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三章 王都オリーブ編1 王都オリーブ

117 朝から元気なメイド達

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 残念がってるアキレアを見て、少しは好かれていたのかと思い慰めた。
 勘違いだったら、もの凄く恥ずかし。

「もう会えない訳じゃないですから、そんなにガッカリしないでくださいよ」

「べ、別にガッカリなんてしてません! ただキウイとミカンが、カズさんと楽しく話しているのを見ていますし、ビワもカズさんに馴れてきたので、せっかく親しく話が出来る男性が居なくなるのは、寂しいと思いまして」

 少々頬を赤く染めていたアキレアを見た俺は、ちょっとからかってみることしにた。

「そう言ってもらえると、嬉しいです。ただアキレアさんは、何とも思ってないのは、俺としては寂しいですね」

「何とも思ってない訳では……」

「すいません。冗談です」

「ん~もう! からかって!」

「すいません」

「もういいです! 明日は朝からモルトさんが来るんですから、早く休んでください!」

 アキレアは少し怒りながら去って行った。


 俺はちょっと冗談が過ぎたと、反省しながら部屋に戻った。
 ここの部屋で過ごすのも最後なので、今夜くらいは、ベッドで寝ようかと思った。
 毎日寝るときは、柔らかいベッドではなく、ソファーで寝ていたからな。
 なんせ初日にベッドで横になったら、柔らかさに慣れず寝付けなかったからな。
 そんなことを考えつつ、俺は【アイテムボックス】から、六角の小さな水晶が付いた腕輪を出した。
 これはアヴァランチェで、付与(エンチャント)を試す為に、練習用で買った物だ。
 指輪もあったが、水晶に傷がある為に、付与をしても、すぐに使えなくなってしまったら意味がないからだ。
 一応この腕輪に、浄化の魔法を付与して、明日ジルバさんかアキレアさんにでも、渡しておくことにした。
 もし何かが原因で、また呪いをかけられたら大変だからだ。
 さっそく腕輪に付いてる水晶に、浄化魔法を込める。
 浄化魔法は、俺が元の世界から持ってきた、浄化と書かれたトレカ(トレーディングカードゲーム)を使って、呪いを消し去った時に、魔法の古書に現れた魔法だ。
 試しに買った物だから、どうかと思ったが、なんとか二回分の浄化魔法を入れるが出来た。
 腕輪に付与を終えて、俺はアラームの魔法を使い、ベッドに入り寝ることにした。


 ◇◆◇◆◇


 …朝か……まだ少し眠いけど、起きるかな。

 カズはいつものように起きてすぐ【マップ】を確認するが、特に変わった様子もなく、一人屋敷内で動いているのが分かるだけだ。
 カズはその場所へ行くと、いつも通りアキレアが、朝食の仕込みを始めていた。

