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三章 王都オリーブ編1 王都オリーブ

111 女性は誰もがプリン好き!?

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「私なんだか生きる気力が……」

「ちょ、マーガレットさん。またそんな……」

「奥様、そのようなご冗談は、よしてください」

「は~い。ベロニカに怒られちゃったわ」

「プリンなら材料があれば、出来ますから」

「えっ! 本当? 私てっきり他の街で買ったものかと思ったわ。カズさんが、アイテムボックスを使えるって聞いたから」

「今回のプリンは、俺が作った物です。作り方も、そんなに難しくないですし」

「それならアキレア達に、作り方を教えてあげて!」

「構いませんよ。メイドの皆さんも、食べ足りないようですし」

「やったわ! これで毎日食べられるわ!」

「奥様、例えいつでも食べれるようになったとしても、毎日はいけません。まだ回復されたばかりなんですから。分かりましたか?」

「えぇー」

「これから毎日身体を動かして、以前のように、体力を付けないとならないのですから、甘い物の食べ過ぎは厳禁です」

「は~い」

「それじゃあ、俺はもういいですか?」

「先程は、カズ様を疑った発言をしてしまい、失礼しました」

「いえそんな。心配するのは当然のことですから、気にしないでください。あとできれば、その敬称はやめてもらえれば。どうも慣れなくて」

「ふふっ。ベロニカも気軽に、カズさんて呼べば良いのよ」

「左様ですか。分かりました。奥様の言う通りに、呼ばせていただきます」

「はい。お願いします」

 カズはマーガレットの寝室を出て、さっき食事をした部屋へと戻ることにした。

「カズさんは変わったお方ですね」

「ベロニカもそう思う? でも良い人よね」

「はい奥様」

 マーガレットの寝室を出て、昼食を取った部屋へと向かい歩いていると、正面からキウイとミカンが、早足で勢いよく近づいてきた。

「カズに…さん」

「カズお…さん」

「さっきのことを聞きたいので」

「早く戻ってきてもらえますか」

「二人共どうしたの?」

「ここだと、メイド長に聞こえるかも知れないから、カズにゃん相手でも、こんな話し方をしてるのにゃ」(小声)

「そう言うことだから、カズお兄ちゃん行くよ」(小声)

