100 / 714
二章 アヴァランチェ編
95 貴族との契約 と 涙の別れ
しおりを挟む
シャルヴィネの店から暫く歩き、以前に来た貴族の屋敷に着いた。
扉の前に居た衛兵に、約束した冒険者だと言って、屋敷の人を呼んでもらった。
すると屋敷から、ジルバが出てきた。
「お待ちしてました。どうぞお入り下さい」
ジルバに案内されて、一つの部屋に入ると前回と同じで、デイジーとダリアの姉弟と、屋敷の主であるジニアが居た。
「カズさんお待ちしてました」
「こんにちはデイジーさん、それにダリア君とジニアさん」
「すみませんが、堅苦しい挨拶は、抜きに致しますわ。早速ですが、依頼の契約に移らさせていただきます。ジルバ」
「はい。お嬢様」
「カズ殿、依頼書をお預かります」
ジルバに依頼書を渡す。
ジルバが依頼内容と約束事それに、依頼を故意に遂行しなかった時の罰則等を読み上げた。
次に依頼主のデイジーが、依頼書にサインをして、契約印を押す。
「ではカズ殿はこちらにサインと、血判を」
「分かりました(ギルトで登録した時と同じか)」
依頼書にサインと血判をすると、血判をした右手の甲に、契約の印が出てきた。
「カズ殿これで契約成立です。その印が貴族と契約をしている証になります。現れた契約印は、無事依頼が終われば消えますので」
「分かりました」
「それで、いつ王都に、出発していただけますの? 出来れば、今直ぐに向かってほしいですわ」
「お嬢様お気持ちは分かりますが、カズ殿も支度が御座いますから」
「分かってます! 分かってますが……一刻も早く出発して下さい。お願いします」
「ぼくからもお願いします」
「私からもお願いよ。あの花で娘の病気が治るなら」
デイジーは頭を下げて頼んできた。
それ見ていた、弟のダリアと、祖母ジニアの二人も、頭を下げて頼んできた。
「カズ殿、どうか私しからも、お願い致します。出来るだけ早く、王都の屋敷に届けて下さい」
「分かりました。ことあとギルトに戻り、ギルマスに依頼の報告をしましたら、支度をして、アヴァランチェを出ますから(直ぐに出発する事になっちゃったな)」
「ありがとうございます。デイジー様とダリア様のお二人は、旦那様と連絡が取れましたら、直ぐに王都のお屋敷に戻りますので、報酬はそれからで」
「その旦那様は、アヴァランチェに居ないんですよね。どうやって連絡を?」
「ロウカスク殿に頼んで、旦那様が向かった街の冒険者ギルドに、連絡をしてもらったんです。その返事が来ましたら、私し達は王都に急ぎ向かいます」
「そう言う事ですか。分かりました。王都で待っています」
「よろしくお願い致します」
頭を下げた四人の気持ちを受け取り、急ぎギルドに戻る。
ギルド着き、そのままギルマスの部屋に行き、依頼の話をした。
「なるほど。カズ君が一足先に、王都へ行く事になったか。場合によっては、ジルバさん方と、一緒に行くかと思ったが、頼まれた連絡の返事が、まだ来てないからな」
「それで、王都に行く道を、教えてください。近道があればそちらも」
「王都への道は、東門から続く街道を道なり行き、幾つかの街を経由すれば着くが、速い馬でも十日は掛かるからな」
「近道は無いんですか?」
「う~ん……近道とは言えないが、北の山脈を越えて行けば早いが、これかは雪が多く降るだろうし、街道を行った方が早く着くだろう」
「北の山脈ですか……」
「いくらカズ君でも、数日雪深い山の中は、危険過ぎるからやめた方がいい。道もあるか分からんし、強力なモンスターも出現する可能性もある」
「山頂に着けば、王都は見えますか?」
「晴れていれば見えるが、忠告はしたぞ!」
「ええ。でも出来るだけの事は、やってみます」
「ロウカスクさっきの書類は終わったか? 受付で必要だって。あっ! カズ戻ってきたの」
「アレナリア」
「今夜もみんなで、収穫祭に行くんでしょ。今度は、何を食べようかしら」
「ごめん。収穫祭には行けない」
「えっ! どうして?」
「王都に向けて、直ぐ出発しないと」
