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三章 王都オリーブ編1 王都オリーブ

115 賑やかな食事

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 メイドの五人が、夕食の準備をするのに部屋を出て行った後、デイジーが先程聞いていた話で、気になったことをカズに尋ねた。

「カズさん。一つお聞きしたい事が、あるんですけど」

「なんですか?」

「アヴァランチェから王都まで、どうやって来たんですか? 私達が王都へ戻って来る時に、ジルバが各街のギルドで、カズさんが通ったか確認したのですが、そういった方は、見てないと言われたようなのです」

「急ぎでしたから、街道は通らずに、北の山脈を越えて来たんですよ。あ、でも王都からだと、南の山脈になるのかな?」

「えっ?」

「なんと! まさかと思いましたが、カズ殿は、あの山脈を越えて来たんですか? しかもこの時期に」

「え、ええ。ま、まぁ……(ついうっかり言ってしまった!)」

「先程ジルバが、アキレアに聞いて分かったのですが、カズさんが我が家に着いたのが、アヴァランチェを出てから七日後だと」

「そ、そうでしたっけ……」

「どうやって、そんなに早く来れたんですか? いえ早く届けてもらったことには感謝していますが、私スゴい気になります!」

 デイジーが椅子か立ち上り、どんどんと迫ってくる。

「お嬢様。そんなに近付いては、カズ殿が困っておられますよ」

「ご、ごめんなさい。つい気になったもので」

「い、いえ(アヴァランチェでも、詰め寄られたっけな)」

「私しも気になります。雪積もる山脈を、数日で越えてくるなんて。しかもこの時期あそこには『白き災害』と言われている、フロストドラゴンが出ると聞きます」

「そ、そうなんですか……(さすが元冒険者のジルバさんだけあって、白真のことも知ってるんだ)」

 カズが気不味くなったと思った時に、部屋の扉がノックされ、アキレアが夕食の支度が出来たと呼びにやって来た。
 その為話を切り上げて、全員が広間へと移動した。
 マーガレットの言った通り、今回はメイド達も一緒に食事をすることになった。
 ベロニカも今回は、マーガレットの意思を尊重して、一緒に食事をすることにした。
 キウイとミカンは楽しく食事をしていたけれど、アキレアは配膳や空いたお皿の片付けなどをする為に、気を配りながら食事していた為に、いつもより大変そうだった。
 ビワは賑やかなのが苦手なようで、そんなアキレアの手伝いをしていた。
 賑やかな夕食の最後にデザートのプリンを、アキレアとビワが運んできたら、マーガレットとキウイとミカンが、とても嬉しそうにしていた。
 デイジーとダリアは、とても嬉しそうにしている母親のマーガレットを見て、少し不思議そうにしていた。

「ねぇお母様。とても嬉しそうですけど、いったいこれは何ですの?」

「あら? デイジーとダリアは、プリンを知らないのかしら?」

「プ…リンですか? 知りません」

「私も最近知ったのよ。カズさんから頂いてね、作り方も教えてくれたの。柔らかくてとっても美味しいのよ」

 それを聞いたデイジーとダリアは、一口プリンを食べると口角が上がり、幸せな顔をしていた。

「何これ! 美味しい~」

「ぼくこんなに柔らかくて、美味しい物食べたの初めて!」

 デイジーとダリアの顔を見ると、今にもとろけそうになっていた。


 母親が病気になってから、治す薬を探す為に、子供ながらに色々と苦労をしたんだろう。
 アヴァランチェで会った時のデイジーは、無理して貴族としての振る舞いを、してたんだろうな。
 ダリアは、見た目は女の子っぽいが、やっぱり男の子だから、デイジー付いて行き、守ろうとしてたんだろうな……たぶん。