 キウイとミカンに引っ張られて、昼食を取っていた部屋へと、連れていかれた。

「ちょっと、どうしたのさ?」

「どうしたじゃないにゃ!」

「そうだよカズお兄ちゃん!」

「何が?」

「さっきのデザート、もっと食べたいにゃ」

「ミカンも欲しいよ」

「あぁプリンね。マーガレットさんと、ベロニカさんに渡したのが最後なんだよ」

「にゃにぃ~! 本当に無いのかにゃ?」

「カズお兄ちゃん……ミカン泣いちゃうよ」

「こら! 二人して何を言ってるんですか!」

「だって、アキレアお姉ちゃん……」

「アキレアも、もう一度食べたいにゃ?」

「それはそうですけど、カズさんに無理を言ってはいけません」

「あのアキレアさん。その事なんですけど、マーガレットさんに頼まれまして、プリンの作り方を皆さんに教えてほしいと」

「にゃ! カズにゃんは、そのプリンの作り方を知ってるのかにゃ?」

「知ってるも何も、皆が食べたプリンは、俺が作った物だから」

「ニャんと!」

「やったー! これでプリンが、いつでも食べれる。ミカン嬉しい」

「また…食べれる…の?」

「奥様のお願いならば、仕方ありません。プリンの作り方を、私達に教えください(やったわ! またプリンが食べれるのね)」

「ええ。分かりました(仕方ないとか言ってるのに、アキレアさんも食べたいんだろうな)」

 見るからに早く作って、食べたそうにしているキウイとミカンに、表情には出さないが、同じ様に思っているアキレアとビワの四人に、プリンの作り方を教えた。

「あとは冷やしたら出来上がりですけど、冷やせる所ってあります?」

「はい。買ってきた食材を冷やして、しまっておく場所がありますから、そちらに」

「では、お願いします(冷蔵庫みたいなのがあるのか?)」

「三人共つまみ食いは駄目よ。数は分かってますからね」

「分かってるにゃ。夕食まで我慢するにゃ」

「ミカンも我慢するから、アキレアお姉ちゃん。ミカンに、2個頂戴」

「ミカンばっかり…ズルい。私も…2個…欲しい」

「ニャにぃー! それなら、にゃちきも2個欲しいにゃ!」

「こらこら。何を勝手に言ってるのによ! 8個しか出来なかったんだから、一人1個です」

「えー」

「にゃ~」

「……2個…欲しい」

「文句を言うの人は、無しにしますよ!」

 ミカン、キウイ、ビワの三人は、それを聞くと黙ってしまった。

「それに材料の新鮮な生卵と、甜菜粉(砂糖)だって、カズさんが用意してくれたんでから、お礼が先でしょ!」

「カズお兄ちゃん。ありがとう! ミカン嬉しい」

「どういたしまして(うんうん。ミカンは素直で良い子だな)」

「お礼にカズにゃんには、にゃちきの胸を、触らせてあげようかにゃ」

「んぐっ! な、何を……(そう言えば、キウイさんは胸が大きいと)」

「こらキウイ! 何を言ってるのよ! カズさんもキウイの胸を見ないの!」

「アキレア、ただの冗談だにゃ。カズにゃんも本気にしたかにゃ?」

「お、俺は別に……」

「だったら…私はお礼に…尻尾を触らせ……やっぱり恥ずかしい」

「尻尾!(あのもふもふを……)」

「ビワ。お礼は、言葉だけでも良いのよ。カズさんも本気で、ビワの尻尾を、触ろうとしないでくださいよ!」

「え、ああ、はい。分かってますよ(触りたかったなぁ)」

「さぁ皆は仕事に戻る! カズさんは、昨日に来た時の、客間で待っていてください。もうすぐモルトさんが、来る頃ですから。私はお屋敷の入口で、モルトさんを待っています。来たらお部屋に案内しますから」

「分かりました」

 カズは客間に行き、アキレアは屋敷の入口へ向かった。
 他のメイド達は自分の仕事をする為に、各自移動した。
 客間に入り椅子に座って【マップ】を見ていると、一人屋敷に近付いて来るのが分かった。
 その人物は、入口に居るもう一人と合流して、こちらに向かってきた。
 少しすると部屋の前に来て、扉をノックした。
 カズが返答をすると、モルトとアキレアが、部屋に入ってきた。

「失礼します。モルトさんが来られましたので、ご案内しました」

「こんにちはモルトさん。どうぞ座ってください。アキレアさんも(なんか俺が主人みたいだな)」

 モルトが椅子に座り、アキレアが椅子に座るのを待ち、モルトが話を始める。

「カズ君ご苦労様です。あれから変わった事は、ありませんでしたか?」

「特に問題は無いです」

「そうですか。それは良かった」

「何か気になる事でも?」

「このような呪詛は、効果が切れたりすると、使用者が分かるように、なってたりする事があるらしいので。誰かが訪ねて来るかと思いまして」

「誰も来てないですよ。そうですよねアキレアさん」

「はい。昨日モルトさんとカズさんが来た後は、今まで誰も訪ねて来てないです」

「では、今回の事に関しては、使用者に伝わってないか、王都の中央付近には、居ないと思われます」

「それはまた、どうしてですか?」

「呪いが無効かされたと分かれば、何かしら調べに来るはずですし、一日経って何もないとすれば、ここから一日で来れる距離に居ないか、はたまた呪いが無効かされた事に、気付かないのか」

「その口ぶりだと、呪いに使われた物で、誰かを特定する事は、出来なかったって事ですか?」

「残念ながら。強力な魔法でしたら『魔力判別』で、少しはわかるのですが、四年程前ですと詳しくは。それにカズ君が呪いを打ち消した事で、使われた物に残留した魔力も、ありませんでしたし」

「……なんかすいません」

「いえ、あの時の状況を見れば、最善だと思います。皆さんに怪我もなかった事ですし、カズ君が謝ることはないです。儂の言い方が悪かったですね。申し訳ない」

「そんな。とんでもないです」

「アキレアさんの方は、当時お屋敷の修繕に関わっていた人達の事は、分かりましたか? 儂も調べてみたんですが」

「お屋敷にあった資料を調べてましたが、修繕に関わった人の名前と、人数は分かるのですが、王都の各所から集まったようで、細かいとこまでは残念ながら」

「なるほど。取りあえず、分かるところを、照らし合わせてみましょう」

「そうですね」

 モルトとアキレアは、お互いに調べた事を話し、当時修繕に関わった人を、個々に照らし合わせた。

「アキレアさん。そちらはどうですか?」

「こちらの資料では、こうなっています」

「やはりそうですか」

「はい。間違いなさそうですね」
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