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二章 アヴァランチェ編
97 獣魔契約
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近付いた俺は、二重がけした、グラヴィティの一つを解除して【アイテムボックス】から、リアーデのドワーフ鍛冶屋が作った刀を取り出し、初級の《斬撃強化》と《武器強化》のスキルを使った。
『スキル説明』
《斬撃強化》
使用した刃物の切れ味を上昇させる。
《武器強化》
使用した武器の耐久力を上昇させる。
どちらもギルドの資料室見た、付与に関する本に載っていた。
現在では初級スキルは、ある程度修練すれば、覚えられそうだ。
「これで少しは動けるだろ。それでなんだ? 怪しい動きをしたら、直ぐに切るからな!」
「分かっている。もう抵抗はしない。我はフロストドラゴンの『白魔(はくま)』」
今度は【万物ノ眼】で、フロストドラゴンのステータスを確認する。
固有名: 白魔(はくま)【白き災害】
年齢 : 516
種族 : ドラゴン
ランク: レジェンド級
レベル: 86
力 : 4329(+ 721)
魔力 : 3870(+ 645)
敏捷 : 2208(+ 312)
運 : 41
【スキル】
《領域適性(霜・雪)》: + 20%
・特定の領域に居ると、ステータスが上昇する。
【魔法属性】 :《風・水》
【魔法色属性】:《緑・青・白》
《氷》アイスシールド
《水風》テリトリー・クラウド
《氷風》ブリザードブレス(ユニーク)
《特》獣魔契約
『補足 : 力・魔力・敏捷の()内は、作用している数値。今回はスキルの、領域適性効果』
「固有名が白魔に白き災害? ドラゴンだけあってステータスも高いし、ランクがレジェンド級!? モンスターにもランクがあるのか! 五百年以上生きていれば、そうもなるのか」
「なんと! やはりお主は、只者ではないな。我のステータスを読み取るとは」
「お世辞はいい。お前の、白き災害ってのはなんだ?」
「地上に住む者達が、勝手に付けたもので、我は知らん。ちなみに白魔という名は、二百五十年ほど前に、異世界から来た人族が付けたものだ。なんでも『災害をもたらす大雪』からきてるとか」
「物騒な名前を付けたな。どうせお前が、そういった事をしてたんだろ」
「まあ若い頃はな」
「しかも、領域適性ってなんだよ。ステータスの上がり方が、高過ぎだろ! (人の事は言えないか。でも相手ドラゴンだし)」
「縄張りある者なら、希に持っているスキルだ。我のように強力なものは、そうないがな」
「やっぱり危険だから、討伐しとくか」
「待て待て! 我はもう他の種族に、戦いを仕掛けたりはしてない。静かに暮らしているだけだ」
「俺に攻撃してきたじゃないか!」
「おかしな魔力が、縄張りに入れば警戒する。それに雪深き山頂は、我の縄張りと、人族なら知っているはずだからな」
「それでも、話も聞かずに、急に攻撃は駄目だろ! (お前が居るような事は、ロウカスクさんは、言ってなかったぞ)」
「う、うむ」
「ちなみに、アヴァランチェに住む人達は、その事を知っているのか?」
「山の麓にある都市か? 二百五十年ほど前に、雪崩を起こして、都市の半分を埋め尽くした事があったから、知っているはずたが。我の名もその頃に付けられた」
「なんだと! (ロウカスクさんじゃなくて、アレナリアかクリスパに聞いてくれば良かった)」
「まあ、知らずに死んだとしても、無知なお主が悪いだけだかな」
「その無知な俺によって、地面に押し付けられてる状態のお前が、よくそんな事を言えるな」
「うぐっ!」
「よし危険なのは分かった。討伐だ!」
「待て! 今はもう何もしてないと……」
「『今は』だろ! 危険が無くなった訳じゃないからな。大人しくしていれば、首を落として終わりにしてやる」
「待て! 分かった契約しよう」
「契約?」
「獣魔契約だ! お主が我の主(あるじ)となれば、お主に逆らえなくなり、命(めい)を下せば、他の種族に迷惑をかける事は無い。どうだ!」
「別にペットは、いらない」
「ペット! 我をそんな人族が自己満足の為に飼う、矮小な生き物と一緒にするな」
「ハァー……俺は獣魔契約のやり方なんて、知らないぞ」
「我が主体で行う。だから討伐は勘弁してくれ」