「おはよう。アキレアさん」

「おはようごさいます。今日はいつもより早い起きですね。カズさん」

「なんだか、目が覚めてしまって(昨夜の機嫌が直ったようで良かった)」

「もしかして、お屋敷を出て行くのが…私達と会えなくなるのが寂しくなって、早く目が覚めちゃったんですか?」

「そん…そうかも知れませんね(そんなことない何て言ったら、またアキレアさんの機嫌を損ねそうだから、言わないでおこう)」

「にゃにゃ! かずにゃんは、私達と会えなくなが寂しいのかにゃ!? にゃちきは嬉しいにゃ!」

 いきなり現れたキウイが、抱き付いてきた。

「おわっ! キウイさんも、起きてきたんですか」

「おはようにゃ!」

「お、おはよう。それより離れてくれるかな?」

「照れなくても、いいじゃにゃいか」

「いやその、胸が……(朝から刺激が強い)」

「キウイ離れなさい!」

「うぅ……分かったにゃ。それより何で、カズにゃんと会えなくなるにゃ?」

「カズさんは、今日お屋敷を出て行くのよ」

「えぇー! 何でカズお兄ちゃんが、出ていっちゃうの? ミカンやだ!」

「カズさん…出て行くなんて、私も…聞いて…ない」

 キウイの次は、ミカンとビワも起きてきた。

「二人とも今日は早いね」

「うん。昨日は早く寝たから、ミカンは早く目が覚めたの」

「私も…同じ。それより…何でカズさんが、出て行っちゃう…の?」

「一応ジルバさんが戻ってくるまで。って依頼を受けた事になってるから」

「受けた事に…なって…る?」

「ビ、ビワ! そんなことより、朝食の仕込みを手伝って!」

「そんなに慌てて、私達に…何か隠してる…の?」

「アキレアお姉ちゃん。そうなの?」

「アキレアは、何か隠してるにゃ?」

「アキレアさん。俺がここに居るのは、ジルバさんがアヴァランチェから戻ってくるまでって、皆に言ってないんですか?」

「え、ええ。奥様とメイド長のベロニカさんには知ってますが、他の皆には言ってませんでした」

「なんで教えてくれなかったのかにゃ! 次からにゃちきが重い物を運ぶ仕事を忘れた時に、誰に手伝ってもらえば良いにゃ!」

「そうだよ! ミカンもカズお兄ちゃんと、お喋りする時間が無くなっちゃうよ!」

「わ、私は……」

「キウイは仕事を手伝ってもらえなくなって、サボって昼寝してる時の見張りが居なくなるのが残念で、ミカンはカズさんに仕事を教えに行くと言って、サボる口実が無くなるのが、残念なだけでしょ!」

「な、なんのことだにゃ!?」

「そ、そんなことないもん。ミカンはただ、お仕事を教えに行ってるだけだもん」

「誤魔化しても、駄目です!」

「カズにゃん!」

「カズお兄ちゃん!」

 キウイとミカンが、同時に俺を見てきた。

「カズさんが言った訳ではないです」

「じゃあ何で分かったにゃ?」

「カズさんが来てから、二人がサボってる所を見なくなったから、ちょっと鎌を掛けたんです」

「はめられたにゃ!」

「アキレアお姉ちゃん酷い!」

「酷くありません! カズさんが居る間は、見逃してあげたんですから。次にサボったら、ベロニカさんに頼んで、メイドの作法を、また一から仕込んでもらいますからね!」

「それだけは嫌だにゃぁー」

「ミカンもうサボらないから、メイド長には黙ってて」

「あの…アキレア。私も…サボったこと…あるの」

「ビワに関しては、男性と話す練習になっていたから良いです」

「ビワばっかりズルいにゃ」

「ビワお姉ちゃんだけズルい」

「あ、あの…ごめんなさい」

「キウイとミカンは、反省してないようだから、ベロニカさんに、今までの事を報告します」

「ぅんにゃ~!」

「ミカンやだ~!」

「朝からやかましいわよ!」

「まぁまぁアキレアさん。これからはしっかり仕事をしますよ。そうだよねキウイさん。大丈夫だよねミカン(何で俺が、フォローしないとならないんだ)」

「しっかりやるにゃ!」

「大丈夫! ミカン出来る!」

「もう……今回はカズさんに免じて許しますが、次は問答無用で、ベロニカさんに報告しますからね!」

「分かったにゃ」

「ミカンも分かった」

「わ、私だけ……ズルい?」

「そんなことないですよ。アキレアさんが言ったように、ビワさんは男性に馴れる為の、練習になっていたんですから良いんですよ(俺が言うのも、なんか変だな)」

「ありがとう。カズ…さん」

「さぁ話はここまで! そろそろ奥様達も起きる頃ですから、急いで朝食の用意をしますよ」

「俺はちょっと、外の風にあたってきます」

 カズは四人と別れて、外へと向かった。
 キウイとミカンは、食器やテーブルの支度をする為に、食事をする広間へ移動し、アキレアとビワは今日食べる分のプリンを作り始めていた。

 庭に出たカズは、軽く体を動かし背伸びをした。
 すると屋敷からジルバが出て来た。

「おはようございます。カズ殿」

「おはようございます。ジルバさん」

「運動ですか?」

「運動といった程ではないですが、最近あまり動いてないで、体がなまってしまって」

「ずっとお屋敷に居たら、体を動かす機会がなかったですか?」

「体を動かすといっても、掃除くらいでしたからね」

「ハッハッハ。もう冒険者は辞めて、こちらで使用人になったらどうですか?」

「ジルバさんまで言うんですか!」

「おや、誰かに言われたのですか?」

「アキレアさんに言われましたよ。王都に居る冒険者は多いので、稼ぎの良い仕事を見つけるのは大変だから、もう暫くここに残って働いてはと」

「アキレアも良いことを言いますな。どうですかな? カズ殿」
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