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二章 アヴァランチェ編

41 スカレッタ と アレナリア の 心情

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 ≪ 時間は少し前、カズが冒険者に絡まれている時 ≫


 またたちの悪い冒険者が、カズさんに絡んでるわ。

「よし! 私が注意しに行ってくるから、スカレッタは見てて」

「ルグル大丈夫? サブマスに言われたからって無理しちゃ駄目よ」

「大丈夫よ! 任せてスカレッタ」

 依頼専用の受付を担当している『ルグル』が、たちの悪い冒険者達を、注意しに行った。

「ちょっと、ギルド内での揉めごとは困ります」

「別にギルド内で何かやろうとは思ってねぇ。ちょっと付き合ってもらおうか」

「遠慮します」

「なんだと! なら代わりに、この女に遊んでもらおうかな」

「ちょっ、ちょっと止めてください」

 大変! ルグルが捕まっちゃったわ。どこが大丈夫なのよ! こうなったら私が!

「何をしてるんですか! 職員に手を出さないでください」

「なんだもう一人おれ様と遊びたいのか」
 
「気安く触らないでください!」

 もう、なんでこんな人達ばかりなのかしら。

「分かった分かった。いったい何処に行こうと言うんだ?」

 あぁ、カズさんを助けるどころか、また迷惑をかけてしまったわ。

「たいした所じゃねぇ。ギルドに言って、訓練場を使わせてもらうだけさ。喜べおれ達がきたえてやるよ」

 ルグルを捕まえたうえに、私にまで手を出そうとして、この人は何を勝手なことを言ってるのかしら。

「ほら離してやるよ。その代わり、訓練場を使うぞ」

 ルグルを解放したからって、これ以上好きにさせるもんですか!

「何を勝手に、貴方達のような人に……」

「ギルドは冒険者に、訓練場を使わせても構わないはずたよな!」

 うっ……確かにそうだけど……負けるもんですか!

「寄って集って、一人を相手にするような人達なんかに……」

「何を言ってやがる、低ランクの冒険者を鍛えてやるだけだろ。ギルドだって同じことをやってるはずだよな!」

 この人は、余計なことを知ってるんだから!

「それは冒険者の方から、要望があればの話で」

「ギルドに代わって、おれ達がこいつを鍛えてやるって言ってるんだ!」

 まったくなんなのよ! 本当に勝手なんだから!

「でも、カズさんは望んでないじゃないですか」

「そんなことないよなぁ『カズ』わかってるだろ!」

 これでカズさんが断れば……

「ええ、はい。訓練希望ですね。そうします」

 ちょ、ちょっとカズさんなんで……?

「スカレッタさん、訓練場を使わせてもらいますので、お願いします」

「えっ、でもカズさん……」

「ほらこいつの同意もとれたぞ!」

 なんでよカズさん……

「わ、分かりました。どうぞ……」

 なんで私がこんな奴らを……カズさんどうして……

「スカレッタごめんなさい。私が……」

「大丈夫よルグル。とりあえず椅子に座って落ち着いていてね」

 スカレッタは仕方なしに、冒険者達を訓練所に案内した。
 カズと冒険者達は訓練場に入って行き、スカレッタは入口で帰され、扉が閉められた。

「急いで戻ってマスターに報告しないと」

 スカレッタはギルドへと戻り、ギルマスの部屋に行っが、出掛けているのか姿はなく、代わりにサブマスのアレナリアと、ルグルが居た。
 それを見たスカレッタは、アレナリアに声を荒立てて報告する。

「サブマス! カズさんと絡んできた冒険者達が……」

 既にルグルが話しており、それを聞いたアレナリアは考え、自分がサブマスだということをカズに諭されたので、自ら動かずに職員に指示を出し、解決しようとしていた。

「話はルグルから聞いたわ。誰かそいつらを、取り押さえることの出来る職員は居ないの?」

「今日はBランクの職員は出払ってまして、ギルドにはサブマスしか……」

「そうか仕方ない。ロウカスクはどうした? ギルド内に居ないのか? 職員に手を出されたなら、アイツが行けば直ぐ解決するだろう」

「それが、マスターも出掛けているのか、姿が見えなくて……」

「何! こんな時にアイツは……もういい、私が行こう」

「サブマス! ありがとうございます」

「スカレッタ案内して」

「はい!」

「ルグルはここで待ってなさい。ロウカスクが戻って来たら説明を」

「わ、分かりました。サブマス、カズさんをお願いします」

「ええ」

 アレナリアは表面上は冷静でいたが、内心は焦っていた。

 言われなくてもそんなの分かってるわ。
 カズ待っていて! 私が直ぐに行って威張り腐った冒険者達なんて、氷で固めて、粉砕してイノボアの餌にしてやるわ。

 アレナリアとスカレッタは部屋を出て、訓練場に急ぎ移動した。
 ルグルはアレナリアの言葉を聞いて、ギルマスの部屋で待機している。

「サブマス、カズさん大丈夫ですよね?」

「スカレッタ何を心配している、少なくともカズは盗賊の一団を倒したんだから、大丈夫に決まってる」

 話など今はいい、早くカズの所へ案内して! 大丈夫よねカズ。
 もう親しくなった人と、会えなくなるのは嫌よ!

