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二章 アヴァランチェ編

57 商談 と 相談 と 昇格の話

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 今回の報酬で水晶が手に入ったので、俺はシャルヴィネさんの店とへ向かった。
 水晶の一部を渡して加工してもらい、前回買わなかった装飾品を、作ってもらえないか頼みに行く。

 依頼に出発する前日に行ったシャルヴィネの店に着き、今度は中に居る従業員に話しシャルヴィネが居るか聞いた。
 前回店に行ってから数日しかたっていないので、従業員もカズのことを覚えてたらしく、すんなりとオーナーのシャルヴィネを呼んでくれた。

「これはカズさん。今日はどうなさいましたか?」

「シャルヴィネさんに、ちょっとお願いがありまして」

「私にですか? 珍しいですね。一体なんでしょうか?」

「先日言った装飾品のことなんですが」

「ああ! なるほど。ここでは何ですから、こちらへどうぞ」

 そう言われシャルヴィネに案内されたのは、商談用に使ってる個室だった。

「どうぞお掛けください。それて詳しくはどういった物をお探しで?」

「お探しという物じゃなくて、こちらを加工して作ってもらえないかと、相談にうかがったんですが」

 俺は持っている水晶を机の上に出した。
 小さい水晶3つと、拳大を2つを出した。
 小さい水晶は透き通っているが、拳大の水晶2つは、傷があり少し濁っている。

「こちらの小さい水晶を使って『指輪 ネックレス ブレスレット』を作りたくて、それでシャルヴィネさんに頼もうかと思いまして」

「頼ってもらえて嬉しいです。ありがとうございます」

「それに以前山脈の洞窟に行くと言った時に、水晶のことを知っていそうな感じだったので、シャルヴィネさんの所に持ってきたんです」 

「予測はしてましたが、実際に持ってこられるとは思ってませんでした」

「そうなんですか? ご迷惑でしたか?」

「とんでもない。依頼などで採掘した水晶は、殆どの方が冒険者ギルドで買い取ってもらう為に、原石状態で私たち商売人の所に来ることは、滅多に無いので有り難いです。カズさんは買い取ってもらわなかったんでか?」

「報酬の一部を、現物でもらったんです」

「なるほど。それでは拝見させてもらいます」

 シャルヴィネは水晶を手に取り、じっくりと見はじめた。

「なるほど。こちらの3つの方がより良い水晶ですが、小さくて使い道が少なく、こちらの水晶2つは、傷があり少し濁ってはいるが、大きくて加工しやすいですね。それに傷は研磨してしまえば、消えてしまう程度なので問題ないでしょう」

「それでどうですか?」

「良いでしょう。装飾品に使うなら小さい3つも欲しいところですが、こちらの2つを報酬としていただけるなら、おまかせ下さい」

「そうですか。それじゃお願いします」

「以前に言っていた、女性へのプレゼントですね」

「まあ、お世話になったお礼なんですけど」

「それで水晶に何か【付与(エンチャント)】はされますか?」

「いえ、それはこちらでやりますので」

「分かりました。それでは……七日後に、またこの店に来てください。それまでには用意しておきますので」

「分かりました、よろしくお願いします。それと防寒対策のことを教えていただき、ありがとうございました。とても役に立ちました」

「それは良かったです。また何かあればいつでも言って下さい。私で出来ることでしたら、お力になりますので」

「重ねがさね、ありがとうございます」

「くくくっ……」

「んっ? シャルヴィネさんなんですか?」

「いや失礼。カズさんは変わらないと思いまして」

「どういうことですか?」

「人は、と言うか冒険者の方はどうしても、強くなったりランクが上がると、他人を格下と見て威張る方が多いんですよ」

 以前にも同じようなこと言われたような……まあいいか。

「この大都市でも、そう言ったことがあるんですか?」

「数は少ないですが。酷い方は乱暴をする者もいますから」

「冒険者ギルドに報告したりは?」

「殆どは仕返しが怖くて、冒険者ギルドにも衛兵にも報告しないんです。護衛を雇うにしても、どこも金銭的に厳しいですから」

「そうなんですか……お役に立てなくてすいません」

「そんなカズさんが、謝ることじゃないですよ。私こそ余計なことを言ったようで」




 《 時は少し前、カズが冒険者ギルドを出て行った後の一室…… 》


「いやぁ、カズ君が怒るとは思わなかったな」

「ロウカスクがカズに経験させる為だから、黙っていろと言うからそうしたのに、怒られてしまったじゃないか!」

「アレナリアだって『カズの為になるなら』とか言って承諾したじゃないか」

「う、うるさい! これで嫌われたら……話せる相手がまた一人……」

「大丈夫だろ! アレナリアがしょんぼりしてたら、反省してると思って慰めてくれたじゃないか。頼み事もしたいと言ってたしな。その代わりに、全部オレが悪いことになってるけどよ!」

