人生初めての旅先が異世界でした!? ~ 元の世界へ帰る方法探して異世界めぐり、家に帰るまでが旅行です。~(仮)

葵セナ

文字の大きさ
上 下
142 / 807
三章 王都オリーブ編1 王都オリーブ

134 冒険者ギルドが使う転移水晶 と ハンデ戦!?

しおりを挟む
 急ぎだと頼まれた運搬の依頼を終わらせ
第2ギルドに戻り、受付のトレニアに報告をした。

「トレニアさん、頼まれた依頼を終わらせてきました」

「ありがとうございます。急に頼んでしまい、申し訳ありませんでした」

「構いませんよ。そんなに大変だった訳ではないので」

「そうなんですか? やっぱりアイテムボックスを使える方は、便利で良いですね」

「おかげさまで、重宝してます」

「少ないのですが、こちらが報酬になります」

 トレニアから銀貨二枚(2,000GL)を受け取った。

 アイテムボックスを使った運搬は、少なくても金貨一枚(10,000GL)と言っていたから、それを考えると確かに少ないが、別にお金に困ってる訳ではないし、あんな話を聞かされたら……。

「本当に少なくて、ごめんなさい」

「いえ別に構いませんよ。事情もあるようですし」

「何か聞かれたんですか?」

「運搬先に着くまでの間に、依頼者のお婆さんが、経緯(いきさつ)を話してくれまして」

「じゃあ、私があそこの人達を、支援してることも?」(小声)

「ええ」

「出来れば内緒にしてください」

「何か知られては不味いことでも?」

「先日私と話していたことで、カズさんが絡まれたことがありましたよね。あのような冒険者の方がいることがありますので、私があそこの人達を支援してると知られると、巻き込んでしまいそうで」(小声)

「他に知ってる人はいるんですか?」(小声)

「サブマスには話してありますので、ギルマスも知ってるはずです。あとはモルトさんと、ネメシアさんも知ってます」

「ネメシアさんも?」

「迷惑な人が来たときは、助けてくれるんです」

「あのネメシアさんがですか?」

「そう言えばカズさんには、冷たく当たるんですよね」

「ええ、何故か」

「何故でしょうかね?」

「さぁ?」

「そう言う訳で、内緒でお願いしますね」

「はい」

 トレニアと話が済んだので、モルトとネメシアが来るまで、俺は部屋の隅にある椅子に座り待つことにした。
 そこで先程お婆さんから聞いた話で、気になることがあったので、記憶の糸をたぐる。
 もう少しで何か思い出しそうになったとき、モルトが声を掛けてきた。
 すぐここまで出かかってた記憶が、どこかにすっこんでしまった。

「カズ君お待たせしました。専用訓練所を使用する許可がとれましたので、行きましょう」

「ネメシアさんがまだ来てませんが」

「ネメシアなら先に向かいました」

「そうですか。それなら早く行った方が良さそうですね(どうせ『遅せぇぞ!』とか、言われるんだろうな)」

 カズはモルトについて、三階にある一室に入った。
 部屋の中央に大きなテーブルと10脚の椅子がある、言わば会議室だ。
 他には特に、変わった所は無い。

「モルトさん、ここで良いんですか?」

「ええ。一階は人が居ますし、二階の個室も、今日は殆ど使われてるので、ここ三階の部屋に来ただけです」

「どうやって専用訓練所に行くんですか? 転移水晶ですか?」

「いえ、専用訓練所には転移水晶ではなく『ソーサリーカード』を使って移動します。使用許可が出ると、専用訓練所に転移する為のソーサリーカードが、人数分渡されますので、それを使い移動します」

「どうして転移水晶じゃないんですか?」

「転移水晶ですと、一つの部屋に置いて置かなければなりませんし、もしギルド職員の目を盗んで、勝手に使う者が居た場合に、十中八九問題が起きますから。なので専用訓練所を使用する場合は、人数のソーサリーカードを供給する事で、使用の有無や使用人数が分かるようになるんです。それとソーサリーカードを使用する場所は、第2ギルド内と限定されてます」

