人生初めての旅先が異世界でした!? ~ 元の世界へ帰る方法探して異世界めぐり、家に帰るまでが旅行です。~(仮)

葵セナ

文字の大きさ
上 下
101 / 802
二章 アヴァランチェ編

96 強力なモンスターの襲来

しおりを挟む
 氷結花を採取した、北の山脈にある森に、ゲートで移動した俺は、近道で王都へ向かう為に、山脈を越える事を選んだ。
 しかし雪で隠れて道は無く、しかも歩いて行けば、街道を行くより時間も掛かり危険も多い。
 だがこれが幸いにも人が居ないので、練習がてら飛翔の魔法で、飛んで行こうと決めた。
 山頂に行けば、王都が見えるはずだから、何もなければ、数日で着くだろうと思う。
 
 先ずは【マップ】で、方向と人の居ないことを確認して飛翔魔法の〈フライ〉を使用して、森の上空を通過して、山頂を目指し飛んで行くことにした。

 上手くいっていたので、重力魔法の〈アンチグラヴィティ〉を使い自分を軽くして、スピードを上げた。
 ところが、自分を軽くしたことで、風の影響をもろにくらい、風下へと流されてしまった。
 体勢を立て直す為に、一度地上に降りた。
 風が強くなってきたので、重力魔法を解除して、フライの魔法だけで、飛んで行くことにした。

 飛翔魔法で飛び始めてから、一時間が経過した頃、山の中腹付近に来たので、今日はどこか休める場所を探す事にした。
 少し狭いが、休めそうな所があったので魔法で、土のかまくらを作り、今日の寝床を作った。
 土のかまくらを作るのも二度目なので、前回より形の良い物が出来た。
 寝床を作った頃には、日が傾き薄暗くなってきていた。
 やはり山の日没は早い。

 昼間買った食材で、温まる夕食作り、食べたら朝早くから行動するので、早く休むことにした。


 ◇◆◇◆◇


 翌朝目覚めて外を見ると、曇っていて山頂が見えなかった。
 昨日作った夕食の残りを食べて、土のかまくらを解除して元の土に戻し、出発する。
 昨日と同じ様に〈フライ〉で飛んで行く。
 今度は使用する魔力量を増やして、スピードが上がるか、小回りが利くか等を、試しながら飛んで行く。

 山頂を目指し、木の少し上を飛ぶ。
 標高が上がり、厚い雲を通過中【マップ】を見ると、モンスターが飛んで来るのが分かった。
 かち合わないように、飛ぶ方向を変えたが、狙って来ているようで、こっちに向かって来る。
 雲の中だとモンスターを目視出来ないので、地上沿いに飛ぶのを止め、急上昇した。
 厚い雲を抜けて、強い日の光がさす青空の下に出たが、モンスターの姿は見あたらなかった。

 【マップ】で、モンスターの動きを確認していると、数百mまで近付いていた。
 どうやらモンスターも、雲の中を移動して姿を隠してるようだ。
 どうやってこちらの動きを、認識しているのか、不思議に思った。
 雲に隠れていても【マップ】に表示されて分かるので、接近される前に足場を確保する為、雲から飛び出ている山頂に向かった。
 しかし、足場のある場所に着く前に、厚い雲からモンスターが姿を現した。

「おいおい。どう考えても、コイツの相手は、Aランク以上の冒険者パーティーだろ!」

 体長6m以上はあり、広げている翼は10mはある、白いドラゴンだった。

「我が領域を侵すものは、貴様か!」

「喋った!?」

「人の言葉など、我には雑作もない」

 なんだ【異世界言語】で分かるのかと思ったら、人の言葉を話してたのか。
 って、それでもモンスターが、人語を話すのかよ!

