人生初めての旅先が異世界でした!? ~ 元の世界へ帰る方法探して異世界めぐり、家に帰るまでが旅行です。~(仮)

葵セナ

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二章 アヴァランチェ編

50 付与 と 試作 と パーティーの出発日

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 ギルマスが解散させて、四人の顔合わせは終わった。
 カズ以外の冒険者三人は、明日から出立する為の支度と、買い出しをする為に、ギルドを出ていった。

 俺は宿に戻ろうかとしたが、ロウカスクに呼び止められ、ギルマスの部屋に移動した。

「それでカズ君、あの三人はどうだった?」

「どうと言うと?」

「三人のステータスは、見なかったのか?」

「ギルドの方で選んだんですから、依頼を遂行出来るだけの実力があると判断したんでしょう。だから詳しくは見てませんよ」

「なんだそうなのか」

「何か問題でも?」

「いや、とりあえず出発前には、三人のステータスは確認しといた方が良いぞ!」

「……分かりました」

「カズ、あの三人をよろしくね」

「アレナリアが、他の人を心配するなんて珍しいね」

「別に、ただポピーって娘には、何度か魔法の使い方を教えてあげたことがあってね。ただそれだけよ」

「ふ~ん」

「な、何よ」

「優しいね」

「そ、そんなんじゃないわよ!」

「そういうことにしとくよ」

 からかったら、照れて顔をフードで隠すアレナリアを見たら、少し可愛く思えてきた。
 話も終わったので、宿に戻ることにした。(あれ、買い物したあと、なんでギルドに戻って来たんだっけ? まいっか)

 ギルドから宿に戻り、晩の食事まで時間がかなりあるので、試しで買った指輪とブレスレットに、何か魔法を『付与(エンチャント』してみようと思う。

 指輪にはイビツな形で、ヒビが入り濁った色の、小さな水晶玉が一つ付いている。
 魔法どころか、魔力を込めただけで、弾け飛んでしまいそうだ。

 ブレスレットには、小さな六角形の水晶が一つ付いている。
 とりあえず指輪の方に、付与出来るか試してみる。
 やり方は、ソーサリーカードを作っている所を見に行った時に、何故か一人だけ魔道具に、魔法を付与していたので分かった。

 おそらくは、あそこで使いっている魔道具に、何かの魔法を、付与してたんだろう。
 俺にとっては一石二鳥だった。
 物は試しとばかりに、さっそくやってみることにした。
 初めての為、危険がないように、クリアの魔法を、付与してみる。

 指輪を右手に持ち軽く握り、指輪に魔法が込められるように、想像し言葉にする。

「《エンチャント》〈クリア〉」

 持っていた指輪の水晶に、魔法が吸収されていくのが解った。
 指輪を鑑定してみると『付与 クリア』と表示されたので、上手くいったようだ。
 付与の方法は、思ったより簡単だった。

 試しに直ぐ使用してみるが、問題なく使えた。
 ただし物が物だけに、一回分しか付与出来ないらしく、再度使用するには、新たに魔法を、付与する必要があるようだ。
 指輪も水晶自体も、消滅はしていないが、使えてもせいぜい数回が限度だろうと感じた。

 ソーサリーカードを作っている所を見たが【魔道具生産】と【錬金術】【合成】【調合】などスキルを使い、魔法が込められていないソーサリーカードを作っていた。
 あとは付与のスキルを使い、魔法をカードに込めていたな。(あの場所で作っていた人達の場合は)

 俺の場合は、全魔法&スキル会得があり万物ノ眼で、鑑定や分析したので出来ると思った。
 なので早速ソーサリーカードを作るのに、挑戦してみることにした。
 こちらも危険が無いように、クリアの魔法を込めたカードを作ることにする。

 材料は少し前に、依頼で行った木材加工場でもらっておいた、廃材の小さいな木板を使うことにする。

 まずは魔法が込められていない状態のカードを作る為に、木板と魔力が一体となるように想像して魔力を流す。
 これで合成されていれば良し。
 そして次にクリアの魔法を込める為に、魔力を調節して付与をしてみる。

 すると木板の二ヶ所に色が付き、魔力を流す所と、効果を発揮される所が分かるようになった。
 初めて使った時の、ソーサリーカードを思い出して作った為に、完成した状態の物も、使用者に分かりやすいように、色分けされて出来た。
 出来上がったソーサリーカードを、鑑定してみる。


 『等級:ノーマル《水属性》〈クリア〉』と表示されたので、どうやら成功したようだ。
 初めて回復薬を作った時に、上手くいったと油断して失敗したことを思い出して、同じことを繰り返さないように、気を付けたから上手くいったんだろう。


 今回のことで解ったのは、水晶などのアイテムに、付与するだけならまだ簡単だが、ソーサリーカードを作るには、色々とスキルや経験が必要で、大変だと思えた。
 これだけ知識やスキルなどが必要なら、ソーサリーカードを作っている場所を、秘密にするのは当然だと思う。

 しかし、俺がこうもあっさり作ってしまっては、申し訳ないように思えてくる。
 自作したことを、秘密にした方がいいかな……?