「ギルドの外では使えないと?」

「はい。勝手に持ち出しても、使用出来ないように、魔法を込める際に、転移元を第2ギルドに設定してあるのです」

「なるほど。行きと帰りで、一人二枚ですか?」

「一人一枚なので、行きの分だけです」

「えっ、帰りは?」

「専用訓練所に、転移水晶が置いてありますので、帰りはそれを使います。転移先は、カズ君達が先日第8ギルドに転移した時に使った、転移水晶のある部屋に移動します。専用訓練所から、帰還する為の記録が、あの転移水晶にしてありますから」

「あの水晶に!? 王都にある他の冒険者ギルドにも、1個の転移水晶で移動するんですか?」

「そうです。使用する際にギルド職員が、転移先を切り替えます。行く場合には切り替えが必要ですが、来る場合に切り替えが必要ありません」

「1個の水晶で、それだけ記録してあるんですか! それに転移して行く場合のみ、切り替える必要があると」

「これだけ出来るのは、水晶の純度が高く、魔力を多く溜め込むことの出来き、とても珍しく高価な物だからです。王都の冒険者ギルドでも『第1から第3』の、三ヶ所にしかないんです。他の『第4から第9』までの冒険者ギルドは、2個の転移水晶を使って、王都にある各冒険者ギルドを移動してます」

「なるほど! それなら王都の端から端まで、緊急の依頼にも対処出来ますね」

「はい。なので広い王都には冒険者ギルドが、九ヶ所存在するんですよ」

「納得です。おっと、こんな話をして遅くなったら、またネメシアさんが怒りますね」

「それもそうですな。では行きましょうか。ソーサリーカードの使い方は、わかりますか?」

「はい大丈夫です」

 カズとモルトは、ネメシアの待つ専用訓練所に、ギルドから供給されたソーサリーカードを使用した。
 転移のソーサリーカードを使用すると、周りの空間が歪むように見え、次の瞬間には広い訓練所の片隅に居た。
 転移後カズはモルト聞くと、これはソーサリーカードに使用されている魔力が、転移水晶より少ない為に、転移時間が少し遅く、転移する際に空間が歪んで見えると言っていた。

「やっと来やがった」

 声のする方を見ると、そこにはネメシアが不機嫌そうに立って居た。

「お待たせしました」

「遅いぞ!」

「そう言うでない。ネメシアが先に一人で来たから、悪いではないか。ギルドの一階で待ち合わせと行ったのに」

「これから戦う相手と、一緒になんて来たかねぇーよ」

「相変わらず勝手な人ですね貴女は」

「ほっとけ! それより早く支度しな。私は準備は出来てるから、いつでも良いぜ」

「来てすぐですが、カズ君の準備はどうですか?」

「俺は大丈夫です」

「あれから(倉庫から戻ってから)休憩(魔力の回復を)しましたか?」

「あの後は、時間が少しあったので、運搬の依頼をしてきまして、ギルドに戻ったのが、モルトさんと会う少し前です」

「あの後に依頼を……大丈夫なんですか? (残りの魔力量的に)」

「大丈夫ですよ(昼と言っても、まだそこまでお腹は空いてないからな)」

「おいどうなんだ、準備は出来たのか?」

「ええ良いですよ」

「良し。立会人のじじぃは、離れて見てな」

「ネメシア分かってると思いますが、これは模擬戦ですから…」

「言いたいことは、分かってるさ」

「それなら良いんですが。危険だと判断したときは、止めに入りますから。カズ君も無理しないでください」

「分かりました。モルトさん」

「じじぃはコイツの戦闘を見てないから、そんなことを言うんだ。まぁいい、すぐに分かるさ! (その前に『これ』を付けさせねぇと)」(ボソッ)

「なんですか、ネメシア」

「なんでもねぇ」

 モルトは二人から距離をとる

「ではお互いに、用意は良いですね。剣は木剣を使用で、スキルと魔法は使用して構わないですが、死に至るような攻撃は、もちろん禁止です。危険だと判断したときは、即止めに入ります。それではよろしければ、模擬戦を開始してください」