「そんな直ぐだなんて! せめて今日ぐらいは、明日の朝に出発すれば!」
「ごめんね。王都で『氷結花』待ってるんだ。依頼の話を聞いてから、既に二日経ってるから、急いであげないと」
「……分かったから、せめて昼食だけでも、一緒に食べましょうよ。キッシュとクリスパにも、まだ言ってないんでしょ。もう直ぐ二人も来る頃だから」
「分かったよ。そんなにゆっくりは、してられないけど」
アレナリアに説得されて、キッシュとクリスパにもお別れを言う為に、出発は昼食後にする。
アレナリアと資料室に行って、二人が戻って来るのを待つことにした。
資料室に入ると、アレナリアが引っ付いて来て、離れようとしない。
「アレナリアどう…」
「キッシュとクリスパが来るまで、このままで居させて」
「急に行く事になって、ごめんアレナリア」
「この依頼は、カズにしか出来ない事だから、分かってる。分かってるけど……カズと離れたくない」
「また会えるから、泣かないでアレナリア」
「う、うん……」
アレナリアの気持ちが、少し落ち着いてきた頃、キッシュとクリスパが、シャルヴィネのお店から戻って来た。
「ソース出来たから味見してね! ってどうしたのアレナリアさん? カズ兄が何かしたの?」
「カズさんまさか! アレナリアを無理矢理……」
「クリスパのそういう冗談はいいから」
「じゃあどうしたの?」
「実は……」
この後キッシュとクリスパにも、直ぐにアヴァランチェを出発と伝えた。
「そんな……今日から収穫祭の本番なのに。また皆で行こうって……」
キッシュはアレナリアと同じ様に、カズに抱き付いた。
「急でごめん」
「カズ兄は、いつも直ぐ、どっか行っちゃうんだから」
「それでカズさん。いつ出発するの?」
「本当は、ロウカスクさんに依頼の報告をしたので、直ぐに行こうかと」
「もうお昼ですし、昼食を一緒に食べてから行くんでしょ」
「ええ。最後に皆で、一緒に食べてから出発します。だからキッシュ、そろそろ離れて食事にしよう」
「……うん」
楽しく四人で、話しながら昼食を食べいるが、キッシュとアレナリアが、から元気でいるのが、分かってしまう。
さすがにクリスパも、今回はからかう様なことは、言わなかった。
昼食を食べ終わったので、出発する事にした。
「それじゃあ、もう行くね」
「あ……」
「ねぇカズ兄ぃ、また直ぐに会えるよね」
「……こっちの方に来たら、キッシュ会いに行くから」
「カズさん気を付けて。王都の冒険者は、乱暴連中も多いですから。そのお人好しで、くれぐれも揉め事に、巻き込まれないように!」
「は、はい。気を付けます」
「あ……カズ……」
「んっ?」
「私これから、皆に隠さずに、過ごせるように頑張るわ! カズと一緒に腕を組ながら、街中を歩けるように」
「アレナリアなら出来よ。でも無理はしないでいいから」
「うん。ありがとうカズ。どんなに離れていても……あ、愛してるわ」
「私もカズ兄のこと、愛してる!」
「まぁ! 二人とも、言う様になったわね」
「ありがとう。俺も……あ、愛してる(恥ずかしい)」
「カズさん、私は?」
「もちろんクリスパも」
「なんか、おまけみたいですね。まあ良いわ。次に会ったときは、私からカズさんを襲ってあげるから」
「それは、お手柔らかに(最後には、いつもみたいに、からかってきたな。雰囲気を和ませる為に、言ってくれたんだろうな)」
「カズ気を付けて、いってらっしゃい」
「カズ兄ぃ。いってらっしゃい」
「王都の変な女に、騙されないでね」
「クリスパは最後まで、それか。でもありがとう。いってきます」
三人と別れギルドを出発し、途中食料等を買い込み、アヴァランチェを出る為に、東門へと向かう。
ギルドを出てから走って来たので、二時間半程で東門を出た。
東門から街道を暫く進み、人が居なくなったのを確認して、氷結花を採取した場所まで〈ゲート〉で移動する。
ギルドからも直接来れたが、東門を通り抜けないと、おかしく思われるからだ。
あとはこの山脈を越えて行けば、近道になるはずだ。