「……嘘だったら、どうなるか分かってるな」
「無論」
フロストドラゴンにかけている、重力魔法を解除する。
「おお! 自由に動けるのは素晴らしい!」
「おい、それでどうするんだ?」
「お主はそのままで。獣魔契約の魔法は、時間が掛かるゆえ、これを使って短縮する」
フロストドラゴンが、口の中から水晶を取り出した。
「水晶……それは?」
「獣魔契約の魔法が付与されている。これを使えば、直ぐに終わる」
念の為に鑑定すると、水晶には『付与:獣魔契約魔法』と見えたので、嘘は言ってないようだ。
フロストドラゴンが、魔力を込めて水晶を地面に置くと、カズとフロストドラゴン中心に魔方陣が浮かび上がった。
「さぁ我に向けて、魔力を放出を。我もお主に向けて、魔力を放出するゆえ」
放出した魔力が、お互いを包み、混じりあい色を変え、最後には白に少し青を含んだ色になった。
辺りを包んでいた魔力は、殆どがカズに吸収された。
「なんと……まさかここまで魔力を持っていかれるとは……」
「終ったのか?」
「獣魔契約は、成立した」
「魔力の色が変わったが、あれはなんだ?」
「その者が持つ魔力の質や属性で、得意とする色がある。我は水属性の系統である氷と、風属性を得意とし、雪を使用するゆえ、ほぼ白い魔力に変わったのだ」
「……俺は?」
「従属する者の魔力が、支配する者へ魔力が吸収されるゆえ、今回は我の色しか現れなかったのだ」
「俺の方が格下だったら、反対になってたのか」
「そういう事だ」
俺はフロストドラゴンに近付き、顔面を殴ってやった。
「ぐはっ! な、何をする!」
「そういった説明は先にしろよ!」
「どう考えても、主の方が強いから、説明しなくても……」
「それでも、一言ぐらい言えよ!」
フロストドラゴンは、顔を近付けてきた。
「既に我は、主に従属したのだから、良いではないか」
「だったら態度を改めろ!」
もう一発殴った。
「痛い! 痛いぞ主よ」
「その主(あるじ)って何だよ」
「我を従属したのだから、主と呼んでおるが」
「それは止めてくれ。なんか、慣れる気がしない」
「では主の事は、なんと呼べば」
「カズで良い」
「カズ……カズ様か」
「様は、付けなくていいから」
「しかし主を呼び捨てなど」
「じゃあ、その主が、良いって言ってるんだから」
「分かったぞカズ」
「ああ(獣魔契約して、本当に良かったのか? 白き災害って言われてるし)」
「それでカズは、どこに向かっていたのだ?」
「俺は、王都に向かってる途中だったんだ。それが余計な時間を食った」
「そうであったか。何故(なにゆえ)この時期に、人が街道を行かんで、雪深い山を通って…飛んで来た?」
「王都までの近道と聞いたから。雪が深くても、飛んで行けば、あまり関係ないだろ」
「そんなに急いで、何かあったのか?」
「依頼を受けて、向かってるだけだ」
「カズは冒険者か!」
「そうだけど、だからどうした?」
「数年程前に、我を討伐しに冒険者が来てな。まあ、返り討ちにしてやったが」
「殺したのか?」
「いや。ちょいと痛め付けたら、帰って行った。軟弱な連中だった。どうせ我を倒して、名を上げるつもりだったのだろう」
「お前本当に、討伐される様な事をしてないよな」
俺は左手に持っている、刀の鯉口を切る(左手の親指で鍔を押し、刀を少し鞘から出す)
「待て待て。先も言ったが、今は静かに暮らして居ると」
「……そうか。ならいい」
カズは刀を【アイテムボックス】にしまった。
「物を収納する能力もあるのか!」
「ああ」
「それよりカズよ」
「なんだ?」
「我の事も、お前ではなく、名前で呼んではくれぬか」
「……白魔(はくま)だっけ?」
「そうだ白魔だ!」
「物騒だし、名前変えたら」
「何っ! しかしな……」
「なら漢字だけ変えて、呼び方はそのままにするか」
「どういう事だ?」
「畏怖のような意味の白魔じゃなくて『白真』に変えれば!」
雪に指で字を書く。
「漢字? 白魔から白真? もしやカズは、異世界人なのか?」
「そうだけど、誰にも言うなよ。って、言う相手居ないか」
「なんと! どおりで……」
「それで。白い真(まこと)で、嘘偽りをつかない、真実を語る白きドラゴンみたいで、良いんじゃないの。そうすればいつの日か、敬い崇められる存在になるでしょ(数百年後にはだけど)」
「『真実を語る白きドラゴン』良いなそれは! 人々から畏怖される存在より、崇拝される方が、我に相応しい!」
