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三章 王都オリーブ編1 王都オリーブ

131 若者の相談

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 朝からガルガネッリから『娘はやらん』と、急に訳の分からん親バカな事を言われ、その為にラヴィオリには謝られて気を使う羽目に、とんだ一日の始まりだとカズは逃げるようにラヴィオリ亭を出た。
 ラヴィオリ亭を出て、大通りに向かっていると、後方から誰かに呼び止められた。

「あの、お客さ…カズさん」

「んっ? 君は確か……フリッジ君だったっけ?」

「はいそうです。こうして話すのは、自己紹介をして以来です」

「俺に何か用かな?」

「先程は父が申し訳ありませんでした」

「わざわざ謝りに来てくれたの? 大丈夫気にしてないから」

「ありがとうございます。それてボクが言うのもなんですが、もし良ければまた妹と、話をしてやって下さい。お父さんがあれなもので、同性の友達も殆ど居なくて」

「フリッジ君は、妹想いなんだな(何この子、父親とは大違いじゃん!)」

「それでどうですか? もし迷惑じゃなければ」

「迷惑なんてことはないよ。ガルガネッリさんは、睨み付けてきそうだけど。それと俺に話す時は、もっと気楽にしてくれて構わないから」

「でも失礼では」

「別にいいよ。ところでフリッジ君は、年は幾つなの?」

「今年15歳になりました」

「15歳! しゃべり方も、随分としっかりしてるね。ガルガネッリさんとラヴィオリさんは、礼儀には厳しいの?」

「いえそこまでは、ただボクはモルトさんの様に、礼儀正しい話し方や動作に憧れて」

「そうなんだ。確かにモルトさんは紳士的で、ジェントルマンって感じだからね」

「ジェント…ルマン?」

「モルトさんのような、上品で礼儀正い人のことなんだけど、まあそこは気にしないでいいから」

「ボクもあんな風になりたいんですが、やっぱり冒険者になって、実力をつけないとならないのでしょうか?」

「どうなんだろう? 俺も冒険者ランクは高くないし、どちらかと言うと、礼儀作法とかには疎いから。よく分からないな(急に俺なんかに人生相談?)」

「そう…ですか……」

 フリッジは気を落としたようで、少し残念そうにしている。

「力になれなくてごめん」

「いえそんな、ボクこそ急に変なこと言ってごめんなさい」

「いいよ。ラヴィオリさんに言えば、モルトさんと話が出来るんじゃないの? 知り合いでしょ?」

「知り合いでは、あるんですけど……」

「ラヴィオリさんに、知られたくないの?」

「父さんと母さんは、ボクがお店を継ぐものだと……」

「そうか……家の仕事は嫌い?」

「そんなことはないです。ただお店に来るお客さんの話や、たまに来るモルトさんの話を聞くと、ボクもモルトさんみたいに、人に信頼され頼られる仕事がしたいと思ってしまって」

「俺のように、旅をしてる冒険者から言うと、宿屋と食堂を安い料金で切り盛りしてる君達家族は、信頼されて頼られる仕事をしてる思うけど」

「そうなんですか? 何処にでもあると思いますが?」

「そうか……フリッジ君はまだ若いから、色々と経験してみるのも良いかも知れないけど、それでもガルガネッリさんとラヴィオリさんには、一度相談した方がいいかもね」

「は…い……」

 フリッジはさらに、しょんぼりとしてしまった。

「俺もモルトさんに会ったら、それとなく聞いといてあげるから、そんな気を落とさないで(どこの世界でも、難しい年頃なのは同じなのかな)」

「本当ですか!」

「あまり期待しないで」

「はい。ありがとうございます」

「じゃあそろそろお店に戻って、仕事の手伝いを方が良いでしょ。じゃなと、ガルガネッリさんとラヴィオリらさんに相談するにしても、しにくくなっちゃうから」

「はい。そうします」

 フリッジは明るい表情になって、ラヴィオリ亭に戻って行き、話を終えたカズは、第2ギルドに向かうが、その表情は少し悩んでいた。
 進路相談なんてされた事がないカズは、どうしたらいいものかと考えながら歩く内に、いつの間にか第2ギルド前に来ていた。
 しかしカズは、第2ギルドの前に来たことを気付いてない。