「俺はただ、通りかかっただけで…」

「飛翔する人など珍しいが、我が領域を侵すものは、死をもって償え!」

「って、聞いてねぇー」

 白いドラゴンが、正面から勢いよく向かって、攻撃してくる。
 その初撃をなんとか避けて、足場を求め、急ぎ山頂に向かい移動する。
 しかし慣れていない空中では、白いドラゴンに分があり、避けるのが精一杯だった。

 何度目かの体当たりをかわした時、尻尾での攻撃が直撃して、大きく吹き飛ばされてしまった。
 とっさにスキル《肉体強化》をしたが、この世界に来て、初めて無視できない痛みを感じた。
 飛ばされて先が雲の中だったので、俺の姿を見失った白いドラゴンは、一旦攻撃を止めた。
 しかし直ぐ様こちらへと、向かって来た。

「雲の中で姿は確認できないのに、なぜこちらの位置が分かるんだ!? 考えてる時間も無い。今できる事をやるだけだ!」

 痛みはあるが動ける、回復は後回しにして〈身体強化〉と《筋力強化》を使う。
 次に【隠蔽】を最大値の『5』にした。
 すると突如対象を見失った白いドラゴンは、上昇して雲を抜けた先で、旋回をしている。
 この隙に、雲の中を通って地上に降り、【アイテムボックス】から回復薬を出して飲んだ。
 痛みと傷が消えたので、山を伝い雲を抜け、視界にとらえた白いドラゴンを【万物ノ眼】で分析して調べる。


 『フロストドラゴン:モンスター・レベル86』
 雪の積もる高い山に生息。
 長く生きている程に知性は高く、縄張りを持つ。
 風属性と水属性の魔法を得意とし、二種の合成魔法を使う。
 弱点は火属性だが、生半可な火力では効果が無い。
 一体で都市一つを、滅ぼせる力がある。


 一体で都市を滅ぼせるって、なんでそんなモンスターと、かち合うんだよ!
 いざとなったら、ゲートで退散出来るが、コイツがアヴァランチェに行ったら、大変だ!
 しかも今は収穫祭で人も多い、なんとしても、ここで倒しておかないと……
 戦う覚悟を決め、雲から出て姿を現すと、気付いた『フロストドラゴン』は、真っ直ぐに向かって来た。

 俺の事を格下たと思っているフロストドラゴンは、魔法を使う事なく正面から突っ込んでくる。
 そう思ってくれるなら、その隙をついて攻撃させてもらうだけだ!
 幸い厚い雲があるなら、例え山に人が居たとしても、見られる事はないはずだ。
 いつもより、数倍の魔力を込めて魔法を放つ。

「〈ファイヤーボール〉」

 直径2mはある火の玉が、フロストドラゴンに向かって飛んで行く。
 驚いているフロストドラゴンは、体をひねりファイヤーボールをかわした。 
 威力はあっても、距離が離れている為、避けられてしまった。
 脅威を感じたフロストドラゴンは、距離をとり、魔法で攻撃してくる。

「〈ブリザードブレス〉」

 フロストドラゴンのブレスは、 極寒の風と雪で、全てを凍らせていく。

 いくら冷寒耐性があっても、さすがにヤバいと思ったカズは、とっさに〈アースウォール〉で壁を作り、ブレスの直撃を防ぐ。
 しかしブレスで冷された壁は、みるみる凍りつき、ブレスが止まった頃には、氷の壁になっていた。
 カズはなんとか攻撃を凌いだ。

 攻撃しようにも、威力があっても遅い攻撃では、当たらないから意味がない。
 こんな事なら、あの本を全部読んでおけば良かったと、後悔した。
 ファイヤーボールより、いつも使ってる、ライトニングショットの上位版ライトニングボルトで攻撃をする事にした。
 それが駄目なら、どうなるか分からないが、全魔力を込めて攻撃するしかない。

