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二章 アヴァランチェ編

37 アレナリアの秘密 と ロウカスクとの出会い

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 昨夜どんな顔して会ったらいいのか悩んでたのに、いきなり本人と二人っきりって……平常心平常心!

「あのう、俺に聞きたいことって?」

「……」

「アレナリアさん」

「……」

 呼んでも返事が無いので、肩を叩いて、もう一度よんでみた。

「アレナリアさん? もしも~し」

「ひゃあ! いきなり何をする!」

「いや、呼んでも気付いてないから」

「わ、わかった。分かったから、お前はそっちに座れ」

 カズが向かい側の席に座ろうとしている間、アレナリアは息を整える為に、ゆっくりと深呼吸をしている。

「す~は~す~は~(落ち着け私)」

 ギルマスは、こうなることがわかってて、二人っきりにしたんじゃないのか?
 んっ! 昨日テーブルの上にあった、盗聴防止の魔道具がないぞ?

「アレナリアさん」

「わっ! な、なんだ」

「昨日ここにあった魔道具は?」

「魔道具? ……ロウカスクの奴だな。きっとどこかで、盗み聞きしてるに違いないわ」

「そんなことを、するような人には……」

「アイツはやる。私のことをよく、からかってくるのよ」

「そう言えば、昨日の別れ際に『楽しくなりそうだ』とか言ってたな」

「ほらな。アイツはそういう奴だから、仕事以外で、真面目に相手する必要はないのよ」

「……」アレナリアをじっと見る。

「な、なによ」

「アレナリアさん、ようやく会話が出来るようになりましたね」

「な、何を言っている。さっきまでは考えごとをしてただけだ。べ、別にお前相手に緊張などしてない!」

「分かってます。それで聞きたいこととは?」

「そうだな。いやその前に」

 アレナリアが懐から、小さな布袋を取り出し、テーブルに置いた。

「それは?」

「私がいつも持ち歩いてる、盗聴や情報を探る効果を、防止する魔道具が入ってるわ。この部屋に置いてある物より、効果が強いが、範囲が狭いのが難点なの」

「これで例えギルマスが聞き耳を立てても、安心して話せる訳ですか」

「まぁそうなんだが、今言ったように、効果範囲が狭いから……その……なんだ……と、と隣に座ってくれないか」

 せっかく離れて、会話が出来るようになったのに、大丈夫かな?
 俺も少し緊張してきた。

「分かりました。嫌だったら直ぐに言ってください。離れますから」

「べ、別に嫌とかでは……」

 向かい側に座っていた席から移動して、アレナリアの隣に座る。
 長椅子の為に、二人の間には肘掛けなどはなく、とても近い状態だ。

「それで、アレナリアさん話とは?」

 これで聞くの何度目だ? 

「あのう、そのう……」

 アレナリアは、うつ向いて、モジモジしながら話してくる。

「カズは本当に、私の姿が、気持ち悪いと思わないのか……」

「昨日も言いましたが、別にそんなことは思いません」

「そうか本当だな」

「本当です」

「な、ならカズの前では、常にこれ(フード付きの服)を着てる必要は、ないんだよね」

「それでも構いませんし、落ち着かなければ、そのまま着ていても良いですよ」

「だ、大丈夫。私の姿が平気と言うのであれば、着ている必要もないからな」

 アレナリアは着ていたフード付きの服を脱ぎ、少し恥ずかしそうにしている。

「ど、どうだ人前でも脱いでやったぞ」

「ハイハイ。偉い偉い」

「こ、子供扱いしないでよ」

 昨日の自己紹介する時は、すんなり脱いだのに。

「ギルマスの前でも、いつも着ているの?」

「ロウカスク一人だけならなんとか。私は異様だから、他の者達には……」

「アレナリアさん、今までで、そのままの姿を見た人は?」

「里を出てからは、ロウカスク以外に数人だけ」

「それは辛いことを聞いてごめん」

「……カズ! 貴様にこの姿見せたんだから、私の秘密を聞かせてやろう。ただし、誰かに言ったら、覚悟してもらうから!」

「覚悟って、そんな無理に話さないくても」

「いいから聞くの! 聞きなさい!」

 なんか自棄になってるよ。


ーーーーーーーーーーーーーーー


 今はこんなんだけど、私も子供の頃は、他のエルフと変わらない容姿だったの。
 見た目に変化が出てきたのは、二十歳を過ぎた頃、だんだと髪や肌が白くなり、周囲の者達からは、疎まれるようになってきたわ。

