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三章 王都オリーブ編1 王都オリーブ

110 メイドとの昼食 と 好評のデザート

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「さぁ皆、少し遅くなったけど、昼食にしましょう。カズさんもこちらでご一緒に」

 アキレアが五人分の昼食を、テーブルに並べてくれた。

「皆さんとですか?」

「広いお部屋で、一人お食事をするのは嫌だとおっしゃったので、それなら私達と一緒にと思いまして。普段はお客様と一緒に食事はしないのですが、カズさんなら良いと皆が言ったので」

「そ、そうですか(これはこれで、落ち着かないかも)」

 席を用意され、四人のメイドと一緒に昼食をとる事になった。
 出された品は皆と同じで、パンと木苺のような甘酸っぱいジャムに、ハーブティー。
 あとはテーブルの真ん中のお皿に、蒸かしたジャガイモが、十数個おいてあり、以外と質素だ。

「ねぇアキレアお姉ちゃん。カズお兄ちゃんには、お客様用のお食事を用意するんじゃないの?」(小声)

「そう思ったけど、ここで食べてもらうからには、私達と一緒の物を食べてもらうことにしたの。ビワの尻尾を触った罰よ!」(小声)

「アキレア…私は別に…気にしてない」(小声)

「確かにカズさんは、奥様やビワを呪いから助けてくれたけど、ビワの尻尾を触った罰は、受けてもらわないと」(小声)

「その罰が、私達と同じ食事な訳かにゃ?」

「ちょっとした罰よ。カズさんは冒険者だから、言わなければ分からないだろうけど。それにお客様用の料理よりも、こっちの方が気楽で良いかもしれないでしょ」(小声)

「それは罰かにゃ?」

「……」

 四人のメイドは、カズを見た。

「んっ!? (なんで皆見てるんだ? 食べないのかな? このジャム、甘酸っぱくて美味しいけど)」

「カズさんは、ご不満ではないかしら?」

「ご不満? 何がですかアキレアさん? このジャム甘酸っぱくて美味しですよ」

「にゃははっ!」

「……うふっ!」

「プッふ! アハハハッ! アキレアお姉ちゃん。カズお兄ちゃん分かってないよ」

「えっ? 何が?」

「カズお兄ちゃんが、ビワお姉ちゃんの尻尾を触った罰で、お客様用の料理じゃなくて、私達と同じ物を食べてるのに、気付かないからだよ!」

「そうなんですか?」

「ええ。ちょっとお仕置きのつもりでしたが、気が付かなかった様ですし、意味無かったですね。今お客様用の料理を出します」

「別に良いですよこのままで。メイドの皆さんと一緒に食事をしてるのに、一人だけ違ってたら、そっちの方が落ち着かないですよ」

「にゃはははっ! やっぱりカズにゃんは、面白いにゃ」

「カズお兄ちゃん変わってるね!」

「う…うん。変わっ…てる」

「まったくです」

「アキレアさん。俺なんか、変な事言いましたか?」

「……いえ。なんでもないです」

「はぁ。そうですか(何か変な事言ったかなぁ?)」

「ジャムも良いけど、たまには別の甘い物が食べたいにゃ」

「ミカンも食べた~い!」

「贅沢を言っては駄目よ。まだ奥様が回復されたばかりなのに」

「そうよ。…わたしも…食べたいけど……我慢」

 甘い食べ物か……! たしか作っておいたプリンなら、幾つかあったような。

 カズは声に出さずアイテムボックス内のに入っているリストを表示させ、プリンが残っているかを確認した。
 プリンは6個だけ残っていたので、メイドの皆にあげることにした。

