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二章 アヴァランチェ編

52 準備不足 で 頼りないパーティーメンバー

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 焚き火をする為に、辺りで枯枝を探したが、あまり見つから無かったので、俺が以前に木材加工場からもらっておいた廃材を【アイテムボックス】から出し、それで焚き火をすることにした。

 その廃材の木に、ワットがソーサリーカードを使い火をつけた。
 夜になって一段と気温が下がり寒くなってきたので、みんなで食事をすることにした。

 昼食は、朝に都市で買ってきたパンを食べたが、現地調達出来ないような場所で、三人はいったい何を食べるんだろう?
 見ていると三人共に出したのは、冒険者がよく持ち歩く、携帯食と言えるような干し肉に、乾パンのような食べ物だった。

 飲み物は、ワットが持っている小さな鍋に、近くで流れていた雪解け水を入れ、火にかけ沸騰させてから、乾燥させたハーブを入れて、ハーブティーを作っていた。
 爽やかな香りが、疲れをとってくれそうだ。

 明るいうちに休む場所を決めていれば、辺りを散策して食料になる物を探せたかも知れないが、今言っても仕方がないので黙っておく。
 三人にとって、こういった事も経験として学ぶには良いだろう! うんうん。
 って、なぜ俺が保護者みたいになってるんだ!

「みんなの防寒着は、今着ている物だけ?」

「そうよ。試着したとき暖かかったから、これにしたんだけど、少し寒いかも」

 ポピーだけじゃなく、ボルタとワットも少し震えているようだ。

「平地ならそれでも良かったかも知れないけど、雪が残る山だと薄過ぎだね」

「本当ね。店の人に、雪山でも大丈夫な物を聞けば良かったわ」

「まったくだ!」

「今さら言っても遅いけど」

 こんな事もあろうかと、念の為に人数分の毛布を買っておいて良かったよ。
 山には雪が残っていて冷えるから、毛布を持っていった方が良いと、シャルヴィネさんに教えてもらったんだが。
 シャルヴィネさんには感謝しないとな。
 そう思い返しながら【アイテムボックス】から毛布を取り出し、三人に渡した。

「はい、これ使って。汗かいたから余計に寒いでしょ」

「ありがとうカズさん!」

「感謝!感謝!」

「ありがとうございます」

「あとは、これを……」

 焚き火の所に、石で土台を作り、そこに【アイテムボックス】から鍋を出して置く。
 鍋の中身は、牛乳を使った温かいクリームシチューが入っている。
 これは昨日食料の買い出しの時に、持っていった鍋に入れて、売ってもらった物だ。
 アイテムボックス内は、時間が止まっているので、温めなくても良いのだが、直ぐに冷めてしまいそうなので、常に火で温めておく。(焦げないように注意して)
 あとは木で出来たスプーンと器を、人数分取り出し、みんなにシチューを配った。

「これ食べて暖まってから休もう」

「うそ!? シチューよ!」

「旨そうな匂いだ!」

「食べて良いんですか?」

「まだ一日目なのに、ここで体調悪くしたら、翌朝アヴァランチェに帰ることになるよ。良いから食べて暖まること!」

 三人はよほどお腹が空いていたのか、勢い良く食べ始めた。

「美味しい! 暖まるわ!」

「うめぇ~最高だぜ!」

「本当にこれは、生き返りますね!」

「それは良かった。焦らずにゆっくり食べれば良い」

 三人は、お代わりをするほど、美味しそうに食べていた。
 食べ終わった三人は、さっきまでの暗い顔付きと違い、顔には生気が戻っていた。
 食事を終えたので、鍋と食器を【アイテムボックス】に入れた。
 あとは休むだけだが、一人は見張りとして起きてないといけないが、さぁどうする? 誰か言ってくるかな? 

「腹いっぱいで眠くなってきたぜ」

「それじゃあ最初は、ボクが見張りとして起きてますから、みんなは休んでください」

「ちょっと待って、ワットはずっと警戒しながら、先頭を歩いてたから疲れたでしょ。だから最初は、私が見張りに起きてるわ」

「そう。それじゃお願い。焚き火も消えないように見てて」

「分かってるわ。眠くなってきたら起こすから、交代して順番に見張りね。カズさんもそれで良いかしら?」

「ああ構わない。でも最初で良いの?」

「任せてください。毛布があって暖かいし、シチューも食べたから大丈夫です!」

「それならよろしく」 

 ポピー一人を、見張りとして起こしておき、他は休むことになった。

 俺もこれで一息つけるかな。 
 眠りが浅く暫くして目が覚めたら、見張りのポピーも寝てしまっていた。

「お~いポピー……駄目か。ワット……ボルタ……」

 疲れていたのか誰も起きない。
 仕方がないので、俺が見張り役をする。
 どれどれ【マップ】にも生き物の表示されないし【気配感知】にも反応がないから大丈夫だろう。 
 ロウカスクさんとアレナリアはこうなることがわかっていて、俺を今回このパーティーに入れたのかな?
 今夜は徹夜になるか、さて朝まで何かするかな……


