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三章 王都オリーブ編1 王都オリーブ

124 武器屋で装備探し と カードショップ

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 冒険者第2ギルドサブ・マスターの、イキシア・フォレストに依頼の話を受けて、カズはBランク冒険者のネメシアと共に、海岸付近の海に現れるストーンシャークの討伐に向かう事になった。
 話を終えて、カズが第2ギルドを出た後に、三階にある一室では、モルトとサブマスのイキシアが、カズのことを話していた。

「モルトの言う通りしたけど、カズに任せて大丈夫かしら?」

「きっと大丈夫ですよ。あの『アレナリア』が、心を許した人ですから」

「最初聞いた時は、信じられなかったけど。って言うか、ワタシはまだ信じられないけど」

「儂も半信半疑ですが、ロウカスクがギルマスの権限を使って、通信魔道具で報告してきましたからな」

「だからって、あのサボり癖のあるロウカスクだから、余計に信じられないのよ」

「ロウカスクは書類仕事以外なら、しっかり仕事はしてるはずですよ。特にアレナリアを、からかえる様なことに関しては、尚更ですぞ」

「あのちびっ子がねぇ。あんな冴えない男が良いなんて、よっぽど一人が寂しくなったのかしら。まぁ辛い思いをしてきたのは、分かるけど」

「本人が居ないからって、言い過ぎですよサブマス。確かに見た目は冴えないかも知れませんが、それを言ったらカズ君に失礼ですよ。それにアレナリアの事は内密ですぞ」

「分かってるわよ。ここでアレナリアの事を知っているのは、カズ以外では、ワタシとモルトを含めて、三人だけだからね」

「そろそろ仕事に戻りましょう。サブマスも書類仕事が、残っているのでしょう?」

「書類仕事って面倒なのよねぇ。かと言って貴族の物に関しては、ギルマスかワタシのどちらかが、確認しなければならないから、職員には任せられないし」

「書類仕事が面倒などと言うと、ロウカスクと同じになってしまいますよ」

「モルトもしれっと、酷い事を言うわね。ワタシがロウカスクと同じだなんて」

「そらなら文句を言わずに、仕事に戻って下さい」

「そうするわ。ロウカスクと同じと言われるなんて、ワタシは嫌だから」

 そう言うとサブマスのイキシアは、自分の仕事部屋へと戻って行った。
 イキシアと話を終えたモルトも、自分仕事に戻った。
 その頃、第2ギルドを出たカズは、明朝出発する依頼の為に、食料等の買い出しをしていた。

「そこのチーズを二つと、これとそのパンを三つください」

「あいよ。全部で3,800GLだ」

 俺は昨日ピザを買ったパン屋で、パンと濃厚なチーズを買い【アイテムボックス】に入れた。

 明朝出発する依頼で海岸に行くのだが、始めて行くので、何日で着くのか分からないから、少し多目に食料を買っておく。
 多過ぎても、アイテムボックスに入れておけば、腐ることもないので安心だ。
 このあとは、街を散策した時に気になった店を、見に行くことにする。
 先ずはこの近くにあった武器屋だ。

 大通り沿いに武器屋は何件かあったが、俺は路地裏にある、比較的小さな武器屋に入る。
 お客は二人だけしか居ない小さな店だが、それでもコンビニくらいの広さはある。
 並んでいる剣にしても、訓練用の木製からミスリルで出来た物まで置いてある。
 大きな店より、こういった路地裏の小さな店の方が、掘り出し物があったりするものだ。
 今回絡んできた奴にも言われたが、冒険者なのに装備をしてないから、変に思われて、絡まれやすくなっているのかも知れない。
 なので、見た目だけでもましになる様に、手軽な軽装の物を買おうと思う。
 先に居た客が帰ると、店主オヤジが話し掛けてきた。

「見かけない顔だな。最近この辺りに来たのか?」

「ええまぁ。昨日この近くで、宿をとったばっかなんですよ」

「そうか。それで何か探しもんか?」

「大した装備を持ってないんで、軽装で何か良いものがないかと」

「そうさな……これなんかどうだ? 『ヘビーベア』の革で作られ物だ。胸当、手甲、スネ当てのセットで、金貨二枚とお買い得だ」

「ヘビーベア?」

「なんだヘビーベアを知らないのか? 岩の多い所に生息している大型の熊さ。頑丈な皮で、鉄の剣も弾くって奴さ。ちなみに、かなり大型の獣だ。そこらのモンスターより強いぜ」

「それを素材に使ってるなら、革でも頑丈そうですね」

「そりゃーな。革で出来てるから、ご希望どうり軽装で動きやすい」

「それは良いかも(革製か……スノーウルフの皮で作ったらどうなんだろ?)」

「どうする? それとも他に何か希望でもあるか?」

「スノーウルフの皮は、装備を作る素材としては、どうなんですか?」

「スノーウルフか……頑丈さで言ったらヘビーベアの方が上だが、これから寒くなるから、保温性を考えると有りだな。だがここには、スノーウルフを素材にして出来た物はないぜ」

