人生初めての旅先が異世界でした!? ~ 元の世界へ帰る方法探して異世界めぐり、家に帰るまでが旅行です。~(仮)

葵セナ

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二章 アヴァランチェ編

68 アレナリアの覚悟 1  勇気 と 決断

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 ◇◆◇◆◇


 またなんとも、生々しい夢を見てしまった。
 だが夢の中だけでも、キッシュに会えたのは嬉しかったなぁ。
 まだ二人をギュっとした感触が残って……

「カズったら、そんなに強くしたら苦しいよ」

「……アレナリア……まだ夢か?」

「何言ってるのカズ?」

「んっ……アレナリア! ごめん苦しかった?」

「大丈夫よ。カズの抱擁は、とっても暖かかったわ」

 ……ここ俺の部屋だよな? なんでアレナリアが居るんだ? 

「ちょっと待ってアレナリア。いつ部屋に侵入した」

「侵入って酷いわ! なんてね。私もハッキリ覚えてないのよね。夜中に喉が渇いて、水を飲んでから、自分のベットに入ったと思ったんだけど、さっきの熱いカズの抱擁で目が覚めたの」

「寝ぼけて入り込んだのか! 昨日寝る時に、扉の鍵を掛け忘れたか。不覚」

「今回は鍵を掛けなかった俺も悪いけど、アレナリアも、もう間違えるなよ!」

「カズの抱擁を知ってしまったから、寝ぼけて来てしまうかも」

「抱擁じゃないから!」

「またまた、私の夢を見てくれたんでしょ。そんなに恥ずかしがらなくてもいいのに」

「寝ぼけてた、だけだから!」

「そう言うことに、しておいてあげるわ」

 何が『恥ずかしがらなくても』だよ、自分なんか、照れて顔をピンク色にしてるじゃないか。
 しかもそれで、よくそういうことが言えるもんだな。
 しかし何であんな夢を……アレナリアをベットに寝かせる時に、抱き上げて運んだからかな?
 見た目どうりで、小さい体つきだったし、女性だけあって、柔らかい肌だったな……

「カズ何してるの? 朝食にしましょうよ」

「わ、分かった」朝っぱらから、何考えてるんだ俺は!

 少し気恥ずかしく思いながら部屋を出て、昨日の作った物で、朝食の用意をすることにした。

「アレナリア何食べる?」

「私は、昨日のポテトサラダを、パンに挟んで食べてみたいわ」

「ああいいよ。色々と試して自分好みを探すのも、面白いかもね」

 テーブルに、買っておいた食パンとバゲット、あと昨日のポテサラを【アイテムボックス】から出した。

「今日は違うパンもあるのね」

「好きな方を食べな」

「お茶は私が入れるわ」

「ありがとう」

 アレナリアはポテトサラダをパンに挟んで、俺は昨日作った魚のフライに、タルタルソースかけ、それを焼いたパンに挟んで食べた。
 いい感じだが、あとキャベツの千切りでも、入れたいところだ。

「まぁまぁかな」

「カズは、何を挟んでるんだ?」

「昨日揚げた魚に、タルタルソースをかけた物だよ」

「私にも頂戴」

「朝から食べ過ぎじゃないの」

「うっ……それでいいから少し頂戴!」

「あっ!」

 アレナリアが、俺の食べかけの、魚のフライサンドを奪っていった。
 まだ半分程しか食べてないのに。

「この食いしん坊は、キッシュといい勝負かもな」

「クイッシュらほ……」

「食べながら喋らないの。何言ってるか分からないよ」

「確かリアーデの街に居る、クリスパの妹だったか?」

「まあ、そんな感じの娘かな」

「私と似てるのか?」

「食いしん坊のところがね」

「なっ! 私はそんなに食いしん坊じゃ……」

 アレナリアは言いかけて、手に持った魚のフライサンドを見て黙った。

「私はなんだって?」

「な、なんでもない」

 自覚があるのかないのか、アレナリアは残りを口の中に詰め込んだ。

「さて、朝食も食べたことだし、ギルドに行こうか」

「ええ。お昼には、またこの魚を挟んだのを食べたいわ。このタルタルソースたっぷりで!」

「太るよ!」

「うっ……タルタルソースは……ちょっとでいいわ」

 もはや色気より食気の方が、勝ってきてるな。
 まあ、あれで色気を出しても、相手にロリっ娘属性がないと、意味なさそうだけどな。
 ……俺的には……

「ほらカズ、行くんでしょ!」

「ああ」

「でもさすがに、毎日あんなに食べてたら太るわね。ポピーを特訓する回数を増やして、私も体を動かそうかしら」

「それは良いかもね(ポピーにはキツそうだけど)」

「食べた分が、ここ(胸)に付くといいんだけど」(小声)

