゲート〉を使い、王都から白真の居る北の山脈に移動した。

「白真来たぞ」

「……カズ? カズ! うおっ! 王都に居たんじゃないのか?」

「王都に居たけど、今から行くって言ったでしょ」

「どうやって来たんだ? 飛んで来るにしても速すぎるではないか!」

「あれ? ゲートの魔法使えるって言ってなかったっけ?

「ゲート?」

「二ヶ所の空間を繋げて、移動出来る魔法のことなんだけど」

「テレポート(瞬間移動)のことか?」

「俺の知る瞬間移…テレポートとは違うかな」

「遠く離れた場所へ、一瞬で移動出来るのならば、同じではないか?」

「一瞬で移動するのは同じようなものだけど『テレポート』は自分か、自分の触れている物や人と一緒に移動することで『ゲート』は、今居る場所と目的地に扉のような門のようなものを作り、そこを通って移動すること」

「テレポートを使えん我には、よく分からんが、遠く離れた場所を、一瞬で移動出来ることに関しては、変わりないのではないか?」

「俺の知ってるテレポートと、この世界のテレポートが、同じかどうかは知らないけど、面倒だから似たようなものってことで良いよ(まぁ知ってると言っても、アニメやラノベ等の、二次元の世界の話だけど)」

「そうか」

「テレポートって魔法があるのは、今初めて知ったけど」

「そんなことより、今日はどうしたんだ? 我に会いたくなって来たのか?」

「ちょっと人の来ない所で、試したいことがあってね」

「ほぅ。魔法か?」

「まぁそれもあるけど」

「カズの魔法か、それはおもいしろそうだな」

「ここなら人も居ないし、白真の噂があるから、この時期は誰も来ないと思って来たんだけど、どこかこの山脈で開けた所ないか?」

「開けた所か……! それならこの先に、火口になっている場所があるから、そこなら山を登ってくる者がいたとしても、すぐに気付くことはなかろう」

「ならそこに行こう(一応マップを見てれば、誰かが来たら分かるからな)」

 飛び立つ白真に案内されて、山脈の一部にある火口に向かい〈フライ〉の魔法を使い飛んで行く。
 少しすると目的地の火口が見えたと、白真が言ってきた。
 上空から見れば、直径500m程の火口らしき場所が見えたが、雪が積もりハッキリとは分からない。
 カズは取りあえず、雪の隙間からうっすらと見えている岩場に降りた。

「どうだカズ。ここなら広くて魔法を試すには、うってつけの場所だろ」

「一面雪で真っ白だな。それと火口って言ったけど、噴火しないよな?」

「大丈夫であろう。我がここで本気を出せば分からんがな!」

「白真が本気にならなければ、噴火しないなら大丈夫かな」

 カズはじっと白真を見る。

「なんだ我の手伝いが必要か? 仕方ない、カズの為ならば…」

「お! これから試す魔法の的に、自ら喜んでなってくれるとは思わなかった。威力の程がどの程度か、耐えて理解してくれる者がいなければ、手加減の程度が分からないから助かるよ」

「……今なんて言ったのだ?」

「何が?」

「我が『的』になると聞こえたのだが、気のせいか?」

「言ったよ。手伝いをしてくれるんでしょ?」

「……イヤイヤイヤイヤ」

 白真が目を見開いて、何度も首を横に振り、カズが言う事を否定した。

「えー」

「えー、ではない! 契約してるカズの従魔である我を殺すきか!」

「死なない程度にするからさ」

「威力の程も分からん魔法の的になどされたら、命が幾つあっても足りんわ!」

「何言ってんだよ。俺が以前に白真を攻撃した、ライトニングボルトを防いだし、耐えたじゃないか」

「防いだ? 何を言っておる、我のアイスシールドを貫通してきたではないか!」

「あれー、そうだっけか?」

「そのあと重力魔法で、地面に押し付けておきながら忘れたと言うのか!」

 カズはなんの事かと、明後日の方向を向きとぼける。

「あの時は、制御出来る程度の威力しか出さなかったんだけどな。重力魔法もどうなるか分からなかったかし。 まあそれに耐えたんだから、大丈夫だと思うけど」(ボソボソ)

「ボソボソと小声で言った様だが、聞こえたぞ! 制御出来る程度の威力に抑えただと? あの時我を攻撃したのは、何割程度の威力だったのだ?」

「う~ん……三割から四割くらいかな? たぶん」

「な……」

 白真がまたもや目を見開き、今度は口を大きく開けたまま固まってしまった。

「そんなことはどうでもいいから…」

「どうでもよくないぞ! 何もしてないのに、あんな痛い目にあいたくはない!」

「分かったって。的にはしないから」

「本当にか?」

「本当に」

「嘘ではないな」

「的にはしないって」

「本当だな! 絶対だな!」

「あぁ……あ!」

「な、なんだ! 嘘だったのか!」

「違うって。一応、白真のテリトリー・クラウドを使って、誰かが来たら分かるように、警戒しておいてくれよ。ここの火口は、雲で見えなくしないようにしてな」

「そんなことか。任せておけ、的にされるよりましだ」

 白真は的にされずにすんだとホッとして〈テリトリー・クラウド〉を使い、山脈全体に雲をはった。
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