「皆さん。プリンはまだ用意してますから、食べたい方は、おっしゃってください」

「アキレア。私にもう1個頂戴!」

「お母様だけズルいわ。私も欲しいですわ」

「ぼくも食べたい」

「では三人分追加ですね」

「アキレア。にゃちきも!」

「ミカンも!」

「わ…私も……欲しい…わ」

「仕方ないわね。本来なら、ジルバさんに頼まれたことを忘れて、服を汚してきた三人にはお預けなんだけど…」

「ぅんにゃ~……」

「やっぱりミカンは、いいです」

「私…も……この1個で…満足……」

「アキレア。今日は許してあげて」

「分かりました奥様」

「やったにゃ!」

「ミカン嬉しい!」

「やっ…た!」

「うふふっ。キウイのにゃんこ語は、いつ聞いても可愛いわ!」

「あっ! つい口癖が出てしまい、皆様に対して大変失礼を致しました」

「あら、止めてしまうの? 公式の場ではないのですから、にゃんこ語を使って話してください。その方が私は嬉しいわ」

「ぼくも、そっちの方が良いな」

「そう言ってもらえると、にゃちきは嬉しいにゃ!」

「デイジーさん。にゃんこ語ってなんです?」

「キウイのしゃべり方が可愛いので、私が勝手に言ってるんです」

「カズにゃんには、いつもこのしゃべり方で良いにゃ! カズにゃんに敬語を使うと、なんか痒くなるにゃ」

「ハハ……(俺はアレルギーか、何かかよ!)」

「カズにゃんだなんて、羨ましいわ。私もキウイに、デイジーにゃんて呼ばれたいわ」

「さすがにお嬢様には、言えないにゃ」

「残念だわ。いつかきっと、呼ばせてみせますわ!」

「にゃにゃにゃ!」

「アハハは」

「うふふっ」

「あはははッ」

 デイジーとキウイのやり取りを見ていた皆は、とても楽しく笑っていた。

「カズ殿。少しよろしいでしょうか」

「ジルバさん。ええ大丈夫です」

 ジルバに誘われ、広間にある大きな窓を開け、バルコニーに出た。

「今日は少し冷えますな。この分なら今年は、早く雪が降るかもしれませんな」

「ええ。そうですね」

「カズ殿。この度は、誠にありがとうございました」

 ジルバは深々と頭を下げた。

「ジルバさん。頭を上げてください。俺は依頼を受けただけですから」

「依頼を受けたと言っても、ここまで親身になってくれる冒険者の方など、私は知りません」

「そんな、俺は別に……」

「氷結花を届ける為に危険を冒して、考えられない程早く届けてくれただけではなく、奥様にかけられた呪いを、浄化してくれたと聞きました。そのうえ私しが戻るまで、お屋敷の皆を護衛してくれたと」

「ジルバさんもういいですから、頭を上げてください。その事なら、マーガレットさんからにも、お礼を言われましたから、もう十分です(やっぱり感謝されるのは、照れくさく、慣れないな)」 

「やはりカズ殿は、変わっておられる」

「ハハッ。皆さんに言われて、自覚するようになってきました。でも呪いの件は、まだ解決してないので、詳しい事は、明日来るモルトさんに、聞いてみましょう」

「そうですな」

「にゃにゃ? カズにゃんとジルバさんは、こんな所で何してるにゃ?」

「キウイ聞きましたよ。私しが頼んだ、古い馬車の片付けを、カズ殿に頼んだそうじゃないですか」

「ご、ごめんなさい……にゃ」

「まぁまぁジルバさん。失敗は誰にでもありますし、今日はマーガレットさん親子が、元気に再会出来た日ですから(無理なこじつけかな?)」

「そうですね。せっかくの日に、お説教はよしましょう。これからは、気を付けるんですよ。分かりましたかキウイ?」

「はい! 分かりましたにゃ」

「キウイ。片付けるから、早く来て」

「分かったにゃ。アキレアが呼んでるから行くにゃ」

 キウイはアキレアに呼ばれて、食器の後片付けをしに行った。
 ベロニカも気を使って後片付けを手伝い、部屋にはマーガレットと、デイジーとダリアの親子だけになった。
 ジルバは親子の邪魔にならないように、バルコニーに出る為の窓を閉め、カズと話を続ける。
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