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二章 アヴァランチェ編

44 採掘作業 と 鍛治屋組合

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 ◇◆◇◆◇


 今日は夜明け前に起きた。(よく起きれたと自分でも感心した)
 昨日受けた、鉱石調達の依頼をするので、川の上流に向けて宿屋を出発する。
 まだ薄暗いこともあり、大通りでも人は殆どいない。
 西門までは距離があるが、通りに人がいない為、走る速度を上げる。
 走って大通りを進むことおよそ数十分、ようやく西門の近くにやって来た。

 都市から出る為に、眠そうにしている衛兵に、ギルドカードを提示して西門を出る。
 外壁の直ぐ横を流れている川に沿って、上流へ向かい歩き進む。

 朝から何も食べていない為に、さすがにお腹が空いてきたので、前日に買っておいたパンを【アイテムボックス】から出して食べ歩く。
 西門を出てから暫くすると、足場が悪い山道になり、川幅も狭くなってきた。
 きのう受付嬢のルグルに渡された、調達する素材の特徴を書いた紙を見て、似たような物を探しながら、川の上流へ進む。

 すると山脈の岩場に、特徴と合致する物を見付け分析してみると、一部分が『鉄鉱石』と表示された。
 直ぐに採取してみようとするが、ハンマーなどの、岩を砕く道具を持っていないことに気が付いた。
 仕方がないので、スキルの《肉体強化》と《筋力強化》を使い岩を殴ってみるが、さすがに固く簡単には割れない。
 今度は力を入れて攻撃してみると、岩に亀裂が入り崩れ落ちたが、手が痛い。

 今度は更に、魔法の〈身体強化〉を使い、岩を攻撃して砕き割る。(手は痛くない)
 上手くいったので、次々と岩場を砕き鉄鉱石を回収し【アイテムボックス】に放り込んで行く。
 夢中になってやっていると、浅くなっている川の中に、変わった色の岩があったので、それも砕いてみた。

 すると、中から今までと違う石が出てきた。
 手に取ってみると、今までと違うので、分析してみると『魔鉄鉱石』と表示された。
 なんでも、大気中にある『魔素』を取り込んだ鉄鉱石とのことらしい。
 価値が良く分からないが、珍しそうなので、これも持ち帰ることにした。(多分価値があると思う)

 ふと気が付くと、日が低くなってきたので、鉱石採取を終わらせて、アヴァランチェに戻ることにした。
 範囲を広げた【マップ】に、人のマークは表示されないので、川沿いを走って行くことにした。
 足場が悪く、思ったよりも時間が掛かり、辺りが暗くなってきた頃に、ようやく西門に着いた。
 この時間に都市に出入りする人は少なく、門に居る衛兵にギルドカードを提示して、都市に入る。

 宿までは距離があるので、街の明かりが照す大通りを、怪しまれない程度の速度で走って約二時間、やっとノシャックの宿屋に着いた。
 ただ戻って来るのが遅く、食事の時間は終わってしまったと。
 仕方がないので、そのまま部屋に行こうとしたら、ノシャックが余ったパンを持ってきてくれたので、部屋で食べることにする。
 寝る前に、汚れた衣服と体をキレイにするのに〈クリア〉の魔法を使う。

 〈クリア〉の魔法は、アレナリアが使ってるのを見て、試しにやってみたら出来た。
 これは便利だと思い、こらからから良く使おうと決めた(たがやはり、お風呂が無いのは寂しい)

 今日は、動きっぱなしの一日だったので、直ぐにベット横になり寝た。


 ◇◆◇◆◇


 今日はまず、ギルドに行って依頼の報告と、採掘してきた素材の買い取りを頼むことにする。
 まずは昨日買っておいたパンを【アイテムボックス】から出し、簡単な朝食を済ませてから宿屋を出る。

 さっそくギルドに行こうと思ったが、朝はいつも混んでいるので、少し都市を散策して、人が少なくなった頃を見計らって、行くことにする。

 この空いた時間は、中央広場の裏路地にある店を、見てまわることにしようと思った。
 何度か買い物に来てはいるが、店の数が多く、数件しか入ってはない。

 宿屋から中央広場まで、三十分程しか掛からないので、商店を見て回る時間はだいぶあるが、朝らかやっている店は少なく、殆どが閉まっている。(リアーデの広場に出ていた露店とは、やはり違うようだ)

 朝からやっている店は食べ物屋が多く、どこも朝食を食べてる人や、買って持ち帰る人で、いっぱいだ。
 こんなに朝からやっている食べ物屋があるなら、前日にパンを買って、アイテムボックスに入れておく必要は、なかったかも知れない。

 今日は、中央広場から職人区側にある、裏路地の商店を散策してみたが、お客さんは職人区で働いてる人達が、多く利用してるみたいだ。
 利用しているは人が多く、たまにドワーフや獣人も見るぐらいだった。

 辺りを散策し続けて、だんだん依頼に行く冒険者達を見るようになってきたので、ギルドも空いた頃だと思い、行くことにする。

 到着すると思っていたとおり、ギルド内の冒険者は少なく、受付にも人は並んではおらず、空いていた。
 依頼専用の受付には二人居るが、素材調達依頼を教えてくれた、ルグルの居る受付に行く。
 ルグルは気が付き、軽く会釈をして話し掛けてきた。

「こんにちはカズさん。今日も何か依頼をお探しで?」

「こんにちはルグルさん。それもありますが、まず素材調達依頼が終わりまして、その報告と、あと調達した素材の買い取りをお願いしたいのですが」

「もう行って来たんですか? 依頼期限まで、あと二日もありますが?」

「早かったですか? それなら買い取りは、今度でも」

「いえいえそうではなく、場所が都市外ですので、日帰りは難しく、移動と素材調達で早くとも二日は掛かると思いまして……」

 ……しまった。
 またやらかしたか! 今日じゃなく、明日の夕方ぐらいにギルドに来るんだった。

「まぁその……昨日の朝早くから出発したんで、その分早く戻って来れたんですよ。(言い訳が苦しいか)」

「そうだったんですか。水路掃除の依頼もそうでしたが、どんな依頼でも一生懸命に取り組む方なんですね」

 うっ……このステータスのおかげて、楽に速く移動できるからなんだけど、満面の笑みで言われると、正面から顔が見れない。
 別に悪いことした訳ではないんだけど……あの笑顔が辛い。

「ルグルさん、それで素材は……」

「あ、はい。それでしたら、今回はギルドではなく、依頼書に書かれている、依頼者の元に行って渡してください」

 依頼者を見ると、職人区にある『鍛治屋組合』と書かれている。
 場所までは書いてないので、ルグルに場所を聞いた。

「この『鍛治屋組合』って、どこにありますか?」

「それでしたら、近くですので、簡単な地図を書きますね」

 その場で、ささっと紙に簡単な地図を書き、それを見せて説明してもらい、渡された地図を頼りに『鍛治屋組合』に向かう。
 ギルドを出て十数分ぐらいで、目的の場所に着いた。

 建物に近づくと、トンカンと鎚を打つ音が聞こえて、中に入ると居たのは、殆どがドワーフだった。

「あのう、ちょっといいですか?」

「あ? なんだあんたは?」

「こちらの依頼を受けた者なんですが」

「依頼? ああ! それならあっちの奴に言ってくれ」

「あ、はい」

 部屋の中で、事務仕事をしているドワーフに、聞いてくれと言われたので、教えられた部屋に行く。

「あのう、ギルドで、素材調達の依頼を受けた者なんですが」

「ああ、もう取ってきてくれたのか。それじゃあ、素材を持って、ちょっくら着いてきてくれ」

 よく分からないが、事務仕事をしていたドワーフの後を着いて行くと、倉庫に着いた。

「ここに居る者に素材を渡してくれ。それが終わったら、さっきの事務所まで、もう一度来てくれ」

「はい分かりました」

 倉庫の中に入ると、数人のドワーフが居て、依頼のことを言うと、直ぐに持ってきてくれと言われた。
 どうやら荷馬車が外にあり、そこに積んであると思ったらしいので【アイテムボックス】から採取してきた『鉄鉱石』を半分出した。
 するとアイテムボックスより、出した『鉄鉱石』の量に驚いていた。

 驚きながらもその場に居た全員で『鉄鉱石』を見て査定しはじめた。
 一つ一つの塊を、選別しては重さを量ったりなどして、一時間以上かかってようやく終わった。
 『鉄鉱石』は、荷馬車で約3台分(約500㎏)はあったと。
 アイテムボックスには、同じぐらいの『鉄鉱石』がまだあるが、今回はもう出すのを止める。
 そうでないと、また常識外のことをしたと言われそうなので。

 査定が終わり、事務に渡すようにと書類を預かり、倉庫を出ようと思ったが『魔鉄鉱石』があるのを思い出した。

 小さい物(拳ぐらいの大きさ)を見せようとした時、一人のドワーフが目付きが変わり、手に持っている『魔鉄鉱石』を凝視してきた。
 何か不味いと思って、直ぐに懐に入れて、その場を離れ事務所に行った。

 倉庫で渡された書類を、事務所に居たドワーフに渡したら、今度はギルドに出すように言われ、別の書類を渡された。
 買い取りのお金は、冒険者ギルドから報酬として出ると言う。
 ドワーフの仕事って、鍛冶場で鎚を振るってる印象が強かったが、組合だけあって事務仕事もするんだと、考えを改め直した。

 これで終わったと一安心して、ギルドに戻って報酬をもらうことにする。
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