「弱小なる人よ、我が攻撃を耐えたのは誉めてやろう。だがこれで終わりだ!」

「そうかよ。ならその弱小なる俺からの攻撃を、受けてもらおうか」

「貴様の攻撃など遅くて、我には当たらん」

 俺は氷の壁から姿を現し、フロストドラゴンを攻撃した。

「〈ライトニングボルト〉」

 青白い電撃は、空気を切り裂く轟音と共に、フロストドラゴン目掛けて迸(ほとばし)る。
 今度は避ける間もなく、ライトニングボルトが直撃した。
 一瞬動きが止まり、よろめき下降しそうになったフロストドラゴンは、体勢立て直し、距離をとった。

「な、なんだ貴様は! 我に通じる高威力の攻撃を何度も、本当に人族なのか?」

 話をして、回復されたら厄介だから、続けて攻撃をする。

「〈ライトニングボルト〉!」

「〈アイスシールド〉!」

 フロストドラゴンの前に、氷で出来た厚い壁が出現した。
 放たれた電撃は氷の壁を貫き、フロストドラゴンに直撃する。
 しかし威力を軽減され、倒すまでには至らない。

 自分にダメージを与える攻撃をしてきた人族に、動揺を隠せなくなったフロストドラゴンは攻撃を止め、話をしだした。

「待て人よ、話を聞け!」

「問答無用で、襲ってきたのはそっちだろ! 〈グラヴィティ〉!」

 話に答えながらも攻撃は緩めず、動きの止まっているフロストドラゴンに、重力魔法をかけて飛べないようにする。
 魔力を強めて、威力を上げた重力魔法は、フロストドラゴンの自由を奪う。
 ゆっくりと降下するフロストドラゴンは、パニックになり始めていた。

「なんだどういう事だ! 動きが、体が重い。これは重力魔法? バカな。今の人族が使える訳が……ぐはっ!」

 雲の中を降下して、地面に押し付けられたフロストドラゴンは、もはやその動きは、亀のようにゆっくりとしていた。

「念の為だ〈グラヴィティ〉!」

「ぐわぁぁー!」

「フロストドラゴンなんて脅威を、このままにしておけない。先に攻撃してきたのは、そっちだからな。悪いがここで…」

「ま…待って…くれ……頼む。もう…抵抗はしない」

 フロストドラゴンは力を抜き、逆らわず動きを止めた。
 俺は警戒をおこたらない様にして、一応話しだけでも聞いてやる事にした。
しおりを挟む
感想 84

あなたにおすすめの小説

パーティを追い出されましたがむしろ好都合です!

八神 凪
ファンタジー
勇者パーティに属するルーナ(17)は悩んでいた。 補助魔法が使える前衛としてスカウトされたものの、勇者はドスケベ、取り巻く女の子達は勇者大好きという辟易するパーティだった。 しかも勇者はルーナにモーションをかけるため、パーティ内の女の子からは嫉妬の雨・・・。 そんな中「貴女は役に立たないから出て行け」と一方的に女の子達から追放を言い渡されたルーナはいい笑顔で答えるのだった。 「ホントに!? 今までお世話しました! それじゃあ!」  ルーナの旅は始まったばかり!  第11回ファンタジー大賞エントリーしてました!

異世界召喚失敗から始まるぶらり旅〜自由気ままにしてたら大変なことになった〜

ei_sainome
ファンタジー
クラスメイト全員が異世界に召喚されてしまった! 謁見の間に通され、王様たちから我が国を救って欲しい云々言われるお約束が…始まらない。 教室内が光ったと思えば、気づけば地下に閉じ込められていて、そこには誰もいなかった。 勝手に召喚されたあげく、誰も事情を知らない。未知の世界で、自分たちの力だけでどうやって生きていけというのか。 元の世界に帰るための方法を探し求めて各地を放浪する旅に出るが、似たように見えて全く異なる生態や人の価値観と文化の差に苦悩する。 力を持っていても順応できるかは話が別だった。 クラスメイトたちにはそれぞれ抱える内面や事情もあり…新たな世界で心身共に表面化していく。 ※ご注意※ 初投稿、試作、マイペース進行となります。 作品名は今後改題する可能性があります。 世界観だけプロットがあり、話の方向性はその場で決まります。 旅に出るまで(序章)がすごく長いです。 他サイトでも同作を投稿しています。 更新頻度は1〜3日程度を目標にしています。