「これは丁度良かった。カズ君よろしいですかな?」

「……」

「おや? カズ君!」

「……んっ? あ、モルトさん」

「どうしたんですか? 上の空で」

「ちょっと考えご…ってモルトさん! 丁度良かった」

「なんですか?」

「実はモルトさんに教えてもらった、宿屋なんですけど」

「何か不都合でもありましたか?」

「いえそうではなくて、あそこのフリッジ君のことで」

「ラヴィオリさんの、息子さんですね。それがどうかしましたか?」

「ここに来る前に、話をする機会があったんですけど、その事でモルトさんにちょっと」

「儂にですか?」

「ええ」

 カズはモルトに、ラヴィオリ亭を営んでる夫婦の息子フリッジが、自分の行く末に悩んでいて、それがモルトに憧れてのことだと伝えた。

「なるほどそうですか。儂の考えでは、若い内に色々と経験を積んでみるのは、良いと思います」

「俺も同じ様なことを、フリッジ君に言いました。なんにせよ、両親には相談した方が良いと」

「儂もそれが良いと思います。もし冒険者になるしても、今は冒険者ギルドが、ランクと実力をはっきりと確認してうえで、依頼を受理してますから、生命の危険を及ぼす依頼は、極力受けさせないようにしてますからな。Aランク以上となると話は変わりますが」

「もし時間があってご迷惑じゃなければ、ラヴィオリ亭に行って、フリッジ君の話を聞いてあげてください」

「カズ君がそこまで言うのであれば。たまには若者の人生相談も、良いかも知れませんな」

 モルトはフリッジの話しを聞くことを考えると、一番始めに孫が相談をしてくれた様に思えて、少し嬉しくなっていた。(ちなみに、モルトに孫は居ない)

「お願いします。それと先日討伐に行った、ストーンシャークなんすが、俺がアイテムボックスに入れて、持ってきたんですが、どうしましょう?」

「それでしたら受付に言って、素材買い取り所に持っていけば」

「ちょっと数が多くて……」

「多い? 情報では海岸付近に現れたのは、五体程度と聞きましたが?」

「最初はそのくらいだったんですけど、沖から群れでやって来まして、最終的には五十体以上に」

「五十体以上! 大丈夫だったんですか? ネメシアは怪我してなかったですけど、カズ君は……大丈夫そうですな」

「ええまぁ。それでその回収したストーンシャークをどうしようかと?」

「全てここの素材買い取り所に置くのは無理ですな。なので、近くにある第2ギルドが所有する倉庫に行って、そこで出してください」

「分かりました。それとストーンシャークは、全部凍っていて、魔核(魔石)もまだ取り出してませんので」

「凍っ……分かりました。倉庫が空いているか聞いてきますので、少しお待ちください」

「はい(急に凍った状態のストーンシャークを見せるより、先に言っておいた方がいいだろうしな)」

 朝のギルドは混んでいるので、カズは外で待ち、モルトが中に入り第2ギルドが所有している、倉庫の状況を確認しに行った。
 十数分程したら、モルトがギルドから出てきた。

「お待たせしました。今回の件で一ヶ所だけ丁度いい倉庫がありまして、最近使用してないので、広く空いているとのことです。案内しますので行きましょう」

「案内してくれるんですか?」

「はい」

「わざわざすいません(一ヶ所だけ? 何ヶ所も倉庫があるのか!)」

「気にしないでください。ネメシアと行った、討伐依頼の話も聞きたいですし」

「そ、そうですか……ネメシアさんは、何か言ってましたか?」

「ネメシアですか……カズ君には失礼になるんですが」

「なんですか?」

「実はネメシアがですな『カズアイツはおかしい、今回の依頼で、私はカズアイツが……』と言ってましてな」

「『おかしい』とか『変わってる』なんてことは、よく言われますから気にしませんが『私はアイツが……』って、意味深な言い方されると、何か怖いんですが」
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