 モルトが開始の合図をすると、ネメシアが歩いてカズに近付いて行く。

「おいカズ、始める前に何か武器を隠してないか、確認させな」

「構いませんよ(やけに用心深いな)」

 ネメシアがカズの前にやって来た。

「両手を見せてみろ」

「それで気が済むならどうぞ」

 カズは両手を前に出し、ネメシアに何も持って無いことを見せた。
 するとネメシアはモルトに見えない様に、カズの両手首に腕輪を装着した。

「えっ! なんですかこれ?」

「まさかこうもアッサリと、付けることが出来るとはな。これで思う存分に出来る。行くぞ、オラ!」

 ネメシアが思いっきり、カズに殴りかかった。
 カズは腕を出し防御したが、2m程吹っ飛ばされた。

「痛い! 何これ? 体が重い」

「どうした? その程度で、倒れたりはしないだろ」

 ネメシアはすぐに間合いを詰めて、今度は蹴りを入れてくる。
 それをカズは紙一重でなんとか避けて、後ろに下がり距離をとる。

「そろそろ準備運動はいいだろ。次からは強化していくぞ!」

 蹴りを避けて後ろに下がったカズは、ネメシアに装着された腕輪を【万物ノ眼】の効果を使い《鑑定》と《分析》をした。


 【弱体化の腕輪 】『二級』
 ・  装備者のステータス数値(力・魔力・敏捷)が10%減。(最大 - 100)


「弱体化の腕輪って、なんでネメシアさんがこんな物を持ってるの! しかも2個も!」

「チッ、やっぱり気付いたか。ハンデだよ!」

 常時カズは一割も力を出してない為に『- 100』も数値を下げられると、急に体が重くなったと感じた。
 しかも身体に分かるような、ステータス減少の効果を受けたのは初めてだったので、少し動揺もしていた。
しおりを挟む
感想 84

あなたにおすすめの小説

俺だけ皆の能力が見えているのか!?特別な魔法の眼を持つ俺は、その力で魔法もスキルも効率よく覚えていき、周りよりもどんどん強くなる!!

クマクマG
ファンタジー
勝手に才能無しの烙印を押されたシェイド・シュヴァイスであったが、落ち込むのも束の間、彼はあることに気が付いた。『俺が見えているのって、人の能力なのか?』  自分の特別な能力に気が付いたシェイドは、どうやれば魔法を覚えやすいのか、どんな練習をすればスキルを覚えやすいのか、彼だけには魔法とスキルの経験値が見えていた。そのため、彼は効率よく魔法もスキルも覚えていき、どんどん周りよりも強くなっていく。  最初は才能無しということで見下されていたシェイドは、そういう奴らを実力で黙らせていく。魔法が大好きなシェイドは魔法を極めんとするも、様々な困難が彼に立ちはだかる。時には挫け、時には悲しみに暮れながらも周囲の助けもあり、魔法を極める道を進んで行く。これはそんなシェイド・シュヴァイスの物語である。

器用貧乏の底辺冒険者~俺だけ使える『ステータスボード』で最強になる!~

夢・風魔
ファンタジー
*タイトル少し変更しました。 全ての能力が平均的で、これと言って突出したところもない主人公。 適正職も見つからず、未だに見習いから職業を決められずにいる。 パーティーでは荷物持ち兼、交代要員。 全ての見習い職業の「初期スキル」を使えるがそれだけ。 ある日、新しく発見されたダンジョンにパーティーメンバーと潜るとモンスターハウスに遭遇してパーティー決壊の危機に。 パーティーリーダーの裏切りによって囮にされたロイドは、仲間たちにも見捨てられひとりダンジョン内を必死に逃げ惑う。 突然地面が陥没し、そこでロイドは『ステータスボード』を手に入れた。 ロイドのステータスはオール25。 彼にはユニークスキルが備わっていた。 ステータスが強制的に平均化される、ユニークスキルが……。 ステータスボードを手に入れてからロイドの人生は一変する。 LVUPで付与されるポイントを使ってステータスUP、スキル獲得。 不器用大富豪と蔑まれてきたロイドは、ひとりで前衛後衛支援の全てをこなす 最強の冒険者として称えられるようになる・・・かも? 【過度なざまぁはありませんが、結果的にはそうなる・・みたいな?】