扉の前に居た衛兵に、約束した冒険者だと言って、屋敷の人を呼んでもらった。
すると屋敷から、ジルバが出てきた。
「お待ちしてました。どうぞお入り下さい」
ジルバに案内されて、一つの部屋に入ると前回と同じで、デイジーとダリアの姉弟と、屋敷の主であるジニアが居た。
「カズさんお待ちしてました」
「こんにちはデイジーさん、それにダリア君とジニアさん」
「すみませんが、堅苦しい挨拶は、抜きに致しますわ。早速ですが、依頼の契約に移らさせていただきます。ジルバ」
「はい。お嬢様」
「カズ殿、依頼書をお預かります」
ジルバに依頼書を渡す。
ジルバが依頼内容と約束事それに、依頼を故意に遂行しなかった時の罰則等を読み上げた。
次に依頼主のデイジーが、依頼書にサインをして、契約印を押す。
「ではカズ殿はこちらにサインと、血判を」
「分かりました(ギルトで登録した時と同じか)」
依頼書にサインと血判をすると、血判をした右手の甲に、契約の印が出てきた。
「カズ殿これで契約成立です。その印が貴族と契約をしている証になります。現れた契約印は、無事依頼が終われば消えますので」
「分かりました」
「それで、いつ王都に、出発していただけますの? 出来れば、今直ぐに向かってほしいですわ」
「お嬢様お気持ちは分かりますが、カズ殿も支度が御座いますから」
「分かってます! 分かってますが……一刻も早く出発して下さい。お願いします」
「ぼくからもお願いします」
「私からもお願いよ。あの花で娘の病気が治るなら」
デイジーは頭を下げて頼んできた。
それ見ていた、弟のダリアと、祖母ジニアの二人も、頭を下げて頼んできた。
「カズ殿、どうか私しからも、お願い致します。出来るだけ早く、王都の屋敷に届けて下さい」
「分かりました。ことあとギルトに戻り、ギルマスに依頼の報告をしましたら、支度をして、アヴァランチェを出ますから(直ぐに出発する事になっちゃったな)」
「ありがとうございます。デイジー様とダリア様のお二人は、旦那様と連絡が取れましたら、直ぐに王都のお屋敷に戻りますので、報酬はそれからで」
「その旦那様は、アヴァランチェに居ないんですよね。どうやって連絡を?」
「ロウカスク殿に頼んで、旦那様が向かった街の冒険者ギルドに、連絡をしてもらったんです。その返事が来ましたら、私し達は王都に急ぎ向かいます」
「そう言う事ですか。分かりました。王都で待っています」
「よろしくお願い致します」
頭を下げた四人の気持ちを受け取り、急ぎギルドに戻る。
ギルド着き、そのままギルマスの部屋に行き、依頼の話をした。
「なるほど。カズ君が一足先に、王都へ行く事になったか。場合によっては、ジルバさん方と、一緒に行くかと思ったが、頼まれた連絡の返事が、まだ来てないからな」
「それで、王都に行く道を、教えてください。近道があればそちらも」
「王都への道は、東門から続く街道を道なり行き、幾つかの街を経由すれば着くが、速い馬でも十日は掛かるからな」
「近道は無いんですか?」
「う~ん……近道とは言えないが、北の山脈を越えて行けば早いが、これかは雪が多く降るだろうし、街道を行った方が早く着くだろう」
「北の山脈ですか……」
「いくらカズ君でも、数日雪深い山の中は、危険過ぎるからやめた方がいい。道もあるか分からんし、強力なモンスターも出現する可能性もある」
「山頂に着けば、王都は見えますか?」
「晴れていれば見えるが、忠告はしたぞ!」
「ええ。でも出来るだけの事は、やってみます」
「ロウカスクさっきの書類は終わったか? 受付で必要だって。あっ! カズ戻ってきたの」
「アレナリア」
「今夜もみんなで、収穫祭に行くんでしょ。今度は、何を食べようかしら」
「ごめん。収穫祭には行けない」
「えっ! どうして?」
「王都に向けて、直ぐ出発しないと」
「そんな直ぐだなんて! せめて今日ぐらいは、明日の朝に出発すれば!」
「ごめんね。王都で『氷結花』待ってるんだ。依頼の話を聞いてから、既に二日経ってるから、急いであげないと」
