人生初めての旅先が異世界でした!? ~ 元の世界へ帰る方法探して異世界めぐり、家に帰るまでが旅行です。~(仮)

葵セナ

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二章 アヴァランチェ編

70 アレナリアの覚悟 3 縮まった距離感

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 さて、まずは話しながら緊張をほぐして、その後に話題を考えよう。

「二人共そんなに緊張しなくても大丈夫」

「でも失礼があったら……」

「スカレッタ先輩の言うとうりですよ」

「私とじゃ、不服だったかしら」

「そ、そんなことないです。サブマスターに食事に誘ってもらえるなんて……」

「せ、先輩の言うとうりです」

 こりゃ駄目だ、みんな緊張しまくってるよ。
 これは話す内容を、決めるどころじゃないぞ。
 う~ん……こうなったら!

「せっかく一緒に昼食を食べるんだから、サブマスターじゃなくて、名前で呼んだらどうかな?」

「カズさん、なんてこと言うんですか。私達なんかが、サブマスターを名前で呼ぶなんて!」

「そ、そうです……」

「私の名前なんて、呼びたくないのかしら」

 ちょっとアレナリア、その言い方じゃあ、余計に気まずくなっちゃうよ。
 ああーもう、俺が見本を見せるしかないか。

「ちょっと何言ってるの『アレナリアさん』二人が萎縮しちゃうじゃないの。別に二人がアレナリアさんのことを、名前で呼んでも良いでしょ」

「べ、別に構わないわよ」

「だってさ。スカレッタさんにルグルさんも、名前で呼んでも良いってさ」

「でも仕事上……」

「今は仕事じゃなくて、休憩時間だから、その時くらいは良いでしょ。アレナリアさんも、良いって言ってるんだから」

「それじゃあ……アレナリアさん」

「……アレナリアさん」

「アレナリアさんどうですか? 名前で呼ばれて」

「い、良いんじゃないの」

「だそうですよ。お二人とも!」

「あのう、食事をする相手が、私達なんかで良かったんですか?」

 おいおいスカレッタさん、何を言ってるんだい。
 アレナリアは、なんて返す気だ?

「あなた達とは、何度か話したことがあったし、また話したいと思ったから誘ったんだけど、迷惑だったかしら?」

 ん~、ちょっと言い方が固いかな。

「そんなことないです。誘ってもらって光栄です」

「わ、私もサブ……アレナリアさんに、誘ってもらって嬉しいです」

「そう、それは良かったわ。それじゃあ、お腹も空いたし、食事にしましょう」

「あのう、私達何も持ってきて無いんですけど」

「あら、カズに聞いてないのかしら?」

「あっ! 二人に話すの忘れてたました」

「何をですか?」

「昼食は、俺が用意することになってるんですよ」

「そうなんですか?」

「カズさんが、何か買ってきてくれたんですか?」

「買ってきてはないですよ。ルグルさん」

「えっ? それじゃあ、ギルドの食堂ですか?」

「いえ。大した物じゃないんですけど、俺が作ってきたんです」

「カズさんの手作りですか!?」

「ええ、まあ」

 【アイテムボックス】から、ギルドに来る前に作ったフレンチトーストと、蜂蜜が入った小ビンを、三人の前に出した。
 そしてこっちの小さい器は、氷で冷やしておかないと。

