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三章 王都オリーブ編1 王都オリーブ

138 スピラーレ 両親への気持ち

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 スピラーレと親しく話していた為に、ガルガリッネの親バカっぷりが発揮して、今日の夕食を取るのが怖くなったカズは、三階の部屋に戻り、アイテムボックスに入っている食べ物で、夕食を済ませようと思った。
 部屋には油燃料のランプ置いてあるが、それでは薄暗いので、カズは以前に作ったライトの魔法が付与してあるソーサリーカードを使った。
 使用する魔力を弱くし、長い間点いてるようにし、明るく発光しているカードを、壁の高い所に引っ掛けた。
 何か食べようと思い、アイテムボックス内のリストを表示させ見ていると、部屋の扉がノックされた。

「カズさん、ボクです。フリッジです」

「どうぞ」

 カズが入室の許可をすると、フリッジが料理を持って入ってきた。

「どうしたの? 何か用事?」

「母さんがこれを、買い物を手伝ってくれたお礼と、父さんが迷惑をかけたお詫びだそうです」

「それはありがたいけど……」

「この料理を作ったのは、母さんとスピラーレですから、安心して食べてください」

「ありがとう。遠慮なくごちそうになるよ」

「ここ明るいですね。あれはソーサリーカードですか?」

「そうだよ」

「それじゃあ、料理置いていきます。あとでお皿を取りにきますので」

「分かった。ありがとう」

 フリッジが、部屋にある一人用のテーブルに、料理を置いて部屋を出ていった。

 わざわざ料理を届けてくれて、気を使わせちゃったな。
 せっかく持ってきてくれたんだから、温かいうちに食べよう。
 持ってきた料理は、定番のスパミート(ミートソーススパゲッティ)と、肉と野菜のカルパッチョ風のサラダだった。
 スパミートは、初めて食べた時より味付けを薄くしてくれてあり、胃もたれしなさそうで、食べやすかった。
 カルパッチョ風のサラダも、サッパリして良い感じだった。
 一階の食堂で、他の人が食べてるサラダを見たときは、トロッとしたソースがかかり味が濃そうで、サラダを食べる気にならなかったが、持ってきてくれたサラダは美味しかった。
 今日は諦めてたが、まともな夕食が取れて良かった。
 完全に毒でも盛られると思ったからな。
 娘の気持ちを分かるようになったら、余計に親バカになったようだし、男親ってそんなもんなのか?
 明日の朝食は危ないかも…… 
 よし、明日は朝食は取らずに出掛けよう! また『娘と気安く……』とか言われそうだから。

 持ってきた料理を食べ終わって少しすると、部屋の扉がノックされたので返事をすると、今度はスピラーレが入ってきた。

「お皿を取りに来ました」

「わざわざありがとね。俺が下で食べてれば、こんな手間をかける必要もなかったのに」

「いえ、お父さんが悪いですから。お母さんも買い物を手伝ってくれたのに、食堂じゃなくて、薄暗い部屋で食べさせて、ごめんなさいって」

「俺が勝手に部屋に戻ってきただけなのに、夕食を用意してくれて、ありがとうって言っといて」

「うん、分かったわ。お母さんはランプの明かりだけじゃ、薄暗いって言ってたけど、ここ明るいよね」

「ライトの魔法が込められてる、ソーサリーカードを使って、明るくしてるからね」

「ライト魔法って、こんなに近付いて見れるくらいだから、そこまで明るくないんだ」

「ライトの魔法を見たことあるの?」

「王都の大通りにある街灯は、殆んどがライトの魔法を使ってるって聞いたことあるわ。でも街灯は、これよりもっと明るいはずだけど?」

「今使ってるのは、使用する際に魔力を抑えたから、それほど明るくないんだよ」

「へぇ! わたし魔法のことは、あんまり知らないから。使えたら便利かも知れないけど、わたしだったら、アイテムボックスが使いたいな。お買い物に便利だし」

 ライトの魔法で光っている、ソーサリーカードを見ていたスピラーレが、カズをチラチラと見る。

「ま、まあ俺が居るときだったら、買い物手伝うから、いつでも言って。あと料理美味しかったよ」

「ありがとうカズさん!」

「ハハ……(今日の買い物で、味をしめたかな)」

 スピラーレはお皿を持って、一階の食堂に下りていった。

 さて、明日試してみるトレカ(トレーディングカードゲーム)を分けておくか。
 取りあえず、二枚以上あるダブってる物と、トレカに書かれてる効果と、同じか似たような効果が発動する物を選ぼう。
 魔法系と武器系に、あとはモンスターやクリーチャーのトレカだな。
 最初は危なくない程度に試そう。
 威力の程も分からないから……やっぱり白真に的になってもらうか! 嫌がるかな? やっぱ嫌がるよな。

