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二章 アヴァランチェ編

61 新たな朝食 と 上がったランク

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 ◇◆◇◆◇


 朝目覚めてまわりを見るが、 アレナリアが部屋の中に入ってきた様子はない。
 あれだけ誘って来たので、何かしてくるかと思ったがそんなことはなく、どうやら俺の思い違いだったらしいので安心した。

 朝食を作るので起きて台所へ行き、昨日買った食材を【アイテムボックス】から出し支度する。

  昨日と同じ食パンに似た……と言うか、もう食パンでいいか。
 それと生卵を溶いて、そこに牛乳を少し混ぜる。
 あとは食べやすく一口大に切った食パンを、生卵と牛乳を溶いた物に潜らせて、オリーブオイル引いたフライパンで両面を焼くだけだ。
  こんがりと焼き上がったパンを木皿に盛って、昨日見つけて買っておいた蜂蜜をかけて完成!

「カズ何を作ってるんだ?」

「おはようアレナリア。丁度出来たところだよ」

「またタマゴサラダか!」

「今日は違うよ」

「なんだ違うか……食べたかったな……」

「アレナリアは、よっぽどタマゴサンドが気に入ったようだね」

「タマゴサンド?」

「タマゴサラダをパンに挟んだ物だよ」

「タマゴサンドと言うのか! 私は毎日あれでも良いわよ」

「さすがに毎日は……」

「そうか……」

「そんなにしょんぼりしないでさ、今日の朝食も試してみてよ」

「カズが作ってくれたんだもの、もちろん食べるわよ。でもタマゴサンドも食べたいわ……」

「分かったよ。そんな好きなら、また作るから」

「本当ね! 絶対よ!」

「分かったって」

「約束よ!」

「まったく、本当は結構な食いしん坊じゃないか!」(小声)

「何か言ったかしら?」

「なんでもない。さぁ冷める前に食べて」

 食いしん坊と言えば、キッシュどうしてるかな? 元気でいるかな?

「カズ……ねぇカズってば!」

「えっ? 何?」

「今日のこれは何かしら?」

「フレンチトーストって言う料理だよ。砂糖が無かったから、蜂蜜をかけた物にしたんだけど、どうかな?」

「……ふわっと、そしてしっとりして……蜂蜜あま~い」

「気に入った様で良かったよ」

「パンを卵とミルクにつけて焼くだなんて、こんな食べ方があるのね」

「口のまわり蜂蜜だらけだよ。アレナリアちゃん」

「ちょ、誰がアレナリアちゃんよ!  子供扱いしないで!」

 口のまわりを、蜂蜜だらけにしたアレナリアを見たら、ついちゃん付けをしてしまった。

 子供扱いされたアレナリアは、恥ずかしそうに顔をピンク色にしながら、口元についた蜂蜜を拭いている。
 拭き終えるとまた食べだしたが、一口サイズに切ったパンが少し大きかったのか、やはり口のまわりには、蜂蜜がついてしまっている。

 朝食を食べ終わり、食器を片付けていたら

「ねぇカズ、それが片付け終わったら、ギルドに一緒に行きましょう」

「どうしたの急に?」

「カズがここに住んで居るのは、もうみんな知ってるから、一緒に行っても問題ないでしょ」

「皆が既に……(どこの世界でも、噂が広まるのは早いし怖いな)」

「私と一緒に行くの……嫌なの?」

「別に嫌じゃないけど、昨日ロウカスクさんが言ってたような噂が流れたら、アレナリアが困るでしょ。立場上サブマスなんだしさ」

「べ、別にあんな程度の噂が流れても、私は全然平気よ。私はカズよりずっと大人なんですから!」

「そう言ってるわりには、顔がピンク色になってきてるけど、どうしたのかな? 大人のアレナリアさん」

「ん~もう! カズもそうやって私を、からかうんだから! そう言う余計なことは、ロウカスクから学ばなくていいの! ほらさっさと行くわよ!」

「ハイハイ分かりましたよ」

 俺とアレナリアは、二人で一緒にギルドへと向かった。
 人が増えるつれて、アレナリアは物静かな冷徹のサブマスって感じになってきた。

 あれ? そう言えば……俺以外の人達には、アレナリアのことを、どうやって見えてるんだろう?
 確か幻術魔法使って、今日は認識阻害の効果があるマントを着てるんだよな。
 さすがに本人には聞きずらいし、ギルドに行ったら、それとなく誰かに聞いてみようかな。

