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三章 王都オリーブ編1 王都オリーブ

119 王都の街を散策 1 パン屋で発見

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「それでカズ君は、ギルドに行ったらどうしますか? 依頼を探しますか?」

「今日は、あちこち歩いてみたいと思います。結局王都に来て、すぐに貴族区に行ってしまったので、街のことが分からないままですから」

「それは良いかも知れませんね。これから住む場所はどうしますか? 儂がどこか紹介しましょうか? ジルバにも言われてますし」

「ええ。お願いします」

「分かりました。先ずはギルドで、アヴァランチェから受けてきた依頼の報酬と、今回の護衛依頼をした報酬を、お支払しましょう。街の探索はその後で」

「はい。そうします」

「呪いの件に関しては、内密でお願いします。そちらの謝礼金等は、後日オリーブ・モチヅキ家の方から、渡されるそうですから」

「そうですか。分かりました」

 カズは通行許可証を、懐にしまう振りをして【アイテムボックス】に入れた。
 ギルドに着くとモルトに言われ、ギルドカードを渡して二階にある一室に入った。
 少し待っていると、モルトが報酬を持ってきた。
 両方の依頼を合わせて、白金貨二枚と大金貨八枚(2,800,000GL)を渡された。

「モルトさん。こんなに多いんですか?」

「妥当な金額ですよ。ただ氷結花の買い取り代金は、含まれていませんが」

「そうなんですか?」

「氷結花の買い取りの代金は、後日オリーブ・モチヅキ家の方から、お支払いされるでしょう」

「こんなに貰って良いんでしょうか?」

「Cランクのカズ君は、これを見て多額の報酬と思うでしょうが、貴族の方からの依頼だと、こういった金額になるのが当たり前なんですよ」

 呆気に取られながらも、カズは報酬を受け取り【アイテムボックス】にしまった。

「あれ? モルトさん。俺のギルドカードは?」

「カズ君には、こちらのギルドを拠点として、登録してもらいます」

「拠点ですか?」

「王都の冒険者ギルドは、全部で九ヶ所ありますので、冒険者は王都に居る間は、自分のランクにあった場所を拠点として、登録することになってるんです。勝手ながらカズ君には、こちらのギルドを拠点に、させてもらいました」

「拠点登録は構いませんが、何故そんなことを?」

「王都には冒険者が多いですから、それを調べ管理する為です。中には粗暴な冒険者も居ますから、問題が起きた時に、その者を早く特定する為なんです」

「なるほど。そう言えば、最初にここへ来た時に、ネメシアとかって女の冒険者が居ましたけど、あの人も相当だと思いましたが」

「彼女は新しい人が入った時は、いつもああなんですよ。問題を起こす者かどうかを、自分ながらに確かめているんです。ただ口は悪いですが」

「そうなんですか! 俺はてっきり、会った早々に嫌われてるのかと」

「まあ最初だけで、その内に物腰も柔らかくなりますよ」

「それなら良いんですが」

「さて儂は、これから調べ物がありますから、カズ君はのんびりと、街の散策をすると良いでしょう。夕方には戻ってきてください。ギルドカードは、その時に渡しますから」

「分かりました」

 俺はギルドを出て、近場を散策することにした。
 王都の中心部に近い街だけあって、人はもの凄く多く、活気に満ちている。
 辺りにある商店も、一軒一軒が大きく販売している品物の種類も多く、リアーデやアヴァランチェの比ではなかった。
 お腹が空いてきた俺は、何か食べようかとパン屋に入った。
 なんと『ピザ』があった。
 ピザ生地という訳ではないが、パン生地の上には、薄切りにしたトマトとウインナーに、チーズが乗っていた。
 見た目は15㎝程の、四角い形状をしている。
 1個の値段が、銅貨六枚(600GL)と安い。
 試しに買うとパン屋の店主が、見なれないカズを見て、食べ方を教えてきた。
 どうもこのピザは、巻いて筒状にして食べるとのことだ。
 食べるとき別に巻かなくてもよさそうだが、四角いままだと食べづらいから、誰もが巻いて食べるそうだ。
 一口食べてみたら味は確かにピザだが、チーズは今までの食べてきた物より、濃厚で美味しかった。
 巻いたことで、パンに濃厚なチーズの味と、ウインナーの肉汁が染み込み美味い。
 だかこれだと、チーズの油とウインナーの肉汁が多い為に、パンを厚くしないと、バランスが悪く思えた。
 しかしそれだと量が多いから、チーズとウインナーを、もう少し減らしても良いんじゃないかと思いながら、少々重い昼食を済ませた。