 このあと俺は、試せそうなトレカを選り分けて、別にしてから【アイテムボックス】にしまった。
 そのあとアイテムボックス内のリストを表示させて、しっかり分けられてるか確かめてから、寝ることにした。
 夕方買い物に出て、フリッジやスピラーレと話していたら、少し気分がスッキリした。


 ◇◆◇◆◇


 昨日あった事を引きずることなく、目覚めは悪くなかったので、やっぱり一階の食堂で朝食を取ろうと思った。
 だが昨日の事が頭をよぎり、毒でも盛られないかと、ちょっと不安になる。

「おはようございます。女将さん、ガルガリッネさん」

「おはようカズさん」

「……おう」

「おはようカズさん!」

「おはようスピラーレさん。フリッジ君は居ないの?」

「兄さんは朝食の配達に行ってるの」

「朝食の配達?」

「前日に常連の人から頼まれて、朝食を持って行くことがあるのよ」

「そうなんですか女将さん?」

「ああ、たまにだけどね。常連さんだから断るのも悪いし、近く人だから受けたの」

「朝大変になるから、広めなくていいからね。今、朝食を持ってくるから、適当に空いてる席に座って待っててくれ」

「ええ、分かりました」

 数分すると六枚切り程の厚さの食パンに、薄切りにして軽く焼いた薫製肉(ベーコン)と、あの濃厚なチーズを少し乗せた物が出てきた。

 今日は少し濃い目の朝食だが、たまには良いかと食べる。
 濃厚なチーズが乗ってるとはいえ少量なので、そこまでくどくはないが、薫製肉(ベーコン)とチーズで多少は脂っこい。
 一緒にサッパリしたコンソメスープが付いてきたので、今から雪山に行く俺には悪くはない朝食だ。

「あの…カズさん。朝食のお味はとうでしたか?」

「俺にはちょっと濃いかと思いましたけど、遠出するので、このくらいが丁度良い思いました。一緒に付いていたスープで、口の中がサッパリ出来ましたし、美味しかったですよ」

「そ、そうですか……パンに薫製肉とチーズの組み合わせは、わたしが考えて、量を決めたんですけど。スープは兄さんが、お父さんの手伝いをして作ったん…です」

「あ、いや、十分美味しい朝食だったよ(しまった!)」

 娘のことで聞き耳を立ててたガルガリッネが、調理場から出てきてカズに、近付いて行く。

「カズよぉ! おれの娘が一生懸命作った料理が、口に合わなかったのか!!」

「いやいや、そう言う訳じゃなくて……」

「ちょっとお父さんさん止めてよ! 今回作ったのは、たまたまカズさんの好みじゃなかっただけなんだから!」

「だけどよ、スピラーレが初めてお客さんに出したいって言って作った料理を、不味いなんて言ったカズは、お父さんは許せないぞ!」

「えっ、 不味いなんて一言も…」

「カズさんは不味いなんて言ってないよ! それに味の好みなんて人それぞれなんだから、わたしが初めて作った料理が、口に合わないのは当然だよ!」

「で、でもよ……」

「もう! いつも試食するのはお父さんだから、これじゃいつまで経っても、わたしが作る料理がお店で出せるか分からないじゃない! わたしだって、お父さんとお母さんに楽してもらいたいんだから!」

「ありがとねスピラーレ。私ゃあ、その気持ちだけで十分だよ」

「でもね、わたしだってもう14歳だよ。簡単な料理だったら、お客さんに出せるようになりたいの。そうすればお母さんだって、自分がやりたいこと出来る時間が持てるでしょ」

 スピラーレはいつも押さえていた感情を、ラヴィオリに打ち明けた。
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