「その場合は、性格も穏やかになって、心を広くもたないとな。道は長いぞ」
「うぐっ! 努力しよう。これからよろしくだ。カズ」
「よろしく白真」
『スキル説明』
《斬撃強化》
使用した刃物の切れ味を上昇させる。
《武器強化》
使用した武器の耐久力を上昇させる。
どちらもギルドの資料室見た、付与に関する本に載っていた。
現在では初級スキルは、ある程度修練すれば、覚えられそうだ。
「これで少しは動けるだろ。それでなんだ? 怪しい動きをしたら、直ぐに切るからな!」
「分かっている。もう抵抗はしない。我はフロストドラゴンの『白魔(はくま)』」
今度は【万物ノ眼】で、フロストドラゴンのステータスを確認する。
固有名: 白魔(はくま)【白き災害】
年齢 : 516
種族 : ドラゴン
ランク: レジェンド級
レベル: 86
力 : 4329(+ 721)
魔力 : 3870(+ 645)
敏捷 : 2208(+ 312)
運 : 41
【スキル】
《領域適性(霜・雪)》: + 20%
・特定の領域に居ると、ステータスが上昇する。
【魔法属性】 :《風・水》
【魔法色属性】:《緑・青・白》
《氷》アイスシールド
《水風》テリトリー・クラウド
《氷風》ブリザードブレス(ユニーク)
《特》獣魔契約
『補足 : 力・魔力・敏捷の()内は、作用している数値。今回はスキルの、領域適性効果』
「固有名が白魔に白き災害? ドラゴンだけあってステータスも高いし、ランクがレジェンド級!? モンスターにもランクがあるのか! 五百年以上生きていれば、そうもなるのか」
「なんと! やはりお主は、只者ではないな。我のステータスを読み取るとは」
「お世辞はいい。お前の、白き災害ってのはなんだ?」
「地上に住む者達が、勝手に付けたもので、我は知らん。ちなみに白魔という名は、二百五十年ほど前に、異世界から来た人族が付けたものだ。なんでも『災害をもたらす大雪』からきてるとか」
「物騒な名前を付けたな。どうせお前が、そういった事をしてたんだろ」
「まあ若い頃はな」
「しかも、領域適性ってなんだよ。ステータスの上がり方が、高過ぎだろ! (人の事は言えないか。でも相手ドラゴンだし)」
「縄張りある者なら、希に持っているスキルだ。我のように強力なものは、そうないがな」
「やっぱり危険だから、討伐しとくか」
「待て待て! 我はもう他の種族に、戦いを仕掛けたりはしてない。静かに暮らしているだけだ」
「俺に攻撃してきたじゃないか!」
「おかしな魔力が、縄張りに入れば警戒する。それに雪深き山頂は、我の縄張りと、人族なら知っているはずだからな」
「それでも、話も聞かずに、急に攻撃は駄目だろ! (お前が居るような事は、ロウカスクさんは、言ってなかったぞ)」
「う、うむ」
「ちなみに、アヴァランチェに住む人達は、その事を知っているのか?」
「山の麓にある都市か? 二百五十年ほど前に、雪崩を起こして、都市の半分を埋め尽くした事があったから、知っているはずたが。我の名もその頃に付けられた」
「なんだと! (ロウカスクさんじゃなくて、アレナリアかクリスパに聞いてくれば良かった)」
「まあ、知らずに死んだとしても、無知なお主が悪いだけだかな」
「その無知な俺によって、地面に押し付けられてる状態のお前が、よくそんな事を言えるな」
「うぐっ!」
「よし危険なのは分かった。討伐だ!」
「待て! 今はもう何もしてないと……」
「『今は』だろ! 危険が無くなった訳じゃないからな。大人しくしていれば、首を落として終わりにしてやる」
「待て! 分かった契約しよう」
「契約?」
「獣魔契約だ! お主が我の主(あるじ)となれば、お主に逆らえなくなり、命(めい)を下せば、他の種族に迷惑をかける事は無い。どうだ!」
「別にペットは、いらない」
「ペット! 我をそんな人族が自己満足の為に飼う、矮小な生き物と一緒にするな」
「ハァー……俺は獣魔契約のやり方なんて、知らないぞ」
「我が主体で行う。だから討伐は勘弁してくれ」
「……嘘だったら、どうなるか分かってるな」
「無論」
フロストドラゴンにかけている、重力魔法を解除する。
「おお! 自由に動けるのは素晴らしい!」
「おい、それでどうするんだ?」
「お主はそのままで。獣魔契約の魔法は、時間が掛かるゆえ、これを使って短縮する」
フロストドラゴンが、口の中から水晶を取り出した。
