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三章 王都オリーブ編1 王都オリーブ

118 貴族の依頼終了 と メイド達との別れ

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 アキレアだけではなく、今度はジルバにまで使用人として働かないかと言われた。

「ジルバさん。アヴァランチェのギルドで、ロウカスクさんに聞いたと思いますけど、俺はまだCランクで、ここ居て良い身分じゃないと思うんです」

「身分やギルドランクを見るとそうかも知れませんが、アヴァランチェのギルドマスターお墨付きの冒険者ですから、わたくし個人としては良いと思います」

「そ、そうですか」

「無理強いはしませんが、気が向いたら、いつでも言って下さい。旦那様と奥様には、わたくしから話をしますから」

「ハハハ……(このまま話を続けてたら、本当に使用人として、働かされそうだ)」

「あ…あの。お話は…終わりました…か」

 気が付くと、ビワが近くに来ていた。

「ビワどうかしましたか?」

「朝食のご用意が…出来ました…から、広間の方へ…お越しくだ…さい」

「わざわざ呼びに来てくれてありがとうビワさん(良い時にビワさんが呼びに来てくれたお陰で、ジルバさんの勧誘から逃れられそうだ)」

「分かりました。カズ殿行きましょうか」

「はい」

 カズは朝食の用意がしてある広間に向かいながら、ほっと胸を撫で下ろした。
 これがここで食べる最後の朝食だと思いにふける。
 広間に入り椅子に座ってすぐに、マーガレット親子が入ってきた。
 挨拶を交わし、皆が揃ったところで朝食を頂いた。
 今回はマーガレット、デイジー、ダリアと、カズの四人だけの食事で、使用人のジルバとメイド四人は広間を出て行き、ベロニカ一人がマーガレットの近くに待機していた。
 静かな朝食を終えて、食後のハーブティーをアキレアが運んできた。

「失礼いたします。ハーブティーをご用意致しました」

「ありがとうアキレア」

「それとモルトさんが来ましたので、カズさんは、客室へお願いします」

「分かりました」

「カズさん」

「何ですかマーガレットさん?」

「今日お屋敷を出ると聞きましたが」

「はい。モルトさんがギルドへ戻る時に、一緒に行こうかと」

「そうですか。では出で行く前に、私の所に一度来てください」

「分かりました。挨拶に伺います」

 カズは広間を出で、客室へと向かった。
 扉をノックして、返事を待ち部屋に入ると、既にジルバが来ていた。

「カズ君どうでしたかな。前回儂が来てから数日経ちましたが、何か問題はありましたか?」

「どうもモルトさん。特にこれといった事は起きてません。至って平和でした」

「そうですか。それは良かった」

「さてモルト、カズ殿も来たことだし、話の続きを聞かせてくれ」

「ああ分かっとる。取りあえずジルバに話したのは、あの日あった事までだったな」

「ああ。それで調べてくれたんだろ。どうだ、何か手掛かりになりそうな事はあったか?」

「お屋敷を修繕した人達を探して、聞いてみたんだがな、四年も前の事になると、王都を出て行ってしまった人もいて、全員は調べられなかった。分かる人だけは訪ねて話を聞いたんだが、結局これといった成果はなかった」

