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三章 王都オリーブ編1 王都オリーブ

122 模擬戦!?

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 俺は絡んできた男の後に付いて、ギルト裏にある訓練所へと向かった。
 訓練所に着くまでの間に、絡んできた男のステータスを確認する。

 《分析》ステータス確認


 名前 : モブア
 年齢 : 35
 性別 : 男
 種族 : 人
 職業 : 狂戦士
 ランク: C
 レベル: 41
 力  : 553(+20)
 魔力 : 122
 敏捷 : 148(-18)
 運  : 25

 【装備品】
 鋼鉄の斧 :力 +20 敏捷 -5

 鋼鉄の鎧 :ダメージ軽減 敏捷  -10

 鋼鉄の兜 :ダメージ軽減 敏捷 -3

 【戦闘スキル】
 ・《強》筋力強化
 ・《強》肉体強化
 ・《強》バーサーク
 ・《攻》パワーブレイク


 おもいっきり、力押しのステータスだな。
 レベルの割に魔力が少ないから、魔法は使わないで、戦闘スキル重視で戦うタイプか。
 しかも『狂戦士』って、ケンカっ早いのは、そのせいか?
 戦闘スキルに『バーサーク』とかあるし、この性格でこのスキルは危険だろ。
 それこそ誰かが、コイツを教育しなかったのか?

 ステータスを見て、どうやって相手をしたのもかと考えている内に、訓練所に着いてしまった。
 訓練所には二十人程の冒険者が、剣や魔法等の特訓をしたり、二人一組になって模擬戦をしている者達も居た。

「さあ着いたぜ。おれの女に手を出そうとしたんだから、覚悟は出来てるんだろうな!」

「……(まだ言ってるよ)」

「詰まらんから、簡単には終わるなよ」

「ああ(模擬戦をしている他の冒険者達も居るから、この分なら目立つことはないだろう)」

 訓練所に入るやいなや、モブアが急に大声で話し始めた。

「お前ら一旦訓練を止めて、場所を広く空けてくれや。今からおれが、新入りを教育しなきゃならねぇんだ」

「なっ(こいつ余計なこと言って、何注目を集めてんだよ!)」

「ガァハッハ。観客が居ねぇと、面白くねぇだろ」

 訓練所で特訓をしていた冒険者達は、何か文句を言うかと思ったが、殆どの人は『またか』と言って特訓を中断し、そこに居た全員が壁際によった。
 一部の者達は『何分持つか賭けるか』と、言っているのか聞こえた。


「広く空いたぜ、さぁかかってきな。テメェがおれに、膝を着かせることが出来たら許してやるよ」

「ハァー(周りに居る冒険者達の反応を見ると、こういった事を何度もやってるようだな。しかも止めないで、賭けて楽しんでる連中も居るし、なんかイラついてくるな)」

「それとなぁ、二度とトレニアに話し掛けんじゃねぇぞ」

「それはそっちじゃないのか? トレニアさん嫌がってたぞ」

「テメェには関係ねぇだろ! ろくな装備もしないで、冒険者になってんじゃねぇぞ!」

「ぅ……(確かに装備と言っても、刀しか持ってなかったな)」

 モブアは持っていた鋼鉄の斧を地面に置くと、近づき殴りかかって来た。
 だが装備している鎧のせいもあり、俺から見ると動きはとても遅い。
 何度殴りかかって来るが、体をひねるか一歩動くだけで、簡単に避けることが出来る。
 俺が何もせずに攻撃を避けていると、モブアは息が上がり、とうとう手を止めた。
 それを見ていた俺は、これだけのステータス差があるのに、攻撃して良いものかと、少し考えてしまった。

「テ、テメェ…何しやがった? なんでおれの攻撃が、当たらねぇんだ?」

「力み過ぎて動きが遅いの。それじゃあ、いつまでやっても攻撃は当たらないよ。だからもう止めにしよう? (これで引き下がってくれたら良いんだけどなぁ……)」

「おいどうした? いつもの元気は何処言ったんだ!」

「さっきの威勢はどうした!」

「新入りなんか早く教育しちまえよ。でないと、賭けに負けちまうじゃねぇか!」

 壁際で見ていた数人の冒険者が、疲れているモブアを駆り立てる。

「う、うるせぇ…だったら! 《筋力強化》《肉体強化》くらえ!」

 モブアはスキルを使い身体を強化して、更に置いてあった鋼鉄の斧を持ち、思いっきり斬りかかって来た。 
 斧の攻撃範囲から出る為に、俺は後ろへと一歩飛び退くと、鋼鉄の斧は俺のすぐ前を通過した。