「水晶……それは?」
「獣魔契約の魔法が付与されている。これを使えば、直ぐに終わる」
念の為に鑑定すると、水晶には『付与:獣魔契約魔法』と見えたので、嘘は言ってないようだ。
フロストドラゴンが、魔力を込めて水晶を地面に置くと、カズとフロストドラゴン中心に魔方陣が浮かび上がった。
「さぁ我に向けて、魔力を放出を。我もお主に向けて、魔力を放出するゆえ」
放出した魔力が、お互いを包み、混じりあい色を変え、最後には白に少し青を含んだ色になった。
辺りを包んでいた魔力は、殆どがカズに吸収された。
「なんと……まさかここまで魔力を持っていかれるとは……」
「終ったのか?」
「獣魔契約は、成立した」
「魔力の色が変わったが、あれはなんだ?」
「その者が持つ魔力の質や属性で、得意とする色がある。我は水属性の系統である氷と、風属性を得意とし、雪を使用するゆえ、ほぼ白い魔力に変わったのだ」
「……俺は?」
「従属する者の魔力が、支配する者へ魔力が吸収されるゆえ、今回は我の色しか現れなかったのだ」
「俺の方が格下だったら、反対になってたのか」
「そういう事だ」
俺はフロストドラゴンに近付き、顔面を殴ってやった。
「ぐはっ! な、何をする!」
「そういった説明は先にしろよ!」
「どう考えても、主の方が強いから、説明しなくても……」
「それでも、一言ぐらい言えよ!」
フロストドラゴンは、顔を近付けてきた。
「既に我は、主に従属したのだから、良いではないか」
「だったら態度を改めろ!」
もう一発殴った。
「痛い! 痛いぞ主よ」
「その主(あるじ)って何だよ」
「我を従属したのだから、主と呼んでおるが」
「それは止めてくれ。なんか、慣れる気がしない」
「では主の事は、なんと呼べば」
「カズで良い」
「カズ……カズ様か」
「様は、付けなくていいから」
「しかし主を呼び捨てなど」
「じゃあ、その主が、良いって言ってるんだから」
「分かったぞカズ」
「ああ(獣魔契約して、本当に良かったのか? 白き災害って言われてるし)」
「それでカズは、どこに向かっていたのだ?」
「俺は、王都に向かってる途中だったんだ。それが余計な時間を食った」
「そうであったか。何故(なにゆえ)この時期に、人が街道を行かんで、雪深い山を通って…飛んで来た?」
「王都までの近道と聞いたから。雪が深くても、飛んで行けば、あまり関係ないだろ」
「そんなに急いで、何かあったのか?」
「依頼を受けて、向かってるだけだ」
「カズは冒険者か!」
「そうだけど、だからどうした?」
「数年程前に、我を討伐しに冒険者が来てな。まあ、返り討ちにしてやったが」
「殺したのか?」
「いや。ちょいと痛め付けたら、帰って行った。軟弱な連中だった。どうせ我を倒して、名を上げるつもりだったのだろう」
「お前本当に、討伐される様な事をしてないよな」
俺は左手に持っている、刀の鯉口を切る(左手の親指で鍔を押し、刀を少し鞘から出す)
「待て待て。先も言ったが、今は静かに暮らして居ると」
「……そうか。ならいい」
カズは刀を【アイテムボックス】にしまった。
「物を収納する能力もあるのか!」
「ああ」
「それよりカズよ」
「なんだ?」
「我の事も、お前ではなく、名前で呼んではくれぬか」
「……白魔(はくま)だっけ?」
「そうだ白魔だ!」
「物騒だし、名前変えたら」
「何っ! しかしな……」
「なら漢字だけ変えて、呼び方はそのままにするか」
「どういう事だ?」
「畏怖のような意味の白魔じゃなくて『白真』に変えれば!」
雪に指で字を書く。
「漢字? 白魔から白真? もしやカズは、異世界人なのか?」
「そうだけど、誰にも言うなよ。って、言う相手居ないか」
「なんと! どおりで……」
「それで。白い真(まこと)で、嘘偽りをつかない、真実を語る白きドラゴンみたいで、良いんじゃないの。そうすればいつの日か、敬い崇められる存在になるでしょ(数百年後にはだけど)」
「『真実を語る白きドラゴン』良いなそれは! 人々から畏怖される存在より、崇拝される方が、我に相応しい!」
「その場合は、性格も穏やかになって、心を広くもたないとな。道は長いぞ」
「うぐっ! 努力しよう。これからよろしくだ。カズ」
「よろしく白真」
応援ありがとうございます!
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