 でもこれで、異世界転移(転生)のお約束で、あることが切っ掛けで、大金を手に入れる手段が分かりラッキー! これで異世界満喫!
 的なことが……起きる訳ないんだよなぁ。

 『魔鉄鉱石』とか見付けて、希少物を確保出来たと思ったら、あれ以降そういった物は見付からないし……

 元の世界に帰る為の情報も、まだ分からないし、こちらの世界でも、地道に節約して、生活するしかないのか……

 でも付与も出来るようになったし、ソーサリーカードの作り方も分かったからから、これで少しは財布の中が暖かくなってくれたら、良いんだけどな。 

 う~ん……作ったカードを勝手に売っちゃったら……やっぱり不味いかな? ダメだよな!?
 今回の依頼が終わるまで、保留にしておこう。

「……ズ……カズ!」

「んっ? は、はいっ!」

「起きてるじゃないか。さっきから飯が出来たって呼んでるのにさ」

「ごめんなさい。ちょっと考え事してたもんで。今行きます」

 ノシャックに呼ばれてたのに気付かないとは、集中するのも問題だと思った。
 食事をすませて部屋に戻り、日課の魔力操作の練習をしてから寝る。


 ◇◆◇◆◇


 今日は朝からいい天気だ!  遠出の依頼には、いい日和だ。
 初のパーティーを組んでの依頼に、少し緊張。
 人見知りの俺が、こっちの世界に来てからは、色々な人と積極的に関わってきたが、これもステータスが、影響しているんだろうか?
 なんとか、今のところは上手く暮らしていけてる……と思う。

 いつもと変わらないが、身支度を整えて、集合場所の冒険者ギルドに向かう。
 取りあえず、今日から一緒に行く三人のステータスを、確認しておくことにする。
 昨日ロウカスクさんと、アレナリアにも言われたしな。
 何も起こらなければいいが。

 ギルドに着き、昨日居た部屋に行くが、三人はまだ来ていない。
 部屋には、アレナリアが一人で居た。 

「おはよう。アレナリア」

「おはよう。カズ」

「あの三人は、まだ来てないようだね」

「そろそろ来る頃でしょ。カズはパーティー組むの初めてなんでしょ?」

「そうだけど、それがどうかしたの?」

「カズの初めては、私がなりたかったのに!」

「なっ! ちょ、ちょっとアレナリア言い方!」

「えっ? ……や、やだ……変な意味じゃないからね! パーティーメンバーにってことよ!」

「わ、わかってるよ」

 まったく、いつもは『部屋なら空いてるから、いつでも住みに来て良いから』と言っているのに、無意識でああいうことを言うと、直ぐに顔がピンク色になる。
 でも、恥ずかしがっているアレナリアを久し振りに見てると、ほんわかするな。
 今日一日、良いことがあるかもと思った。

 その時部屋の扉が開き、今日から一緒に行く三人の冒険者が入ってきた。
 アレナリアは壁の方を向いて、急いでフードをかぶり顔を隠す。

 「おはようカズさん。もう来てたんだね」

 最初に挨拶をしてきてのは、女性のポピーだ。

「悪い遅れたか?」

「そんなことは、ないでしょ」

 続いてボルタとワットが部屋に入ってきた。

「やぁおはよう。今日からよろしく」

「今回依頼を受ける全員が揃ったところで、私から目的地までの地図を渡す」

「ギルドマスターは、居ないんですか?」

「ロウカスクは、他の用事が入ったので、私から地図を渡し、簡単な説明をすることになっている。そう言う訳だ、わかったかポピー!」

「はい分かりました。サブ・マスター」

  アレナリアのキリッとした対応見ることないから、出来る秘書って感じで、なんか良いなぁ。

「カズ! 何をニヤついている!」

「すいません。なんでもないです」

「説明を始める。これから皆には、北の山脈ある洞窟に、水晶を採掘に行ってもらう。都市の西門から出て、川を上流に向かい、あとは地図の通りに行けば、洞窟があるはずだ」

「あるはずだって、わからないのか?」

「以前に水晶の採掘依頼があったのは、かなり前のことになるから、落石などで地形が変わっている可能性もあると言うことよ」

「じゃあ地図が正しいとは、限らないんですか?」

「多少地形が変わっていたとしても、その場で判断して行動出来なければ、所詮は甘ったれの未熟者だということよ。分かったかしら、ボルタにワット!」

「お、おう」

「は、はい」

「報酬は昨日聞いての通りで、水晶の一部か、それ相応の買い取り金額よ。この結果次第であなた達は、Cランクに昇格する可能性もあるから、気を引き締めなさい。なお地図は、依頼終了後ギルドに返却すること!」

 三人は、Cランクと言う言葉で緊張とともに、高揚もしていた。

「さぁ説明は終わりよ。急いで行けば、夜には洞窟付近に着くはずよ」

「分かりました。私たち出発します」

「それじゃあポピー、ボルタ、ワットの三人は、受付に依頼書を受け取りに行きなさい。カズには荷物持ちとしての注意をしておくわ。直ぐ終るから、三人は入口で待っていてあげなさい」

 話が終わりカズ以外の三人は、アレナリアに言われた通り、受付に依頼書を受け取る為に、部屋を出て行った。
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