「奥様が外に出るようになれば、もしかしたら、何か仕掛けて来るかも知れないな」

「危険だが、誰がやったか分からない今は、まだ様子見といったところか」

「こっちも少し調べてみるから、モルトも引き続き頼む」

「うむ。儂も出来るだけのことはしよう」

「助かる」

「長い付き合いだ気にするな。取りあえず、今日報告できるのはここまでだ。また何か分かったら、来させてもらう」

「分かった。こちらも何か分かったら、モルトの所に使いの者を行かせる」

「うむ。儂はギルドに戻るが、カズ君も行くかね?」

「はい。ただ出発する前に、マーガレットさんに会いに来てくれと言われてまして」

「それでは、わたくしが案内致しましょう。モルトはもう少しここで待っていてくれ」

「分かった」

 モルトを客室に残し、カズはジルバに付いて行き、マーガレットの居る部屋に向かった。
 部屋の中に入ると、マーガレットの他にデイジーとダリアも居た。

「失礼します。カズ殿がそろそろお屋敷を出ますので、ご挨拶に」

「もう行かれますか。カズさん改めて、お礼を言わせていただきます。ありがとうございました」

「とんでもない。俺もお世話になりました」

「カズさん。アヴァランチェでは、私の無理な依頼聞いてくれて、お母様を助けてくださり、ありがとうございました」

「ありがとうございました。カズさん」

「どういたしまして。デイジーさん。ダリア君」

「主人は数日すれば帰って来ると思いますから、お手数ですがもう一度こちらへ来てください。その時はメイドの一人を、ギルドへ迎えに行かせます」

「分かりました」

「ジルバ。門を通るための許可証をカズさんに」

「はい奥様」

「カズ殿これを。門を通る際に、門番に見せてください」

「はい。ありがとうございます(これで長かった依頼も終了だな)」

 街と貴族区を隔てる門を通るための『通行許可証』を受け取り、カズはモルトの居る客室に戻った。
 そして屋敷を出るときに、アキレア達メイドが見送りに来てくれた。

「カズさん。また来てくださいね。お仕事なら、いつでもありますから」

「はい。……え? (仕事って、まだ使用人の勧誘をしてくるの)」

「カズにゃんが来てくれなくても、にゃちきは買い出しの時に、会いに行くにゃ」

「その時はミカンも行く」

「私も…行きたい」

「こらこら何を言ってるの。お仕事があるんですから、ちょくちょく街になんて行けませんよ。それに会いに行ったとしても、もしその時カズさんが女性と居たら迷惑でしょ」

「大丈夫にゃ。カズにゃんは別に、カッコいいわけじゃないから、彼女なんて居ないにゃ」

「なっ……(最後の最後で何を)」

「そうだね。カッコいいわけじゃなよね」

「ぅぐ……(ミ、ミカンまで。そんなこと言われなくても、分かってるよ)」

「ちょっと二人共…本当のことでも…言ったら…かわい…そう」

「ぐはっ……(ビワさ~ん。フォローになってないよ!)」

「カズさん大丈夫ですか? あなた達、今のはちょっとヒドいわよ。いくら本当の事でも……あ」

「アキレアも言ってるにゃ」

「ごめんなさいカズさん。ほら皆も!」

「もういいですよアキレアさん。ミカンもキウイさんも、それにビワさんだって、悪気がないのは分かってますから」

「やっぱりカズにゃんは優しいにゃ。お詫びにカズにゃんは、にゃちきのことを、キウイと呼び捨てにして良いにゃ!」

「いや悪いよ」

「良いにゃ。それにミカンだって、呼び捨てにしてるにゃ」

「あの……それなら…私もビワ…で」

「ビワさんまで」

「その方が、呼びやすくて良いと思うよ。ミカンは」

「ぅ……ハァー。分かりました」

「じゃあ最後に呼んでみるにゃ」

「今!?」

「呼んで…みて」

「キウイ」

「にゃは!(いい感じにゃ)」

「ビワ」

「は、はい(何か頬が熱くなっちゃうわ)」

「こ、これで良いでしょ。これ以上モルトさんを待たせたら悪いから、俺もう行くよ(うぅ……何か恥ずかしくなる)」

「じゃあ行きますか。カズ君」

「あ、はい。あっそうだ! アキレアさん。これを渡しておきます」

「何ですか?」

「それに、浄化の魔法が込められていますから、もしもの時は使ってください。二回は使用出来ると思いますから。それじゃ」

 カズはアキレアに、浄化の魔法を込めた腕輪を渡して、そそくさとその場を離れ、モルトと一緒に屋敷の敷地内から出て行った。
 暫く歩いて行くと、来るときにも通った、街と貴族区を隔てる門に着いた。
 今回はもうカズの右手甲に、貴族印が無いので、ジルバから渡された通行許可証を門番に見せて門を通った。
 門を通ったカズとモルトは、冒険者ギルドへと向かって歩いて行く。

「カズ君。その通行許可証は、次に貴族区へ入る時にも使えますから、無くさないようにしてください。もしこれから、貴族の方々と付き合いが増えるようであれば、ギルドカードが通行許可証の代わりになるようにしますので」

「ギルドカードを提示すると、貴族区へ入れるんですか?」

「はい。ギルドカードで入れる冒険者は、殆どがAランク以上方ばかりですが」

「それでじゃあ俺は、まだまだ無理ですね」

「さぁどうでしょうか」(ボソッ)

「んっ?」
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