 ルグルとスカレッタが、サブマスのアレナリアに報告に行ってから約二十分後、訓練場の近くまで来たその時……



 ≪ そして時間はカズと冒険者達が、訓練場に入ってから二十数分後 ≫


「所詮あの程度の雑魚だってことさ。盗賊を倒したのだって、ただの噂に過ぎなかったってことだな」

「しかし、頑丈でしぶとい奴だったな。こっちの手が、いかれちまうと思ったぜ」

「もう気が晴れたから、どっかで飲み直そうぜ」

「そいつぁ良いや。ガハハハッ」

 訓練場から、カズと一緒に入っていった冒険者達が出てきた。
 アレナリアとスカレッタは、見つからないように建物の陰に隠れてやり過ごし、二人は急いで訓練場に入って行く。
 そこには、全身が土で汚れたカズが横たわっていた。

「カズさん大丈夫ですか?」

 そんな……まさか……カズ……カズ! ……カズ!!

「カズ! 大丈夫なのか? 生きてるか! おいカズ!!」

「あれ? スカレッタさんに、アレナ……サブマスまでどうしたの?」

「えっ? カズさん無事なんですか?」

「ええ。なともないです」

「でも凄い汚れてますよ」

「あぁ、ただ単に転げ回っていただけなので、土で汚れただけです。怪我はしてないですから」

「そうなんですか? いえ、怪我がなくて良かったです。大変だと思って、サブマスの来てもらったんですよ」

「……」

「わざわざ心配お掛けしてすいません」

「とりあえずギルドに戻るわよ。そこで詳しく話を聞くわ。カズ早く着いてきなさい」

「はい分かりました(サブマスとして、しっかり分別出来てるじゃないか)」

「サブマスそんな冷たい言い方しなくても、せめて汚れを落としてからでも」

「あぁそうですね。そのままでは部屋が汚れてしまうから、少しでもキレイにしてから部屋に来なさい」

「それじゃあカズさん、あちらの部屋で水を使える所がありますから、そちらで汚れを落としてから行きましょう。私が案内しますから」

「ありがとうございます。スカレッタさん」

「そんな、助けに入るどころか、またご迷惑をお掛けしてすいません」

「とんでもない。スカレッタさんが謝るようなことではないですよ」

「いえそんな、来る途中サブマスに言われたんですけど、私達がまた手を出されないように、庇ってくれたんだと。そうだと知らず、私気付きもしないで」

 カズはスカレッタに訓練場内にある、水が使える場所に連れてかれる。
 一つの部屋に入ると、中に大きな桶と、水のソーサリーカードが数枚置いてあった。
 どうやら訓練場を使用した者は、使って良いらしい。

 俺は、水のソーサリーカードは使わず、魔力変換で出したお湯を、大きな桶に溜めて、汚れた顔や手を洗って、衣服に着いた土は叩き落として、少しでもキレイにしてから、スカレッタさんと一緒に訓練場を出る。
 ギルドに戻り、アレナリアが居るギルマスの部屋にスカレッタと行く。
 中に入ると、絡んできた冒険者を注意しに来て、捕まった女性職員が居て、申し訳なさそうに話しかけてきた。

「あ、あのすいませんでした。私が捕まったばっかりに、ご迷惑をお掛けして」

「いえそんな、悪いのは、あちらの人達ですから」

「大丈夫でしたか? あっ! もうし遅れました。私は、依頼専用の受付をしている『ルグル』と言います。この度は庇って頂き、ありがとうございました」

「気にしないでください。怪我もないですから」

「もう良いでしょ。スカレッタにルグルも仕事に戻りなさい。私はカズに話を聞きますから」

「はい」

「分かりました。それではカズさん」

 アレナリアに言われて、二人はお辞儀をして部屋を出て、受付の仕事に戻っていった。
 二人がいなくなった途端に、アレナリアが素に戻って、押さえていた気持ちが一気に言葉として出てきた。

「カズ大丈夫か? 本当に怪我はしてないのか? 痛いとこはないのか? 無茶しないでよ! 心配したんだから!」

 アレナリアは早口でまくし立てながら、しがみついてくる。
 まるで過保護だ。

「アレナリア落ち着いて、言った通りなんともないから。それに、そんなにくっつくと汚れるから」

「汚れなんかどうでもいい。今回は危なかったでしょ! カズより格上の冒険者を四人も相手にしたんだから!」

「いや本当になんともないから」

 どうにか説得して、アレナリアには離れてもらう。

「いったい訓練場で何があったのか、説明してくれるんでしょうね」

「そいつはオレも聞きたいな!」

「ギルマス!」

 突如ギルマスのロウカスクが、部屋に入って来た。

「ロウカスク! お前は今ままで、どこに行っていた!」

「まぁ、ちょっと。それより先にカズ君の話を聞こうじゃないか」
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