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二章 アヴァランチェ編

60 新たな宿探し と マッピング

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 ギルマス昨日帰ったふりをして、実はどこかで、また盗聴してたのかと思った疑った。
 俺はギルマスのロウカスクを見ると、それに気付いて手を横に振り弁解してきた。

「カズ君さ、そんな目で見てくるが、オレがまた盗聴でもしたと思ってるんだろ」

「はい。おもいっきり思ってます」

「酷いなぁ。さすがにオレでも傷つくぞ!」

「ならどうして知ったんですか?」

「これはオレの勝手な推測だが、アレナリアがやたらと機嫌が良いと言うことと、カズ君が、宿を探してるようなことを聞いてな」

「はぁそれで」

「カズ君はアレナリアからずっと、部屋が空いているから一緒に住もうと、言い寄られてた。それを踏まえて、オレなりに考えたのが、カズ君はアレナリアの家に泊まったんだと」

「……本当にそれだけですか?」

「いや決定的なのは、今朝アレナリアの家からカズ君が出て来たのを、ギルドの職員が見ていたことだ!」

「……あまり大袈裟には、しないでほしいんですが」

「何もしやしないさ。確かめたかっただけだからな。職員達にも、ただ部屋を貸してるだけだって言っておいたから」

「それはありがとうございます。変な噂が流れたら、アレナリアに迷惑ですから」

「っと言っているが、当人のアレナリアはどうなんだ? 変な噂は困るのか?」

「何よ変な噂って?」

「カズ君と密会をしてるとか、あの冷徹なサブマスが既に体を許したとか、二人には既に子供が……とかはさすがにないが」

「な、なんですかそれは!」

「もしオレが職員達に言ってなかったら、こんなことになったかもって、仮の話さ」

「仮の話ですか。職員の方達に言ってくれたんでしたっけね。良かったなアレナリア」

 俺とギルマスはアレナリアを見た。
 するとアレナリアは、耳まで真っ赤になった顔を両手で隠していた。

「わ、私ちょっと資料室で、調べることあるから」

 アレナリアは、そそくさと逃げるように、部屋を出ていってしまった。

「前にも同じことがあったな。なぁカズ君」

「ありましたね……どうします?」

「放っておけば、その内熱も冷めるだろう。今カズ君が行っても、逆効果になりそうだからな」

「ロウカスクさんが行ったらどうですか!」

「オレが行ったら、魔法を放ってきそうだから、行きたくはないぞ!」

「……なら俺は、何か依頼を受けながら、宿を探してみるかな」

「この時期は無理だと思うぞ。大人しくアレナリアの所に居ればいいのによ」

「さっきの発言が無ければ……」

「オレが悪いのか?」

「……俺がいなくなった後で、アレナリアに余計なことを、吹き込まないでくださいよ!」

「カズ君さぁ、オレに対して遠慮がなくなって来てないか」

「……いってきま~す」

 ギルマスとの話を終わらせ、一階の依頼書が貼ってある掲示板を見に行く。
 宿屋探しを兼ねて、都市内の依頼を探すことにした。


ーーーーーーーーーー


 ・E 住宅区 引っ越し 引っ越しの荷物運びと掃除 本日昼頃 二人 銀貨二枚

 ・E 住宅区 改装と修理 宿屋の改装と修理(数件) 本日 二人 銀貨二枚

 ・D 都市内 修理の手伝い 都市の内壁修理 本日から五日間 最大十人 一日銀貨五枚

 ・D 都市外 護衛と手伝い 都市の外壁修理をする人の護衛と手伝い 本日から五日間 最大十人 一日銀貨八枚


ーーーーーーーーーー


 改装と修理の依頼を受けたいが、自分のランクより下のランクになってしまうな。
 新人もいる訳だから、人数制限があって急ぎじゃないかぎり、自分より下のランクは受けない方がいいと、聞いたことあるし、どうしよう?

 これ以外で出来るのは、都市外になるものばかりだから、今日は依頼を諦めて、宿屋の散策をすることにして、ギルドを出て行く。

 まだアヴァランチェのマップが、埋まってない所があるので、そちらに行きながら宿を探す。
 先ずは余り行っていない、北東の住宅区に行くことにする。
 ギルドから大通りに出て、歩いて二時間くらいで、行ったことの無い場所に着いた。
 ここからは色々と、路地裏などを散策して行く。

 北西にある住宅区と大して変わらず、住宅以外に特に何もない。
 残念ながら民宿のような建物も見当たらなく、北側の方へと進んで行くと、貴族の館が近くなってきたのか、衛兵がちらほらと見かけるようになった。
 厄介事は面倒なので直ぐに離れて、今度は東門の方へと向かい歩く。

 暫く歩き【マップ】を見ると、住宅区の中心部辺りに居るのが分かった。
 やはり道は入り組んでいて、余程道に慣れていないと、確実に迷子になってしまうほどだ。
 北東の住宅区も、半分程度マッピング出来たので、そろそろギルドに戻ることにする。
 先ずは東の大通りに出てから、中央広場に行きギルド戻るのが最短だ。
 下手に入り組んだ道を行くより早い。