「んっ?」

「な、何でもないわ。さぁ行きましょう」

 アレナリアの家を出て、ギルドに向かい二人で歩いて行く。
 ギルドが見えてきた頃に、アレナリアが急に脚を止めて、立ち止まっていた。

「アレナリアどうしたの? もう少しでギルドだよ」

「マントが……無いわ。どうして」

「それは、着てこなかったからでしょ」

「カズ気付いてたの?」

「いらなかったからじゃないの?」

「そんな訳ない! あれが無いと私……一度帰りましょう」

 アレナリアは俺の後ろに、隠れるようにピッタリと、引っ付いた。
 その時、離れた所から声を掛けてきたのは、依頼で都市の外に行ってるはずのポピーだった。

「アレナリア大丈夫か? ポピーがこっちに来るよ」

「うぅ~。何でこんなときに……」

「おはようカズさん」

「おはようポピー。依頼で数日は戻らないんじゃなかったの?」

「それが昨日の朝に、西門から出ようとしたら、私達が受けた依頼の難易度が上がったから、急に中止だとギルドから連絡来ていて、戻ってくる羽目になったんですよ」

 昨日の朝と言うと……俺が盗賊を討伐して戻ってきた日だから、ポピー達と会った翌日だよな。

「先日会った日に、都市を出発しなかったんだ」

「ええ。外壁の近くで一泊して、翌朝出発することにしたんですよ。なんせサブマスの特訓で、ギルドを出発したのが、昼頃でしたから」

「そうだったね。それで中止になった依頼って?」

「なんでも街道に現れる数人の盗賊を、討伐する依頼だったんですよ。それが急に依頼が中止なって戻ってきたら、数十人の盗賊が捕まったって聞いて驚きましたよ」

 なるほど。
 そいつらは、俺が討伐した盗賊と、合流の為に、向かってた連中だったんだろうな。

「今回は中止になって、良かったじゃないか」

「そうですね。数人ならともかく、数十人は無理ですからね。アハハハッ」

「何を弱気なことを言ってるの! まだまだ特訓が必要なようねポピー!」

 あっ! アレナリアが出て来た。

「サブマスっ! いつからそこに! しかも今日はマントを着てない」

「そんなことは、どうでもいいの! 特訓するから、午後になったら訓練場に来なさい。いいですね!」

「は、はい! 分かりました」

「さぁカズ行きましょう」

 アレナリアは少し震えながら、なんとか体裁を保ったまま、ギルドへと入って行く。
 すると、マントを被ってないサブマスは珍しいらしく、皆から注目されていた。
 心配になったので、俺はアレナリアの後に付いて、一緒に資料室に行った。
 資料室に入ったアレナリアは、震えながら崩れる様に椅子に座り込んだ。

「アレナリア大丈夫か!」

「わ、私変じゃなかった? 皆が見てたけど、おかしくなかった?」

「キリッとしてて、威厳のある、いつものサブマスに見えてたよ」

「そ、そう。良かった」

「とりあえず、力抜いて落ち着いて」

 少しすると、アレナリアは落ち着きを取り戻したようで、荒かった息づかいと、冷や汗もおさまって、正常になってきた。
 なので俺は聞いてみた。

「アレナリア、急にどうして出て来たの? 俺の後ろに隠れていたから、ポピーは気付いてなかったと思うけど」

「昨日カズが言ったこと思い出して、マントが無い状態でポピーと話せたら、スカレッタ達と話すのも、大丈夫かと思ったの。ギルドに来れば、代わりのマントがあるから、思い切ってそのままギルドに来たの」

 昨日俺が言ったことを、直ぐに実践したのか。
 最初は、マントのフードを外すぐらいで、良いと思ったんだけどな。
 いきなりマント無しは、ハードルが高かかったんじゃないか。
 同じような状況で、元居た世界の俺だったら……

「アレナリアは凄いよ」

「私、これからはマントが無くても、大丈夫かしら?」

「無理することはないよ。少しずつ、ゆっくりならしていけば良いよ」

「そう……ね。ありがとうカズ」

「お礼を言われることはしてないよ。それより、もう大丈夫そう?」

「ええ、もう大丈夫よ。この勢いで、昼食はスカレッタ達と、一緒に食べようかしら」

「おいおい、そんな無理しなくても、ゆっくりでいいって」

「今日は大丈夫な気がするの! だから……」

「分かったよ。スカレッタ達には、俺からそれとなく言ってみるよ。場所はここ(資料室)で、良いかな? 他に人も来ないだろうし」

「ええ良い……待って、やっぱり一人だと怖いわ」

「俺も同席するよ」

「ありがとう。私がんばってみるわ!」

 この話の後、アレナリアは気持ちを落ち着かせる為に、いつもと同じ仕事をしていた。
 俺はスカレッタ達との仲を取り持つ為に、何か良さそうな昼食を用意することにした。
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