「何がボコボコに教育だよ、斧を使って殺す気満々じゃないか」

「冒険者の特訓中に、事故は付き物だ。新入りが死んでも、ギルドに痛手はないさ。だから安心して真っ二つになりな!」

「それなら、こちらも攻撃させてもらう(殺す気でいるなら、俺も遠慮しないで攻撃するさ。さすがに手加減はするけど)」

「テメェの攻撃なんか効くか! これで終わらせてやる! 《パワーブレイク》」

 モブアが攻撃スキルを使い、一撃必殺の攻撃をした。
 力いっぱいに叩き付ける斧での攻撃は、地面を割る程の威力だった。

「どうだ、真っ二つになったろ!」

 しかし俺は難なくその攻撃を避け、モブアの懐に入った。

「確かに威力はあるけど、それだけ大振りだと、簡単に避けることは出来る」

「テメェいつの間に!」

「反撃させてもらうぞ」

「テメェの攻撃なんか、鋼鉄の鎧で全部弾いてやるさ」

 俺はモブアの鎧に触れ、スノーベアを攻撃した時の威力で、ライトニングショットを放つことにした。
 それ以上魔力を込めて威力を増すと、鋼鉄の鎧を着ているモブアが、感電死する可能性があると思ったからだ。

「鋼鉄の鎧なら、良く効くだろうな〈ライトニングショット〉」

 俺が放ったライトニングショットは、鋼鉄の鎧を伝わり、モブアの全身へと電撃が流れた。

「ギギャアァー」

 モブアは悲鳴と共に気絶して倒れた。

 やっぱり一撃で終わったか。
 金属製だと電撃をよく通すと思って、威力を上げないようにしたんだけど、ギリギリ大丈夫だったようだな。

 周りで駆り立てていた連中と、見ていた他の冒険者達は、唖然としていた。
 
「なんだあの新入りは?」

「いったい何したんだ?」

 モブア駆り立て賭けをしていた連中に、俺は話し掛けた。

「なぁそこのあんた達は、コイツと知り合い?」

「べ、別に知り合いって訳じゃねぇよ」

「たまに自分より弱そうな奴を連れて来て、教育するとか言ってる奴さ」

「面倒に巻き込まれたくねぇから、関わらないようにしてるだけだ」

「そう言ってる割には、楽しんで駆り立てて、賭けをしてたな(何が巻き込まれたくないだ、この連中は)」

「……」

「……」

「……」

「ハァー。すまないが誰でもいいから、ここに居る間にコイツが気が付いたら、これを飲ませるなり、かけるなりしてやってくれ」

 俺は懐から出す振りをして【アイテムボックス】から、薄めた回復薬が入った小ビンをモブアの近くに置いた。
 そして訓練所を出て行く。

 あ~あ目立っちゃったな。
 でもこれで、ああいった奴が絡んでこなくなるなら、アヴァランチェの時もボコボコにされてないで、返り討ちにすれば良かったよ。
 ……あ、そう言えば、昼飯食べてないや。
 また知ってる食べ物でもないか探すか。
 ピザの次にスパゲティだから、流れ的に今度はリゾットかな?
 でも米は見てないよな。
 米か……長いこと食べてないなぁ、この世界にあるのかな?  無いかなぁ? いや、きっとある!
 昔に異世界召喚された勇者とかが、ピザやスパゲティを広めたに違いない!
 ならば米も何処かにあるはずだ!
 帰る方法も探すが、それと同時に米も探そう!
 ……食べ物のことばかり考えてたら、お腹が空いたから、早くなんか探して食べよ。

 訓練所から大通りに出て、近場の店で鶏の唐揚げを買い、そのまま店先で食べた。
 すると大通りを歩く人達の中から、聞いたことのある声がした。

「見つけた! ちょっと来い!」

「えっ何? ネメシアさん?」

「お前いったい何しやがった?」

「何って俺は…」

「取りあえずギルドに来い!」

 急に現れたネメシアに、腕を引っ張られて、俺は第2ギルドに連れていかれた。
 連れてかれる間に、俺に何の用があるのか聞いたが、ネメシアは何も答えなかった。
 ギルドに着くと、周りの目も気にせずに、三階にある部屋に連れていかれた。
 三階の部屋は中央に円卓があり、その周りには十数脚の椅子がある、言わば会議室だ。
 その会議室に入ると、中にモルトと始めて見る女性が居た。
 ネメシアは、女性が居ることに気付いていない。 
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