「……分かったから、せめて昼食だけでも、一緒に食べましょうよ。キッシュとクリスパにも、まだ言ってないんでしょ。もう直ぐ二人も来る頃だから」
「分かったよ。そんなにゆっくりは、してられないけど」
アレナリアに説得されて、キッシュとクリスパにもお別れを言う為に、出発は昼食後にする。
アレナリアと資料室に行って、二人が戻って来るのを待つことにした。
資料室に入ると、アレナリアが引っ付いて来て、離れようとしない。
「アレナリアどう…」
「キッシュとクリスパが来るまで、このままで居させて」
「急に行く事になって、ごめんアレナリア」
「この依頼は、カズにしか出来ない事だから、分かってる。分かってるけど……カズと離れたくない」
「また会えるから、泣かないでアレナリア」
「う、うん……」
アレナリアの気持ちが、少し落ち着いてきた頃、キッシュとクリスパが、シャルヴィネのお店から戻って来た。
「ソース出来たから味見してね! ってどうしたのアレナリアさん? カズ兄が何かしたの?」
「カズさんまさか! アレナリアを無理矢理……」
「クリスパのそういう冗談はいいから」
「じゃあどうしたの?」
「実は……」
この後キッシュとクリスパにも、直ぐにアヴァランチェを出発と伝えた。
「そんな……今日から収穫祭の本番なのに。また皆で行こうって……」
キッシュはアレナリアと同じ様に、カズに抱き付いた。
「急でごめん」
「カズ兄は、いつも直ぐ、どっか行っちゃうんだから」
「それでカズさん。いつ出発するの?」
「本当は、ロウカスクさんに依頼の報告をしたので、直ぐに行こうかと」
「もうお昼ですし、昼食を一緒に食べてから行くんでしょ」
「ええ。最後に皆で、一緒に食べてから出発します。だからキッシュ、そろそろ離れて食事にしよう」
「……うん」
楽しく四人で、話しながら昼食を食べいるが、キッシュとアレナリアが、から元気でいるのが、分かってしまう。
さすがにクリスパも、今回はからかう様なことは、言わなかった。
昼食を食べ終わったので、出発する事にした。
「それじゃあ、もう行くね」
「あ……」
「ねぇカズ兄ぃ、また直ぐに会えるよね」
「……こっちの方に来たら、キッシュ会いに行くから」
「カズさん気を付けて。王都の冒険者は、乱暴連中も多いですから。そのお人好しで、くれぐれも揉め事に、巻き込まれないように!」
「は、はい。気を付けます」
「あ……カズ……」
「んっ?」
「私これから、皆に隠さずに、過ごせるように頑張るわ! カズと一緒に腕を組ながら、街中を歩けるように」
「アレナリアなら出来よ。でも無理はしないでいいから」
「うん。ありがとうカズ。どんなに離れていても……あ、愛してるわ」
「私もカズ兄のこと、愛してる!」
「まぁ! 二人とも、言う様になったわね」
「ありがとう。俺も……あ、愛してる(恥ずかしい)」
「カズさん、私は?」
「もちろんクリスパも」
「なんか、おまけみたいですね。まあ良いわ。次に会ったときは、私からカズさんを襲ってあげるから」
「それは、お手柔らかに(最後には、いつもみたいに、からかってきたな。雰囲気を和ませる為に、言ってくれたんだろうな)」
「カズ気を付けて、いってらっしゃい」
「カズ兄ぃ。いってらっしゃい」
「王都の変な女に、騙されないでね」
「クリスパは最後まで、それか。でもありがとう。いってきます」
三人と別れギルドを出発し、途中食料等を買い込み、アヴァランチェを出る為に、東門へと向かう。
ギルドを出てから走って来たので、二時間半程で東門を出た。
東門から街道を暫く進み、人が居なくなったのを確認して、氷結花を採取した場所まで〈ゲート〉で移動する。
ギルドからも直接来れたが、東門を通り抜けないと、おかしく思われるからだ。
あとはこの山脈を越えて行けば、近道になるはずだ。
応援ありがとうございます!
11
お気に入りに追加
492
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる