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二章 アヴァランチェ編

54 戦闘 と 安堵

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「カズさんどうしよう! 二人が……」

「大丈夫だから落ちてポピー。ボルタ、ワットいいか、落ち着いてゆっくりと大きく深呼吸するんだ」

「ポピーも同じように深呼吸して」

 俺は直ぐに魔力を変換させ、風を起こし入口から新鮮な空気を洞窟内に取り込む。
 最初は風魔法を使おうと思ったが、威力があり洞窟が崩れる可能性があるから、魔力変換で風を生み出す方にした。
 
 三人は言われた通り、ゆっくりと深呼吸した。
 暫くすると、ボルタとワットの荒かった息づかいも正常に戻った。

「もう大丈夫のようだな」

「二人共いったい何があったの?」

「気が付いたら、息が苦しくなってきたんだ」

「オイラ達は、なんにもしてないぞ」

「洞窟に、空気の流れが無かったから、酸素が足りなくなってしまったんだな。二人は興奮して息が荒くなってろ、だから余計に苦しくなったんだよ」

「空気の流れが無くて酸素が足りない? そんなことがあるの?」

「こういう洞窟の奥だと、こういったこともあるから、少しでも空気が流れて無い場所は、気を付けた方がいい。三人共覚えておくこと!」

 一休みして、二人の顔色も良くなったので、水晶採掘の続きをする。
 休んだ場所から歩いて直ぐの所に、ポピーがサーチの魔法で、水晶を感知した場所がある。
 四人でそこへ行くと、さっき居た場所と同じぐらいの空間があり、そこには手付かずの水晶が幾つもあった。

「やったぜ。デカイ水晶があるぞ!」

「これだけあれば選び放題です!」

「ちょっと二人とも興奮し過ぎよ、今まであったことを、忘れた訳じゃ無いわよね!」

「そうだった!」

「分かってますとも」

「しっかりしてよね!」

「それじゃあ、各自好きな水晶を選んで採掘しようか。ただし壁が崩れそうな場所にある、危険な水晶は避けるように! あと採り過ぎは駄目だから!」

「おう!」

「分かりました」

「はーい!」

「三人はそれぞれ、好きな水晶を見付けて堀始めた」

 さてと、俺は鑑定しながら、良さそうな水晶を探して採掘するか!
 採掘をしてから小一時間、各々が持っている布袋から水晶を出し見せあっている。
 そろそろ良さそうなので、採掘を終えるこのにした。

「みんな終わりして、そろそろ洞窟を出ようか」

「まだ採りたいけど……オイラはいいぞ」

「ボクもこれで良いです」

「私も満足だわ」

「俺がギルドに帰るまで、預かっておくよ。それで今採掘した水晶は、各自の物にするかい? それとも最後に均等に分けるかい?」

「せっかくですし、各自採掘した物は、自分の物にしませんか!」

「オイラもそれが良いな!」

「私はどっちでも良いけど、二人が言うならそれでも良いわよ」

「なら決まりだ! 各自の袋を、そのまま預かるよ。そうすれば混ざることもないから」

「それじゃあ、カズさんお願いします」

「ギルドまでよろしく」

「頼んだぜ」

 三人から水晶の入った布袋を預かり【アイテムボックス】に入れる。
 アイテムボックス中身を表示したリストには、しっかりと布袋ごと別々に入っていた。
 依頼の目的である水晶の採掘を無事終えたので、洞窟を出てることにした。

 洞窟を出た頃には、日が頂点に差し掛かり、昼頃だと分かったか。
 そこで軽く昼食を食べてから、下山するこもにした。

 【マップ】を見ていて分かったが、昨日確認した生き物が、こちらに近付いて来ている。
 さて三人は、気付くことができるかな?

 昼食を済ませて、来た道を戻り下山を始める。
 三人は生き物の存在には、まだ気が付いて無いようだ。
 そして急斜面に差し掛かった時に、背後から鳴き声が聞こえて、みんながさっきまで居た方を振り向いた。
 最初鳴き声に気付き、声を出したのは、俺の前を歩いていたボルタだった。