「カズどうしたの、考え事?」

「いやなんでもない」

「そう。私はギルマスの部屋に居るから、用があったら、いつでも来てちょうだい」

「毎回思うが、Dランクの冒険者がそんな簡単にギルマスの部屋に行くの、おかしくないか?」

「そう言えばそうね。大抵はこちらから呼び出して、来てもらう所だからね」

「だから目立つんだけど」

「ああそうだったわ! 昨日言うの忘れてたけど、カズはCランクに昇格してるから、受付でギルドカードを渡して新しくしてもらってね」

「いきなりだな!」

「この前行ってもらった、水晶採掘依頼の結果で決まったのよ。手続きがあったから教えるのが、今になっちゃったけどね」

「分かった。受付でギルドカードを新しくしてもらうよ」

「今度からは、Bランクの依頼も受けられるから、探して見ると良いわ」

「それは楽しみだ」

 話し終えると、ちょうどギルドに着いたので、俺は受付に、アレナリアはギルマスの部屋へと向かった。
 俺はスカレッタの居る受付に行った。

「あらカズさん、おはようございます」

「おはよう。スカレッタさん」

「そうだ! カズさんのランクが上がったと連絡が来ていたので、ギルドカードを新しくしますね」

「俺もさっき聞いたとこなんですよ」

 懐から出すふりをして【アイテムボックス】からギルドカードを出し、スカレッタに渡した。

「はい確かにお預かりしました。新しいギルドカードは夕方にはお渡し出来ますので、今日依頼を受けるようでしたら、こちらが幾つかご用意しますが、それでよろしいですか?」

「えぇお願いします」

「それでは、依頼専用受付の方どうぞ。ルグルお願いね」

「はーい」

 俺は用意された依頼を聞きに、依頼専用受付の方へ移動する。

「おはようございますカズさん」

「おはようルグルさん」

「幾つかの依頼をご用意しましたので、お好きなのを選んでください」

 ルグルから依頼書を数枚渡されて、その中から二つの依頼を選んだ。



ーーーーーーーーーー

 ・D 住宅区(北東) 住居の解体作業 
魔法又はスキルの使用可。時間短縮で報酬上乗せの有り 最大二人 銀貨八枚 

 ・D 生産区 作物の運搬 朝と夕方に収穫した作物を加工場に配達する。配達量で報酬上乗せ有り。朝か夕方のどちらかだけでも良い 最大三人 銀貨六枚


ーーーーーーーーーー


 この二つの依頼なら、時間的に両方できるだろうな。
 解体作業を終えた後に、夕方の運搬依頼を受けておけば、両方出来るからいいだろう。

「ルグルさん、この二つの依頼を受けます。運搬の方は夕方のみでお願いします」

「承りました。依頼場所は依頼書に簡単な地図が書いてありますので、それを頼りに向かってください」

「分かりました」

 早速ギルドを出て、北東の住宅区に足早に向かい、一時間程で解体場所の作業現場に着いた。

 他に依頼を受けた人はいなく、依頼人とその部下二人に、俺を合わせた四人でやるようだ。
 解体する建物は二階建ての廃墟で、今にも崩れて来そうなので、慎重に少しずつ解体していくと言っている。
 それに合わせて解体すると、次の依頼に間に合わないので、魔法を使ってバラバラにしていいかと聞いたら、全て廃棄するから、やってくれて構わないと言われた。

 俺は、水晶採掘で行った時に、洞窟を塞いでいた岩を破壊した魔法を使うことにした。
 威力をおさえ〈ウォーターカッター〉を使用し、解体する建物の外から柱や壁をバラバラにしていった。
 貫通して他の建物に被害がでないように気を付けながら進めて、二十分くらいで建物は崩れ落ちた。

 あとは全員でバラバラになった物を片付けるだけなので、他の人達に声を掛けて始めようとしたら、呆然と立ち尽くしていた。
 どうやらこんなやり方をする人を、見たことが無かったらしく、言葉にならなかったようだ。
 だが直ぐに正気を取り戻し、作業に取り掛かった。

 俺の他に、この依頼を受けた冒険者が来ていたら、こんな方法ではやらなかったが、今回はこの後の依頼に間に合わせる為に、魔法を使いこんなやり方をしたまでだ。
 そのおかげで、ここの依頼は早く終わらせることが出来た。
 依頼人の男性が、また解体依頼を見付けたら、是非受けてくれと言われてしまった。
 時間が限られてるからと言って、やり過ぎも問題だと、今になって常々思った。

 一件目の依頼を終えて、次の依頼場所である生産区に向かった。
 さすがに加工前の作物だからといっても、解体作業で汚れた格好のまま行く訳にはいかないので〈クリア〉の魔法を使って、衣服の汚れをキレイにする。

 二件目の作業内容は、ジャガイモの運搬だった。
 加工場までは、歩いて約二時間の場所にあると言う。
 先に依頼に来た二人の冒険者が、荷車を使って半分以上運んで行ったと言うので、残りを全部持って行くことにした。
 荷車どころか手ぶらで行ったので、最初はおかしな人だと思われた。
 しかし置いてあった残りのジャガイモ(約300㎏くらい)を、全て【アイテムボックス】に入れたのを見て、手ぶらで来たことに納得してくれていた。
 その後加工場の場所を聞き配達した。

 依頼が終わったら、既に日が暮れてしまったので、急いでギルドに戻りギルドカードを受け取ることにした。
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