 ◇◆◇◆◇


 ポピー、ボルタ、ワットの三人共起きずに、結局このまま夜が明け、朝をむかえた。

「ふぁ~良く寝たわ。ボルタ、ワット朝よ」

「ん~? おはよう」

「もう朝? オイラずっと寝てたな」

「みんな良く寝てたよ。体調はどうだ?」

「あっ! カズさんおはよう。毛布があったから寒く無かった。お陰で良く寝れたわ」

「ボクも」

「オイラも」

「……えっ? 私の次は、誰が見張りしてたの? ボルタはずっと寝てたって」

「ボク起こされなかった」

「あれ? 昨日私が最初に見張りするって言って起きてて……!? あの直ぐ後に寝ちゃったんだ!」

「じゃあ、カズさんが一人で見張りしててくれたの?」

「みんな慣れない山道で、疲れたんでしょ。ぐっすり寝てたよ」

「ごめんなさい。言い出した私が寝ちゃって」

「ボクも起きなくて、すいません」

「オ、オイラも……」

「良いさ。俺が一番疲れてなかったから」

 俺は【アイテムボックス】に毛布を入れて、そのまま人数分のパンを取り出して、みんなに渡した。

「これでも食べて出発しよう」

「ありがとう。飲み物はボクが用意します」

 昨夜と同じように、ワットが雪解け水を小さな鍋に入れ火に掛け、ハーブティーを作った。

 軽い朝食をすませて、四人は目的地の洞窟へ向かい歩き出す。
 山道を歩き数十分した頃に、地図に書いてある洞窟付近に来たが、それらしき穴は見あたらない。

「この辺りなのか?」

「たぶんそうだと思うけど……」

「とりあえず、みんなで手分けして辺りを探して見ましょうよ。カズさんも良いですね」

「分かった」

 俺は、だいたいの場所は分かるが、ここは三人に任せてみよう。

「こっちは無いですね」

「私の方も、それっぽい穴は無いわ。ボルタはどう? ボルタ聞こえてる?」

「みんな来てくれ! それっぽい場所を見付けたぞ!」

 その呼び掛けに、全員がボルタの所へ集まる。

「この岩の向こうに、洞窟があるみたいなんだ!」

「この岩って……」

「どうやらかなり前に、崩れて落ちてきたみたいですね」

「良かったわねワット! 昨日無理して進まなくて」

「それを今言いますか。分かってます、皆さんお陰で迷わずにすみましたよ!」

「えっへん。分かればよろしい!」

「ポピーにワット、そんなこと言ってないで、この岩どうするかでしょ」

「それならオイラがやるぞ! みんなは離れていてくれ!」

 そう言うとボルタが大剣を持ち、スキルを使い、岩に向かって攻撃した。

「見てろよ! 《筋力強化》《斬撃強化》くらえ《バスターブレイク》」

 筋力と斬撃の強化に加えて、大剣攻撃スキルを発動させて岩へ一撃!
 当てた場所は見事に破壊されたが、せいぜい小さい子供が、しゃがんで入れる程の大きさにしかなっていない。

「今度は私がやるわ! 〈ウォーターカッター〉」

 ボルタが破壊した場所から、さらにポピーの水魔法で岩を切断し広げて、入口を作ろうとしている。
 がしかし、50㎝も切れ目が入らないうちに、魔法が終ってしまった。

「この岩固いわ」

「ボクの持ってるカードに、この岩を壊せるような物は無いです」

「仕方がないわ。地道に少しずつ入口を広げていきましょう」

 これはまた時間が掛かりそうだな。
 仕方がないか。

「俺がやろうか!」

「カズさんばかりに頼っては申し訳ないです! ここは私達がやります」

 意気込みは良いんだけど、時間がな……それに、遠くの方から、何かがこちらに、向かって来てるみたいなんだよな。

「今回だけとは言え、パーティーを組んでるんだから、頼ってくれても良いんだよ」

「でもそんな甘えてばかりじゃ……ねぇ」

 ポピーの言葉に、ボルタとワットも申し訳なさそうに頷いていた。

「時間が掛かるより良いでしょ!」

 三人共互いの顔を見て、そのあとポピー代表して言ってきた。

「分かりました。お願いします」

「ああ」

「大変ですから、みんなで交代でやりましょう!」

 ポピーがそう言ってくれるのは良いんだけと、もしかしたら戦闘になるかも知れないから、今疲れたら後が大変なんだよ。
 さてと、ポピーと同じ魔法を使うか。
 三人が居るから無詠唱はやめておいて、威力にも気付けないと。

「それじゃあ、三人共離れてて〈ウォーターカッター〉」
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