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三章 王都オリーブ編1 王都オリーブ

136 それが理由!?

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 両手両足を氷で拘束されて、倒れているネメシアが、冷たいから早くなんとかしろと、騒いでるのを見て、我に帰ったモルトは、カズにネメシアを拘束してる氷を外すように頼む。

「カズ君、そろそろネメシアの拘束を、解いてあげてもらえませんか?」

「分かりましたが……拘束を解いた途端に、攻撃してこないでしょうね」

「大丈夫です。そのような行動をした際には、今度は儂が必ず止めますから」

「攻撃なんてしねぇよ。したところで返り討ちに遭うんだろ」

 カズはネメシアに近付き《解除》のスキルを使い、両手両足を拘束を解いた。

「冷てぇな。玉の肌に傷が残ったら、どうしてくれんだ」

「あれだけの事をして、どの口が言うんですか。魔法剣とか模擬戦で、しかも木剣で使いますか?」

「それを防いだ奴が良く言うよ。なぁモルトのじいさんよ、コイツがおかしいの分かったろ! だから私は、そいつ(弱体化の腕輪)を適当な理由をつけて借りてきて、コイツに着けたんだ。まさかあんなにアッサリ着ける事が出きるとは、思わなかったが」

 モルトは左手で自らの眉間を押さえ、ため息をつきネメシアに言う。

「はぁ……ネメシア…貴女は反省をしてるんですか?」

「な、なんだよ反省って? 私はなんにも悪くは…」

「……もういいです。ギルマスに相談して、ネメシアのランクを下げてもらいましょうか」

「はっ? 何でたよ!?」

「何で? ……いい加減にしなさい!! ネメシアが何故カズ君に冷たく当たってるかは分かりませんが、儂が知る限りでは、カズ君がネメシアに対して、不快になる様な事をしてないはずですが!」

「モ、モルトさん!?」

「な、なんだよ…怒鳴るなよ……」

「そう言えばネメシアが負けたら、カズ君を嫌っている理由を話すと聞きましたが、そうであれば、聞かせてもらいましょう」

「な、何で話さなきゃ……」

「約束したんですよね? 違いますか!」

「……」

「ネメシア!」

「……ただ」

「ただ?」

「ただ気に食わなかっただけだよ」

「どういうことですかネメシア? それだけでは分かりませんし、カズ君も納得しないと思いますよ」

「だってよ、じいさん宛にアイツ(ロウカスク)から連絡が来ると『ちょっと変わった冒険者が』とか『見た目は冴えないが面白い奴で』とか、じいさんから話を聞いてよ。しまいには『オレが凄いと認めたカズってのが、王都に行くからよろしく頼む』なんて言ってたって聞いてよ……」

「んっ? (俺が嫌われる理由を聞いてるんだよね?)」

「私なんか……全然見向きもされないし、クリスパと比べられたしよ、挙げ句の果てには、どこぞの女と所帯なんか持ちやがって、私の気持ちなんて……」

「あのちょっと、ネメシアさ…」

「それでカズってのがギルドに来たから、モルトのじいさんと一緒に、どんな奴か見てやろうと。それが本当に言ってた通り、こんな冴えない奴だなんて。しかもそんな奴を、ロウカスクが認めたなんて……私はコイツが嫌いだ! それになんだよ、その力に魔力は? どこがCランクだよ!」

「つまりネメシアは、ロウカスクが認めたカズ君を、ただ気に入らなかっただけだと? 自分が認められてなく、女としてもフラれたからと?」

「そう言っただろ。繰り返し言うなよ」

 それを聞いたカズは、どっと身体の力が抜けて、座り込んでしまった。

「カズ君大丈夫ですか?」

「え、ええ大丈夫です…よ」

 模擬戦の相手をしろと言われてから、怪しまれずに勝つにはどうしたら良いのか、嫌われた理由を聞けたら、それに対してどう返答しようかと考えていたのに。
 悪い方に考えないように、気を紛らわす為に、トマトケチャップの事やら、フリッジの悩み相談の事に、トレニアから頼まれた依頼と、色々やってたのに……
 それが好きだったロウカスクに、自分は認めてもらえなかったからって事での嫉妬? でもって俺への八つ当たり?
 冷たくされ嫌われて、あんな態度だった理由がそれっ…て……