「何ですかこれは?」

「黄色いパン?」

「あなた達知らないの? これはフレチトロトって言って、蜂蜜をかけて食べるのよ」

「アレナリアさん、フレンチトーストね」

「わ、分かってるわよ」

「あ、それじゃあ私は、ハーブティーを入れます。甘めの料理なので、それに合わせた物にしますね」

 スカレッタが、四人分のハーブティーを入れて、それぞれの前に出してくれた。

「せっかくなんで、冷める前に食べてみてください」

「アイテムボックスって便利ですね。作ったばかりのように、あったかいままなんて。それでは、いただきます」

「ルグルさんも、どーぞ」

「いただきます」

「!」

「!」

「パンに卵とミルクの風味があって美味しいです」

「スカレッタ先輩、しかもふわふわです。蜂蜜もあまぁ~い!」

「これをカズさん作ったんですか?」

「そうですよ。結構簡単に出来ますから、教えますよ」

「スカレッタ先輩だけズルいです。私にも教えてください」

「ええ、食後にでも」

「サブマ……アレナリアさんは、いつもこんな料理を食べてるんですか?」

「ええ」

「良いですね! あ~あこれなら、カズさんが泊まる所を探してるとき、私の所に来てもらえば良かったな」

「スカレッタ先輩一人暮らしなんでしょ! 男性と一緒に住むなんて……でも毎日料理をしてくれるな、良いかも」

「あら、ルグルも言う様になったわね!」

「はっ! いえ、その……私はやっぱり遠慮します……」

「二人共何を言ってるの! カズは渡さないわよ」

 ちょっとアレナリア、君はさらりと何を言ってるんだ。

「アレナリアさん、カズさんを渡さないって、やっぱりそう言う関係なんですか!」

「ちょ、ちょっとスカレッタ先輩、サズマスに何を聞いてるんですか!」

 本当だよ! スカレッタさん何を言ってるのさ。
 さっきまで緊張してたのは、いったいどこにいったんだよ! ルグルさん、なんとか止めてくれ。
 
「そう言う関係って何かしら?」

「以前噂になりかけた、男と女の関係ですよ」

「ちょっとスカレッタ先輩、突っ込み過ぎですよ! ……でも私も気になる」(ボソッ)

 おいちょっとルグルさん、止めてくれるんじゃないのか!

「そんな関係はないわ……でもカズが望めば、私は構わないんだけど」

「ゴホッゴホッ……アレナリアまで何を言ってるんだよ!」

「別に、私は本当のことを言っただけよ」

「さっきまで緊張してた人が、赤裸々に語ってどうすんのさ!」

「カズか他の所に、移り住まれるよりましよ!」

「あの~……やっぱりお二人は、そう言う関係なんですか?」

「違うから、アレナリアが一方的に、言って来てるだけだから」

「カ、カズさん」

「何ですか? ルグルさん」

「先程からサブマス、アレナリアさんのことを呼び捨てにしてますが……」

 あっ! 話が怪しげな事になってきたから、いつもの感じ呼んじゃったよ。

「カズもういいわ。二人に話しておきます。先程言ったような噂は、まったくありません。ただカズが、ロウカスクや私と親しいのは本当です」

「それで呼び捨てですか?」

「そうよスカレッタ。私が許したのよ」

「じゃあ、アレナリアさんが、カズさんを望んでるのも、冗談だったってことですか?」

「ルグルそれはね……本当です! 私の勝手な気持ちだけど」

「私達に話して、良かったんですか?」

「ロウカスクにも言ってあるけど、もちろん他言無用よ」

「もし破ったら……」

「それはね……フッフッフッ……」

「言いません絶対に!」

「私も絶対に言いません。もう忘れました!」

「ハァー……アレナリアそのくらいにしたら。少し震えてるよ。無理してるんでしょ」

「えっ! サブマスが震えてるって、どこか悪いんですか?」

「わ、私は震えてなんか……」

「アレナリアは極度の人見知りで、今までの行動が、あんなんだったから、冷徹と言われてたんだよ」

「ちょ、カズそれは言わないで……」

「せっかくだから、二人に知っていてもらえれば、これから話しやすくなるでしょ。そう言うことだから、二人共アレナリアをよろしく」

「そうだったですか。私も小さい頃は人見知りでしたから、少しは分かります。ルグルは今でもあるわよね」

「スカレッタ先輩酷いです。サブマスよりはましだど思いますが」

「ねぇルグル、それをよく本人を前に言うわね」

「あっ……ごめんなさい。ついうっかりと、悪気は無いんです」

「スカレッタにもそんな頃あったのね。いいわ、これからもよろしくね」

「はい。これからもよろしくお願いします。アレナリアさん!」

「よ、よろしくお願いします」

「話がまとまったようだし、最後にデザートを食べようか。甘さ控えめにしてあるから、お茶を飲んでから、食べた方が良いですよ」

 丁度よく冷えたので、三人の前に小さな器を出した。

「カズこれはなぁ~に?」

「プリンって言うんだけど、初めて作ったからどうかな?」

 先ずはアレナリアが一口食べた。

「これも卵を使ったのね。甘くて柔らかくて、底にある黒いソースがほろ苦くて、甘さが引き立って良いわね」

「私も……柔らかい。そして冷えてて美味しい~。こんなの初めて」

「それじゃあ私も……あっ!」

「ルグルはさっき、私よりましだと言ったから、これはお預けよ」

「そ、そんな~」

「アレナリア、意地悪しないであげなよ」

「しょうがないわね。カズが言うなら」

「ありがとうございます。んっ! 本当、冷たくて 甘くて ほろ苦くて美味しい!」

「アレナリアさんは、カズさんの言うことには、素直に聞いちゃうんですね」

「う……うん。そう」

 このあと、ぎこちないながらも、話せるようになった三人。
 初めてあった頃のルグルは、スカレッタのことを呼び捨てにしていたが、何か思うとこがあったのか、語尾に先輩とつけ始めた。
 そして昼食時間が終わり、スカレッタとルグルは、受付の仕事へと戻って行った。
 ここで話した内容は、四人だけの秘密だと、スカレッタとルグルに、念押しして言っておいた。
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