「さぁ食器を片付けたら、午後のお仕事を始めるわよ!」

「あのアキレアさん。ちょっと良いですか?」

「何ですか?」

「皆さんが甘いものが食べたいと言っていたので、良かったらこれどうぞ」

 カズは【アイテムボックス】から、プリンの入った小ビンを取り出した。

「にゃんだ! 何も無い所から、物が出てきたにゃ!」

「俺アイテムボックスを使えるんで」

「すご~い! カズお兄ちゃん。これなぁに?」

「これは、プリンって言う卵を使ったデザートだよ」

「いつから…持って…たんですか?」

「作ったのは、だいぶ前だけど、出来てから冷やして、すぐにアイテムボックスに入れたから、傷んではいませんよ」

「そうなの? アキレアお姉ちゃんはしってた?」

「ええ。カズさんがアイテムボックスを使えるのはしってます。それに、アイテムボックス内は時間が止まっている事も」

「便利だにゃ! それにゃら、にゃちきが一番に食べてみるにゃ!」

「あっ! キウイお姉ちゃんズルい! 私も!」

「何を言ってるにゃ。にゃちきは始めに食べて、毒味をするだけにゃ! ビンの底にある、黒い液が怪しいにゃ!」

 キウイはプリンの入った小ビンを持ち、スプーンで底にあるカラメンごと一気に掬い、口に運んでパクリと食べた。

「……んにゃ!」

「どうしたのキウイ?」

「キウイお姉ちゃん!」

「キウ…イ……」

「う~んまいにゃ!! 柔らかくて甘いしにゃ、この黒いのがちょっと苦くいから、余計に黄色い部分が甘く感じるにゃ! こんなの食べたこと無いにゃ~!」

 キウイの感想を聞いた他の三人は、自分達も手に取り、食べてみることにした。
 一口食べると、三人共驚きの表情をして、その手は止まらず、一気に食べきってしまった。

「美味しい」

「ミカンこれ好き!」

「私も…これ…好きに…なった」

「皆さんが喜んでくれて、良かったです」

「カズにゃ! もう無いのかにゃ?」

「ミカンも、もっと食べたい!」

「私も…食べたい…です」

 キウイとミカンは、カズをじっと見つめ接近し、ビワは小ビンを両手に持って、チラチラとカズを見ていた。

「ちょっと皆、そんなに無理言っては駄目よ!(と言う私も食べたい)」

「何をしてるんですか? 昼食の休憩時間は、そろそろ終わりですよ」

 突然部屋の入口で、メイド長ベロニカが声を掛けていた。
 それに驚いたメイド達は、今までとは打って変わり、背筋を伸ばし仕事の表情になった。

「カズ様はこちらでお食事をされると聞きましたが、何かメイド達が迷惑を?」

「いえいえとんでもない。無理を言って、食事をする場所を変えてもらったのは、俺ですから。そのお礼に、デザートをご馳走しただけです。良かったらベロニカさんもどうですか? 迷惑でなければ、マーガレットさんの分もありますが」

 ベロニカは、メイド達を見回した。

「皆さんは、もう頂いたんですか? キウイどうなんですか?」

「に…はい。あの……先に奥様に聞いてからの方が、良かったですか?」

「恩人のカズ様とはいえ、分からない物を、奥様に食べされるのは、どうかと思いますが……」

「ミカン達が食べたけど、なんもと無かったです。とても美味しかったです」

「……カズ様。皆さんが食べた物を、見せて頂けますか?」

「あ、はい。これです(キウイさんの話し方に『にゃ』が入ってなかったな)」

 カズは残り二つあるプリンの内一つを【アイテムボックス】から出し、ベロニカに渡した。

「これですか……分かりました。奥様に持っていきますので、カズ様も来てください」

「え、あ、はい。分かりました」

 カズはベロニカに付いて行き、朝来たマーガレットの寝室にやって来た。

「奥様失礼します」

「どうしたのベロニカ? カズさんを連れてきて」

「カズ様が奥様に、デザートをご用意して下さったそうです。どうされますか? 毒味と味見の方は、他のメイド達が済ませました」

「毒味だなんて、失礼よベロニカ。カズさんが用意してくれたデザートなら、喜んで頂くわ。ベロニカはもう頂いたの?」

「いえ、私しは」

「なら一緒に頂きましょうよ。ねぇカズさん。ベロニカの分も、あるかしら?」

「はい大丈夫です。ちょうど二人分あります」

 カズは【アイテムボックス】から、最後のプリンを出して、ベロニカに渡した。

「奥様、最初は少しだけ食べて、変ではないか、味を確認してからで」

「ベロニカは心配性ね。もしカズさんが、私に何かしようとするなら、とっくにやってるわよ。あ、ごめんなさいカズさん。本人の前で」

「いえ。ベロニカさんの言うことは、ごもっともですから。それと俺は何もしませんよ」

「では先ず私しが味を確認します」

 ベロニカがプリンを一口食べた。

「どうベロニカ? 私も食べて良いかしら?」

「はい。大丈夫ですので、御召し上がりください」

 マーガレットが、見るからにワクワクしながらプリンを一口食べた。

「ん~! 何これ。美味しい! ベロニカ美味しいわよね」

「はい。大変美味しゅう御座います」

「お二人にも喜んでもらえて、良かったです(ベロニカさんは、表情が変わらないなぁ)」

「あー美味しかった。ねぇカズさん。もうこれ無いのかしら?」

「奥様、昼食を食べたばかりなのですから、これ以上はいけません」

「えー大丈夫よ。量も少ないから」

「いけません!」

「あ、あの。すいませんが、プリンはその二つが最後でして、もう無いんです」

「えぇー! そんなっ!」

 マーガレットは、プリンが入っていた小ビンとカズを交互に見て、とても残念そうにしている。
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