充実した人生の送り方 ~妹よ、俺は今異世界に居ます~

中畑 道
ファンタジー
「充実した人生を送ってください。私が創造した剣と魔法の世界で」 唯一の肉親だった妹の葬儀を終えた帰り道、不慮の事故で命を落とした世良登希雄は異世界の創造神に召喚される。弟子である第一女神の願いを叶えるために。 人類未開の地、魔獣の大森林最奥地で異世界の常識や習慣、魔法やスキル、身の守り方や戦い方を学んだトキオ セラは、女神から遣わされた御供のコタローと街へ向かう。 目的は一つ。充実した人生を送ること。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

領主にならないとダメかなぁ。冒険者が良いんです本当は。

さっちさん
ファンタジー
アズベリー領のミーナはとある事情により両親と旅をしてきた。 しかし、事故で両親を亡くし、実は領主だった両親の意志を幼いながらに受け継ぐため、一人旅を続ける事に。 7歳になると同時に叔父様を通して王都を拠点に領地の事ととある事情の為に学園に通い、知識と情報を得る様に言われた。 ミーナも仕方なく、王都に向かい、コレからの事を叔父と話をしようと動き出したところから始まります。 ★作品を読んでくださった方ありがとうございます。不定期投稿とはなりますが一生懸命進めていく予定です。 皆様応援よろしくお願いします

完結【真】ご都合主義で生きてます。-創生魔法で思った物を創り、現代知識を使い世界を変える-

ジェルミ
ファンタジー
魔法は5属性、無限収納のストレージ。 自分の望んだものを創れる『創生魔法』が使える者が現れたら。 28歳でこの世を去った佐藤は、異世界の女神により転移を誘われる。 そして女神が授けたのは、想像した事を実現できる創生魔法だった。 安定した収入を得るために創生魔法を使い生産チートを目指す。 いずれは働かず、寝て暮らせる生活を目指して! この世界は無い物ばかり。 現代知識を使い生産チートを目指します。 ※カクヨム様にて1日PV数10,000超え、同時掲載しております。

流石に異世界でもこのチートはやばくない?

裏おきな
ファンタジー
片桐蓮《かたぎりれん》40歳独身駄目サラリーマンが趣味のリサイクルとレストアの資材集めに解体業者の資材置き場に行ったらまさかの異世界転移してしまった!そこに現れたのが守護神獣になっていた昔飼っていた犬のラクス。 異世界転移で手に入れた無限鍛冶 のチート能力で異世界を生きて行く事になった! この作品は約1年半前に初めて「なろう」で書いた物を加筆修正して上げていきます。

誰一人帰らない『奈落』に落とされたおっさん、うっかり暗号を解読したら、未知の遺物の使い手になりました!

ミポリオン
ファンタジー
旧題:巻き込まれ召喚されたおっさん、無能で誰一人帰らない場所に追放されるも、超古代文明の暗号を解いて力を手にいれ、楽しく生きていく  高校生達が勇者として召喚される中、1人のただのサラリーマンのおっさんである福菅健吾が巻き込まれて異世界に召喚された。  高校生達は強力なステータスとスキルを獲得したが、おっさんは一般人未満のステータスしかない上に、異世界人の誰もが持っている言語理解しかなかったため、転移装置で誰一人帰ってこない『奈落』に追放されてしまう。  しかし、そこに刻まれた見たこともない文字を、健吾には全て理解する事ができ、強大な超古代文明のアイテムを手に入れる。  召喚者達は気づかなかった。健吾以外の高校生達の通常スキル欄に言語スキルがあり、健吾だけは固有スキルの欄に言語スキルがあった事を。そしてそのスキルが恐るべき力を秘めていることを。 ※カクヨムでも連載しています

処理中です...