 その後カズは、大通りから路地裏を散策して、マップを埋めていった。
 今日は店には入らず、取りあえず気になる店の場所を覚えておく事にした。
 散策していると、行き交う人々の半分以上が人族だが『犬・猫・狼・熊 』等の色んな種の獣人族もいた。
 二足歩行しているが、見た目が完全に犬や猫のままでいる『獣型』に、見た目は人だが、獣耳や尻尾がある『人型』と、獣人族と言っても色々だ。
 ドワーフにエルフはよく見かけた。
 あとは身長が3m以上ある『巨人族』もいれば、逆に身長が50㎝もない『小人族』も見かけた。
 気が付けば日が暮れてきたので、カズはギルドへと戻ることにした。
 ギルドに着くと、依頼を終えて戻って来る冒険者達で、ごった返していた。
 これはたまらないと、一旦外へ避難した時に、誰かがカズに話し掛けてきた。

「おい。そこのお前」

「……?」

「お前だよ! お前!」

 カズは声のする方を見た。
 そこに居たのは、初めてこのギルドに来た時に会った、女冒険者のネメシアだった。

「俺ですか?」

「そうだよお前だよ! あれから姿を見ねぇと思ったら、今頃になって、のこのこ現れやがって。何様だ!」

「今頃のこのこって、あれからずっと依頼をしてて、今日の昼に依頼を終えて、ギルドに戻って来たんですか。それが何か?」

「何かだと! 貴族の依頼を受けてからって、調子に乗るんじゃねぇぞ!」

「別に調子に乗ってないですよ(何でこの人は、ケンカ口調でからんでくるんだ?)」

「何をしてるんですか?」

「チッ。じじぃか!」

「またあなたですかネメシア。新しい人が入る度に、特訓とか言って、腕試しするのはやめたらどうです」

「ほっとけ! アタシがやらなければ、他の実力がねぇバカ共が、憂さ晴らしにやりはじめるだけさ」

「程々にしなさい」

「わかってるよ! お前もせいぜい、バカ共に気を付けるんだな。じゃあなじじぃ」

「カズ君大丈夫でしたか?」

「ええ。別に何もされてませんから。それよりネメシアさんは、いつもあんな感じなんですか?」

「人の事ですから、軽々しく言えませんが、伸び悩んでると言ったところですか。儂が言えるのは、ここまでです」

「そうですね。あまり詮索しない方がいいですね(面倒事は、ごめんだからな)」

「儂が言うのもなんですが、絡んできても、大目に見てやってください」

「はぁ。分かりました(やけにネメシアさんを、ひいきしてるんだな)」

「それではお約束の宿屋を、ご紹介しますので行きましょう」

「はい。お願いします」

「それとギルドカードを、返しておきます」

 モルトからギルドカードを受け取り確認すると、右上に小さく番号が入っていた。

「モルトさん。この右上の番号は、なんですな?」

「それは王都にある冒険者ギルドで、自分がどこに拠点登録しているか、分かる為の番号です。カズ君が登録したのは『第2ギルド』になりますので、右上に『2』と表記されているのです」

「なるほど。確か王都の冒険者ギルドは、九ヶ所あると言ってましたから、番号も9まであると」

「そうです。おっと、もう宿屋に着きますので、各ギルドの話については、また今度にしましょう」

「分かりました」

 路地裏に入り着いたのは、それほど大きくない宿屋だった。
 大きくないと言っても、三階建てだ。
 ただここに来るまで通ってきた大通りは、五階や六階といった大きな建物が多かったからそう思えた。
 やはりランクが低く、稼ぎの少ない冒険者等は、路地裏にある手頃な宿屋に泊まるのが、どこでも当たり前のようだ。
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