【完結】初級魔法しか使えない低ランク冒険者の少年は、今日も依頼を達成して家に帰る。

アノマロカリス
ファンタジー
少年テッドには、両親がいない。 両親は低ランク冒険者で、依頼の途中で魔物に殺されたのだ。 両親の少ない保険でやり繰りしていたが、もう金が尽きかけようとしていた。 テッドには、妹が3人いる。 両親から「妹達を頼む!」…と出掛ける前からいつも約束していた。 このままでは家族が離れ離れになると思ったテッドは、冒険者になって金を稼ぐ道を選んだ。 そんな少年テッドだが、パーティーには加入せずにソロ活動していた。 その理由は、パーティーに参加するとその日に家に帰れなくなるからだ。 両親は、小さいながらも持ち家を持っていてそこに住んでいる。 両親が生きている頃は、父親の部屋と母親の部屋、子供部屋には兄妹4人で暮らしていたが…   両親が死んでからは、父親の部屋はテッドが… 母親の部屋は、長女のリットが、子供部屋には、次女のルットと三女のロットになっている。 今日も依頼をこなして、家に帰るんだ! この少年テッドは…いや、この先は本編で語ろう。 お楽しみくださいね! HOTランキング20位になりました。 皆さん、有り難う御座います。

転生した体のスペックがチート

モカ・ナト
ファンタジー
とある高校生が不注意でトラックに轢かれ死んでしまう。 目覚めたら自称神様がいてどうやら異世界に転生させてくれるらしい このサイトでは10話まで投稿しています。 続きは小説投稿サイト「小説家になろう」で連載していますので、是非見に来てください!

無能な勇者はいらないと辺境へ追放されたのでチートアイテム【ミストルティン】を使って辺境をゆるりと開拓しようと思います

長尾 隆生
ファンタジー
仕事帰りに怪しげな占い師に『この先不幸に見舞われるが、これを持っていれば幸せになれる』と、小枝を500円で押し売りされた直後、異世界へ召喚されてしまうリュウジ。 しかし勇者として召喚されたのに、彼にはチート能力も何もないことが鑑定によって判明する。 途端に手のひらを返され『無能勇者』というレッテルを貼られずさんな扱いを受けた上に、一方的にリュウジは凶悪な魔物が住む地へ追放されてしまう。 しかしリュウジは知る。あの胡散臭い占い師に押し売りされた小枝が【ミストルティン】という様々なアイテムを吸収し、その力を自由自在に振るうことが可能で、更に経験を積めばレベルアップしてさらなる強力な能力を手に入れることが出来るチートアイテムだったことに。 「ミストルティン。アブソープション!」 『了解しましたマスター。レベルアップして新しいスキルを覚えました』 「やった! これでまた便利になるな」   これはワンコインで押し売りされた小枝を手に異世界へ突然召喚され無能とレッテルを貼られた男が幸せを掴む物語。 ~ワンコインで買った万能アイテムで幸せな人生を目指します~

【ヤベェ】異世界転移したった【助けてwww】

一樹
ファンタジー
色々あって、転移後追放されてしまった主人公。 追放後に、持ち物がチート化していることに気づく。 無事、元の世界と連絡をとる事に成功する。 そして、始まったのは、どこかで見た事のある、【あるある展開】のオンパレード! 異世界転移珍道中、掲示板実況始まり始まり。 【諸注意】 以前投稿した同名の短編の連載版になります。 連載は不定期。むしろ途中で止まる可能性、エタる可能性がとても高いです。 なんでも大丈夫な方向けです。 小説の形をしていないので、読む人を選びます。 以上の内容を踏まえた上で閲覧をお願いします。 disりに見えてしまう表現があります。 以上の点から気分を害されても責任は負えません。 閲覧は自己責任でお願いします。 小説家になろう、pixivでも投稿しています。

スキルが【アイテムボックス】だけってどうなのよ?

山ノ内虎之助
ファンタジー
高校生宮原幸也は転生者である。 2度目の人生を目立たぬよう生きてきた幸也だが、ある日クラスメイト15人と一緒に異世界に転移されてしまう。 異世界で与えられたスキルは【アイテムボックス】のみ。 唯一のスキルを創意工夫しながら異世界を生き抜いていく。

異世界召喚されました……断る!

K1-M
ファンタジー
【第3巻 令和3年12月31日】 【第2巻 令和3年 8月25日】 【書籍化 令和3年 3月25日】 会社を辞めて絶賛無職中のおっさん。気が付いたら知らない空間に。空間の主、女神の説明によると、とある異世界の国の召喚魔法によりおっさんが喚ばれてしまったとの事。お約束通りチートをもらって若返ったおっさんの冒険が今始ま『断るっ!』 ※ステータスの毎回表記は序盤のみです。

処理中です...