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三章 王都オリーブ編1 王都オリーブ

105 心配 と 回復 と マーガレット

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「すみませんが、お待ちください」

「なんですかアキレアさん?」

「申し訳ないですが、カズさんだけは残ってもらえませんか? このあと、もし同じ様な事が起こったら」

「俺ですか?」

 カズはモルトを見る。

「そうですね……儂は構いませんが、カズ君どうします?」

「もう大丈夫だと思いますが、心配でしたら残っても構いませんが……初対面の俺を、お屋敷に泊めて良いんですか?」

「奥様と私達を助けてくれた方ですから、信用してます」

「それが狙いで、来たかも知れませんよ」

「大丈夫です。モルトさんが連れてきた方ですし、あそこまで親身になって、助けてくれた方ですから」

「……分かりました。呪いに使われた物を調べるのは、モルトさんにお願いします」

「任せてください。カズ君はこちらに残って、皆さんを安心させてください」

「はい。分かりました」

「カズさん。ありがとうございます。モルトさん、どうかお願いします」

「それでは、儂はギルドに戻ります。何か分かりましたら、すぐに来ますので。そちらも何か分かったら、連絡をください」

 モルトは一礼すると屋敷を出て、来たときに通った門へと向かって歩いて行った。

「それで俺は、どこに居ればいいですか?(さすがにマーガレットさんの寝室に、居る訳にはいかないしな)」

「そうですね……あ! そう言えば、さっきの騒動があって忘れてましたが、昼食の用意をしたままでした。カズさんも昼食はまだですよね」

「そう言えば、そうですね」

「でしたらすぐにご用意致します。ここではなんですから、食事をする広間の方へご案内します」

「別にここ(接客間)でも構いませんが」

「恩人に、ここ(接客間)でお食事をさせる訳にはいきません! ご案内しますので、こちらへ」

「わ、分かりました」

 アキレアに付いて行き、食事をする広間に案内されて、遅い昼食を食べた。

「アキレアさんや、メイドの皆さんは、食べないのですか?」

「私どもは、別に食事をする部屋がありますから、そちらでいただきます」

「俺にそんなに気を使わなくても……」 

「そうはいきません。冒険者と言えども、奥様の恩人をぞんざいに扱っては…」

「失礼します。アキレアさんよろしいですか」

 メイドの一人が広間に入ってきた。

「どうしましたか? 奥様に何かありましたか?」

「先程奥様が目を覚まして、アキレアさんを呼んでおります」

「奥様が目を! すぐに向かいます。カズさんも来てもらえますか」

「俺もですか?」

「はい。来て下さい」

 この後すぐ、アキレアと一緒にマーガレットの寝室に行った。
 マーガレットはベッドに座り、入ってきたアキレアを見て、安心した顔をしていた。
 部屋に入ったアキレアは、ベッドに駆け寄り、マーガレットの容態を聞いて、俺は部屋に入ってからは、扉の近くに立ち、その様子をうかがっていた。

「奥様どこか違和感のある所はないですか? 大丈夫ですか? まだ横になっていた方がよろしいのでは?」

「アキレア落ち着きなさい。私なら大丈夫です」

「良かった! 食欲は御座いますか? 何かお持ち致しましょうか?」

「アキレアありがとう。ところでそちらの方は?」

「あちらはモルトさんが連れてきた、冒険者のカズさんです。アヴァランチェから、お嬢様達からの依頼で、奥様を治すお薬の素材を届けて、病気の原因を見つけてくれた方です」

「そうなの。この度は、ありがとうございました」

「とんでもないです。あ、俺いや、自分はヤマギク カズと申します」

「こんな格好で失礼しますね。私は『マーガレット・オリーブ・モチヅキ』です。娘の依頼で、わざわざ遠くから来ていただいて、ありがとうございました」

「いえそんな。自分は、たいしたことは……」

「奥様お話はまた今度で、今はもう少し休すんで下さい」

「アキレアは心配性ね。私はもう大丈夫よ」

「ですが奥様……」

「分かったから、そんな顔しないで。でも私、少しお腹が空いたわ」

「奥様がお食事を……今すぐにお持ちします」

 アキレアは涙目になりながら、嬉しそうにして、食事を取りに部屋を出ていった。

「カズさんでしたね」

「あ、はい」

「この度は本当に、ありがとうございました。それで、私が薬を飲んだ直後、急に苦しくなった原因は?」

「それは……」

「もしかして……【呪い】ですか?」(小声)

