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三章 王都オリーブ編1 王都オリーブ

128 討伐完了 と 漁師町からの帰り道

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 俺はネメシア泊まる宿をツツジにお願いして、一人で別方向に歩いて行く。
 夫のロッドは嫁のツツジに付いて行き、ネメシアをツツジの実家である民宿に送って行った。

「ネメシアさんはカズさんと一緒に、ストーンシャークの討伐に来たんですってね」

「カズは冒険者っぽくなかったが、姉さんは装備もしっかりして、体つきもガッチリしてそうだから、この分ならストーンシャークを倒して、この町を安心させてくれそうだな」

「あんた女性に対して、ガッチリしてるなんて言うもんじゃないよ!」

「おっとすまねぇな。だが姉さんを見ると、結構ランクも高そうだし、ストーンシャークの十体や二十体楽勝だろ」

「……もう終った」(ボソッ)

「あんたは何バカなこと言ってるの……えっ?」

「何だって姉さん?」

「ストーンシャークの討伐は、もう終ったと言ったんだ!」

「えっ!」

「なんっ、嘘だろ! カズが店を出てから二時間も経ってないぞ!」

「もしかして、カズさんがネメシアさんと岩場で会った時には、討伐中か既に終ってたって事だったんですか?」

「アイツ(カズ)が来て、討伐し終ったんだ! (私は小さい奴を、たかだか五体しか……)」

「凄いですね! 五体は出たと漁師の人達から聞いてたのに、それを二時間もかからないうちに倒してしまうなんて。しかもこんなに暗いのに」

「すまねぇが、証拠に倒したストーンシャークを、漁師達に見せてやってくれや。そうすれば安心して、漁に出れるだろうからよ」 

「それなら明日アイツ(カズ)に言ってくれ。討伐したストーンシャークは、アイツが回収したから(どうせ私は、小さいのを五体しか倒してねぇからよ)」

「ネメシアさん。ここが私の実家がやっている民宿です。狭いですが、今夜はゆっくり休んでください。私達夫婦は隣の家に住んでますので、朝になったら迎えに来ますね」

 ネメシアはツツジの実家でやっている民宿に案内され、話の流れで泊まることになった。
 いつものネメシアなら流されることはないが、今夜はカズがストーンシャークを討伐しているとこを見てから、少し動揺してしまっていた。
 ネメシアは案内された民宿の部屋で、先程起きた出来事を何度も思い返していた。
 するといつの間にか、眠ってしまった。

 その頃ネメシア達と別れて、一人で暗い漁師町を歩いていたカズは、昼間でも人の来なさそうな町外れに来ていた。

 さて今夜の寝床はどうしようかな?
 ここで野宿しも怪しまれそうだし、今から宿屋を探しても、開いてるとは限らないから……!
 別にここで泊まらなくても、ほかの場所に行けば良いのか!
 かと言ってゲートを使い、王都の泊まっているラヴィオリ亭の部屋に移動するのもなぁ……何かの拍子に、宿屋の誰かに見られたら面倒だし……仕方ない。
 ゲートで最初の森に移動して、野宿をするか。
 あそこなら殆ど人も来ないから、会うこともないどろう。

 そう決めた俺は念の為に、誰にも見られないように【マップ】を確認して、スキルの《隠密》を使ってから〈ゲート〉で、始めに来た森へと移動した。
 森に移動後【マップ】を確認するが人のマークは無く、表示されているは獣のマークが四つだけだった。
 おそらくはイノボアだろうと思う。
 俺は適当な広さのある所で〈アースウォール〉の魔法を使い、土のかまくらを作った。
 今夜はここに寝て、明日の朝にゲートて漁師町付近に戻り、ネメシアと合流することにした。
 今更だが、ストーンシャーク討伐の件を、どうやって誤魔化そう…… 
 結局何も思い浮かばないまま寝てしまった。


 ◇◆◇◆◇


 夜が明け始めて頃に目を覚ました俺は、土のかまくらを《解除》のスキルで、ただの土へと戻し〈ゲート〉を使って、昨日の岩場に移動した。
 まだストーンシャークの討伐が終ったと言ってないので、漁に出てる人は居なかった。
 だからこそ人の居なさそうな岩場に、ゲートで移動したんだけど。
 もう隠密を使用する意味もないので、隠密スキルを解いた。
 明るくなってきたので、岩場から昨夜使った魔法の影響がないかを確認する。
 特に何も変わった様子もないので、王都で買っておいたパンとチーズ出して、海を見ながら朝食を取る。
 軽い朝食を済ませたら、ネメシアに言っておいた、待ち合わせ場所へと向かい歩いて行く。