「ロウカスクが悪いのは当然だ! お前は本当に反省しろよ!」

「アレナリアまで酷いな。しかし一回パーティーを組んだだけなのに、あんなに心配するもんかね?」

「カズは優しいのよ」

「それに冒険者なんだから危険は付きものだと、ポピー達三人に教えるつもりで、無茶な依頼を黙ってやらせたんだがな」

「それを最初からカズにも、言っておけばよかったのよ」

「カズ君にも、急な状況変化を対応させる訓練になると思って、教えなかったんだかな。まさか予想外に、スノーウルフの群れと会うとはな」

「今回は、その予想外を乗り越えたんだから、十分でしょ」

「そうだな。カズ君をCランクにする手続きをしないとな」

「ポピーの話を聞いた限りでは、スノーウルフの群れを、アッサリと一人で倒おす力があるとか言ってたわね。段々とカズの実力も知れ渡ってきてるし、Bランクでも良いでしょうよ」

「一応順序があるからさ。カズ君だって、あんまり目立ちたくもないだろうし」

「それもそうね。でもスノーウルフって、群れのボスクラスになると、四人以上のCランクパーティーが、なんとか倒せるモンスターよね」

「そうだが、それがどうした?」

「カズはそれをアッサリと倒したって言ってたけど、武器を使ったのか、それとも魔法かスキルなのかしら? しかも本当の実力を隠しながら戦ったのよね……気になるわ」

「まあ、あのステータスだから倒せるのは当然だとは思うが、目立たないように戦うのは確かに気になる。そう言えばカズ君の実戦は見たこと無いな」

「あと気になるのは、ポピー達三人に使った回復薬よ。売っている物より飲みやすいとか、効果が良いとか言ってたけど、どうなのかしら?」

「それも踏まえて、カズ君には色々と聞いて見る必要がありそうだな」

「あんまり突っ込んだ質問は、ロウカスクお前がしろよ! 私は嫌われたくないから」

「酷いなアレナリア。オレなら嫌われて良いと言うのか!?」

「そうよ。ロウカスクが嫌われようが、私は全然構わないわ」




 《 そして時は、カズがシャルヴィネの店を出て後…… 》


 さてと、これで装飾品の件は何とかなりそうだから、あとは住む場所だな。
  う~ん……使ってない部屋があるとか言ってたから、やっぱりアレナリアに頼むしかないか。
 でもずっと断ってから、今さらお願いするのは図々しいよなぁ。
 アレナリアの住んでる所は、以前にギルマスが酔った勢いで連れてかれたから場所は分かるんだけど……夕暮れまで探して見付からなかったら頼んでみるよう!

 この後幾つかの宿屋をまわったが、やはりどこも空いてはいなかった。
 仕方がないので、ギルドに戻りアレナリアに頼む事にした。
 さすがに何も持たずに行くのは悪いので、夕食の材料を買って行き、何か作ってあげようと思う。(空き部屋に住まわせてもらえればの話だが)

 買い物を終え夕方にはギルドに戻った。
 受付嬢のスカレッタに、アレナリアが居るか聞くことにした。

「あらカズさん。依頼の報告ですか?」

「まあ報酬の受け取りもあるんですけど、サブマスってまだ居ますか?」

「サブマスですか、えーと今日はまだ帰ってませんから、ギルマスの部屋か資料室にに居ると思いますがご用事ですか?」

「ええ、昨日まで行っていた依頼の話と、報酬の受け取りなどで……」

「ああっ! 水晶の採掘依頼ですか」

「まぁそうですね」

「部屋は分かりますよね。どうぞ行ってください」

「はい。どうも」

 いつもと同じで、直ぐにギルマスの部屋に通してくれる。
 周りのギルド職員も、俺がギルマスの部屋に行くのを、見慣れた感じでいる。
 毎回思うが、こんなアッサリ通して良いもんなのか? 
 ずっとアレナリアに色々と教えてもらう為に、ギルドの資料室に行ってたからかな?
 防犯上それで大丈夫なんだろうか? まあ、今さら言ってもしょうがないけど。

 先に資料室を見に行ったが誰もいなく、そのままギルマスの部屋に行く。
 ノックをして中に入ると、ギルマスとアレナリアがいたが、ギルマスは丁度帰るとこだったらしい。

「カズ君戻ってきたのか。今日はもう来ないかと思って、オレは帰えろうと思ったんだがな」

「報酬をもらってませんし、それと……」

「ああ報酬か、今日は来ないと思って、用意してなかった。明日でいいか」

「そうですか。構いませんよ」

「それじゃあオレは、愛する家族のもとに帰るから、また明日な」

「そうですか。お疲れ様です」

 まだ夕方なのに、定時帰るお役人かよっ! 冒険者ギルドの代表がそれで良いのか? 
 ……まあいい、今はアレナリアに住む場所を頼まないと……言いづらい。
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