「ヘビーベアの装備みたいに、作ってくれる所ってあります?」

「それならうちの店でも可能だ。冒険者自ら素材を持ち込んで、オーダーメイドで作ることもあるからな。だからスノーウルフの素材を持ってくるなら、出来なくもないぞ」

「持ち込みは、毛皮の状態じゃないとダメですか?」

「物にもよるが、あるのか?」

「一体あります。ただし、解体してないのが」

「あんちゃんは、アイテムボックスが使えるのか!」

「ええまぁ」

「そうか……なら裏に来て、出して見せてくれ」

 俺は店主のオヤジに付いて行き、店の裏にある倉庫で【アイテムボックス】から、以前倒したスノーウルフのボスを出した。

「中々デカイ個体だな。状態も良さそうだし、良ければうちが買い取るぞ。それでこの毛皮を使って、あんちゃんの装備を作ろう」

「それで構わないです」

「見たところ『魔核(魔石)』も取ってないようだが、それもこちらで買い取って構わないか?」

「ええ頼みます」

「了解した。装備を作る代金と、買い取りの代金は、後日渡すと言うことでいいか? 『魔核(魔石)』も取り出して鑑定しなくては、金額が分からんもんでな」

「構いませんよ」

「よし分かった。出来上がるまで、四日から七日はかかるから、その頃にまた来てくれ」

「はい。お願いします」

 アイテムボックスに、入れっぱなしにしてあったスノーウルフを売って、その毛皮を素材にして、装備品が出来ることを楽しみにしながら、武器屋を出る。

 次はソーサリーカードを売っている店を見に行く。
 どんな効果の物があるか、少し楽しみだ。
  武器屋から歩くこと三十分、やはり路地裏にある店に入る。
 今度の店には、結構お客が居る。
 冒険者だけではなく、商人や街人も居た。
 店内には、様々な物を素材にして作ってある、色々なソーサリーカードが置いてあった。
 商人や街人が買っているのは、生活でよく使う、込めてある魔力が少ない効果の弱いソーサリーカードだ。
 魔力の少ない商人や街人には、便利で使いやすい物だ。
 生活するうえで便利になるソーサリーカードは、やはり何処でもよく売れているようだ。
 ここにあるソーサリーカードのサイズも均一で、ポケットに入れて持ち運び出来るくらいの大きさに、作ってある物が殆どだ。
 街人が買っているソーサリーカードは、十枚一組で、銀貨二枚(2,000GL)前後と、値段もお手頃。

  冒険者達は、攻撃系や防御系など戦闘向けのソーサリーカードを見ていた。
 店に並んでいる物を見たが、レア以下の物しかなく、希にあると聞いた召喚系のソーサリーカードは無かった。
 まぁそうだろうとは思ったけど。
 店主に聞いてみようかと思ったが、例え珍しいソーサリーカードがあったとしても、初見の人には見せないだろう思い、今回は聞くのをやめた。
 Aランク以上の冒険者なら、別かも知れないけど。
 俺はソーサリーカードを売っている店を出て、もう少し食料の買い出しをしながら、宿屋兼食堂のラヴィオリ亭に戻ることにした。

「いらっ…カズさんかい、お帰り。しっかり働いてきたかい?」

「ただいま女将さん。仕事は……」

「なんだ何もしなかったのか?」

「残念ながら今日は……」

「まぁそういう日もあるさ。夕食はどうする? 外で食べてきたかい?」

「いえ、ここで食べようと思ったので、外では食べて来てないです」

「おや嬉しいね。じゃあ何にする? 味は濃くない方が良いかね?」

「そうですね、今日は疲れてないので、アッサリした物の方が良いです。あっ! でもご主人が、いい顔しませんかね」

「お客がそんなことを、気にする必要ないよ。食べたい物を言えば良いのさ」

「それじゃあ、またおまかせでお願いします」

「あいよ。カズさんは、酒は飲むのかい?」

「飲めますけど、明日朝から依頼で出掛けるので、今日は止めときます」

「そうかい」

「それと、その依頼で数日は、戻らないと思いますので」

「分かったよ。じゃあ今日の夕食代は、貰わないでおくよ」

「そんな悪いですよ」

「構わないよ。数日分の朝食代だと、思ってくれれば良いさ」

「そうですか。ありがとうございます」

 少しすると、女将のラヴィオリが、アッサリしたおすすめの料理を持ってきた。
 何かと思ったら、やっぱりスパゲティだった。
 ただし味付けは、塩と胡椒にオリーブオイルと、ピリッとする唐辛子のような香辛料を使った『ペペロンチーノ』のような物だ。
 それと、玉ねぎの薄切りが入った『コンソメスープ』を一緒に出してきた。
 スパゲティは、オリーブオイルの量が少し多いが、昨日食べたミートスパゲティよりも、確かにアッサリしてると思う。
 けど、やっぱり少し濃い味付けだ。
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