「後ろから何か来るぞ!」

「ここだと急で足場が悪いから、早く進もう!」

「ワット気を付けて行って! ここを抜けたら、なだらかな場所に出るはすだから!」

「ポピーも一緒に行くんだ!」

「ボルタとカズさんは、どうするのよ?」

「オイラとカズの二人で、時間稼ぎをする! 良いよなカズ!」

「ああ任せろ」

 その時に後方から現れたのは『スノーウルフ』の群れだった。
 数は十匹で、その内一匹は他より一回り大きく、おそらく群のボスと思われる。

「スノーウルフだ! 二人共急げ!」

 ボルタが大声で、現れた生き物のことを二人に伝えた。
 スノーウルフは一定の距離をおき、直ぐには襲ってこない。
 ゆっくりと囲むようにして、近付いて来る。

「ボルタも二人を追って、先に行くんだ!」

 ポピーとワットが急斜面を下りきるのを【マップ】で見て分かっていたので、俺はボルタに行くように言った。 
 なぜなら、下からもスノーウルフが来ているのが分かったからだ。

「カズ一人で大丈夫なのか?」

「ああ。だから行け! じゃないと……」

「うわぁ!」

「きゃあ!」

「遅かったか!」

「なんだ! どうした二人共!」

「こっちにもスノーウルフが居るんだ!」

 ボルタは急いで二人の元に向かうが、急斜面のせいで、中々たどり着けないでいる。 
 するとボスのスノーウルフが、大きく吠えた。
 それを合図に、他のスノーウルフが一斉に動き出した。
 下には四匹で、俺の居る上には六匹いる。
 その内ボス以外のスノーウルフ五匹が、俺に襲いかかってきた。

 ポピーは魔法で先制して、スノーウルフを近付けないようにし、ワットは近くに来たスノーウルフを盾で凌ぎながら、隙を見て剣で攻撃をしようとしている。
 しかし二対四では、守るだけで精一杯のようだ。

 なんとか耐えていると、ボルタが二人の元に着き、体制を立て直して、攻撃が出来るようになってきた。

 俺は襲ってきた五匹のスノーウルフに対して、無詠唱で〈ライトニングショット〉で攻撃して、一度に五匹を気絶させた。
 そして離れた所に居る、ボスのスノーウルフに対しては、にらみ付けて、スキルの《威圧2》を放った。(ちなみに《威圧1》が、並みのEランク冒険者なら、気絶させられるぐらいだ)

 これで引き下がってくれれば、良いんだが……

 するとボスのスノーウルフが、ひと吠えして、真っ直ぐに俺の方に向かってきた。
 どうやら引き下がる気は無いようなので、仕方がないく襲ってきたボスのスノーウルフに対して、威力を加減した〈ライトニングボルト〉を脳天に撃ち込んだ!

 先程までとは違う威力の攻撃に、避けるどころか、声を上げることも無く、ボスのスノーウルフは倒れた。

 あまいと思うが、気絶している他のスノーウルフはそのままにして、倒したボスは【アイテムボックス】に入れて、直ぐに三人の元に向かう。

 ポピー、ボルタ、ワットの三人は、いつものように連携を生かした戦闘で、一匹のスノーウルフを倒すことが出来たが、慣れない山での戦闘で、疲れ動きが鈍くなっている。

「平地とは違って、これはキツイぜ!」

「只でさえ一匹を相手にするのもキツイのに、この数を一度に相手にするのは、ちょっと無理じゃないですか」

「ボルタもワットも弱音を吐いてないで、なんとか切り抜ける方法を考えてよ! 向こうでは、カズさんが一人で戦ってるんでしょ!」

「そうだけど……」

「分かってますが……」

 三人の動きが止まった瞬間に、三匹のスノーウルフが一斉に襲い掛かった。 
 対処も間に合わず、三人は自分の未熟なことを悔やんだ。

「クソー!」

「しまった!」

「キャー!」

 三人がやられると思った瞬間、三匹のスノーウルフがバタバタと倒れた。

「な、なんだ?」

「どうなってるの?」

「た、助かった……の?」

 俺は離れた所から、三匹のスノーウルフが飛び掛かった瞬間に〈ライトニングショット〉を放ち気絶させた。

「三人共とりあえず無事だな!」

 三人の元に着くと、目の前で三匹のスノーウルフが倒れたのを見て、気が抜けたのか、三人共その場に座り込んでしまった。

「オイラ生きてる?」

「ボク達、助かったんですか?」

「ボルタ、ワット大丈夫か? ポピーは……」

「う……うえぇ~ん……怖かったよ~! もう、駄目かと思ったよ~!」

 ボルタとワットは、倒れたスノーウルフを見て、生きてることが、信じらないような顔をしている。
 それとは違い、緊張の糸が切れたポピーは、思ったことを言葉にして、泣きじゃくっていた。 
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