 それから俺は【マップ】を頼りに、東の大通りへ向かい歩いて行くと、何やら怪しげな話声が聞こえてきた。

「ほらお嬢ちゃん達、いい子にしてれば無事帰れるからな」

「そうだぞ! たっぷり身代金を取ったら帰してやるぞ」

「その前に遊んでやってもいいがな。ゲヘヘヘッ」

「嫌っ止めて!」

「お姉ちゃんに触らないで!」

 うわぁ~、聞きたくなかった。
 かと言って、このまま行く訳にも行かないし……

「こんな所を歩いてる、お嬢ちゃん達が悪いんだよ」

「観念しな。ウヒッヒッ」

「騒がれる前に、縛り上げて連れて行こうぜ。ゲヘヘッ」

「嫌っ……誰か……」

「誰も来ねぇさ!」

 声のする場所に着くと、三人の男達が、女の子二人を壁に追い詰め、逃げられないように囲んでいた。
 俺は後ろから静かに近付き、三人の男達を気絶させようと思ったら、一人の女の子が俺に気付いて声を出してしまった。

「お願い助けて下さい」

「あ? なんだテメー?」

「痛い目にあいたいのか!」

「見逃してやるからどっか行け。クズがゲヘ」

 クズはお前らだろ、まったく嫌になる。

「大柄の男三人が、女の子いじめて楽しいのか?」

「なんだと、お前らこの馬鹿をやっちまえ!」

「楽勝だぜ! ウヒヒ」

「余裕! ゲヘ」

 面倒だから、とっとと片付けてギルドに戻ろう。
 そう思っていると、二人が一斉に殴りかかって来たので、触れられる程度に近付いたら、無詠唱で〈ライトニングショット〉を最小限にして放つ。
 すると二人は、声を上げることなく倒れた。

 思ってた以上に弱かった。
 どうやらただのチンピラのようだ。
 とりあえず、死んではいないので良かった。

「テメー何しやがった! それ以上近付くと、このガキ共は……」

 こんな奴の話を最後まで聞く気はしないので、今度は無詠唱で〈ライトニングショット〉を持っていたナイフに放ち当て、手が痺れてナイフを落とした隙に、顔面を一発殴ってやった。

 気絶しそのまま倒れたので、捕まっていた二人の女の子を誘導してその場を離れた。
 大通りに近くに来て人が多いなってきたので、女の子達に話しかけた。

「大丈夫だった?」

「あ、ありがとう……ございました。私はだ、大丈夫です」

「ぼくも大丈夫です。ありがとうございました」

 んっ、ぼく? まだ少し動揺してるかな?

「二人共お家に帰れるかな? 送って行こうか?」

「大丈夫です。ここまで来れば直ぐに……」

「お嬢さまどこですか? お嬢さま~」

 なんだ? この辺りは迷子が多いのか? 

「お~い私達はここよー!」

「知り合い?」

「家の者達です」

「そうか。迎えが来たようで良かった。それじゃあ、俺はもう行くよ」

「はい。ありがとうございました。このお礼は必ず」

「たまたま通り掛かっただけだから、気にしなくていいよ。これからは人気の無い裏路地を、歩かないように!」

「はい!」

「気を付けます」

 俺は女の子達と別れ、大通りを中央広場の方へ歩いて行く。
 まあ、大して面倒事は起きず、子供達を助けることが出来たんだから良しとする。

 結局空いている宿屋を、見付けることが出来なかったので、今日もアレナリアの家に泊めてもらう。
 なので、ギルドに戻る前に、調理器具や食材の買い出しに行くことに決めた。

 あれこれ買っていたら遅くなってしまったので、ギルドに戻るのを止めて、アレナリアの家に戻ることにした。
 家に着くと、アレナリアはまだ戻ってきてないらしく、部屋は暗いままだった。
 仕方がないので、台所で食事の支度をしていると、入口の扉が開きアレナリアが帰ってきた。

「お帰りアレナリア。今晩も泊めてもらうよ」

「そんな言い方しなくて良いのよ。好きなだけいて構わないんだから」

「夕食は食べた? 大した料理じゃないけど……食べる?」

「カズが作ったんでしょ! 食べるわ。あのソースが使ってある料理かしら?」

「あのソース? マヨネーズのこと?」

「そうそれよ!」

「随分と気に入ったようだね。でも今回は使ってない」

「えぇー」

「えぇーって、また今度」

「絶対よ!」

「ハイハイ」

 そしてアレナリアと今日起きたことなど、他愛ない話をしながら食事する。

 食後互の部屋に行き、のんびりすることにした。
 ギルドに行く前に掃除したから、今日は貸してもらえる部屋で寝れる。
 これでアレナリアが何もしてこなければ、ここに住んでも良いと思い寝た。
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