 それから暫くして、住んで居た里の長から呼ばれて行くと、私を里には置いておけないと。
 今まで一緒に暮らした里の仲間だから、無理強いはしたくないと言っていた。
 なんとなく分かってはいたけど、実際に言われると、キツイものだったわ。

 最後に里長が、私に両親がいない事を教えてくれたわ。
 聞いたら大した理由じゃなかった。
 私は雪の降る寒い山の麓に『捨子』で居たのを、里長が拾ってくれて、里の者達で育ててくれたと。
 いつの時代も捨子はあったから、驚きはしなかった。
 エルフでもね。
 ただそれが自分だなんて。
 それを聞いて、一応は育ててくれた恩があるから、これ以上迷惑は掛けられないと思い、私は自分の意思で、今まで暮らした里を出ることにしたの。
 面目上は。

 幸い魔法は使えたから、冒険者になって何とか暮らしていたわ。
 冒険者になる時は、小さな街でマント着て、顔を隠しながら登録したわ。
 怪しまれたけど。
 冒険者としての活動は、街を変えて行ってたわ。
 ただこの姿を見られないようにする為に、今のような格好をしたり『幻術魔法』で、違う容姿に見えるようにして、過ごしていたわ。
 でもやっぱり常にフードを被っていると、怪しまれれたり、子供だと間違われて、一人の時には、人さらいに無理やり連れて行かれそうに、なったりもした。

 魔法で姿を変えて過ごしていても、高ランクの冒険者などには、看破されてしまうこともあったから、いつも組むパーティーは、Cランク以下の者達ばかりだった。
 そのこともあり、私もCランク止まりで、いつまでたってもBランクにすら上がれなかった。
 でもそれは良かったかも知れない、Bランク以上になると、ステータスの開示を求められるから。
 大抵はステータスを見せる時に、種族も見られてしまうから、私には良かったかも知れない。

 しかし下手に実力があった為に、ランクが低くても、高ランク冒険者との討伐依頼に、組み込まれることがあったりして、そこで種族がバレそうになったら、街を変えたり、時には人里離れた山や森に、十数年住み、人が様変りした頃に、また街で暮らしたりしていたわ。

 何年たったのか、そんな生活を続けていた頃に、ロウカスクと出会った。
 当時はまだCランクに上がった頃で、アイツは戦闘で剣ばかりのに頼って、他の者より魔力があるのに、魔法を上手く使えないでいてね、私が魔法を使えるように、特訓もしてあげたわ。
 それから数年ロウカスクと、他の何人かでパーティーを組んでいたわ。

 そのかいがあってね、ロウカスクは魔法剣士として大成したのよ。
 そしてロウカスクが、Bランクに上がった頃に、街に来た高ランクの冒険者パーティーに、私の種族がバレて、しかもそいつらが相当問題のある連中で、私のことを言い触らしていたのよ。
 私はいつものことだと思い、ロウカスク達に何も告げずに、一人で街を出たわ。

 それから何年かたったある日、一人で討伐依頼をしていた、ロウカスクと出会った。
 私はそのまま離れて行こうとしたら『アレナリアだろ久し振りだな。元気だったか?』と、声を掛けてきたのよ。
 私は無視して行こうとしたら『オレ今、冒険者ギルドのサブ・マスターやってるんだが、アレナリアも来ないか』って言ってきた。

 私は戸惑って聞いたわ『私の種族を知ったのに何で?』っと。
 そうするとロウカスクは『オレは種族なんて気にならない』と。
 私が悩んでいたら、ロウカスクが当時のギルドマスターに、私のことを話していたらしく、受け入れてくれると、言っていたので、私はかつて仲間だったロウカスクを信じて、冒険者ギルドに行ってみたの。

 ギルドマスターに会ったら、温和な人でね、私のことを知っても、黙っていてくれると言ってくれたのよ。
 そこで私はもう一度街で、冒険者として暮らすことに決めたわ。
 でも周囲の者には知られないように、魔法と魔道具を使って、姿を偽りながら、ロウカスクとパーティーを組んで、依頼をこなしていった。

 そしてロウカスクがAランク、私がBランクになって暫くした頃に、次のギルドマスターがロウカスクに決まったの。
 その時にギルドマスターの権限で、サブ・マスターに私を指名したのよ。
 ロウカスクはギルド内で信頼があったから、同じパーティーの私が選ばれても、問題は起きなかった。
 当時の私がやる仕事は、主にギルドの裏で書類整理みたいなものだから、職員以外に人と、会うことも少なかったからね。

 里を出てから百年以上、そしてロウカスクと初めて会ってから、約二十年の月日が経ち、今に至る訳なの。


ーーーーーーーーーーーーーーー


「カズ……これを聞いてどう思う?」

「俺は……」
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