「ハァー……もう疲れた。戻ろ(宿に)」(ボソッ)

 カズは一人で、転移水晶の方へと歩いて行く。

「カズ君どうされましたか?」

「なんか疲れたんで、今日は宿に戻ります」

「随分と魔力を消費したでしょうから、今日はゆっくり休んでください。その腕輪ですが、訓練所を出ると外すことが出来ますから、ギルド職員に渡しておいてください。ネメシアが持ってきた物だと言ってくれれば、儂が後で説明をしておきますから」

「分かりました」

「それと二、三日後なんですが、オリーブ・モチヅキ家の方に来てほしいと、連絡がありました」

「そうですか」

「当日の朝に、迎えがギルドに来ることになっていますので」

「分かりました」

 カズ転移水晶で、第2ギルドに戻っていった。

「それじゃあ、私も戻るとするか」

「待ちなさい。ネメシアには一緒に、イキシアさんの所に行ってもらいます」

「なんでサブマスの所なんか」

「反省が足りない様なら、ギルマスの所に直接報告に行きますか?」

「……わ、分かったよ」

「まったく、どれだけ迷惑をかければ…」

 このあと三十分程、ネメシアにお説教をするモルトだった。

 転移水晶で第2ギルドに戻ったカズは、弱体化の腕輪を外し、受付に居た男性職員にネメシアが借りた物だと言って返した。
 そのままギルドを出て、ラヴィオリ亭に戻って行った。

「おやカズさん、今日は戻りが早いね」

「ええ。依頼を終わらせたので、戻って来たんです。今日はちょっと疲れましてね」

「そうかい。悪いがフリッジかスピラーレが、まだ部屋の掃除をしてると思うが」

「そうですか。構いません、その時は待ってますから」

「すまないね」

 ラヴィオリと話た後、泊まっている三階の部屋に行く。
 部屋の前まで来ると扉が開いており、中を見るとフリッジが掃除をしていた。

「掃除お疲れさま。フリッジ君」

「あれカズさん? もう戻ってこられたんですか?」

「今日はちょっと疲れてね」

「まだ掃除の途中で、すみません」

「いいよゆっくりやって」

「兄さんそっちは終わった? あれ、カズさん?」

「こんにちは、スピラーレさん」

「今日は早いですね。もう戻られたんですか? それともちょっと戻っただけで、また出掛けるんですか?」

「今日は色々とあって疲れたもんで、ゆっくりしようかと戻って来たんだよ」

「そうだったんですか」

「スピラーレも手伝って。カズさんを待たせちゃうから」

「分かったわ兄さん」

 元々たいして汚れてないので、一人でやったとしても、そんなに時間はかからないが、カズを待たせないようにと、スピラーレも加わり、二人で掃除を終わらせた。

「お待たせしました」

「お待たせしました」

「ありがとう」

 掃除を終わらせた二人は、一階へと下りていった。
 カズは部屋に入り扉を閉めて椅子に座り、深いため息を一つして、窓から見える王都の空をボケーッと見る。
 何事もなく時間は過ぎ、ラヴィオリ亭が面してる通りに、夕食の買い出しをする人が出始めて来た頃。

 …………はっ! 俺は何をしてんだ?
 確かネメシアとの模擬戦を終えて、なんか疲れたからラヴィオリ亭に戻って来て、部屋で椅子に座ってから……かれこれ二時間くらいボケーッと外を見てたのか。
 こっちの世界に来てから、こんなこと無かったのに、ネメシアが俺を嫌ってる理由を聞いたら、なんか気が抜けて、何もやる気が起きなくなったんだっけ。
 取りあえず動く……やっぱりなんにもする気がしない。
 今日は夕食を取ったら、早目に寝るかな。
 明日は気晴らしついでに、白真の居る北の山脈に行って『トレカ(トレーディングカードゲーム)』と『魔法の古書』で見た魔法を試そう。
 明後日か明明後日には、貴族のオリーブ・モチヅキ家の所に行かないとならないし。
 そう言えば『モチヅキ』って明らかに、名字の『望月』だよな?
 やっぱり昔に『異世界転生』か『異世界転移』して来た人の子孫って事かな?
 これも聞けたら聞いてみないと。
 あれ(チャラ神=管理神)には、何も期待出来ないし……元の世界に帰れるのかな?
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