「! なのん…ことですか」

「隠さなくてもいいですよ。なんとなく分かってましたから」

「どうして分かったんですか?」

「……皆さん。アキレアの手伝いをしてきてもらえますか。私はカズさんと話をしてますから」

「ですが奥様」

「私の病気を治す為に、わざわざ遠くから、来てくださったんでしょう。大丈夫ですから、皆さんはアキレアを手伝ってきて」

「畏まりました。三人とも行きますよ」

 一人のメイドが、三人のメイドを連れて部屋を出ていった。
 部屋にはベッドに座るマーガレットと、カズの二人だけになった。

「融通がきかないメイド達で、ごめんなさい」

「皆さんは、マーガレットさんを心配してるんですよ」

「そうね。ありがとう」

「それで、メイドさん達に聞かれたくない事でも?」

「私に起きた事を、聞いておきたくて。アキレアやメイド達に聞いても、本当の事は教えてくれないんでしょうからね」

「それで俺…僕にですか。俺…自分もあった出来事を、話すとは限りませんよ」

「カズさんが話してくれないなら、アキレアを問い詰めるけど、それはしたくないのよ」

「俺…あ、僕、自分がアキレアさんに、怒られますよ」

「ふふっ。無理しなくても、話しやすい口調で構わないわよ。それに、カズさんがアキレアに怒られていたら、私がかばってあげるから!」

「…分かりました。お話しします。ですが、ハッキリと分かってない事もあるので、そこはご了承ください」

「ええ。分かったわ」

 カズはこの屋敷に来てから起きたら事を、一通り話した。
 呪いに使われた物は、調べてもらう為に、モルトさんに、持っていってもらったと伝えた。

「そう。そんな事が……もう一度お礼を言わせてもらうわ。ありがとうカズさん。あなたは我が『オリーブ・モチヅキ家』の恩人です」

「いえそんな(やっぱり、聞き違いじゃないよな……モチヅキ)」

「カズさんには、お礼をしませんと」

「そんな、依頼で来ただけですから」

「私達を呪いから助けていただいたんですから、そのお礼はさせていただきます」

「分かりました。ありがとうございます」

「では後日改めて」

「はい。それよりお子さんや旦那さんに、回復したことを、連絡してあげてください。お子さん達は既に、アヴァランチェから王都に向かって来てると思いますが」

「そうね。私も早く二人に会いたいわ」

 カズとマーガレットが話してるその時、部屋の扉がノックされ、食事を持ってアキレアが戻ってきた。

「奥様お待たせしました。お食事をお持ちしました」

「アキレアさんが来ましたから、俺は失礼させてもらいます」

「ええ。お話を聞かせてくれて、ありがとう。アキレア。カズさんにお部屋を用意してあげて」

「畏まりました。カズさん暫くお待ちください。奥様のお食事が終わりましたら、すぐにご案内致します」

「食事くらい一人で出来ます」

「ですが奥様!」

「もう大丈夫です」

「奥様……」

「あ! そうだ。俺はちょっと裏庭を調べて来ますから、アキレアさんはマーガレットさんに、ゆっくり食事をさせてあげてください」

 カズは気まずくなりマーガレットの部屋を出て、裏庭ある木に所に行き、人形が埋まっていた根元を調べる事にした。

「カズさんに、気を使わせてしまったわね」

「申し訳ありません。奥様」

「謝る必要はありません。アキレアが私の事を、心配しての事だと分かりますから」

「ありがとうございます。私は…」

「もうアキレアったら、泣かないで」

「は、はい奥様。でも私嬉しくて」

「私も嬉しいわ。カズさんには感謝しないとね」

「まったくです」

「しかしカズさんは、本当に冒険者なのかしら? あんなに謙虚な冒険者の方なんて、見たことないわ」

「本当に変わった方ですね」

「あら、アキレアもそう思ってたの!」

「あ!」

「ふふっ! そうね変わった人」

「うふふっ! そうですね」
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