 待ち合わせ場所が見えてきたが、ネメシアはまだ来ていなかった。
 二十分程待っていると、ネメシアと一緒に、ツツジとロッドもやって来た。

「居た居た。おーいカズ!」

「カズさーん」

「んっ? ツツジさんにロッドさん。どうしたんですか?」

「な~に、町を出て王都に戻るって聞いたんでな、その見送りと礼をな」

「そんなわざわざ見送りなんて、それに礼って?」

「昨夜ネメシアさんに聞いたんだけど、ストーンシャークを討伐してくださったんですってね。町人に代わって、お礼をと思ってね」

「そんな別に、依頼で来ただけですから。それにストーンシャークの討伐なら、ネメシアさんがやってくれましてし」

「そうなの! ネメシアさんに聞いても、討伐した時の事を、詳しく教えてくれないんですよ。ただカズさんが倒したって。ネメシアさんも倒したらな、言ってくださいよ」

「別に私は大した事してねぇよ」

「そうだカズ、討伐したストーンシャークを見せてくれねぇか? 証拠として漁師の連中に見せてやりたかったんだけど、漁に出れねぇからって、飲み過ぎで起きてこねぇんだ。だから俺らだけでも代わりにと思ってよ」

「ああ良いですよ」

 俺は【アイテムボックス】から、氷付けになっているストーンシャークを、一体出した。

「うぉ! こいつはスゲーな」

「本当ね。しかも凍ってるわよ」

「なんなら置いてきましょうか?」

「いやいや置いていかれても、オレっちは処理出来ねぇ」

 俺は出したストーンシャークを、再度【アイテムボックス】に入れた。

「ありがとうカズさん、ネメシアさん。これで安心して漁に出れます」

「またこの町に来たときは、オレっちの店に寄ってくれや」

「ええ、分かりました」

「ほらとっとと王都に戻るぞ」

「はい。それじゃあ、お二人共お元気で」

「おう、また来いよ」

「今度は来たときは、お魚と一緒にお酒も飲んでいってね」

 大きく手を振って、別れの挨拶をしてくれている二人に見送られながら、漁師町を後にして、カズとネメシアは王都へ続く街道を歩いて行く。
 前にネメシアが歩き、その少し後ろからカズが付いて歩くが、今回ネメシアは何も言わない。
 街道に人影は少ないが、それでも大きな道だけあって、誰も居なくなるということはない。
 不意にネメシアが歩く速度を落として、カズの横に並んで歩き出した。
 すると今まで黙っていたネメシアが、急に口を開いた。
 しかもいつもの様に、苛立ちながらではなく、小さめの声で静かに話した。

「なぁお前はなんなんだ?」

「なんだと言われましても、ただのCランクの冒険者ですが」

「そんな訳ないだろ。あれだけの事をやっておいて、今更しらばっくれるなよ。誰に魔法を教わったんだ?」

「誰にって、基本はクリスパに習いましたが」

「基本はクリスパ? だったらそれ以上の事は、ロウカスクに習ったのか?」

「いえ、アヴァランチェのサブマスに習いました」

「アヴァランチェのサブマス? 確かエルフだとか聞いたな。それであんな魔法を使えるなか? あれだけ威力のある魔法は、うちのサブマスでも難しいんじゃないか」

「さぁどうなんでしょうか?」

「誤魔化せると思うのか? 私は昨日見た事を、ギルマスに報告するつもりだか、それでも良いのか?」

「出来れば大事にしてほしくないですね」

「だったら私と、一戦相手をしてもらおうか。立会人はじじぃにすれば、お前も実力を出せるんじゃないか? じじぃは口は堅いからな」

「模擬戦ですか」

「ああそうだ。どうする? 遅かれ早かれ、お前の持っているストーンシャークをギルドに渡せば、誰が討伐したか調べられるぞ。じじぃなら、うまく言ってくれるずだが」

「……分かりました、相手になります。ただし俺からも条件が」

「なんだよ」

「なんで俺のことを嫌っているのか、理由を説明してください」

「チッ、まだそんなこと言ってるのかよ」

「初対面からその態度で、理由も分からないのに、今でもずっとそんな風に接しられたら、気になりますよ。生理的に受け付けないとかだったら、俺からもモルトさんなり、サブマスなりに相談して、ネメシアさんとは、極力会わないようにしますけど」

「分かったよ。私に勝ったらな」

「勝つにせよ負けるにせよ、結局はギルマスとかに、目をつけられるって事か」(ボソッ)

「なんだよ言いたい事があるなら、ハッキリ言ったらどうだ」

「別にこっちの事です」

「チッ、そうと決まったら、走って戻るぞ。遅れずにしっかり付いてこいよ」

「はい(はぁ~あ……やっぱり人付き合いって、しんどくて嫌になるなぁ)」

 第8ギルドへの帰り道は、走るネメシアの後を付いて行く。
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